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ネアンデルタール人は現在よりも2倍も大きなゾウを集団で狩っていた

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(著) (編集)

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まっすぐな牙をもつ巨大ゾウを倒すネアンデルタール人の予想図 / image credit: Alex Boersma/PNAS
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 ネアンデルタール人が過去に考えられていた以上に大規模な狩猟を行っていたようだ。

 2万5000年前のドイツで、ネアンデルタール人が現代のゾウの2倍も大きなゾウを集団で狩って倒していた証拠が明らかになったのだ。

 これまでも、ネアンデルタール人の優れた狩猟技術に関する研究結果が報告されていたが、今回の研究はそれを裏付けるものとなった。

 この発見はヨーロッパにおける彼らの社会組織力に新たな光を当てるものである。

12万5000年前に絶滅した巨大ゾウの骨に残された切断痕

 ネアンデルタール人は、現在のアフリカゾウを上回る、当時最大の陸上生物を狩ることができる優れた能力をもっていたようだ。

 私たちホモサピエンスのもっとも近い親戚の中でも、前例のないほどの組織力と勇気をも兼ね備えていたと思われる。

 『PNAS』(米国科学アカデミー紀要)に掲載された新たな研究によると、この事実は氷河期と氷河期の間の間氷期に、ヨーロッパのネアンデルタール社会に重大な影響を及ぼした可能性があることを示している。

 今年始め、MONREPOS考古学研究センターのザビーネ・ガウジンスキ=ヴィントホイザー教授とそのチームが、ドイツのノイマルク・ノルド遺跡で、およそ12万5000年前にさかのぼる絶滅した直牙ゾウ「パレオロクソドン」に属する「パレオロクソドン・アンティクウス(Palaeoloxodon antiquus)」の骨に、切断痕が残されているのを見つけた。

 最初の観察では、掃除屋生物による死肉処理痕と思われたが、現場に処理された大量の骨が残されていたため、これは狩猟の痕跡ではないかと研究者たちは主張した。

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パレオロクソドン・アンティクウス(Palaeoloxodon antiquus)の大きさと人間を比較した図。肩の高さは最大3.81~4.2m、体重は推定11.3~15トンに達していた / image credit:Asier Larramendi / WIKI commons

ネアンデルタール人が集団で巨大ゾウを狩っていた

 この発見により、ノイマルク・ノルドが巨大ゾウを狩るのに固有の場所なのか、それともこうしたゾウ狩りがもっと広い範囲で一般的に行われていたのかについての調査が行われることになった。

 ドイツ東部のグレーベルンとタウバッハでみつかったパレオロクソドンの骨を調べたところ、3組の骨に共通点があることがわかった。

 すべておよそ12万5000年前の最終間氷期のもので、現在と似たような気候だった。

 グレーベンで見つかったゾウの骨は1体のみ、タウバッハの切断痕のある骨は17点だけと、サンプルの数が限られているにもかかわらず、このふたつの遺跡が驚くほど似かよっていることは、この特定の期間にネアンデルタール人が一貫して巨大ゾウ狩りに関わっていたという、説得力のある証拠を示している。

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グレーベルンで見つかった巨大ゾウの骨盤 / image credit:Lutz Kindler/PNAS

「ノイマルク・ノルドと同じような狩りのパターンが、このふたつの集団でも認められたことから、最終間氷期の初期において、ネアンデルタール人によるゾウの利用が広く行われていたことが明らかになった」と論文著者は書いている。

成獣のゾウを標的にすることでコミュニティ全体の食事を賄う

 見つかったゾウの骨の大半が成獣であったことから、いわゆる壮年期の個体が優先的に狩りの対象だったことがわかる。

 論文著者たちは、体重が13トンもある巨大ゾウを1頭丸ごと処理することの重要な意味を強調している。これは、1日分のカロリーを2500食分以上もまかなえることになるからだ。

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ドイツ、ハレの国立博物館にある巨大ゾウの等身大の復元像と、身長160cmのザビーネ・ガウジンスキ=ヴィントホイザー教授 / image credit:Lutz Kindler/PNAS

