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過去16年に渡る大気中のメタンの急増で、気候変動が未知なる激変フェーズに突入か

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(著) (編集)

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 2006年以降、地球の大気に含まれるメタンが急激に増加している。

 メタンはきわめて強力な温室効果ガスだが、人間の活動によって排出される二酸化炭素とは違って、排出源は生物学的なものであるようだ。

 じつは現在見られるメタンの急増は、過去にも起きたことがある。それは1万2000年前の氷期から間氷期に移り変わった時代のことだ。

 このことから気候学者の中には、メタンの急増は「ターミネーション」という気候の激変フェーズに入ったサインであると考える者もいる。

 一体なぜ、メタンは急増しており、それは地球にどのような影響を与えるのか?

 ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校の気候学者ユアン・ニスベット氏がメタン激増の理由について説明してくれている。

2006年以降メタンが激増

 メタンは二酸化炭素の25倍もの熱を蓄える強力な温室効果ガスだ。人類が化石燃料を燃やし始める前、大気中のメタンは0.7ppmほどだった。ところが現在は1.9ppmを超え、なおも増えている。

 そもそも最初にメタンが急激に増加したのは、19世紀から20世紀にかけてのことだ。

 これは化石燃料、特にガス田や炭鉱からの排出が原因とされているが、それでも1990年代末には頭打ちとなっていた。

 その理由は、車を想像してみるとわかりやすい。アクセルを踏めば、車は加速し始めるが、それと同時に空気抵抗も増加する。そのため、どこかの時点でエンジンのパワーと空気抵抗が釣り合い、それ以上スピードが出なくなる。

 1999年、メタンもまた排出と吸収のバランスが釣り合ったように見えた。

 ところが予想外なことに、2006年になって再び大気中のメタンが急激に増加し始めたのだ。2020年代になると、そのスピードはさらに速くなり、1980年代のピーク時よりも加速している。

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大気中のメタンの量。2000年代に入って安定しているように見えたが、2006年から再び急増を始め、現在はさらに加速している / image credit:NOAA/Nisbet et al. (2023)

赤道付近の湿地帯からの排出されるメタンが主な原因

 ニスベット氏によると、その主な原因は、赤道付近の湿地帯からの排出されるメタンであるという。

 気候変動、地球温暖化の影響で雨が増えて湿地帯が広がったのと、気温が高くなって植物がよく育つようになり、メタンの材料(微生物によって植物が分解されたもの)が増えたことが原因だ。

 またアフリカ、インド、ブラジルで飼育されている大量の家畜や、デリーのような大都市近郊に埋め立てられる腐敗した廃棄物も重要な発生源だとされている。

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photo by Unsplash

過去にも氷河期にメタンの急増が発生していた

 じつは今見られているようなメタンの急激な増加は、過去にも起きたことがある。

 意外に思うかもしれないが、現在は氷河時代の最中にある。

 氷河時代といってもずっと寒いわけではなく、寒い「氷期」と比較的暖かい「間氷期」を繰り返している。現在は、260万年前から続く「第四紀氷河時代」の間氷期にある。

 こうした氷期から間氷期へと移り変わる時代の氷に閉じ込められている気泡を調べてみると、その都度大気中のメタン濃度が急激に上昇していることがわかるのだ。その原因も、やはり湿地帯の拡大によるものである可能性が高い。

 氷期から間氷期にスイッチする時代、世界の気温は数千年の間に数度も高くなる。このような氷期の終わりに見られる大きな気候の変化のことを「ターミネーション」という。

 過去に起きたターミネーションは、それぞれを区別するために新しい順にI~IXまでのローマ数字が振られている。

 たとえば現代の気候の始まりを告げた1万2000年のものは「ターミネーションI」。その前の13万1000年前のものは「ターミネーションII」といった具合だ。

 一つのターミネーションが完全に終わるには数千年かかる。だが大抵の場合、まずゆっくりと忍び寄るような温暖化が始まり、それから100年未満のうちにきわめて急激な気候変動が起こる。ここでは便宜的に「激変期」と言っておこう。

