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宇宙船に乗せられ宇宙を旅した人類の遠い先祖の遺骨を巡って研究者らが非難

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(著) (編集)

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 宇宙旅行ビジネスを行うヴァージン・ギャラクティック 社は、2023年9月8日、ヒト科の絶滅した種で化石人類であるアウストラロピテクス・セディバとホモ・ナレディの遺骨の入ったチューブを宇宙船に入れ、宇宙の旅へと導いた。

 これにより、世界で初めて、人類の遠い祖先の骨が宇宙に旅立ったわけだが、多くの研究者らは、これを快く思っていない。

 このミッションは重大な倫理違反だと言っている。一歩間違えば、とても貴重な人類の遺骨を失う恐れがあったからだ。

宇宙へと送られた2種の化石人類

  約200万年前を生きていたとされる、アウストラロピテクス・セディバと約30万年前を生きていたとされるホモ・ナレディという人類の遠い祖先の骨の一部が、9月8日、ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船で宇宙の彼方に運ばれた。

 ニューメキシコ州のスペースポート・アメリカから出発した骨の化石は、南アフリカ出身の億万長者ティモシー・ナッシュ氏が葉巻型のチューブに入れて運んだ。

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アウストラロピテクス・セディバとホモ・ナレディの化石化した骨が、宇宙の果てに送られた。 / image credit: Virgin Galatic

 この2種の人類の祖先の骨を選んだのは、ナショナル・ジオグラフィック協会の探検家で、南ア、ウィットウォーターストランド大学のディープ・ヒューマン・ジャーニー探索センター所長リー・バーガー氏だ。

 バーガー氏は、このふたつの種の発見に尽力した。

 2008年、バーガー氏の息子マシューによって初めて発見された、200万年前のアウストラロピテクス・セディバの鎖骨の骨と、2013年にライジング・スター洞窟で発見された謎多き30万年前の人類ホモ・ナレディの親指の骨が、この宇宙旅行に参加することになった。

 バーガー氏は、声明の中で「これら古代の骨の宇宙への旅は、我々の祖先、大昔の親戚たち全員の貢献に対する、人類の感謝の気持ちを表しています」と述べている。

「全人類の祖先の大使として、これほどすばらしい旅をするとは、彼らは生きているときに夢にも思わなかったでしょう」マシュー・バーガー氏は言っている。

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アウストラロピテクス・セディバの復元予想図 / image credit:Neanderthal-Museum, Mettmann / WIKI commons

批判を表明する多くの研究者たち

 しかし、人類学者たちの多くは、大昔の人類の祖先が宇宙への旅など理解していなかったとして、このフライトを批判している。

 X(旧ツイッター)のスレッドで、生物人類学者のアレッシオ・ヴェネツィアーノ氏は、これまで議論されてきた4つのおもな問題点を簡潔にあげた。

1)この宇宙飛行の科学的正当性の欠如
2)人類の先祖の骨に対する敬意という観点での倫理的問題
3)ほかの研究者にはほぼ不可能な、バーガー氏独自の骨の入手方法
4)古人類学の実践に関する誤った発信

 古代の人類の骨の宇宙旅行は、とくに、ミッションの失敗によって貴重な標本が破壊されてしまう可能性があるため、科学的な意図が欠如しているとして、厳しく批判された。

 最終的に、南ア遺産資源局(SAHRA)によって、バーガー氏の当初の申請は許可されたが、この宇宙旅行の目的は、科学的な疑問に取り組むことではなく、科学を促進し、南アフリカにおける人類起源の研究を世界に知らしめることだと氏は述べた。

宇宙旅行がこうした遺産に及ぼす影響は、これまで科学研究の分野ではありませんでした

 と話すのは、カリフォルニア州チャップマン大学、芸術・考古学のジャスティン・ウォルシュ教授。

私のような宇宙考古学者は、宇宙環境が地球のものに及ぼす影響に非常に興味をもっています。しかし、なにが起こるかを見るために、その試験サンプルとして、地球の遺産を利用することは考えられません

 英国サウザンプトン大学の生物考古学者、ソニア・ザクシェフスキー氏は、Xのスレッドに書いている。

こんなことが許されたことに恐怖を覚えます。これは科学ではありません。非倫理的なアプローチの例として、授業で引用するつもりです

 ウォルシュ教授も、この宇宙飛行の倫理観に対するザクシェフスキー氏の懸念に同調する。化石化した古い骨は、単なる科学的標本ではなく、私たちが敬うべき祖先の骨なのだと言う。

