ポンペイで発見された木炭で描かれた子供の落書き
 西暦79年のベスビオ火山の大噴火によって丸ごと埋まってしまったポンペイの町から、意味深い木炭画が発見された。

 それらは剣闘士の闘いを表した落書きだ。単純で稚拙なスケッチから、おそらく5歳から7歳くらいの子どもが描いたものではないかと考えられる。

 これは当時、大人が観戦して楽しんでいた闘いの血なまぐさい光景を、幼い子どもたちも実際に見ていた証拠かもしれない。

ポンペイの遺跡で発見された子供たちの落書き

 この落書きは、最近一般に開放された、ポンペイ考古学公園の住宅地やパン屋のある界隈、インスラ・デイ・カスティ・アマンティで見つかった。

 大噴火が起こる前、ポンペイの子どもたちは、死ぬまで闘う剣闘士の姿を家の中庭の壁に木炭で描いていた。

 こうした暴力を幼い子どもが定期的に目にしていたとしか思えないほど、その絵柄はリアルなものだった。
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ポンペイ遺跡、インスラ・デイ・カスティ・アマンティで発見された木炭画の1つ / image credit:MIC - Archaeological Park of Pompeii

剣闘士の戦いが描かれていた

 剣闘士とは人間や獣相手に闘うよう訓練された戦士で、その闘いぶりを観て楽しむのが古代ローマの娯楽のひとつだった。

 落書きがあった場所は、ある家の中庭の壁だった。床からおよそ1.5メートルほどの高さのところに剣士らしき4人と動物が描かれていた。

 そのうち2人は向き合い、残る2人は2頭のイノシシに長槍を向けてるためベスティアリ(獣闘士)と思われる。またよく見ると右端にワシの頭らしきものも描かれている。
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 ポンペイ考古学公園のガブリエル・ツフトリーゲル氏はこう語る。
5歳から7歳ほどの幼い子どもが極端な暴力を目撃するのは、ビデオゲームやソーシャルメディアがはびこる現代だけの問題ではなかったようです。

ただ違うのは、古代の闘技場での流血は現実のことであり、目撃したポンペイの子どもたちの精神的発達に大きな影響を及ぼしたはずなのに、それを問題視する人はほとんどいなかったということです
 フェデリコ2世ナポリ大学の児童心理学の専門家たちがこの落書きを分析し、これを描いた子どもたちは、単なる想像からではなく、実際に見た記憶からこれを描いたと結論づけたという。
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ポンペイ遺跡、インスラ・デイ・カスティ・アマンティで発見された木炭画の1つ / image credit:MIC - Archaeological Park of Pompeii

大人たちは闘技場に子供を連れて行った

 およそ2000年前、この家の中庭で遊んでいた子どもたちは、おとなに連れられてポンペイの町の闘技場へ行ったのだろう。

 ローマのコロセウムと同じように、そこは血みどろの闘いを見世物にする場だった。当然、子どもたちも極端な暴力を目の当たりにし、そこには犯罪者や奴隷の処刑も含まれていた可能性があるという。

 落書きに描かれている棒のような人物は、頭から直接手足が生えていて、タコやイカのような頭足動物に似ている。

 こうした特徴は、いつの時代でも子どもたちの絵によく見られる「人類学的な不変性」といえる。現代の子どもたちの多くも同じようなアプローチを使って絵を描く。
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ポンペイ遺跡、インスラ・デイ・カスティ・アマンティで発見された木炭画の1つ / image credit:MIC - Archaeological Park of Pompeii
おそらく、この中庭で遊んでいた子どものひとりが闘技場での殺し合いを実際に見たのでしょう。この落書きは、今日でも見られる発達段階にある少年少女の想像力に与えた影響力を示しています(ガブリエル・ツフトリーゲル氏)

火山灰に閉じ込められた歴史

 剣闘士の落書きを描いた子どもは、なにか足場のようなものに乗って絵を描いたようだが、別の部屋のスケッチは子どもの目線そのものの高さにある。

 油やワインを入れる壺アンフォラの保管室の壁には、地面から50cmほどのところに3つの小さな手、ボール遊びをしている2人の人物、イノシシ、地面に横たわるボクサーのような人物が2人描かれている。

 ポンペイでは例のない、フードをかぶった子どもの絵もあった。死んだ子どもへのオマージュではないかという。

 この子どもは小さな犬と共にブドウやザクロに囲まれていて、ほかの子どもたちの絵が見つかった場所近くの庭を眺めているようにみえる。
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落書きが見つかったアンフォラの保管室 / image credit:Pompeii Sites

インスラ・デイ・カスティ・アマンティで発掘されたもの

 インスラ・デイ・カスティ・アマンティの別の場所からは、噴火で亡くなった男女の遺骨が発掘された。

 2人はおそらく噴火で飛んできた熱い軽石や降り注ぐ灰を逃れようとしていたのかもしれない。

 ほかの部屋は、ケンタウロス、セイレーン、グリフィン、アポロ、アフロディーテ、ディオニソスなどの神々を描いたフレスコ画で装飾されていた。
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住居内で発見されたフレスコ画。左はアフロディーテ、右はペルセポ / image credit:Pompeii Sites

