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人間が使用する医薬品が自然界に流出し、様々な野生動物に劇的な変化が起きている

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(著) (編集)

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 メタンフェタミン依存症になったブラウントラウト、抗うつ剤で恋を忘れ、交尾をしなくなったムクドリなど、合法・違法を問わず現代の薬物が野生動物への脅威にありつつあるという。

 『Nature Sustainability』(2024年6月5日付)に掲載された研究では、環境に流出した人間の医薬品などが、野生生物に想像以上に大きな影響を与えていると警鐘を鳴らしている。

 その影響は甚大で、場合によっては生物の個体数が激減したり、局地的な絶滅に追い込まれるケースもあるという。またそうした薬物に汚染された生き物を、私たち人間が食べている可能性すらあるのだ。

人間の使用する薬物で野生動物の行動に変化

 人間が使用している薬物が生き物に与える影響は、想像以上に大きなものだ。

 下水に流れ込んでいることで知られる抗うつ剤が、メスの性的な魅力を奪い、オスを攻撃的にして、求愛のさえずりを減らすことがこれまでの研究で明らかになっている。

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抗うつ薬を服用したムクドリのメスは魅力がなくなりオスの興味をひかなくなる / image credit:Liam Smith

 スズキ目ペルカ科に属する魚、ヨーロピアンパーチは、抗うつ剤のせいで捕食者への恐怖心を失ってしまう

 避妊用ピルは、魚のオスをメスに変える性転換効果があり、そのせいで魚の個体数が激減したり、地域的な絶滅につながった例すらある。

 サケ科のブラウントラウト(和名 チャマス、茶鱒)は、人間が下水に流した覚醒剤、メタンフェタミンにより、麻薬依存症になってしまうのだという。

 さらに抗うつ剤「プロザック」の成分を吸収してしまった魚は、ゾンビのように没個性化してしまうこともわかっている。

 スウェーデン農業科学大学のマイケル・バートラム助教は、「医薬品の有効成分は世界中の水路で検出されており、その中には私たちが食べる可能性のある生物も含まれています」と警鐘を鳴らす。

 この問題はここ数十年でますます明らかになっており、世界的な生物多様性の問題としてもっと注目されるべきであると話す。

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photo by iStock

薬物はどこから流出するのか?

 そうした薬品が環境に流出するルートはいくつかある。1つは、医薬品を作る過程で、処理が不十分なままに廃棄されるケースだ。

 もう1つは人間の体だ。誰かが薬を服用したとしても、そのすべてが体内で分解されるわけではなく、排泄物と一緒に排出される。

 そうして生態系に流出する薬物は、カフェイン・抗不安薬・抗うつ薬・抗精神薬などさまざまで、コカインやメタンフェタミンなどの違法薬物すらも環境を汚染しているという。

 バートラム助教は、インドで家畜に日常的に投与されていた抗炎症剤(ジクロフェナク)の影響で、1992~2007年にかけてハゲワシ個体数が97%以上も減少した事例を指摘する。

 そのケースでは、ハゲワシが牛の死骸を食べ亡くなったことで、かわりに犬がそれを漁るようになり狂犬病が急増するという思わぬ副作用もあったという。

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 また別の事例として、カフェインを摂取して精神的に不安定になったままのファットヘッドミノー(北アメリカ原産の淡水魚)や、抗生物質が微生物に与える影響なども知られている。

 そうした薬物の作用は人間にはメリットのあるものかもしれないが、それとまったく同じ作用が、野生生物にとって危険なものになるのだ。

世界各地で生態系の薬物汚染が進行中

 最近の研究で、104か国の河川1052か所で61種類の医薬品を測定したところ、そのうちの4割以上の地点で、生態系にとって安全とは考えられない量の医薬品が1種類以上検出されたという。

 気候変動、生息地の破壊、過剰消費など、今日の生物多様性にはただでさえ大きな負荷がかかっているが、そこに薬物汚染まで加わるのだ。

 もちろん医薬品が今後も不可欠なものであることは研究者も認めている。

 だがそれを扱う医療従事者たちは、医薬品が環境に与える潜在的な影響についてきちんと教育を受けるべきであると主張する。

 マイケル・バートラム助教ら研究グループは、この研究結果を『Nature Sustainability』誌(2024年6月5日付)に掲載し、製薬業界は環境への負荷が少ない分解されやすい薬品を開発し、工場からの汚染を防ぐために、廃水処理もきちんと行うべきであると訴えている。

追記:(2024/06/18)本文を一部訂正して再送します。

References:Meth-addict fish, aggro starlings, caffeinated minnows: animals radically changed by human drugs / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. そして人間にブーメランが当たるわけだな

    • +13
  2. 人間の生殖欲求が世界的に低下してるのってこれの影響もあるんじゃない?
    さまざまな動物に影響があるんだったら、けっきょく食物連鎖ですべての動物(人間も含めて)に影響あるでしょ。

    • +10
    1. >>4
      そうだと思うよ
      子供の頃に「環境ホルモン」ってニュース毎日やってた。これで鳥類がメス化してしまった。子供が生まれない。10年20年後はスズメが減少してるはず。世代交代の早い鳥他でこんな影響があるなら人にもって科学者に言われてた。もちろんスズメは少なくなってるし今はニュースにもならない。色んな経済活動が人間にはあるからね。アルミニウムと痴呆の関係とか。コロナで工場稼働を世界中がやめたら復活してきたオゾン層の事も今はググっても出ない不具合w

