
脳の活動は、食べ物の見た目だけでなく、空腹感・食べ物の好み・その時の心理状態など、さまざまな要因によって左右される。にもかかわらず、脳は目の前のものが食べ物であると一瞬で見抜くのだという。
オーストラリア、シドニー大学のトム・カールソン氏は、「食べ物かどうか見分けるうえで、視覚が重要な役割を果たしていることを考えると、これは予想外のこと」と述べている。
確かに視覚からの情報を脳で認識するまでの時間は今回の研究結果によると、かなり早いということになる。
脳は食べ物をどうやって見分けているのか?
まだ狩猟採集生活を送っていた私たちの祖先は、懸命に目を凝らして食べ物を探してきた。人間の鼻がニオイをかげる範囲は狭い。だから視覚は、食べ物探しにおいて要とも言える感覚だった。
では目でとらえた物体を、脳はどのぐらいの速さで食べ物と認識しているのだろうか?
カールソン氏らはそれを確かめるために、実験参加者(20人)に様々な画像を見せ、その脳波の様子を観察してみた。
こうした脳波のデータは機械学習されて、参加者一人ひとりの脳のモデルが作られた。
カールソン氏によれば、どの脳であっても同じような反応を示すだろうが、より個人的なモデルが欲しかったのだという。

脳波わずか0.1秒で食べ物を認識していた
こうした実験の結果、脳が物体を食品と認識したことを示す活動パターンが、画像を目にしてから108ミリ〜116ミリ秒で現れることがわかったのだ。1ミリ秒は0.001秒なので約0.1秒ということになる。そもそも網膜に映った情報が大脳皮質に届くまでに40〜60ミリ秒かかる。だから脳は、ほんの50ミリ秒という一瞬に満たない時間で、それを食べ物だと見分けていることになる。
ちなみに過去の研究では、セクシー画像よりも食べ物に反応する「花より団子脳」が存在することが明らかになっている。
食べ物は生死に直結するだけに、人間の脳はそれに強く、素早く反応するよう進化してきたようだ。
こうした研究は、見た目で食べ物を判断する脳のメカニズムについて理解を深めることで、より健康的な食生活を送れるよう人々をうながすヒントになると考えられるそうだ。
この研究の未査読版は現在『bioRxiv』(2023年9月26日付)で閲覧できる。
References:The Time-Course of Food Representation in the Human Brain | bioRxiv / Food, Cuisine, taste, Our Brains Are Incredibly Fast At Spotting Food, Taking Just 108 Milliseconds, Says Study / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
なぜ食べ物だけに焦点をあてて脳の認識速度が早いと言うのだろう?
食べ物以外のものと比較せず、食べ物の脳の認識速度が早いというのは片手落ち
2.
3. 匿名処理班
抑うつが酷かった頃、目の前に置かれた物体が、色や形、香りは正常なのに食べ物に見えない、という症状に悩まされていた。
食べ物を認識する専門のメカニズムがある、と聞くとなんとなく納得できる話だ。
4. 匿名処理班
キノコは無理だ
5. 匿名処理班
本物の食品と明らかに食べ物ではないものを並べてみればそりゃわかるよ、と思ったけど具体的な速度の問題なのね。脳が優先する情報処理を調べていけば、人間に近い判断ができるAIとかの開発に役立ちそう。
6. 匿名処理班
0.1秒はオーバーだけど0.5秒くらいでわかる
7. 匿名処理班
そもそも目という器官自体、食物を効率よく得ようとする過程で発生したわけだし当然っちゃ当然よね改めて考えてみれば
8. 匿名処理班
梅干しを一目見て酸っぱいと思うのと同じ動きなのかな?
9. 匿名処理班
目が見える前提なだけ。福祉の学校で生徒がお弁当持っち寄って友人内でお互いの弁当交換して顔にタオル巻いて目隠しされた相手に食べさす介護の授業あったが食事の味や食物が何食べさせられてるのか何なんなのかも判断はできなかった
10. 匿名処理班
0.1秒ということは10Fということか。
咄嗟に反応できるかできないかの瀬戸際ですね。
11. 匿名処理班
子供の頃、何秒か考えたけど何だか分からなくてとりあえず齧ったらせっけんだった事ある
12. 匿名処理班
食べ物って何?セクシーなものって何?
