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あなたの記憶があなたを欺く。誰もが起こりうる、脳によって捻じ曲げられた記憶の改ざん

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(著)

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 多くの映画やテレビドラマなどでよく取り上げられるテーマがある。記憶喪失や偽に記憶を植え付けられた主人公が奔走する話だ。だがこういった話はフィクションの世界だけに限定された話ではなく、私たちの日常にも大きく関係しているのだ。

 近年の研究により、私達が日頃見たり、聞いたりする情報は脳によって捻じ曲げられ、偽の記憶として私達の脳に残っている事が分かっているのだ。

偽の記憶:誰も逃れられない事実

 数十年にわたる研究により、偽の記憶はそう珍しい物ではないことが分かってきている。米カリフォルニア大学准教授シャーリー・ベルコウィッツ氏によると、我々は誰しも偽の記憶を作り上げているという。老若男女問わず、知能の高い低いにかかわらず、例外無くそれは起こるという。

「UCアーウィン・メモリー」の研究員であるローレンス・パティフィス氏が昨年行った研究によると、自己が経験・体験した全ての記憶を詳細に記憶できる特殊な能力「自分史記憶」を持った人々でさえも、偽の記憶を作り上げてしまっているケースがあることが分かった。

 この研究で判明したことは、自分史記憶の能力を持つ人々でさえ「見ていないものを作り上げてしまう」傾向があるということだ。

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 研究では被験者に単語が連続して登場する映像を見てもらい、その映像の中に特定の単語が存在したかどうかを当ててもらうというテストを行った。

 研究者が被験者に対して、映像で登場しなかった「寝る(Sleep)」という単語があったか?と聞くと、自分史記憶を持っている人もそうでない人と同じ割合で「登場した」と回答したという。(映像内では、「枕(Pillow)」「羽布団(Duvet)」「仮眠(Nap)」といった単語が登場した為、脳が偽の記憶を作り上げたのではないかと思われている)

 ローレンス・パティフィス氏はこの研究結果について、「偽の記憶を作り出しているのは、私達の知能に関係のない脳の基盤となる部分にあるのではないか?」と語る。

 特に偽の記憶を信じる人はそこに感情移入をする事で更に偽の記憶をあたかも真実であるかのように思い込んでい可能性があるという。

脳は再生ビデオテープではない。記憶は再構築される

 こういった結果は信じがたいものかもしれないが、ベルコウィッツ氏によると、多くの人が脳はビデオテープのような物だと勘違いしているそうだ。

 ベルコウィッツ氏は脳の記憶について、こう説明している。

脳はビデオテープの様なものではない。我々が記憶を紐解く時、脳は小さなヒントを元に過去の記憶を”再構築”している。つまり我々が何かを思い出そうとする時、常に新しい記憶を作り上げてしまっているのだ。多くの人が”過去の記憶を保持しておきたい”と願うあまり、この事実に目を背け、自身の記憶が絶対的な物だと信じてしまう。

全ての記憶を作り変えてしまう「リッチ・イベント」

 パティフィス氏によると、我々の偽の記憶は断片的な物ではなく、時に特定の出来事「全て」を作り上げてしまう事もあるそうだ。科学者はこれを「リッチ・イベント」と呼ぶ。

 こういった大規模な記憶の改ざんは科学者の手によって容易に書き替えられてしまうという。例えば最初に被験者にある体験をしてもらい、次の週にその体験を偽の情報を交えて被験者に語ると、被験者は自身の記憶を研究者の思うままに書き換えてしまうのだそうだ。

偽の記憶を埋め込む「スパイダーマシーン」

 今年の初め、マサチューセッツ工科大学は世界で初めてマウスの脳に偽の記憶を埋め込む事に成功した。

 その研究では、上で語ったような偽の記憶を口頭で伝えるといった手法を用いてはおらず、マウスの脳細胞を操作する事で偽の記憶を埋め込むことに成功したのだ。

 実験ではマウスの脳が電気ショックを受ける時、脳のどの部位が反応するかを確かめた。その後マウスを箱のある部屋に入れ、マウスが箱に入った瞬間にその部位を刺激する事で、マウスが「箱=電気ショックを感じる」という偽の記憶を作り上げたのだ。