ネアンデルタール人は大きな集団を作っていた可能性

 この発見は、ネアンデルタール人がさばいた大量の肉と脂肪を貯蔵する能力をすでに持っていたことを意味していて、彼らがこれまで考えられていたよりも、もっと大きな集団を一時的につくっていたのではないかというシナリオを示している。

 こうした見方は、ネアンデルタール人が大量の資源を獲得、処理、貯蔵することを可能にする、複合的な要因が関わっている可能性を高めている。

 タウバッハで見つかった骨の歯型から大型肉食動物の存在もうかがえるが、まれな例であるため、ネアンデルタール人が長期にわたって、こうしたライバルをうまいこと退けていたことを意味する。

 グレーベルンやタウバッハに限ると、死んだばかりのゾウを偶然に見つけた可能性というのもあるが、ノイマルク=ノルドの例と合わせて考えてみると、この温暖な時代における狩猟が、この地域のネアンダルタール人の特徴的な活動だったという説がより現実的なものになる。

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タウバッハで見つかったパレオロクソドンの骨の疵跡 / image credit:Sabine Gaudzinski-Windheuser/Lutz Kindler/PNAS

ゾウの利用と貯蔵の課題

 ネアンデルタール人にとっての巨大ゾウ狩りが、利益を最大化することを気にせずに行われた単なる究極のスポーツではなかったとすれば、これほどの巨大な生き物をどのように活用したのか、という疑問が生じる。

 計算してみたところ、たとえ特別な巨体をもつ個体でないとしても、パレオロクソドン一頭で、ネアンデルタール人の1日の必要カロリーの2500倍という驚異的な量を満たすのに十分な肉を確保できるという。

 しかし、生肉はたとえ冬であっても腐りやすいため、大量の肉を保存しておくのは困難だ。

 ネアンデルタール人は、現在の私たちでも知らない保存技術を知っていて、それをとっくに実行していたのか、あるいは、大量の肉をすぐに消費できるほどの大人数が集団をつくっていたのか、という仮説が出てくる。

 この疑問は、ドイツにおけるネアンデルタール人社会に対する私たちの理解を、再構築しなければならない可能性がある。

 本研究の論文は、真実はこうした可能性が組み合わさった結果である可能性が高いことを示している。

 当時、運搬方法は限られていたはずなので、少人数のグループが大量の肉をどこかへ運んだというのは現実的ではない。

 もし、保存行為が関係しているのなら、ネアンデルタール人たちが手に入れた肉を十分に活用するためには、長期間みんなが近くにいなくてはならず、彼らが恒常的な遊牧生活ではなく、定住生活を送っていたのではないかとも考えられる。

References:Widespread evidence for elephant exploitation by Last Interglacial Neanderthals on the North European plain | PNAS / Elephants Twice The Weight Of Mammoths Were Hunted By Neanderthals 125,000 Years Ago | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 26件

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  1. 象の骨からだけでは狩猟とは断定できないよね

    たまたま老衰死した象を見つけただけかもしれない

    • -7
  2. 一週間後に来てください。本当の象を食べさせてあげますよ

    • 評価
  3. マンモスとかナウマンゾウとか食べてたって話だけど
    動物園にいるアジアゾウを見てあれ食っても美味いのか?って考えることもある

    • +5
  4. いくら巨大でも数揃えたら普通に勝てるよなぁ

    • +4
    1. >>4
      獲物に抵抗されて、踏まれたり蹴られたり鼻で拘束されたり……
      鼻で凪ぎ払われたり突進されたり、牙で突き上げられたりして
      返り討ちに遭ったお仲間が、何人かいても可笑しくないかも💧

      • -1
      1. >>19
        そこはアトラトルを使った高所からの投げ槍とかである程度間合い取ってたのではないかと。
        何でかというと、投槍器使った運動エネルギーや重力利用せずに腕力で槍刺すとか逆に難しいと思うので。