0.1秒だから認識する前にスポットライトが当たったようになるってことなんだろう
セクシーなものにそんな必要があるのかってのもある
危険なものならとっさの判断が必要だから食べ物よりも素早く体が動く(動かない)ようになってるよね
13. 匿名処理班
飽食の時代じゃ実感し辛いけど矢っ張り命に直結する事だからな
野生を忘れても層々失われない能力なんだろうな
14.
15.
16. 匿名処理班
>>6
私の知っている研究とはちょっと違う感じ。
脳波関係は専門じゃないんで、私の知識は少し怪しいんだけど視覚刺激を与えると脳波は約 300 ミリ秒( 250 〜 400 秒で人によってばらつきがある)後にマイナス方向に振れるのね。これを N300 と呼ぶんですが、これより早く脳は反応できないハズなので、 N300 から 0.1 秒( 100 ミリ秒)後というならわかるんですけど、その部分が入ってないような気がするんだけどなー。アブストラクトを読むと刺激開始から 112 ミリ秒後ってハッキリ書いてあるから N300 よりも早いことになるので大脳じゃなくて小脳(一時投射野といって目で見たものが最初に入るところね)のほうでの処理なのかなぁ、とピンとこなかったです。
17. 匿名処理班
>>16
N100ってのがあるみたいだよ
ヒトの聴覚における選択的注意の脳機構の研究は,1970年代初頭に行われたHillyardらによる選択的注意時の脳波(EEG)計測に始まる.彼らは,左右の耳に別々の音(純音)を与え,片側の耳に注意したとき(聴覚空間選択的注意)に,音開始後90-100 msの脳波( 事 象 関 連 電 位 event-related potential:ERP)の陰性成分(N1またはN100)が増大することを報告した.
研究課題名(和文)
ヒトの音検知に対する注意の効果の脳波,脳磁界,fMRI による情報科学的研究
18. 匿名処理班
食べ物には違いないんだけど
砂糖だと思って味の素をガッツリ舐めてしまった時は泣きたくなった
(´・ω・`)
19. 匿名処理班
>>9
>食事の味や食物が何食べさせられてるのか何なんなのかも判断はできなかった
つまり、「食べ物においては視覚は超重要」という
記事と同じ結論だということでいい?
20. 匿名処理班
>>12
>食べ物って何?
実験地であるオーストラリア人の被験者にとって馴染み深い、
自然食材(野菜など)および加工済み食品(チーズやハムなど)。
「食べ物でない画像」には、家具や衣類のほか
生きている哺乳類・鳥・昆虫・観賞用植物なども含む。
なお、魚やイカなどの海洋生物は、生きている姿まるまるでも
「未調理食材」に直結認定されかねないので、試料から除外。
21. 匿名処理班
爆裂的にまずくても「食べられる」認定されるってことかな?
まぁ、今地球は人口爆発で異常気象で食糧難であちこちで紛争が止まないから、いつか生きるためには壊滅的にまずくても脳が「食べられる」と判断したら食べなきゃならない時が来るのかな…
22.
23.
24.
25.
26. 匿名処理班
人間以外の動物も初見の野菜とかお肉とか食えるのか食えないのか
わりと素早く判断してる…気がする
27.
28. 匿名処理班
羊羹を丸ごと1本立ててあるのを見たら、
腹減ってない時にはモノリスに、腹ペコの時ならすぐさま羊羹と判断できそう。
29. 匿名処理班
>>8
自分は1秒くらいのタイムラグあるなー
30. 匿名処理班
弟は幼稚園の時、二人で分けろと渡された煎餅を二つに割って
0.1秒で小さい方を姉に寄越す超絶運動機能があった
31. 匿名処理班
>>11
小学生の時に、美味しいニオイがする消しゴムを齧ったことある人は多いはずw
32. 匿名処理班
>>20
基準は、食べたことのあるものだよね
食べ物であっても食べたことのないものでは慎重にならないといけない
>>18
食べたことがあっても見た目が同じものも慎重にならないといけないね
PETボトルを再利用する際は入れるものに注意しないといけない
めんつゆぐらいなら笑い話になるけど、農薬なんかを入れてあったら大変だよ
33. 匿名処理班
>>17
指摘ありがとうございます。※16を書いた者なんですけど、大昔に視覚方面しかやってなかったので聴覚のほうはとんと知りませんでした。勉強して出直します
34. 匿名処理班
>>9
「人間が目で見て食べ物を判断する速度はとっても速いよ」って内容の記事なんだが、、
例えば君は「人間が走る時の持久力は生物界でトップクラス」とかいう記事でも、足で走れる前提なだけって指摘するのかな?