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 しかしパティフィス氏によると「この研究によって行われた偽の記憶移植は”既存の記憶(電気ショックの痛覚)”を改変して行われている為、マウスが”全く体験したことの無い記憶”を植え付ける事は不可能であり、一から偽の記憶を作り上げるのは当分先になるのではないかと」と語っている。

記憶喪失

 「記憶喪失というのは基本的には脳が外部からの衝撃をが受けた場合に起こるものだが、極度の精神的苦悩によって引き起こされる場合もある」。そう語るのはジョンズ・ホプキンス大学の精神科・神経科教授ジェイソン・ブラント氏である。

 小説「The Maze Runner」の主人公は記憶喪失を持っており、彼は物語の中で「一般常識等は理解しているが、人の名前や顔を全く思い出せない」という症状を患っている。

 これは記憶喪失を持った患者の多くに見られる現象だが、ブラント氏によると、こういった患者の多くはある日突然記憶が回復する事があるそうだ。

 現代の科学をもってしても、記憶喪失の原因や治療法については解明されていない。つい最近、ポジトロン断層法(PET)を用いてやっとわかったことは、「記憶喪失患者の脳は物理的な外傷を受けていないにも関わらず、外傷を受けた痕跡に近い物がある」という事だけである。

via:livescience・原文翻訳:riki7119

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この記事へのコメント 43件

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  1. 夢が滅茶苦茶だったりするのもそういうことなのかな

    • +2
  2. 聞くところによると常に記憶を改ざんし続ける人達が世界に5000万人居るという。

    • +10
  3. 子供の頃に家庭内で虐待を受け、大人になってからありもしないキャラ設定をつくりあげているわ

    • +4
  4. つらい過去の思い出たちが偽の記憶だったらどんなに良いだろう

    • +8
  5. 俺が新垣結衣と結婚したのが偽の記憶だというのか!

    • -3
  6. 録画してるんじゃなくて自分の頭の中で再構築してるだけなのか
    これを根拠にされたら裁判とか色々まずそう

    • +5
    1. ※6
      だからこそ客観性のある証拠の提出が求められてるんだよ

      • +1
  7. 前世の記憶はどんなんだろうね
    言語や街の配置も無意識に改竄再構築してるのかね

    • +2
  8. 見た光景を正確に記憶する特殊な能力持ってる人達の場合はどうなってるのっと

    • +3
  9. 虐待されてた小学生の頃の記憶が、全部偽物だったら良いのになぁ……

    • +5
  10. 中学生ぐらいの頃、父と私と弟の三人で、あぜ道を歩いていた時がある。
    その時、左側から白い蛇が現れて、右の田んぼへと消えていった。
    「白蛇は神の使い」と言うくらいだから、なんだか素敵な物を見たと思ったもの。
    だが、数十年経った今、あれが現実だったのか夢だったのか、全く分からない。
    これも一種の記憶の改ざんなんだろうなぁ。

    • +1
    1. ※10
      それ嘘じゃない。よく夢を見たときにはいいことあると
      信じられている。親が経験したものだと急にお金めぐりがよくなったって
      またいいのか悪いのかわからんが、車につぶされた白蛇を発見した
      別に呪われることもなかったが、轢いた奴もだが蛇ちゃんも
      相当運が悪かっただろう

      • 評価
    2. 記憶の改竄は「ショッピングモールの迷子」実験が有名だね。
      ※10や※30や※45とかみたいに、
      あやふやな記憶を、周囲の人と擦り合わせる作業をするとき、相手の記憶と齟齬があった場合、「相手が正しい」「自分が正しい」という擦り合わせのなかで、
      相手が記憶違いしてたのに、その間違った記憶に擦り合わせてしまったり、否定されても自分の間違った記憶への信頼をより強固にしてしまったりして、どんどん改竄されていくらしい。
      胎児記憶や乳幼児期の記憶も、後から得た情報を再構成して作った記憶だと言われてるし。
      ※24とかにある「精神病は幼児期の(主に性的な)虐待が原因」とされた頃に、カンセラーが虚偽の虐待記憶を植えつけて、家庭崩壊に至ったケースが複数あって(被害少女の肉体には虐待の痕跡はまったく確認されないとか)、訂正されたはずなのにいまだに根強い。