 さらにその後もっと長くゆっくりとした温暖化へと変わり、最終的には大きな氷冠が解ける。

 ちなみに現代の気候をもたらした前回の激変期では、グリーンランドの気温は数十年のうちに約10度上昇している。そしてこの間、メタンはきわめて急激に増加した。

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photo by Unsplash

気候変動は激変フェーズに移行した可能性

 メタンは産業革命の前から大きく変動していたが、2006年以降の急激な増加は、1万2000年前のターミネーションのそれに匹敵する。

 もちろんエルニーニョのような自然な気候サイクルの結果である可能性もある。だが新しいターミネーション・ゼロが始まったサインである可能性も否定できない。

 通常のターミネーションが完了すれば、時代は氷期から間氷期へと移り、気候全体の様子が大きく変わる。

 だが現在はすでに温暖な間氷期にあるのだ。今の気候変動の結果として、これから何が起きるのか予測するのは難しいと、ニスベット氏は説明する。

 夏には北極の海氷が失われ、グリーンランドや西南極では氷が薄くなったり、部分的に崩壊したりする。それが大西洋の海流に影響して、熱帯の気象循環パターンが北極や南極へと広がるだろう。

 生物圏が全体的に左右されるほか、とりわけ南・東アジアやアフリカの食糧生産にも大きな影響が出ることが予測される。

 ニスベット氏によれば、メタンの急増を抑えるために人間ができることはたくさんあるという。

 たとえば、石油・ガス産業からの排出削減、埋め立て地を土で覆う、農業ごみの焼却を減らすといったことだ。

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photo by iStock

 今起きている地球温暖化の主な要因は二酸化炭素であることは、これまでの研究で明らかなので、これで気温の上昇が止まるわけではないが、少なくともそれを抑えることにはつながる。

 もしも新たなターミネーションが起きているのなら、それはゼロということになるが、じつはローマ数字にはゼロがない。

 それは今後の気候の変化がいまだかつてない、未知のものであるということを暗示しているのだろうか?

References:Rising methane could be a sign that Earth’s climate is part-way through a ‘termination-level transition’ / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. 数十年の間に十度の温度上昇?
    旧約聖書にある大洪水を引き起こしたのはそれか。
    ギョベクリテペ遺跡も確か一万二千年前に作られて何故かすぐに埋められてるらしいから、地球規模の大異変に絶滅を覚悟した人々が人類がいた痕跡を残そうとしたのでは。

    • 評価
  2. 永久凍土から大放出されるより先に赤道地帯からいっぱい出てるんだ

    なんか最近は立て続けに絶望的なニュースばかり
    なのに次の瞬間には楽しいニュースやってたりするし、世界の首脳陣は決定打も出さずに戦争だの経済だの論じてる

    宇宙人が見たら「地球人は現状を分析する科学力は持ってるのに、解決する能力が無い」って呆れるかも

    地球規模で正常バイアスに陥っていると思う

    • +7
  3. 2酸化炭素で温暖化の効力が落ちてきたのか・・・

    • -5
  4. いくら石油・ガス産業からの排出削減といっても、今の日本では
    すでに搭載した機械が標準装備でありこれ以上の削減は厳しい
    それにバンバン出してる某国とかジャイアンがいうことなんて
    聞くとは思わん

    • -3
    1. >>5
      >すでに搭載した機械が標準装備でありこれ以上の削減は厳しい

      ならCO2を出さない機械を標準装備にすれば良いのでは?
      進歩ってそういうもんよ。

      • +4
      1. >>9
        君ってひろゆきとか信仰してるタイプの技術が判らない文系ね

        • -2
        1. >>22
          何もおかしなことは言ってないと思うけど。
          今使われてる機械も改良を重ねながら
          進歩してきたものなんだから
          この先もそれが出来ない道理はないだろう。

          • 評価
        2. >>22
          なんかどっちもどっちだな
          でアンタは技術のわからない理系か

          • +1
  5. この流れで人類や他の生物が滅亡したとしても生き残った生物が隙間を埋めるからあまり心配はしていません

    • +2
    1. >>6
      不便になる事を嫌がり文明を捨てる事が出来ない人類がいくら自然に抗ったところで解決しないですからね
      あるがまま受け入れるしかないと思います

