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誤った記憶はたった数秒で作られてしまうという研究結果が報告される

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(著) (編集)

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 人間の記憶は、思ったほど当てにならない ということは以前から言われていたが、新たな研究によると、記憶の間違いは、さっき起こったばかりのことなのに、ほんの数秒で形成される可能性があるのだという。

 どうやらこうした瞬時の記憶違いは、こうあるべきという私たちの期待、つまり「思い込み」で発生するようだ。

誰にでも起こりうる記憶の誤り

 過去数十年にわたって、私たち人間の記憶プロセスには重大な欠陥があることが明らかにされてきた。

 さまざまな研究によって、私たちの記憶は日常的に不正確であることは何度も示されている。

 他にも、ショッピングセンターで迷子になった、動物に襲われて恐ろしい思いをした、といった過去に経験していないことを、実際に起きたと簡単に信じこませることができることも、これまでの研究からわかってきた。

 悲劇なのは、後になって“思い出した”とされる誰かの記憶に基づいて、恐ろしい犯罪で告発されたり、有罪判決を受けたりする人さえいる。

 ただしこうしたケースのいくつかは少なくとも、最終的には有罪判決がくつがえされたり、告発者自身が自分の記憶が誤りだったとして撤回したりしている。

 記憶違いに関する研究のほとんどは、遠い昔の子どもの頃の強烈な出来事など、長期記憶に焦点を当ててきた。

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photo by Unsplash

短い時間で誤った記憶を作り出すことは可能なのか?

 だが、オランダ、英国、カナダの研究者チームは、短期記憶における潜在的な不確かさをもっと詳しく調べたいと考えた。

この研究は、ふたつの点でユニークなものです。まずは、わずか0.3~3秒前に起こったばかりの出来事についての記憶に重点を置いていること。

私たちは、本能的にこうした至近の記憶は、かなり信頼できると思いがちです

 アムステルダム大学の神経科学者で、論文著者のマルテ・オッテンは語る。

次に、自分の記憶が信頼できるかどうかを被験者に直接訊いてみました。彼らはどれだけ自信をもって回答できるでしょうか?

 研究チームは、これを調べるのに4つの実験を行うため、大勢のボランティアを集めた。まず被験者たちは、あるいくつかの文字の並びを見て、それが消えた後で特定のひとつの文字がどこにあったかを思い出すよう求められた。

 実験に使った文字は、ときに向きが逆になっていたりしたため、被験者は自分が回答した文字が正しいものなのか、反転してるのかを記憶しなくてはならない(例えば、正しく記憶した文字がcなのか、 ?なのか正しく識別するということ)。

 自分の記憶は正しいと回答に自信を持っていた被験者にとくに注目した。

多くの人が誤った短時間で記憶を作り上げていた●

 その結果、全体的に被験者たちは、特定の場合に定期的に文字を間違って記憶していた。

 定型の文字が示されたときの記憶は概ね正解で、不正解は10%前後だった。だが、反転した文字が出てきたときの記憶力は低く、不正解の割合は40%に増えた。

 さらに興味深いのは、思い出すのに時間がかかるほど、正解率が悪化した。

 例えば、とっさに思い出すよう求められると、不正解の確率は20%未満だったが、3秒後に回答させられると、不正解率は30%に上がったのだ。

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photo by Unsplash

先入観や思い込みが誤った記憶を作り上げる

 オッテンによると、発表された実験結果は、私たちの記憶は、その人の先入観によって即座に決定されることを示しているという。

 この実験で、被験者は正常な向きの文字が目に入ってくると思い込んでいて、反転した文字を誤って記憶するとは思っていない。

 しかし、反転された文字を見るといった予想外のことが起こったとき、自分が予想を誤ったことを認めないことが多い可能性がある。

 だが、こうした偏見は瞬時に始まるわけではないようだ。人間の短期記憶は、とくに素早く行動する必要があるときには優れているからだ。

思い出すまでにほとんど時間がなかったり、余計な視覚情報が追加されていることによって、記憶の信頼性が低下する場合は、まわりの世界に対する自分の内なる期待、つまり思い込みが影響を及ぼし始めるのです

 とオッテンは言う。

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様々な短期記憶の過ちを探し出し、人間の脳の構造に迫る

 もちろんこれは、 私たちの人生を通じて、かなり強化されてきた知識の断片(ここでは文字)に関わるひとつの研究にすぎない。

 だから、オッテンの研究チームは、ほかのやり方でも短期記憶の誤謬性をテストし続けたいと考えている。

個人的には、偏見やステレオタイプ、個人の信念などの社会的知識が、短期記憶に及ぼす影響を検証する方法を突き止めたいと思っています。

例えば、性別の違いによって私たちが他人にいだく思い込みは、すぐにも声や顔の表情などの記憶を形成し始めるでしょうか?

