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米国初となる窒素ガスによる死刑執行がアラバマ州で許可される

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(著) (編集)

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pixabay
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 アメリカでは州により死刑制度が異なり、死刑を廃止している州もあれば、死刑の執行方法も州により異なる。

 全体の88%は薬物注射によるものだそうだが、薬物刑に使用する薬の不足が問題となっており、死刑が延期になるケースが相次いでいる。

 2015年以降、死刑執行法の改善を目指すためにオクラホマ州、アラバマ州、ミズーリ州では「窒素ガス」を新たな選択肢に加えてきたが、まだ実際に使用されたことはない。

 今回アラバマ州は、窒素ガスによる死刑執行が正式に使用許可された。これにより米国内初の窒素ガスを使った処刑を行う州になる可能性があり、刑事司法制度にとっては画期的な出来事となるという。

Alabama plans to use nitrogen gas to execute man who once survived botched execution

1988年に殺人事件で有罪判決を受けた男

 現在58歳のケネス・ユージン・スミスは、1988年にアラバマ州を震撼させた伝道師の妻の嘱託殺人事件で有罪判決を受けた2人の男のうちの1人だ。

 検察によると、スミスともう一人の男はそれぞれ1000ドル(約15万円)を支払われ、多額の借金を抱え保険金の回収を望んでいた夫に代わってエリザベス・セネットさん(当時45歳)を殺害したという。

 セネットさんは1988年3月18日、アラバマ州北部コルバート郡にある夫チャールズ・セネット・シニアと同居していた家で死亡しているのが発見された。

 検視官は、セネットさんは何度も刺されていたと証言した。

 裁判資料によると、当時教会の牧師だった彼女の夫は、殺人事件の捜査が彼を容疑者として焦点を当てたときに自殺したそうだ。

 スミスの1989年の最初の有罪判決は控訴審で覆された。彼は再審にかけられ、1996年に再び有罪判決を受けた。

 陪審は11対1で終身刑を勧告したが判事はこれを覆し、スミスに死刑を宣告した。アラバマ州では現在、死刑判決について裁判官が陪審の決定を覆すことは認められていない。

 この事件で有罪判決を受けたもう一人の男、ジョン・フォレスト・パーカーは2010年に死刑が執行された。

 アラバマ州のスティーブ・マーシャル司法長官は、10日の判決を賞賛し、「ケネス・スミスが犯した凶悪な嘱託殺人の責任を問う」ことに近づいたと声明で述べた。

スミスは35年以上にわたって合法的な死刑宣告を免れてきたが、今日、裁判所がスミスの憶測に基づく主張を退けたことで、最終的に正義を見届けるための障害が取り除かれた。

死刑執行方法となる窒素低酸素法

 州の計画では、スミスの鼻と口に人工呼吸器型のフェイスマスクをかぶせ、呼吸可能な空気を純粋な窒素に置き換えて酸素不足で死亡させることになっている。

 アラバマ州、ミシシッピ州、オクラホマ州の3州は、窒素低酸素法を死刑執行方法として認可しているが、これまで使用した州はない。

 スミス被告の弁護士は、この新しいプロトコルは未知の問題や潜在的な問題をはらんでおり、残酷で異常な刑罰を禁止する憲法に違反すると主張した。

 連邦地裁判事は、窒素低酸素による死刑執行が新しい方法であることは認めたが、現在国内で最も一般的な死刑執行方法である致死注射も、かつては新しい方法であったと指摘した。

