
切り込みを入れて組み合わせた2本の木の幹が、アフリカ南部、ザンビアのカランボ川の底に眠っていたのだ。
およそ47万6000年と見積もられたこの丸太の樹齢が正しければ、初期のヒト属のグループが木材加工が行っていた可能性があり、人類の遠い祖先の知性を明らかにすることになる。
ザンビアの滝で発掘された中期更新世時代の丸太
ザンビア北部タンガニーカ湖にあるカランボ滝で発掘されたのは、樹齢から47万6000年前のものと推測される、加工された丸太である。この滝は、1950年代から研究者によって調査されてきた場所だ。
滝のすぐ上流にある小さな湖周辺で行われた以前の発掘では、石器、花粉、木工品が見つかり、何十万年にもわたる人類の進化と文化について、研究者の理解を深めるのに役立った。
しかし、カランボ滝から見つかった、加工された5つの木材を新たに分析したところ、この遺跡に人が定住し始めた時期がさらにさかのぼることになり、中期更新世(78万1000年〜12万6000年前)の私たちの先祖の心について、新たな洞察が得られることになった。

加工されつなぎ合わされた7万6000年前の木製の遺物
『Nature』誌(2023年9月20日付)に発表された新研究では、英国リバプール大学、考古学・古典学・エジプト学のラリー・バーハム教らが発掘した木製遺物の詳細が明らかにされている。川底で石器と共に見つかった2つと、川の水位より高い粘土層の中から出てきた3つがあり、これら木製の遺物は、恒久的に水位が上がったままの地下水面のおかげで、何十万年もの間、保存され生き延びてきた。
現場の砂粒がどれくらい前に光にさらされたかを測定する、ルミネッセンス年代測定をしたところ、3種類のクラスターを発見した。
それは、32万4000年前の切り出された丸太と先が細くなった木片、39万年前の掘り棒、47万6000年前の木製のくさびとつなぎ合わされた2本の丸太だ。

カランボ滝から出土した加工された小さな木の塊は、ヨーロッパや中国で見つかっている40万年前の狩猟採集道具ととてもよく似ているが、組み合わされた丸太は、アフリカやユーラシアの旧石器時代には、類例はないという。
石器も出土した層から回収された上部の丸太は、長さ141.3センチで、大きな木の幹に対して75度の角度で取り付けられていた。
上の丸太の底部と下の幹の上部の両方に、伐採され、削って切り込みを入れた痕跡が見られ、このおかげで、2本がぴたりとうまいこと合わさるようになっている。

洪水をさけるための建造物の基礎として使用された可能性
「木の幹から木材をとっているので、大きなものを作ることができた」ハーバム教授らは、論文に書いている。「洪水が定期的に起こり、水浸しになることの多い氾濫原での生活は、高台や通路、住居用の基礎を建設することで向上する」という。
新たな発見物は、木材加工の最古の例の年代をさらにさかのぼり、人類の祖先が持っていた技術を、科学者がより深く理解するのに役立つだろう。
ヒトの祖先の行動についての考古学的証拠は、通常は石器のように、年月を経ても残りやすい人工物から得られる。
そのため、カランボ滝で、本来なら腐りやすい木製品が良好な状態のまま発見されたことは非常に重要だと言える。