      • +3
  11. オカルト体験の「私もあるある」は大半がこれじゃないかと思うんだ

    • 評価
  12. 同窓会に行くと記憶の食い違いに驚くよね
    おそらく俺も向こうもどっちも自分なりの記憶を作った結果なんだろうな

    • +9
  13. 自分の思い出に昔読んだ偉人の伝記が紛れ込んでたりするよな

    • +11
  14. 日常の体験全部の記録なんて到底出来ないから「似たような」ところは多分とっとと統合されるんだと思う、似てなくてもその当人の記憶の積み重ねで連想できるブロックとの連結とかね。
    一つの体験に対し付随する記憶が多ければ多いほど混乱が増す、それが記憶の改ざんなのだろう。

    • 評価
  15. 俺が語った持論を俺に熱弁されたときは流石にドン引きした

    • -1
  16. この研究を応用すればトラウマって簡単に克服できるんじゃ

    • +6
  17. 少し前から記憶は自分の中で書きかえられてるって研究発表があるよな。そういうのを目にするたびに、攻殻の「脳から16時間分の記憶を抜き出して」云々とかいうセリフを思い出してしまう。あれって正しい記憶(ビデオ録画並の)がちゃんと抜き出せているのだろうか?

    • +5
  18. 回路が焼き切れるのを防ぐためにその部分を本体から切り離したり迂廻路を作ったりしてるのかな。

    • +5
  19. アメリカで娘二人に性的虐待をしていた男が逮捕され、自白もしたが実際には虐待したことは無くて娘二人も男も思い込みだけで偽の記憶を作ってしまっていたという事件があったな。

    • +1
  20. 昔見た映画を久しぶりに見ると
    「このシーンってこんなんだったっけ!?」ってなる

    • +3
    1. ※23
      >「記憶喪失というのは(中略)極度の精神的苦悩によって引き起こされる場合もある」
      これ、経験ある。
      20年くらい前に郵便局強盗に遭った時。
      現場でお巡りさんに事情聴取をされたけど、全く思い出せなかった。
      ついさっきの出来事なのに全く思い出せない。頭真っ白。
      えっ?ついさっきなのに何で?!ってなった。
      お巡りさんには「よくあることだから、気にしなくていいですよ」と言われた。
      警察署に移動して、刑事さんに聴取されたら、思い出せた。
      怖いことがあった現場では思い出せず、
      安全な場所に移動したら思い出せたというのは、
      極度の精神的苦痛に関する記憶にロックがかかるからだと思う。

      • 評価
  21. こういう話が実際あるにしても、悪用する奴がいそうだな?!

    • +2
  22. 三歳位の時に、ある夢を見たらなぜか脳裏に焼き付いてしまい
    夢の登場人物である友達に何度も確認して
    ようやくアレは夢だと納得した事がある。
    今でも思い出すと、幼少時の記憶とその夢の記憶が同じ水準にあって
    アレは荒唐無稽さ故に現実ではない、という基準でしか
    夢だと判断できない。そん位リアルに脳内にこびりついている。

    • +4
  23. にせの記憶を再構築するのって大変そうだな
    それよりも妄想させて、それを真実と思いこませる方が簡単だったりして

    • 評価
  24. よくある「勘違い」とどう違うのかわからない

    • +1
  25. 短期間に単語を沢山見せて覚えさせた上で誘導尋問してたら困惑してしまうだけじゃないのか?
    マウスも偽の記憶と言うよりそう思い込むように仕向けてる気がするんだが…。
    あらかじめある記憶が実は全く違うと言われるのとはなんか違う気がする。

    • -1
  26. そういう事を聞くと、やっぱり我々はMATRIXの世界に生きているのかも知れないね。

    • +2
  27. 知り合いの境界性人格障害(バツイチ)の女性が、親や旦那、過去の旦那・恋人、知人友人の男女達をボロカスにけなして「私は出会い運が悪い。私は不幸だ」って被害を主張するけど「いくらなんでもそんな奴おらんやろ」って内容で俄かに信じ難かったけど、記憶が改竄されてるわけか
    あと、常に誰かと喧嘩してトラブって「私は全く悪くない。私は被害者」って愚痴ってる

    • -1
  28. デジャブも記憶と現実の刷り合わせかな?