あるいは、特定のデータが気候変動についての自分の信念と合わないせいで、わずか数秒後に誤って記憶されるのでしょうか?

これは明らかに、いくつかの文字のようなものを見て記憶してもらうのよりも調査するのは複雑ですが、さらに研究を進めていきたいものです

 この研究は『PLOS ONE』誌に掲載された。

References:False memories can form in the human brain in just seconds / written by konohazuku / edited by / parumo

追記(2023/04/17)見出しを変更して再送します。

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この記事へのコメント 13件

コメントを書く

  1. 嘘をついているのではなく誤った記憶なものだから本人が虚偽申告している自覚がない
    とても困ったものでね
    しかもそういう人に限って「もしかしたら私は誤った記憶をしているかも?」って鑑みない

    • +1
  2. >誰にでも起こりうる記憶の改ざん

    今回のテーマは新規の記憶の誤りであって、記憶の改ざんではない

    意味が全く違う

    • -6
  3. 覚えようと意識してない限り記憶なんて大抵曖昧
    普通に暮らしてても自信持って答えられる事なんてそうない筈だけどなぁ

    • +4
  4. たとえば犯罪とかの虚偽じゃなくても、イヤな思いをした、とか人に対して良いイメージを持ってない時も昔からの思い込みや思考パターンでそう作り替えちゃうこともあるってことか。
    自分に対するイメージ然り。
    反対に良いイメージパターンを持っていたらどんなことの中にも幸せを見出せて、幸せな人生なのだろうなぁって羨ましいなぁって思ったりしたよ。
    ちょっと内容とずれてるかもしれないけど。

    • +4
  5. 思想の違いや好き嫌いで入ってくる情報の記憶のされかたも変わるからな

    • +3
  6. 似てる話題だとマンデラ効果がよく知られてるけど、あれもなんであんなに自信満々なんだろうね。
    その業界に詳しい人やそもそも制作・企業側はマンデらない、あやふやにしか覚えてない人間しか対象にならないって時点で、改変されてるのは世界じゃなくて自分の脳内だろとしか思えないんだが、絶対にこうだった!と強弁するのはすごい。
    自分もザビエルは巻襟つけてた記憶はあるけど、この記憶もなにかと混同して間違って覚えてるんだろうなとしか思わんし。

    • +2
  7. 「リアルタイムでは見えていない。人が今見ているものは、過去15秒までの視覚情報を平均化したもの」
    ↑こちらの過去の記事です。
    「先入観や思い込みが誤った記憶を作り上げる」とのことなので、↑の記事の研究も踏まえて考えるなら、先入観(文字が出てくる→変な向きで文字が出てくるとはイメージしていないので、正しい向きの文字をイメージ)を持つことにより、見た情報を捻じ曲げて記憶してしまうということですかねえ
    思考を脳内映像化するタイプの人とそうじゃないタイプの人とかでも差があるのか気になりますね

    • +1
  8. よくあるのは交通事故での記憶の改変ですね
    当事者は都合の良い事実のみを思い込む事で、わたしはぶつけられたと信じ込む
    証拠を出しても納得しないので長引く・・・ということでかなり厄介です。

    • +4
  9. 量子レベルで何らかの観測による過去の改変が生じ、この世界では無かったことになった事実がありえるんじゃないかと思う。

    • +1
  10. 自己欺瞞はメリットあるからね
    自分に都合の良いように自信満々に間違った情報を流布することはある状況で有利になる

    • +1
  11. 千と千尋の神隠しの幻のラストシーンを見たって信じ込んでる人が居る現象に似てるね。

    • 評価
  12. 交通事故おこすとよくわかるよ、自己の時の記憶がさっきのことなのにあやふやだからな。

    • 評価
  13. 記憶の捏造、改竄、AIの台頭、見ている世界は幻にすぎない、執着を捨てよ・・・
    等々、こういう話を聞いてると全てがどうでもよくなってくるな。
    我々は文明の終焉に立ち会っており、世界の終末が近いことを実感する。

    • 評価

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