メインコンテンツにスキップ

珍獣カモノハシはやっぱり奇妙、鳥の羽にしかない不思議な毛の構造が見つかる

記事の本文にスキップ

23件のコメントを見る

(著)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Image credit:Flurin Seglias
Advertisement

 哺乳類なのに卵を産む珍獣カモノハシの被毛から、鳥の羽にしか見られない中が空洞の細胞が発見された。

 ベルギーのゲント大学を中心とする研究チームによると、通常、この構造は鳥が鮮やかな色を作るためのもので、哺乳類では中身が詰まっているのが常識だが、カモノハシは茶色い毛の中にこの特徴を隠し持っていたという。

 カモノハシは電気を感じるクチバシを持っていたり、体が蛍光色に光ったりと、独自の仕様を持っていることがわかっていたが、今回の発見により、新たな奇妙な特徴が明らかになった。

この研究成果は『Biology Letters』(2026年3月18日付)に掲載された。

参考文献:

カモノハシの被毛に鳥類と同じ空洞構造を発見

 ベルギーのゲント大学やアメリカのコロンビア大学などの国際研究チームは、カモノハシの被毛を電子顕微鏡で詳しく調べた。

 その結果、色のもとになる細胞小器官「メラノソーム」が、真ん中に穴の開いたドーナツのような「空洞」になっていることがわかった。

 メラノソームは被毛や皮膚の色を決めるメラニン色素を作る細胞内の構造である。

 これまで、メラノソームが空洞になっているのは鳥類に特有の特徴とされ、人間を含む哺乳類では中身が詰まっていると考えられてきた。

 ところがカモノハシでは、この前提に当てはまらない構造が確認されたのである。

 研究チームが100種類以上の哺乳類を調べても、同じような構造は見つからなかった。

 この発見は、カモノハシが外見や産卵の習性だけでなく、細胞のレベルでも鳥類と共通する特徴を持つ可能性を示している。

この画像を大きなサイズで見る
カモノハシの被毛にあるメラノソームの形態 Image credit:Biology Letters (2026). DOI: 10.1098/rsbl.2025.0721

カモノハシが持つ特異な生態

 カモノハシはオーストラリア東部やタスマニア島にのみ生息する固有種であり、現生種ではカモノハシ科カモノハシ属を構成する唯一の動物だ。

 大きさは、大人のオスで全長が45cmから60cmほど、重さは1kgから3kgほどである。メスはそれより一回り小さく、全長は39cmから55cmほどだ。

 水中での生活に特化した仕様となっており、流線型の胴体に、幅が広くて平らな尾を持つ。

 この尾には脂肪を貯めておく貯蔵庫としての役割もある。また、四肢は非常に短く、前足には大きな水かきが発達している。

 カモノハシが奇妙だと言われる理由はこれまでにもいろいろあった。

 哺乳類でありながら卵を産み、オスは後ろ足の蹴爪に毒を持つ。

 さらに、水の中でも獲物を見つけられるよう、くちばしで電気を感じ取る能力まで備えている。

 近年の研究では、被毛に紫外線を当てると青緑色に光る生物蛍光という性質も確認されている。

 今回の発見は、こうした特徴に加えて、目に見えない細胞レベルでも特異な構造を持っていることを示したものだ。

この画像を大きなサイズで見る
Image credit: slowmotiongli

カモノハシの細胞小器官はなぜ空洞なのか

 鳥の場合、このメラノソームという細胞小器官が空洞になっているおかげで、光が複雑に反射して、カワセミやクジャクのような虹色に輝く美しい「構造色」を作り出している。

 しかしカモノハシの毛は地味な茶色一色であり、鳥のようにキラキラと輝いているわけではない。

 カモノハシの毛が茶色いのは、メラニンの一種、ユーメラニンという色素が多く含まれているためだが、なぜ色が地味なのに鳥と同じ空洞構造が必要だったのかは、専門家にもまだわかっていない。

 カモノハシと共通の先祖を持つハリモグラにもこの空洞は見つかっておらず、カモノハシだけが進化の過程で、鳥と同じ仕組みを独自に手に入れたか、あるいは大昔の祖先の性質をそのまま残している可能性がある。

この画像を大きなサイズで見る
(i)哺乳類と(ii)鳥類におけるメラノソーム(色素小器官)の多様性。それぞれのグループで見られる代表的なメラノソームの形状を示している。Image credit:Biology Letters (2026). DOI: 10.1098/rsbl.2025.0721

冷たい水から身を守るための「断熱材」だった可能性

 カモノハシの空洞構造の役割について、研究チームは一つの仮説を立てている。

 カモノハシとハリモグラの共通の祖先が、かつて水中で生活していた頃に、毛の中をスカスカにすることで空気の層を作り、冷たい水から体温を守る「断熱材」として利用していたのではないかという考えだ。

 その後、陸に上がったハリモグラはこの空洞を失ったが、水辺での生活を続けたカモノハシだけが、泳ぐときの防寒用としてこの構造を現在まで使い続けているのかもしれない。

常識を書き換えるカモノハシの進化

 カモノハシの姿はあまりにも奇妙で、1798年に初めて標本がヨーロッパに持ち込まれた際、「剥製師がいたずらで、ビーバーの体にアヒルのくちばしを縫い付けた偽物だ」と疑われたというエピソードも残っている。