    • +3
  29. 子供の頃見たアニメの結末
    最近見直せる機会があったのでワクワクしてみたら
    結末が記憶と全然違った・・・びっくりした。
    2回楽しめたから、まあ良いかw

    • -1
  30. 境界性人格障害は同じく人格障害親から虐待受けたケースが多い(自分の親がそう)
    実際、普通では考えられないような酷い目に遭ってたのかもね
    問題意識、知識、病識があればカウンセリングとか自分から行くけど(自分は行った)、まあ大概自覚ないから、周りが被害被りがち、そして時間も金もかなりかかる
    本当に気の毒だが、素人の手には負えないよ
    自分は、人格障害はやんわり遠ざけて関わらないことにしてる、本当にこっちの神経がもたない

    • +1
  31. 近年の脳・認知科学や心理学の分野では 認知・記憶に関する驚くべき事実が 実験を通して明らかになりつつある. このスレもその一つだと思う. 記憶は変質をしていく前に, ある体験をした瞬間からすでに現実を反映しない記憶として,刷り込まれる可能性があるし,他人の体験を自己のそれとして思い込んだり,無意識に都合のよい記憶に改ざんしたりするという.(ヒラリー・クリントンの戦争体験演説など)
    さらに目前のものが見えないという「非注意による盲目現象」が明らかになったことで,初めて「見る」という行為が実は脳でなされていることが判明した.(見えないゴリラ実験・愛媛丸沈没事故での米艦長証言など)
    このような人間の認知や感覚に対する不確実性を目の当たりにすると,我々が認識している世界とは一体何なのかと考えてしまう.そこには錯覚や誤解・偏見が渦巻いているのだから.
    これらの事例から導かれる帰納的教訓は実に平凡なものになる. すなわち よく確認した上で,ものごとを頭から決めつけない という極めて歯切れが悪く 更に迷いを誘発するが如き言葉である. だがこのサエない教訓を忠実に実行したところで,完璧な対策にはほど遠い上に,決断のスピードは大幅に落ちるか,できなくなってしまう.
    人間は考える葦であるかも知れないが,同時に迷える子羊でもあるようだ.

    • 評価
  32. 幼稚園の頃、父と母が料理をしていて、フライパンがひっくり返って
    二人とも腕にやけどをしちゃったことがあって
    長い間塗り薬を付けてたことが記憶にある。
    当時自分はかなり両親を心配して、しかもその塗り薬がキツイ臭いだったから
    かなり印象に残った。
    でも先日「私が小さい頃こんなことあったよね?」って聞いたら
    父も母もまったく覚えてなかった
    かなりの面積の大やけどだった気がしたんだけど
    今思うと油がちょっとはねただけだったのかもしれないな
    記憶って全然頼りにならないね。

    • +1
  33. なんの脈絡もなく20年前のふとした日常のひとコマを思い出すことがあるわ。

    • +2
  34. おれ おれじゃな い
    きおく くさ て おちた
    いったい どう な て 

    • 評価
  35. 記憶という呼び方は
    人間の証言をファイリングしたものだ
    改ざんというものは証言させた後記録が改ざんされた事を言う。
    人間の記憶の改ざんとはそういうものだ
    人間は生きているためそういう物質的な改ざんはできない

    • 評価
  36. 自分の記憶を他人が「改竄されたものだ」と判定する根拠はなんだ?
    真実は自分しか知らないようなことをどうやって「その記憶が改竄である」と判断するんだろうか。
    実際に脳自体を調べると解かるってことなのか?
    膨大な記憶のなかのどれが本当の記録である記憶で、どれが記録ではない改竄だと?

    • +5
  37. 事件事故の目撃証言も当てにならないというかすべて正しいわけではないらしいもんね
    大半の人が犯人はグレーの服を着ていたと証言したのに実は違った、みたいなこともあると何かで見た

    • +2

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