      • 評価
  6. 今年の7月の地球は観測史上最高気温になり、6月の南極の海氷レベルは観測史上最低だったとか
    この傾向があと数十年も続けばどうなるのか
    地球の歴史から見ればなんてことない変動でも、人間にとっては数十億の餓死につながるなんてこともありうる

    • +7
  7. ちょうどメタンハイドレートを持て囃していた頃にも重なるな。

    • +3
  8. こりゃ生きてるうちに日本でも50度届くだろうな。下手すりゃ十年経たんかも。
    他の国と違って湿度まみれだからあちこち死屍累々になるぞ

    • 評価
  9. 神様は人間を作ったときに、こんな状況になることは分かっていただろうに。
    なんで気候変動や地球温暖化とならないように仕組化できなかったかなぁ。失敗作。

    • -6
    1. >>12
      人間が神の失敗作なのではなく
      神が人間の失敗作なのだ。

      • 評価
      1. >>20
        日本人以外が聞いたら激怒しそうな言葉ですね😅

        • +1
        1. >>35
          最近は世界的にあらゆるものを平等にしなければならないらしいので、宗教観の違う人にも平等に対応してくれるんじゃないのかな。しらんけど。

          • -2
    2. >>12
      神は間違っていない。
      そもそも魂は愛が何かを学ぶ為の場として地球に人という器に入り降ろしてるだけだから
      そして、地球が例え環境汚染になったとしてもそれは地球にとっては環境汚染でもなんでもなく自然な現象で流れであるため、汚染だと思ってるのは今生きる生物にとって害だけで、地球は表面の生物が絶滅しようと関係ないのよ。

      • 評価
  10. メタンの直接分解なんかも調べると出てくるから、気になる人はそちらも調べてみては?

    • +1
  11. あと20年以内に、超画期的な温暖化を止める方法が見つかったとしても
    現在の快適な暮らしを続けるのは無理だろうと言われているな

    • +3
  12. 温室効果ガスで温暖化が正しいと思ってる奴ですら温室効果ガスを排出しまくる生活送ってるんだから止まる訳ないよね

    • +4
  13. 家畜、特に牛のゲップには何も言わない言えない
    40年以上前から科学者の間では常識だけど社会に訴える事は出来ない

    • -1
    1. >>23
      昔「電波少年」という番組があって、温暖化防止のために牛のゲップを松村邦洋が吸うという企画があった。バラエティ番組の企画にまでなるんだから決して問題になってなかったわけではない。

      • 評価
    2. >>23 カシューナッツ殻液で牛のゲップのメタンを抑制できるらしくて、配合された飼料が市販されてるらしい。試した日本の酪農家さんとこでは、乳量と受胎率も上がったそうだよ。
      ttps://agri.mynavi.jp/2022_05_27_193234/

      • +1
  14. 人の住む惑星は宇宙に浮かぶ湯沸し真空魔法瓶のようなもの。
    人口も一人当たりの消費エネルギーも増え、地球が通常冷える速度を超えて人が生み出す排熱が海や大気を温めている状況だとこの先どうなるのかな?

    • 評価
    1. >>25
      太陽から熱が来てるんですが、、知ってますか?

      • +1
  15. まあ家畜を減らすための近代の代替肉の研究だろう。牛の数が減ればメタンも多少は減る

    • +2
  16. もうしょうがないよ。
    人類だけ永遠に地球で栄えるわけにいかないのよ。
    巨大な植物や恐竜や海洋生物が地球を征服した時代があって、そして終わっていったように、人類の繁栄も終わる。
    散々壊してしまったけど、自然の摂理で適応した生物がまた出てくるのよ。
    人類だって、地球の一生の1ページでしかないのよ。

    • -1
  17. 温室効果ガスによって地球の放射冷却の効率は悪くなる一方ですね

    • +2
  18. 特集番組で「温暖化による気温上昇予測にメタンガスの増加は考慮されていない」って学者さんが言ってた

    • 評価
  19. 牛のゲップはすべて飼料である穀物や牧草由来であり、つまりライフタイムサイクルの範囲内に入っているわけで、これが駄目ならバイオマス発電とかバイオ燃料とかも全部ダメということになりますが。

    • 評価

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