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脳を刺激して特定の記憶を呼び戻す技術「記憶プロテーゼ」を開発

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(著) (編集)

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 アメリカの神経科学者たちは、脳の海馬を刺激して特定の記憶を呼び戻すことができる「記憶プロテーゼ」を開発したそうだ。

 外出する前にヒーターを消しただろうか? 車の鍵をどこにおいただろうか? こうした細かい物事は、ついつい忘れがちだが、とても大切な情報だ。

 開発中の「記憶プロテーゼ」(プロテーゼは足りない部分を補う補綴と言った意味だ)は、脳の記憶経路をハックし、プログラムコードに変換し、そのコードを元に海馬を刺激して記憶を定着させることで、思い出させるというやり方だ。

 今回の実験では、記憶力に問題がある人ほど効果的であることが明らかになっている。将来的には、アルツハイマー病や頭部の怪我などで記憶障害を負った人の記憶の復元に役立てることができるかもしれない。

忘れてしまいがちな記憶を呼び戻す方法

 外出する前にヒーターを消しただろうか? 車の鍵をどこにおいただろうか?

 こうした些細な記憶は日常生活ではとても大切だが、うっかり忘れがちなものでもある。ならば機械の助けで、こうした記憶を強制的に呼び戻すことはできないだろうか?

 基本的なアイデアはこうだ。

 まず脳に移植されたインプラントを通じて、脳内の神経活動をモニタリングする。こうした神経活動をコンピューターで解読し、ある種のプログラム・コードに変換する。

 そして今度は、そのコードをもとに記憶を司る「海馬」を刺激して、記憶を書き込む。

 米国ウェイクフォレスト大学と南カリフォルニア大学の研究チームは、そんなSFのような技術を実現するために、人間の脳活動を観察する「記憶解読モデル」を開発した。

 これを用いることで、特定の情報をしっかりと記憶として定着させる手助けをすることに成功している。

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記憶に障害がある人ほど記憶力が上がることを確認

 今回の実験は、てんかんの治療のために脳に電極を移植していた成人14人が被験者となり行われた。

 被験者たちは、動物・建物・植物・道具・乗り物といった画像を記憶するテストに取り組む。

 そのときの脳の活動が電極を通じてモニタリングされ、記憶解読モデルがそれに対応する刺激パターンを作り出し、海馬を刺激する。

 その結果、参加者の記憶力が平均22%上がったという。

 これはそれほどすごい結果には思えないかもしれないが、記憶に障害がある人に限った場合、記憶力は40%近くもアップしたのだ。

 この結果は、脳を刺激することで「記憶を大幅に修正できる可能性」があることをはっきりと示すものだ。

 だがもっとも効果的だったのが記憶力が低下した人たちだったことを考えると、いずれは病気や怪我などによって失われた記憶を取り戻すこともできるかもしれない。

 「私たちの目標は、アルツハイマー病・脳卒中・頭部の外傷によって失われた記憶機能を回復する治療法を開発することです」(ウェイクフォレストバプティスト医療センター ブレント・ローダー氏)

 研究チームは、こうした記憶プロテーゼ技術の研究を何年も前から行なっており、その成果を2018年に発表している。今回の研究は、当時よりもっと細かい特定の物事の記憶に成功した点で、技術が改善しているのだという。

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記憶プロテーゼを実現するために必要なこと

 「記憶プロテーゼ」を実現するには、まだいくつかの課題がある。

 その1つは、神経活動が記録している映像の”要素”がよくわからないことだ。

 たとえば、木のある家の画像の記憶を強化するとき、研究者は家が主題の記憶として強化しようとしていたとしよう。

 だが、木の位置によって、主題の解釈が左右されることがある。また、その解釈が、見る人やタイミングによっても違ってくることもある。

 研究チームは今後、記憶解読モデルをさらに改良し、基本的な情報がどのように海馬に書き込まれ、検索されるのかの解明に取り組んでいくとのこと。

 また、ある個人の記憶パターンを利用して、別の個人の記憶を強化できるかどうかも試してみたいとのことだ。

 もしこれができるのなら、記憶プロテーゼは、すでにあるコードを”強化”するのではなく、脳にコードを”書き込んでいる”ことになる。

 こうした疑問の1つ1つが、記憶プロテーゼの実用化へと近づかせてくれるのだそうだ。

 この研究は『Frontiers in Computational Neuroscience』(2024年2月8日付)に掲載された。

References:New ‘Prosthetic’ Hacks The Brain to Recall Specific Memories : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 14件

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  1. 記憶が撮影した映像のように確かなものとは限らないものねぇ

    • +1
  2. いいことは思い出さずトラウマだけ思い出すものだと悲惨だ

    • +8
    1. >>3
      ♪忘れてしまいたいことが~ 今の私には多すぎる~
      ♪私の記憶の中には~ 笑い顔は遠い昔~

      • 評価
  3. 記憶を操作によって得られるメリットは素晴らしいものがあると思いますが
    一方で記憶を操作できる事のへの不信感も倫理の問われる研究であるかもしれませんね。
    人類にとって有益な技術となるように努めてほしいところ。

    ちなみにこの技術を応用して失われた髪を呼び戻す技術も開発されたら救われる人も多いでしょうね。

    • +1
  4. 本人すら忘れている記憶を呼び起こすことができる技術ができたとして、
    それが本当の記憶であるという証拠はあるのだろうか?
    これは記憶を呼び戻したのではなく、記憶を改ざんする技術なのではないか?

    • +4
    1. >>7
      当たり前だけど
      第三者が関わった記憶なら証明しようがある
      しかし本人しか知り得ない記憶は本人しか証明できないですね

      • 評価
  5. 凄い事なんだけど他人に自分の記憶を触らせるのにはまだまだ抵抗感あるわ
    流石に怖い

    • +2
  6. 思い出した記憶がパンドラの箱じゃなきゃいいけどね
    よく覚えちゃいないが「忘れることが出来た記憶」も沢山ある

    • +1
  7. 鍵閉めの様な毎日する動作は、運動神経が記憶して自然に処理するので
    脳の記憶に残り難いのだそうな

    • +1
  8. 「やめろ、それは思い出してはいけないことなんだ……!」黒歴史ドバァてなりそう

    • 評価
  9. 確かに写ってたんだ…
    俺の娘…
    まるで天使みたいに笑って…

    • +3
  10. 肝心な事だけ思い出せないのは何とかならんのだろうか?
    木とかどうでもいい。やったかやってないかが思い出せないのよ。

    • 評価
  11. うーんむしろ忘れたいことのほうが多いなあ

    • 評価

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