 しかし現代の科学によって、カモノハシは、見た目だけでなく、遺伝子や細胞の仕組みも、鳥と哺乳類の特徴をあわせ持つ存在であることが分かってきた。

 今回の「被毛の中身が空洞」という発見は、カモノハシの不思議な特徴リストにまた新しい1ページを加えた。

 鳥と哺乳類の境界線に立つこの奇妙な生き物は、私たちが考える以上に「生命の進化には決まった形がないこと」を教えてくれている。

カモノハシの細胞に隠された謎を解く旅は、これからも世界中の科学者をワクワクさせ続けるだろう。

References: PHYS

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 23件

コメントを書く

  1. 「フィニアスとファーブ」というアニメの
    カモノハシのペリーというキャラが好きだった。

    • +6
  2. いまだに新しい特徴が見つかってますます意味不明の生き物になっていくコイツは本当に何なの……

    • +41
    1. 往年のローディストがもれなくファンロードのロゴを思い出すシルエット

      • +6
  3. ついこの前、遺伝子が哺乳類となんか違う。みたいな発表されたばかりなのに、なんなんだこの生き物。独立させても良い気がするけど、恐らく他に仲間がいないから無駄になるのかなぁ

    • +23
  4. カモノハシは本当に哺乳類に分類していい生き物なのだろうか?

    • +21
    1. >総排出腔(そうはいしゅつこう/くう、英: cloacal opening[1])、または総排泄腔(そうはいせつこう/くう)とは、ほとんどの軟骨魚類、両生類、爬虫類、鳥類、およびごく一部の哺乳類に見られる、直腸・排尿口・生殖口を兼ねる器官のことである。
      ごく一部の哺乳類のうちに単孔目のカモノハシがいるんだよね
      他の哺乳類にもあるんだけど、単孔目は構造が爬虫類などと同じなんだそう

      • +9
    2. 単孔目には乳腺があっても乳首はないんだよね
      卵を産んで乳腺からにじみ出る乳をなめさせる
      乳腺なんて化石に残らないから、それ以外の部分で判別している
      それで仲間外れにされた化石は、哺乳形類という哺乳類を含んだものに移されたんだ
      カモノハシはぎりぎり哺乳類に分類されたという感じかな

      • +8
      1. なるほどねぇ。
        そうなると、もっと化石の判別が精巧精密になったら別の系統樹に移る可能性が残ってると見るべきか。
        別の話になるけど竜弓類も最新の論文でミッシングリンクを埋められると言ってたし今後に注目だな

        • +6
        1. 哺乳類は、確実に哺乳することがわかっている種という事での分類なので
          哺乳の起源が哺乳形類に収まるかどうかも怪しいのです
          別々に発達したという可能性もありますが
          今わかっている系統樹的には、問題なさそうです
          ピジョン・ミルクよりは、確実そうに感じますね

          • +4
    3. こういう記事読むと、初めて別種になったころ思いのほか哺乳類と恐竜の境目って小さかったのかなとか思っちゃいます。 子供のころ恐竜は変温動物だとあった気がしますけど、恒温動物だったんじゃないかという説がでて、今はどっちが主流であるかは知らないですがカモノハシの様態とみるとやっぱり恒温動物だったんじゃないかなぁなどと思い返したり、面白い記事でした

      • +6
      1. 英語版のウィキペディアによると、恒温動物や変温動物より細かい区別がされているようです
        外温動物 (Ectotherm) 外部の温度に頼るもの
        内温動物 (Endotherm) 内部で熱を作れるもの
        中温動物 (Mesotherm) 外温動物と内温動物の中間, 単孔目がこれ, 恐竜もそうかも
        変温動物 (Poikilotherm) 冷動血物とも, 外温性と変温性と緩徐代謝性を持つ
        恒温動物 (Warm-blooded) 温血動物とも, 内温性と恒温性と速代謝性を持つ

        • 評価
  5. 現在に生き残ってるのが今の分類上の生物なだけで、途絶えた系統樹のひとつなんだろうな。最近になって超巨大キノコ(キノコではない)の化石も見つかったじゃん

    • +17
  6. 古代には巨大カモノハシとか居たのだろうか

    • +11
  7. 神様がふざけて創った生き物だよな
    まだまだ隠されたステータスありそう

    • +9
  8. 記事読むとさらに「お前本当になんなんだよ」って謎が深まる動物で好き

    • +15
  9. くちばしがあるし卵を産むし今回は鳥の羽と同じ構造
    1万年後には水鳥によく似た哺乳類になってる可能性

    • +5
  10. カモノハシというと
    カモノハシジローくん(サントリー)と
    イコちゃん(JR西日本の ICOCAのキャラ)を
    思い出す

    • +1
  11. 鳥類と哺乳類ってけっこう遠い生き物のはずなのに、カモノハシは鳥類との共通項が多くて面白いな

    • +3
  12. 遺伝子レベルではどうなんだろう?
    もし鳥類と共通のゲノムとかが見つかったら
    いわゆる「遺伝子の水平伝播」が起きた可能性も出てきそうだけど

    • +1
    1. 2012年3月30日 / 最終更新日時 : 2023年4月10日 戎崎 俊一
      哺乳の起源と進化:Origin and evolution of lactation
      https://science.gakuji-tosho.jp/articles/1378
      複数の遺伝子の解析結果をもとにしているので、最新の知見といえると思います
      これによると単弓類の頃には卵に与える水分を汗(アポクリン様分泌物)で与えていたらしいです
      単弓類の隣には、鳥へと続く竜弓類があります
      哺乳が人類と鳥を分けたのかもしれないと考えると夢が広がりますね

      • 評価
  13. 神様は6日掛けて世界をおつくりになられたの事だが
    恐らく7日目に暇になってしまってカモノハシを作ったのだろう

    • +5

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。