人類の祖先は知性的で木工スキルも持っていた
オックスフォード大学の考古学教授、シャドレック・チリクレ氏は語る。「広く知られている木材の性質を考えれば、ヒトの祖先が木材を利用しなかったとは考えにくい」この新たな研究は、人間とその祖先は、両者とも利用できる資源を活用したことを示している。
切り込みの入ったこの最古の丸太のおかげで、人間の文化的、生物学的進化をどのように理解するかについて、再考しなくてはならないだろうという。
これまで、中期更新世にカランボ滝周辺に住んでいた人類の祖先は、木を加工するといった技術スキルをほとんど持たない、遊牧採集民族だと考えられてきた。
だが、この新たな発見は、彼らが当初考えられていたよりもはるかに知性があり、創意工夫とスキルも持っていたことを示していると、研究者は言う。
「こうした証拠により、痕跡が残りやすいもの、腐敗しやすいものなど、私たちの祖先が利用した、さまざまな材料を考えることができる」とチリクレ氏は語る。
追記:(2023/09/26)本文を一部訂正して再送します。
References:Evidence for the earliest structural use of wood at least 476,000 years ago | Nature / Evidence of a Wooden Structure That Predates Our Species Uncovered : ScienceAlert / Archaeologists in Zambia discover oldest wooden structure in the world, dating to 476,000 years ago | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
一番身近な建材と言えば木材だもんね
古代から使われてたのね
2. 匿名処理班
大工の源さんの遠い遠いご先祖さまなのだな
3. 匿名処理班
前期旧石器時代の不気味さは、当時の遺跡を残した者たちが、実は人類の先祖などではなくて、人類とはまったく無関係に進化した別種の知的な猿だったかもしれない、というところだ。
4. 匿名処理班
三内丸山遺跡では4000年余り前の柱の一部が出土したけど
その100倍も古いとはたまげたなあ。
条件が整えばここまでしっかり残るものなんか。
5. 匿名処理班
1万2000年前に超文明があったという説を裏付けるような発見だな。
この木工遺跡から37万年も経過すればかなり文明が発達していてもおかしくない。
6.
7. 匿名処理班
建築技術はこれだけの時間で進歩したならそういえば昔見たオーパーツの存在もありうるわけだし、協力して建造物作ったり技術を継承できるだけのコミュ能力もあったんだね
あと空間認知して設計する能力。抽象化して絵は描けたのだろうか
残念なことに恐らく医学の進歩がともなっていず疫病で人口が激減したため継承されず洞穴生活に逆戻り?それとも上の方の書き込みの私達と系統の違う進化した系統の違う運悪く滅亡した人類?
8. 匿名処理班
せいぜい口承くらいでしか技術の伝播出来ないから
せっかく革新的な技術発見する人が出ても途中で失伝しちゃって
進歩が緩やかなのが惜しかったわなあ農業革命以前の人類は
文字の発明ってほんと偉大だわ
9. 匿名処理班
何のためのパーツなのかが気になる。道具か建造物か。
10. 匿名処理班
石器時代の人が洞窟に住んでる絵は、かねがねおかしいと思ってた。人が住めるような洞窟ってそんなにあるかなって。実際は、木造の結構おしゃれな家が建ってたんではないか。そう考えるとロマンがある。
11.
12. 匿名処理班
歴史研究者って、発掘可能な場所を全て発掘して、文献が全て見つかったら、やることなくなるのかなぁ。
13. 匿名処理班
時代的にはハイデルベルゲンシス人らしい。ネアンデルタール人のご先祖。
14. 匿名処理班
>>9
洪水をさけるための建造物の基礎として使用された可能性、
とあるね。
15. 匿名処理班
×「永遠に上昇し続ける地下水面のおかげで」→○「恒久的に水位が上がったままの地下水面のおかげで」(直訳)/「常に水位が下がることがない地下水に浸かっていたため」(意訳)
参考文献の論文に「A permanently elevated water table 」とありますが、「上昇し続ける」場合はelevatingとなっているはずですね。
16. 匿名処理班
>>5 >>7
もしかしたらこういう突然変異的な初期人類の一部が今まで現代人に知られていない未知の僻地や離島(あるいは氷河期で海退した大陸棚の土地でも良い)に流れ着いて、そこでさらに進化を遂げた結果として、現代人に先駆けて高度文明を築き上げた可能性もあるんだよな。
例えば彼らがあまり繁殖力が強くなかったり、または現代人よりも高レベルな理性や合理性を早くに発達させた結果、宗教や偏った思想を生み出す事も無くローカルなままに産業革命を経て宇宙時代に突入し、とっとと地球から出ていたかも知れない。
そうであれば、他の大陸への植民どころか他の初期人類への干渉すらもわずかだから、現代に至ってもオーパーツや超古代遺跡の類が見つかっていないのも道理だろう。ただし世界中の神話や伝説の中に、神々という表現で彼らの事が記されている…
などと、J.P.ホーガン著のSF小説「星を継ぐもの」シリーズをこの前に読破した勢いで妄想してみた。
ちなみに旧ソ連の古代史研究家であるA.コルボフスキーも似たような事を考えていたらしい。
17. 匿名処理班
ご先祖様は木の上で生活してたみたいだし
どんだけ木の世話になってきたんだっていうね
木を見上げるとどこか畏敬の念を抱いちゃうのも本能なのかねぇ
18. 匿名処理班
>>16
ワンニャン時空伝や
19. 匿名処理班
>>12
遺跡や文献は見つけて終わりじゃないよ。
むしろ咀嚼する方が本番。
20. 匿名処理班
>>16
西暦が始まってたったの2000年ちょっとで人類は宇宙へ出たり地球上にネットを張り巡らしたりできている、47万6000年前から1万2000年前までの間には46万4000年の時間がある。
それだけ時間があれば、いくつかの文明が勃興することはありえるだろう。
ただ文明の遺構については無くても仕方ないと思うな。
つい数千年前の文明ですらその遺構を見つけるには考古学という学問が成立する程度には難しく、遺構が残って居らずいったいこの石の塊はなんだろうというような物体も世界各地にある。それだけを見ても数十万年前の遺構が見つかった今回の幸運は絶賛してしかるべきものだと思うな。
21. 匿名処理班
オラウータンさんもハンモック作ってたもんな
現代人よりお猿に近い人々も生活を工夫することはできたんだろう
数日前の記事だけど
賢いし器用すぎだろ!オランウータンが布を利用してハンモックを作り上げる
ttps://karapaia.com/archives/52325903.html