 同判事は、アラバマ州のプロトコルのもとではスミスは理論的には苦痛を伴うリスクを示したが、そのリスクは違憲の違反には至らないと述べた。

スミスは苦痛のない死を保証されているわけではない。

この記録では、スミスは残酷で異常な刑罰を課しており、一般的な法的枠組みでは憲法違反であることをスミスは示していないし、裁判所も結論づけることはできない。

またこの方法は、スミスが死に至るまで長期に渡ってさらに強い苦痛を与える可能性が高いと判断するに足る十分な証拠がない。

 スミスは以前にも死刑が執行されようとして生き延びた。

 アラバマ州矯正局は2022年にスミスに致死注射を行おうとしたが、当局が2本の静脈ラインを接続できなかったため中止になったという。

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pexels

窒息ガスによる死刑執行には批判の声も

 スミスのスピリチュアル・アドバイザーで、死刑執行の間スミスと一緒にいる予定のジェフ・フッド牧師は、この判決に悩まされていると語った。

恐怖というのは控えめな表現です。アラバマ州は今、連邦裁判所から市民を窒息死させる許可を得ているのです。

 国連人権理事会が今月初めに任命した専門家たちの見解では、この処刑方法は拷問その他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける刑罰の禁止に違反すると警告している。

 10日の判決は、去年12月に行なわれた法廷での審問と、スミス被告とアラバマ州側の弁護士が窒素ガス暴露による死の危険性と人間らしさについてそれぞれ異なる説明を行なったことを受けたものである。

 州司法長官事務所は、酸素が奪われることで “数秒以内に意識がなくなり、数分以内に死に至る “と主張していた。

 この新しい死刑執行方法を、窒素ガスにさらされてすぐに意識を失い死亡する産業事故と比較したのである。

 しかしスミス側の弁護士は、アメリカ獣医師会が2020年の安楽死ガイドラインで、窒素低酸素は豚には容認できる安楽死方法だが、他の哺乳類には容認できないと記している。

 同弁護団はまた、鼻と口を覆うガスマスクはスミスが声を出して祈ったり、死の部屋での最後の声明を出したりするのを妨げると主張したが、検事総長はこれらの懸念は推測に過ぎないとした。

 ただし、アラバマ州の刑務所システムは、スミスの精神的アドバイザーが、死刑執行の直前まで彼と共に祈るなどの心のケアができなくなるという懸念を解決するため若干の変更に同意した。

 処刑当日は、アドバイザーがスミスの顔にマスクがつけられる前に死刑執行室に入り、スミスと一緒に祈ることができるという。

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pexels

アラバマ州が国内初の窒素ガスによる死刑執行実施となるか

 1月10日、アラバマ州の連邦判事は今月末に受刑者を窒素ガスで死刑にすることを認める判決を下し、受刑者の弁護団が残酷で実験的だと批判する新しい方法による全米初の死刑執行への道を開いた。

 連邦地裁判事は、1月25日に予定していた窒素低酸素法による死刑執行を停止する弁護団の仮処分申請を却下したのだ。

 これにより、1月25日に同州のケネス・ユージン・スミス受刑者の死刑執行が予定された。

 スミス受刑者の弁護団は、「以前、アラバマ州で致死注射による死刑執行を試みて一命を取り留めたスミスを、まだ試されていない死刑執行方法の「実験台」にしようとしている」と批判し、ロバート・グラス弁護士はこの決定を不服として控訴すると述べている。

 そのため、死刑執行の可否は連邦最高裁判所で争われる可能性があるようだ。

追記:(2024/01/17)本文を一部訂正して再送します。

References:Federal judge says Alabama can conduct nation’s 1st execution with nitrogen gas; appeal planned/ written by Scarlet / edited by parumo

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この記事へのコメント 25件

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  1. 可能な限り議論を尽くすべきだと思う。それを怠った刑罰に正当性はない

    • -15
    1. >>1
      どんな議論もどこかで折り合いをつけるしかないんだよ
      でないと永遠に議論だけ続くことになる
      それはなにもしていないのと同じや

      • +5
      1. >>35
        永遠に続けろと言う意味ではないでしょ
        既に実行されている他の方法がある以上

        • +1
        1. >>42
          新たな方法を取り入れないと変化し続ける時代に取り残されるだけ。
          結果、問題しか出てこない。
          どこかの州みたいに刑務所が定員オーバーとか、学校よりも刑務所が多いとか…
          いつまでも時代錯誤の法律では一般人への被害が増える一方だ。