 しかし、この宇宙旅行の許可を得るために、倫理的、法的問題を回避すべく、この骨の化石を人間ではなく、古生物の骨として分類したようだ。

 これは、私たちが誰を「人間」として考えるかという、現在進行中の大きな科学的議論であることを物語っている。

専門団体が人類の先祖の宇宙旅行を非難する声明を発表

 9月19日時点で、南アフリカ専門考古学者協会など、少なくとも4つの専門団体が、こうした人間の祖先の宇宙飛行を非難する声明を出している。

このような事業は、私たちの先祖の遺骨という遺産の扱いについて、倫理的な懸念を引き起こしている。単なる宣伝目的のために、遺骨を不必要な危険にさらしている

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ホモ・ナレディの復元予想図 / image credit:Cicero Moraes (Arc-Team) et alii / WIKI commons

「主権国家として南アフリカは、米国、ロシア、デンマークなどと同様、国の所有物を宇宙に放出することを含め、国有財産を自由に管理することができます」ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのレイチェル・キング文化遺産教授は言う。

「しかし、一見、標準的なコンプライアンス手順を守っているかのように見える行為を通して、こうしたことが起こったという事実は、考古学遺産を破壊の危険にさらす可能性のある今後の出来事を含め、より広範な影響の可能性について、誰もが考えるべきでしょう」

 バーガー氏は、許可申請の書類の中で、「これらの骨は広範囲に研究され、何度も発表されている」として、紛失などのリスクも少ないと、骨を選んだ正当性を強調している。

 しかし、ホモ・ナレディの以外のヒトの化石で、研究に使うことができて、一般にも公開できるものは、ほとんどない。

 その原因は、骨が発見されたその国の財政や物的資源が不足していることが多々あるせいだ。それに加えて、先祖の骨の宇宙旅行に対する大きな批判は、宇宙飛行によって明らかになった、権利と特権の存在だ。

 骨は、大金持ちのティモシー・ナッシュ氏によって、ヴァージン・ギャラクティック号で宇宙へ運ばれた。

 ナッシュの父親のジョンは、航空業界で富を築いた。ナッシュ氏は、リチャード・ブランソンのヴァージン・ギャラクティック宇宙飛行の2回目のフライトのチケットを購入した、最初の人物のひとりだ。

 ナッシュ氏は、バーガー氏と10年来の友人で、バーガー夫妻がアウストラロピテクス・セディバを発見した土地を含め、いわゆる人類のゆりかごの土地のほとんど所有している。ナッシュ氏は、ここを古代観光ツアー産業用に開発したいと考えているのだ。

 古人類学研究者のほとんどは、バーガーには許されている土地や化石に手を出すことはできない。多くの目には、バーガーが研究者たちが実際にやっていることを誤って世間に伝えていると映り、批判をかっているのだ。

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ホモ ナレディの骨格標本 / image credit:Lee Roger Berger research team / WIKI commons

「これは、古代の骨の化石にとしては、異例な扱い方です」ウォルシュ教授は言う。

「バーガー氏が、骨を宇宙へ飛ばして、科学を実行し、宇宙飛行の影響についての疑問に答えを出すことに関心があったとは思えません」自分なら、標準的な科学的慣行に従って、フライト前に、リスクと利点についての情報など、こうしたミッションに関するオープンな対話を望んだだろうという。

「ウィットウォーターストランド大学とリー・バーガー氏が、このような骨の扱い方が適切だと考えているのなら、今後、彼らに骨の管理を安心して任せることができるのかと、問うべきでしょう」

References:‘I am horrified’: Archaeologists are fuming over ancient human relative remains sent to edge of space | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 27件

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  1. ただの自己満 本人(骨の主)の気持ちを勝手に代弁し出すとか気持ち悪い

    • +38
  2. 多種多様な類人猿や原人の中から
    現存して現代人に繋がる物が研究されてるだけで
    人類史の研究なんか全然進んでないものな
    研究者の言い分のほうが正しいよ

    • +19
  3. 研究者だって削って成分とか調べてるんじゃないの?

