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海の神秘。摩擦が海産動物「ホヤ」の体を形成させていた

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(著) (編集)

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 「海のパイナップル」とも呼ばれている尾索動物のホヤは、まず最初に摩擦力によってその形状が作られることが判明したそうだ。

 陶芸家は手で粘土に摩擦を起こして、あらゆる形を創造するが、ホヤの「卵母細胞(未成熟な卵細胞)」が受精してからのプロセスは、これに例えることができる。

 『Nature Physics』(2024年1月9日付)に掲載された研究には、受精した卵母細胞が、摩擦を利用して内部のさまざまな区画を変化させる興味深いメカニズムが紹介されている。

ホヤは脊椎動物に近い海の動物

 海にはさまざまな奇妙な生物が暮らしているが、2000種以上が知られる「ホヤ」もまたそうした仲間たちだ。

 尾索動物亜門ホヤ綱に分類されるこの生き物は、一見したところ植物にも思えるが、れっきとした海の動物だ。なにしろ幼生はオタマジャクシのような姿で、泳ぐくらいだ。

 だがやがて岩などにくっついて動かなくなる。それでも体内には、動物らしく心臓・神経節・消化器官・生殖器官といった器官がある。

 そして意外にも、私たち脊椎動物に非常に近い存在でもある。体の作りが単純で、成長が早いこともあって、私たち人間を知るためのモデル生物としてもよく利用されている。

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緑は「細胞皮質」、青は「筋形質」を染色したもの。細胞皮質との摩擦によって筋形質にシワがよるのがわかる/Credit: c Caballero-Mancebo et al./Nature Physics

ホヤは摩擦力を利用していた

 オーストリア科学技術研究所などによる今回の研究では、このホヤの不思議な発達プロセスにスポットライトを当てている。

 それによるとホヤの「卵母細胞」(未成熟の卵細胞)は、摩擦の力をうまい具合に利用しているのだという。

 動物の卵母細胞は一般に、精子と受精すると「細胞質」(細胞の核以外の部分)が再編成されて中身や構成が変化する。これは胚がその後にたどる発達の青写真となる大切なプロセスだ。

 そしてホヤでは、この再編成によって、「収縮極(contraction pole)」という釣鐘にも似たふくらみが形成され、そこに胚の成長に必要な材料が集められる。

 だが、どのような仕組みでこのプロセスが起きるのか、これまで詳しいことはわからなかった。

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photo by iStock

 今回の研究のメインテーマがその仕組みだ。

 そして研究チームが受精したホヤの卵母細胞を顕微鏡でのぞき込んでじっくり観察すると、収縮極が作られるまでのプロセスはかなり再現性が高いことがわかったのだ。

 卵母細胞が受精すると、細胞膜の下にある「細胞皮質」が緊張して収縮する。それによって生じる流れが、細胞に最初の形状変化を起こす。

 ところが収縮極がふくらもうとする途中で、こうした流れは止まってしまう。このことから、収縮極の形成にはまた別の原動力があるだろうことがうかがえた。

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下の方にできる釣鐘状の膨らみが「収縮極(contraction pole)」/Credit: cCaballero-Mancebo et al./Nature Physics

摩擦は細胞や生物の形状を決めている

 そこれで研究チームは、それ以外にもこの収縮極の成長に関係していそうなものを探した。そして見つかったのが、ホヤの卵細胞の下のところにある「筋形質」という層だ。

 この層が、伸び縮みする固体のように振る舞い、卵母細胞と一緒に形を変える。おかげで細胞皮質が流動するときの摩擦によって、筋形質にいくつものシワがよる。

 やがて細胞皮質の動きが止まり摩擦がなくなると、今度は筋形質のシワがほどけて、はっきりとしたベル状のふくらみが形成される。こうして収縮極が広がるのだ。

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収縮極の形成プロセス。一番左は未受精卵。そこから右へと収縮極が形成されていく/Credit: c Caballero-Mancebo et al./Nature Physics

 この研究は、摩擦という機械的な力が細胞や生物の形状を決めていることを示す、まったく新しい発見だ。

 それは摩擦力が生物を形作るうえでとても大切であることを示している。だが摩擦が胚の発生プロセスで果たす役割については、ようやく理解され始めたばかりだ。

 ひとまず海の珍味でもいただきながら、研究者が新しい発見をするのを待つとしよう。

追記:(2024/01/27)本文を一部訂正して再送します。

References:Friction forces determine cytoplasmic reorganization and shape changes of ascidian oocytes upon fertilization | Nature Physics / Stranger than friction: A force initiating li | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 13件

コメントを書く

  1. 人類初ホヤを食う心境になった人の心境に
    よっぽど飢えてたんだなと同情したい

    • +4
    1. >>2
      ホヤってプリプリしてて普通においしそうに見えるんだけど

      • +3
    1. >>4
      富山湾なんかに群生するオオグチボヤは
      ポケモンのヌオーの口の部分というかムーミンの口の部分というか
      そんなのもいるよ

      • +2
  2. 人工子宮などでなるべく摩擦を与えずに生まれた人間も、遺伝子に関わらず美男美女になる可能性があるってこと?

    • +2
  3. よう食べる気になったなこれを

    見た目で嫌悪してるけど、食べてみると美味しいのかな?

    • 評価
  4. 無脊椎動物でも、よっぽど動物っぽい奴もいるっていうのに、
    脊椎動物に近いくせになんでこんな格好してるんだろうね、ホヤ。

    • +6
    1. >>12
      同じ原索動物でも魚っぽい見た目のナメクジウオよりホヤの方が脊椎動物に近いというからわからん

      • +5
    2. >>12
      虫貝系統の旧口動物にもフジツボみたいな固着タイプがいるし、我ら新口動物にホヤが居てもいいだろう
      新口旧口分化以前のクラゲ系統にもイソギンチャクみたいな固着タイプがいるし、クラゲ以前の海綿に至っては固着タイプしかおらん
      隙あらば固着したいんだ動物は。ワイも椅子に半固着してるしな

      • 評価

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