          • +2
  2. この笑顔の人は死刑囚なのか司法長官なのか、どっちにしても良い笑顔すぎて違和感が・・

    • +2
  3. 注射で使う薬も高かったり製薬会社が抗議で用意しなかったりするからガスはいいと思う
    多少の苦しみ云々はしゃーないて

    • +19
  4. セネットさんの時より楽な死に方なら十分温情かと

    • +31
  5. 方法はフェイスマスクを被せるだけで、窒素なら漏れたりしても安全。
    今までの方法より利点は多そうだな

    • +14
  6. 窒素ガスによる死亡事故って結構多いからわりと簡単に死んでしまうやり方ではあるんだよね。

    • +7
  7. こっちの方が安上がりでいいじゃない。

    • +10
    1. >>17
      死ぬ迄時間がかかる(ただし意識はすぐになくなる)のと、極々たまに窒息死判断された後に蘇生する例もあるんだよね。
      薬だと蘇生の可能性がほぼ0にできるのでこの辺りに窒息死による刑の執行が廃れていたのかもしれない。

      • +2
      1. >>19
        どこだったか忘れたけど、死亡認定後に蘇生すると受刑者は死刑が完了したあとなので犯罪者として扱えず開放するしかなくなるってあった気がする。そういった事態を避けるためにも確実に死ねると断定できるまでは本採用は難しいんだろうね

        • +1
  8. アメリカらしく銃を使えば安上がりだと思うんだが

    • +2
  9. 何度も刺されて殺されたセネットさんに比べればこの方法優しいくらいじゃろ

    • +25
  10. >理論的には苦痛を伴うリスク

    苦痛を伴わない刑罰の方がおかしい。
    真剣に言うが、「犯した殺人と同じ方法での処刑」ほど公平で公正なものは無い。
    今回の場合のように滅多刺しなら、こういう時こそ、AIロボットを使えばよい。

    • +4
    1. >>27
      >真剣に言うが、「犯した殺人と同じ方法での処刑」ほど公平で公正なものは無い。

      殺人事件での殺人って様々な殺し方があるだろうけどをイチイチ再現するの?
      人道的問題が一番だが、それを抜きにしてもコストや労力がかかりすぎるよ
      それを解決できるほどAIやロボットはまだ進歩してないし

      • +1
      1. >>32
        真面目に考えちゃうと
        現場検証で立ち会う時とか取り調べで手口を過小に申告するだろうなw
        真相究明が遠のく上に
        誰かに同じ手口で犯人役をやらせるという…
        PTSD待ったなし

        • +1
        1. >>43
          過小申告しない犯罪者なんて稀だと思うけど?
          それに、殺人を請け負う人がいるんだから人材には事欠かないだろう。

          • 評価
  11. 「死刑執行はひどい」って反対してる人たちって、
    ヤツらに殺されたり、ケガを負わされて心も体も傷ついたまま生きていくことになった人たちの苦痛・苦悩とか、
    その苦痛を一緒に抱えて行かなきゃならない被害者の家族とか、
    そういう人達のことはすっかり忘れてモノを言うよね

    死刑施行まで刑務所の中とはいえ、予告もなく殺された人たちよりは前もって準備する時間もあるし、
    少々の苦痛だけで死なせてもらえる方がはるかに被害者たちよりラクな思いできるのに、
    文句言いすぎだよ

    • +17
  12. 液体窒素に放り込めば刑と遺体保存用の冷却が一度に済むうえ
    苦痛時間も極力減らせるのに

    • +2
      1. >>44
        フライヤー方式で網を入れたプールで解決

        • 評価
  13. 窒息死が惨酷?
    なら被害者と同じ死に方させようぜ
    複数被害者がいるなら一番しんどい死に方で

    • +7
  14. 被害者と同じ死に方は公平だけど執行する人の精神的負担がきついし、それが平気な執行官はサイコパスで怖いし。
    後処理が楽な血が出ない方がいいし。でも臓器等は有効利用できてほしい。

    窒素と二酸化炭素、感じ方は変わるんだろうか。

    • 評価

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