      • +2
      1. >>12
        環境ホルモンは、
        魚類では3物質のみ有害性が確認できたけれども、
        マウスの試験では有毒性が確認できなかったと環境省が発表していたと記憶しています。

        アルミニウムと痴呆の関係は、
        マウスの脳に直接アルミを注射すると
        老人斑の元になる蛋白質(APP)が貯まる事を確認した。
        との発表で、
        その当時から
        「脳に大量の異物を直接注射すればおかしな事が起こるのは当たり前じゃない?」
        って言われていました。
        実際にアルツハイマー患者の脳にアルミニウムの蓄積は確認されているけれども、
        血液、脳髄液、毛髪にはアルミニウムの異常蓄積が無い事から、
        「脳内の異常部位とアルミニウムが結合しやすいのでは?」
        「アルツハイマーになるとアルミニウムが脳内に流入しやすくなるのでは?」
        つまり
        原因と結果が逆なんじゃないかと言われています。

        • +4
        1. >>20
          疑問形ならそれらはまだ確認されてないってこと?

          • -1
  3. 川の水をゴクゴク飲めば不安が消えたりするの?

    • -2
    1. >>8
      お腹壊しちゃうよ
      病院で処方してもらったほうが
      いいと思う

      • +1
    2. >>8
      地面を流れる水は寄生虫の危険があるから飲んじゃダメ
      ある種の寄生虫に感染したオオカミはちょいワルになってモテるという報告もあるけど

      • 評価
  4. まぁ普通に考えれば薬を飲んでも全く消えるわけではなく、肝臓、腎臓等を通って最終的には尿に変わって放出するののが判っていたからなぁ…。
    ただ下水処理や最終的に放出する海の大きさを考えれば最初は誤差に範囲という判断だったんだろうが、人間(特に先進国)がサプリメントを含めて薬をバカみたいに飲んでいるし、魚都市の体重差を考えれば馬鹿にできないレベルになってきているというところだろうな。
    とはいってもサプリは脇に置いても病人で止められない薬がいくらでもあるから薬を止めるわけにはいないし、さりとて開発費がバカみたいにかかる一方で薬費を抑えるジェネリックを各国で推しまくっているから開発費の回収ができないから開発も進まない以上はこの手の話は何ともしようがないだろうな。

    • +5
  5. >ハゲワシが牛の死骸を食べ亡くなったことで、かわりに犬がそれを漁るようになり

    これは「食べ無くなった」の間違いでいいのかな?
    「亡くなった」でも何となく意味が通りそうだけど。

    • 評価
  6. 年々カスハラ、モンスタークレーマーが増えてるのもこういうのが原因では?って思ってる。
    昔、都内に数店舗ある小売店の本部で電話対応してたけど、年々目に見えてクレームが理不尽化、凶暴化していくのが謎で、何か食べ物とかに原因があるのでは?と思ってたけどこれかも。(あと、トキソプラズマ説も気になる。)

    • -3
    1. >>13
      昔は店側もモンスタークレーマーには強気で対応してたからだと思う
      昭和だけど厨房服着た人が難癖付けた客と取っ組み合いしてるの見たことある
      やり過ぎでなければいちいち警察とか呼ばない時代

      • +1
  7. 問題だと思うのに言葉が浮かばない
    どうしたらいいんだろう
    服用を減らすわけにもいかないし
    余った物は別個に処分するぐらいしか思いつかない

    • 評価
  8. 結局んとこ人間にもそういう副作用表れてるんでは?

    • +5
    1. >>15
      抗うつ剤 ⇒ 恐怖心の低下
      避妊ピル(卵胞・黄体ホルモン混合剤) ⇒ 女性ホルモン優位
      って、「副作用」ではなく
      思いっきり「主作用」では?

      • +2
  9. 「日本の水環境の医薬品成分」で探していくとひっかかりやすい感じでしょうかね
    (「の」は検索エンジンが勝手にいいように処理するはずなのでそのままでも)
    検索で見つかる関連しそうな環境庁PDFの親/上位の頁は「化学物質の内分泌かく乱作用に関する公開セミナー」だろか。令和3年と平成29年かな?

    • 評価
  10. 川の水から精製して純度99.9%の結晶を取り出す
    リサイクル工場が国の補助金で建ってたりしてね

    • 評価
  11. 自分も数種類飲んでるから環境汚染に加担しちゃってる訳か
    個人の健康のために自然を汚して申し訳ねぇ

    • -1
  12. 抗がん剤が最も強力なんじゃないの??
    その仕組み的にも

    • +1
  13. 下水に流れる抗生剤も前から問題になってたよね
    自分も毎日飲んでる薬があるから他人事ではない…

    • +2
  14. 排水を垂れ流すのではなく
    金をかけてでもしっかり浄化処理するしかない

    それにかかる費用をケチってるのが問題の原因の一つ

    ちゃんと法整備して政府と企業が浄化に金をかけるよう働きかけないといけないし、
    そのために発生するコストを国民や消費者はちゃんと負担しないといけない

    結局、個々人が意識を変えていくっていうのが、地道だけど唯一の解決策

    • -2
    1. >>25
      今の下水浄化方式では尿中に含まれる微量な化学物質を処理はできません。
      そんなものをしっかり処理していくとしたら、
      下水道料金はおそらく今の100倍以上になるのではないでしょうかね。
      収入の大半を下水道使用料に使うことになるでしょう。
      その提案は非現実的ですね。

      • +2

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