    • -36
    1. >>3
      たしかに、成分分析の試料として一部を粉末にして使う場合はある
      が、それは骨の成分によって、化石化した個体の生前の健康状況や生活環境を推測するよすがになるから
      今回の件は、徹頭徹尾、所有者の自己満足のみであって、何ら科学的発展に寄与していない

      大金持ちの自己満足のための行為と、研究者の科学探究のための研究行為を、同列視しようとするのは大きな過ち

      • +24
  4. >「全人類の祖先の大使として、これほどすばらしい旅をするとは、彼らは生きているときに夢にも思わなかったでしょう」

    身勝手に連れ回して押し付けがましいなぁ。
    もっと手軽に手に入る貝の化石とかに価値付加して売ってろよ。
    正味どうでも良くはあるけど、良い事してやってる感がキツい。

    • +35
  5. 幻想的なポエムを現実で行動にうつしたら
    普通に気持ち悪いだけだから。

    • +17
  6. お前(リー・バーガー)が死んだらその骨を打ち上げればいいだけの話では
    なんなら即身仏のように存命中に打ち上げてもいいぞ

    • +14
  7. 仮に自分(自身や家族にまつわる)の話なら、そもそもそっと眠らせておいて欲しいな
    それが種としてのルーツを知る上で必要不可欠レベルのことならまだしも、遺骨掘り返された挙句その一生を尊重もせず現代人のお気持ちをただぺちゃくちゃ付け足されるのはちょっと…

    • +2
  8. あー、何か意識高い系の謎儀式になっちゃった感じするね
    研究者からしたら巫山戯んなってなるわ

    • +6
  9. 「全人類の祖先の大使として、これほどすばらしい旅をするとは、彼らは生きているときに夢にも思わなかったでしょう」って言うけど、200万年も前の古代人は宇宙が何かすらわからんかっただろうし、そこを旅したいとも思わんかっただろう。あまりに身勝手すぎる言い分だし、彼らがなぜそこまでして古代人の骨を宇宙に持っていきたがったのか、まったく理解できん。

    • +3
  10. 通常のマネーのみならず知的・科学的な資源らさえごく少数のミリオネアたちの独占状態になりつつある現在…ということなんですね

    • +5
  11. はー、ロマンあるじゃーんポエミ~金持ちはやる事が違うねぇ…なんて思ってたらドチャクソに批判されててびっくりしちゃったわ。
    そんな許されん事なのね…

    SFモノだと、数百年後に「漂流船?なんて原始的な。中身は…?骨の一部と見られるもの…?」みたいな展開で物語進みそうなね。そういう話じゃないか。

    • -24
  12. 気球でピザを成層圏まで飛ばしたみたいなプロジェクトはあったけど
    それと同様に今回の件もイベントのノリで遊んでいるとしか思えないかなぁ
    研究者も苦言を呈しているように必要性が全く無いのだから

    • +4
  13. 嫉妬のために勝手な倫理を持ち出してるようにしか思えんのだけど

    • -22
  14. 「星を継ぐもの」
    ってSF小説的な話かと思ったけど全く違った

    • 評価
  15. 欧米人って割と高い頻度でこういうことするよね
    自己満足だけで構成された意味のないプロジェクトだよ
    「ああ、私はなんて素晴らしい偉業を成し遂げたんだ!みんなもこれを知ったら感動するだろう!」
    多分こういうことだよね

    • +5
  16. 子供のぬいぐるみをその子の代わりに宇宙を見せてあげて返すみたいなのであれば面白いと思うけど、これはダメやな

    • +6
  17. そういうのロマンチックごっこは中の良い相手とやるから意味があるのに赤の他人を通り越した白骨化石での人形遊びはキモいだけなんだよな

    • +4
  18. 法的なことやなんかは良く分からん
    お亡くなりになった方が宇宙に行くのを望んでいると明らかな証拠があって宇宙に行ったなら快挙ですが、そうでないなら単なる暴挙ですね
    私の亡骸は海に散骨してほしいと思っているがどうなることやら

    • 評価
  19. 始祖鳥の化石を買い取って
    「鳥だから高い所を飛ばしてあげたかった」
    までやれば意思を感じるけれど、
    >古代観光ツアー産業用に開発
    とかいている時点で
    フェラーリとかぶっ壊すyoutuberと同じで
    近々始める自分達のビジネス目的の炎上商法でしかない。

    • +2
  20. 単なる自己満足で、結局宇宙空間にごみを捨てたようなものでは?

    本物かどうかもわからないし、本物だとしても、それを宇宙に放って有益なことになると思えない
    ただ自然に分解しない固形物、宇宙空間にとって邪魔なだけだと思う

    • 評価
  21. 何か実験や挑戦するならともかく
    飛ばしたいだけなんだよね
    意味や意義すら無く貴重な化石を飛ばすんだったらそら専門家や研究者から批判受けるの当然

    • +2
  22. 骨持ってった人→ヒマをもて余した金持ちの遊び。

    研究者各位→発掘調査して一旗あげて歴史に名を残したいのに、コイツら好き勝手やりやがって。その骨で有名になるのはオレらこそ相応しいんだ!というひがみ。

    • -13

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