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遺伝子編集技術で透明なイカが誕生。頭足類の脳研究に革命

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(著) (編集)

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 無脊椎動物でありながら、複雑な脳神経を持ち、知能も高いイカやタコ。彼ら頭足類は、体の色を変えて周囲に溶け込むカモフラージュの達人でもある。

 今回研究者らは、遺伝子編集技術を利用して、「ニヨリミミイカ(Euprymna berryi)」の透明化に成功した。

 透明になったイカは幽霊のようにスッケスケで、水槽の中の彼らは、その飼育係ですらなかなか見つけられないほどだ。

 この透明イカは、頭足類の研究に革命を起こす可能性を秘めているという。

イカの色素を作っている遺伝子を切り、透明化に成功

 「ニヨリミミイカ(Euprymna berryi)」は、体長は3センチほどの小さなイカだ。インドネシアからフィリピンにかけてのインド太平洋地域に生息している。

 米ウッズホール海洋生物学研究所のチームが、透明イカの実験台としてこのイカを選んだのは、小さくて飼いやすいことが決め手だったという。

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クリップのそばにいるニヨリミミイカ。ご覧の通り、とても小さなイカだ / Image credits: Tim Briggs/MBL Cephlapod Program

 イカは体の色を変えて周囲に紛れ込む忍者のようなカモフラージュの達人だが、その秘密は「色素胞」という特殊な細胞にある。

 この色素胞は、頭足類(イカやタコなどのグループ)だけでなく、両生類、魚類、爬虫類など、さまざまな動物の体に色をつけるという重要な役割がある。

 なお哺乳類や鳥類の色は「メラニン細胞」という細胞によるものだ。

 色素胞の真ん中には、色素が詰まった袋がある。イカはこうした皮膚の下にある色素胞を巧みに操作することで体の色を変え、周囲の風景に溶け込んでいる。

 ならば、この色素をなくしてしまえば、彼らは透明になるはずだ。別の言い方をすれば、まったく色素のない透明なイカが誕生するはずだ。

 そこでキャロライン・アルバーティン氏とジョシュア・ローゼンタール氏は、遺伝子編集ツール「CRISPR」で、イカの色素を作っている遺伝子のスイッチを切ることで、狙い通りにイカの透明化に成功したのである。

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image credit:Carrie Albertin & Kyle DeMarr.

透明イカが頭足類の脳の研究に革命を起こす

 スケスケになった透明なイカは、ただの科学的な好奇心によって作られたわけではない。このイカは頭足類を研究するまったく新しい方法の扉を開いてくれるのだ。

 頭足類は、普通の無脊椎動物に比べて圧倒的に神経系が発達しており、とても頭がいい

 なにしろ、そのたくさんある長い手足で道具を使うことができる。迷路を突破し、複雑な作業だってやってのける。

 しばしば他人の行動を見て学習するが、これもまた高い知性の証だ。瞬時にカモフラージュする忍者のような早技だって、高度な認知能力の賜物である。

 このように高い知能がある彼らだが、実際にそれを研究するのは簡単ではない。問題の1つは、頭足類の「モデル生物」がいないことだ。

 モデル生物とは、その生物の体の中でどのようなことが起きているのか理解するために実験などでよく使われる生き物のこと。代表的なのは、ミバエ、ゼブラフィッシュ、マウスなどだろう。

 そして透明なニヨリミミイカはその新しい仲間になるかもしれないのだ。

 たとえば、オレゴン大学ユージーン校のクリス・ニール氏とスタンフォード大学のイバン・ソルテス氏は、この透明イカの視葉(脳の一部)に蛍光インクを流し込み、その脳が活動する様子を観察した。

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/ Image credits: Tim Briggs/MBL Cephlapod Program

 このインクは、イカの脳からカルシウム(脳内のシグナル伝達を担っている)が放出されるたびに光る。だからイカに画像を見せたときのインクの光り方から、脳が働く様子を直接確かめるなんてことができる。

 通常の色のあるイカでは、皮膚の色素が邪魔になって、絶対に無理なことだ。

頭足類モデル生物の中にある遺伝子の働きを直接、しかも正確に観察できるということは、頭足類があんなにもユニークである秘密を研究できるということです。

頭足類特有の生物学的なメカニズムを理解するうえで重要なツールになるでしょう

と、アルバーティン氏は語っている。

 研究チームは今、この透明なイカを繁殖して、ほかの研究者たちに配る準備を進めているところだ。

「この動物を研究者たちと共有したいと思っています」とローゼンタール氏は言う。

 タコやイカといった頭足類は生物学的に目新しいことだらけで、モデル生物を使えば今後も新しい発見が次々になされるだろうと期待できるそうだ。

 何しろ研究者たちは、頭足類に魅了されているのだから。

 この研究は『Current Biology』(2023年6月20日付)に掲載された。

追記:(2023/09/07)本文を一部訂正して再送します。

References:Researchers created a genetically modified transparent squid — and this could be huge for brain research / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 7件

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  1. イノシシをおだやかな性格に改良してブタにしたように
    イカも養殖しやすい性質に改良して養殖専用種を作れば
    いいんじゃないすかね。コイを食べる国でウロコが少ない
    品種をつくってるけど抗議されないし。

    • +4
    1. >>1
      畜産もお野菜も人間の都合がいいように改良してるしね
      ペットもある意味そうだね
      食べられるように育てるのも共生と言って良いのかしら

      • +3
  2. そうか、食用やら繁殖やら即物的な目的だけじゃなく、研究のために遺伝子編集を使うもんなんだなあ。「Aのために必要なBを作るためのCを改良する道具としてDを使おう」みたいな発想で頭がこんがらがりそうだわ。

    • 評価
  3. 頭足類は頭がいい生物だとされているが、そのうち愛護団体による保護活動のようなものが出てくるんだろうか

    • 評価
    1. >>4
      頭足類絡みでよっぽど巨大な利権や政治的緊張が生まれでもしない限り、愛護団体が口を挟むのはまずないと思われる
      水産資源確保の観点からの保護は国によってはあり得るかも知れないけど

      • +1
  4. CRISPRを使用すれば
    人も透明になるのか?
    でもそうなると紫外線には
    弱い生物になるのかも

    • +2
  5. トウメイカ
    水イカより透き通ったイカそうめんが食えるのか

    • 評価

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