 噴火前、ポンペイは600年以上も港湾都市として繁栄していた。この町は考古学的発見の宝庫と言っていい。

References:POMPEI, INSULA DEI CASTI AMANTI - Pompeii Sites / Children’s Graffiti Reveals Witnessing of Gladiatorial Violence in Pompeii / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2024年06月04日 23:34
  • ID:5KE0jzoM0 #

本当に子どものらくがきなのかな?
絵が下手な大人のらくがきである可能性を捨てるには早い気がする

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2. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 00:11
  • ID:MsSr8vro0 #

古代の都市国家において市民というのは戦士階級と言っていい。自分たちの自由と権利を維持拡大するために戦列に加わり国家を守ることが市民の義務でもあり、またそれ自体が積極的に希求されるべき権利でもあった
そうした気風を醸成するために、ギリシアにおいてもローマにおいても、もともとは子供たちをかなり荒っぽく養育する風習があった。当時のレスリングとかボクシング、あるいはパンクラチオンと呼ばれる死闘としか言いようがないスポーツはしばしば身体的欠損や死にも繋がりかねない危険なスポーツで、それを大人たちは少年たちに奨励していた。

時代が下ると兵役は傭兵や外国人が担うようになっていって、市民たちの戦士階級としての役目は薄れていってしまうのだけど、だからといって別に平和主義者になったわけでもないので、子供たちが暴力を身近に触れることを喜びこそすれ、嫌悪する親はかなり少数派だったんではないだろうか。ご婦人方だって普通にこの手の興行を楽しんでいたので、このポンペイの落書きを描いたのが小さい女の子だったとしても何も驚くべきことではない

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3. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 01:25
  • ID:CkQjyKEw0 #

西暦79年の絵画なの⁈

子どもの絵はともかくとして、色付きのこの絵はすごい技術だね。

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4. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 06:08
  • ID:3S3CCqkj0 #

暴力やグロについてはそもそも公開処刑が一般的にあり、それが庶民の娯楽ですらあったという事を考えれば別段特別な物でもない気がしないでもない。
そもそも成人したら戦争に従軍して剣や槍で殺し合いだって珍しくは無かったようだし。

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5. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 06:57
  • ID:dj1kASkI0 #

剣闘士学校で木馬を相手に訓練している様子にも見えるな。

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6. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 09:59
  • ID:6LDCCHBE0 #

>>1 同意。線の描き方、対象物を意識した構図から、描き手は子供だとしても10才以上ではないかと。それにしても描かれている場面を暴力と捉えるのはどうなのかな?時代も文化も身分制度も異なるのに当時、問題視されなかったとか不毛だわ

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7. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 12:04
  • ID:.spgIn.G0 #

48歳児の自分も剣闘士を描けっていわれたらこんなもんですぞ

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8. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 12:26
  • ID:JokJpISd0 #

中世のフランスや日本でも処刑が一般公開されていたくらだし、実証されたのは重要だけど、その事自体は実は驚くほどのことでは無い気がする。

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9. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 12:43
  • ID:cLNiBmkE0 #

あの…オレンジのインクで描かれた物は・・・
いや違う僕の心が汚れてるんだ(´・ω・`)
そんなわけがない

10

10.

  • 2024年06月05日 16:37
  • ID:gdMg1Z0y0 #
11

11. 匿名処理班

  • 2024年06月05日 16:54
  • ID:GjyRHIdq0 #

どうして古代現在問わず、世界共通でチン・を落書きに描くんだよw

12

12.

  • 2024年06月05日 17:16
  • ID:ER79frh70 #
13

13.

  • 2024年06月06日 19:26
  • ID:96Srh2bU0 #
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14. 匿名処理班

  • 2024年06月06日 19:36
  • ID:96Srh2bU0 #

>>1
普通らくがきは目線の高さに描くから、
床から1.5メートル(約5フィート)ってのは5〜7歳の子供の身長としては高すぎるよね

出典の一つによれば「仮設されていた足場に登って描いたのだろう」って書いてあるけど、
足場という推測がどういう根拠に基づいているのかは不明

子供が描いたと断定したのは、心理学者が絵を分析して子供の絵の特徴があると認めたかららしいけど、
その手法にどの程度の信頼性があるのかは浅学な私では判断がつかない・・・

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15. 匿名処理班

  • 2024年06月08日 15:15
  • ID:C4Z5RfV30 #

>>8
なんで「フランス」なの?フランス以外の諸国を含むヨーロッパ全域を差し置いてフランスだけ出てくるのが謎

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16. 匿名処理班

  • 2024年06月08日 15:24
  • ID:C4Z5RfV30 #

>>4
そもそも古代の人間に「怖い」とか「楽しい」みたいな感情らしいものがあったとは考えにくいし、彼らはそういうグロデスクなのを実際に観ても何とも思わなかっただろうね。
映画の剣闘士の戦いで興奮したり恐怖を覚えるのは現代人の主観的かつ一方的な感性に過ぎない。

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17. 匿名処理班

  • 2024年06月14日 02:10
  • ID:.2daVJCj0 #

歴史的発見は素晴らしいが、記事の現代人の子供の教育視点で物言うのマジ意味分からん。

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18. 匿名処理班

  • 2024年06月19日 07:14
  • ID:Wc2QSSbw0 #

>>15
「中世のフランスや日本でも」っていう文脈から、ただの例示に過ぎないことを、なんであなたが理解できないのが謎

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