        そんでも怒った象にぶっとばされて踏まれる被害は確かに防ぎきれないかも。

        • +1
  5. ゾウの肉ってどんな味するんだろう。
    硬そう。

    • +5
    1. >>5
      そう、当時どんな刃物つかって捌いたんだろうね?
      石器って作るのに時間かかるのにすぐ壊れるし。
      象の表皮ってライオンの牙をもってしても例えるなら「人間に丸のままのスイカをそのままかじって食べてください」って言ってる様なものだと言われるくらい強固なはずなんだわ。

      • 評価
    1. >>6
      そんな人類が作った社会に寄生しているのが君だよ
      社会になんのプラスも与えずにマイナスしか無いのが君の存在

      • +4
      1. >>10
        辛辣で草
        まぁ上から目線で人類を批判する人は、人類の恩恵にどれだけあやかってるかわかってないからね

        • +3
    2. >>6
      狩猟して他の生物を食うことがそんなに悪いのならライオンもシャチも悪ってことになっちゃう。
      当時の生物のほとんどを死なせる酸素を生み出しまくったシアノバクテリアは究極の環境破壊者だね。
      人間の価値観で人間自身を見下してみても得られるのは間違った優越感だけだよ。

      • +2
    3. >>6
      流石に今の環境破壊の規模に比べればこの頃なんて何でもないと思うわ

      • +1
  6. 大型の哺乳類を狩るには罠猟になるんだけど、象となると罠に掛けるとしても少人数では無理なんだよね。
    おそらく地形的に象が動きくい場所に追い込んで狩っていたと思われるんだけど、それでも大人数で組織的・計画的に狩猟してたんだと思う。
    切断痕が共通しているということなので解体作業のノウハウが共有されていた可能性が高く恒常的に狩りが行われていたことになる。

    できれば、もっと詳細な骨の状況を知りたいなあ。
    肉を骨から削ぐ時にできる傷跡が多くの骨から見つかれば大人数で狩猟を行っていた決定的な証拠となるはず。
    あと、骨の見つかった場所の周りの地形ももっと知りたい。罠の場所がそのまま解体場所のはずだし、居住に適した場所なら近くに罠に適した地形があるかもしれない。

    • +5
    1. >>8
      落とし穴を使った狩りももちろんあるけど
      普通に大勢で追いかけて槍を投げまくる方式もある。
      マサイやピグミーなんかはこの方法でゾウも狩ってた。

      • +3
  7. 身体能力に(もしかしたら知能も)劣るホモ・サピエンスがネアンデルタール人に勝てたのは「家族や仲間」を越えた「我々」みたいな抽象概念を扱えるようになったことで顔も知らない他人と大集団を形成できたからだみたいな説を読んだことがあるけど、この量の肉を腐らす前に消費できたネアンデルタール人も案外大きな集団を形成できたのかもな。
    まあ美味いとこだけ食ってあとは放置してたかもしれんが。

    • +3
  8. 集団でマンモス解体して食べてた証拠ではあるけど、狩をしていた証拠ではないような?

    • -4
    1. >>12
      最初は弱ったゾウや死んだゾウをみつけて食べたのだろうけど
      そんなゾウが常に見つかるわけではないので、当然狩るだろうと…

      >>13
      打製石器にしろ磨製石器にしろ、思ったより切れることは実証実験で判明している
      そしてあれば黒曜石などを使用したナイフもかなり鋭利なので、解体にはそういったものを使っていたと考えられる

      • +6
  9. 大勢で狩りをし、巨大な獲物を解体して分配する。もしくは保存のために加工する。かなり社会性が高くないとできない作業だな。

    • +4
  10. 一年に一度あるかないかの祭りだったんじゃないかな。巨大マンモスを共同で狩ることで狩猟対象動物の繁殖祈願や縄張りの異なる他部族との関係性の確認といった宗教的かつ社会的な機能があったんだと思う。

    • 評価
  11. リアルの進撃の巨人狩りかモンスターハンターの世界。

    • +1
  12. 人類が陸上大型哺乳類の大半を滅ぼしたとは言われてるね

    • +1
    1. >>21
      日本でもナウマンゾウの消滅には人間の狩りがトリガーになっていると言われていますねぇ

      • +2
      1. >>24
        ハナイズミモリウシやヤベオオツノジカやオオヤマネコなども人間によって絶滅したって言われてる。

        • 評価

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