
カナダのロッキー山脈中には、カンブリア紀の海棲動物の化石がたくさん埋まっている地層「バージェス頁岩」があるが、そこで発掘された「アノマロカリス・カナデンシス(Anomalocaris canadensis)」などは体長60センチで、カンブリア紀の動物の中でも最大クラスだったと考えられている。
大きな体と不気味な前部付属肢で三葉虫に襲いかかり、硬い殻ごとバリバリと噛み砕く。という捕食イメージがあるが、新しい研究ではどうもこのイメージは間違いであることが明らかになっている。
『Proceedings of the Royal Society B』(2023年6月5日付)に掲載された研究では、アノマロカリスがそうした硬い生き物を食べようとすると、付属肢が壊れてしまうことがわかったそうだ。
アノマロカリスの体はふにゃふにゃだった可能性
三葉虫の化石の中には、硬く頑丈な外骨格が傷ついたものもある。これまで、そうした傷の一部は、当時の海の頂点捕食者「アノマロカリス」がつけたものだろうと考えられてきた。
ところが、最近の研究によって、アノマロカリスの体は柔らかいため、噛む力も弱く、硬いエモノは食べられなかったのではないかと疑惑が浮上している。
アメリカ自然史博物館のラッセル・ビックネル氏(研究当時はニューイングランド大学に在籍)はこう語る。
三葉虫の外骨格は、炭酸カルシウムから成る方解石と同じでとにかく頑丈です。一方、アノマロカリスの体のほとんどは柔らかく、ふにゃふにゃだったでしょう

体の構造上硬いものは噛めないことが判明
今回の研究でビックネル氏らは、アノマロカリスが本当のところ何を食べていたのか確かめることにした。そのために、カナダの5億800万年前の地層(バージェス頁岩)から発掘された「アノマロカリス・カナデンシス」の化石から3Dモデルを作成。
これを現代のサソリモドキやウデムシなどと比べながら、実際のところどのようなものを食べられたのか分析した。
最初の分析では、その前部付属肢が伸びた曲がったりすることや、それでエモノをつかめただろうことが確認された。
ところが、前部付属肢で何かをつかんだとき、どのくらいの負荷がかかるのか分析してみると意外なことがわかった。
なんと、最近第三の目が見つかった三葉虫のような硬い生き物をぎゅっとつかむと、おそらく付属器が壊れてしまうというのだ。

素早く泳いで、柔らかいエモノを狙っていた可能性
この研究ではほかにも、アノマロカリスがどのような姿勢で泳いでいたのか、流体力学的な分析も行われている。これらの分析から浮かび上がったその姿は、これまでの想像とは少し違うものだった。
アノマロカリスは、水の中で前部付属肢を伸ばして素早く泳ぐことができる。その姿はまさに頂点捕食者らしいかもしれないが、追いかけるエモノは柔らかい相手ばかりだ。
バージェス頁岩の動物たちをまるでバイキング料理のように見ており、欲しいものをなんでも追いかけた。これが、これまでのアノマロカリスのイメージだったのですが、カンブリア紀の食物連鎖の力学は、それよりずっと複雑だったのかもしれません(ビックネル氏)References:Raptorial appendages of the Cambrian apex predator Anomalocaris canadensis are built for soft prey and speed | Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences / Apex predator of the Cambrian likely sought soft over crunchy prey / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
>素早く泳いで
この通説も変わるだろうな
あの構造ですばやく動けるわけがない
泳ぐことすらままならん
口が下で目が上についていることから、海底に張り付いて藻でも食っていたのだろう
2. 匿名処理班
だとしたら噛み跡のついた三葉虫の化石は何に噛まれたんだろうね?
3. 匿名処理班
ホウネンエビそっくりだから硬くないと言われても納得。でもそうすると硬い三葉虫の外骨格に傷をつけたのは誰だ?
4. 匿名処理班
じゃあ何食べてたんだろ?
と思ってカンブリア紀の生き物さらっと調べてみた
柔らかそうな食べやすそうな生き物結構いるね
5. 匿名処理班
この記事はあのエビみたいな付属肢が
三葉虫を捕獲できるほど強くない、という内容だから
噛めないかどうかはまた別な気がする。
あの付属肢は捕獲用の器官ではなく、
ドジョウのヒゲみたいに獲物を探すセンサーかも知れない。
噛めないかどうかを判断するなら、
重要なのは付属肢より口の方の強度じゃないかな。
6. 匿名処理班
フニャフニャのタコが素早い小魚を掴んだりカニのハサミやシャコパンチも苦にせずバリバリ食べたり貝の蓋をこじ開けたりするからまだわからん
7. 匿名処理班
あの構造じゃ三葉虫の装甲は抜けないだろうねぇ、、、
でも上手く裏側や脱皮後のソフトシェル状態なら
食べれたかもしれないそうだね。
8. 匿名処理班
古生物は一時目を離すと姿形が激変するよな
あっという間に浦島状態だわ
9. 匿名処理班
>>3
案外まだ未発見のアノマノカリスと同じくらいの地位にいた生物か未発見の硬い殻を砕くほどの歯をもったニッチな生物かもよ
10. 匿名処理班
>>5
口も硬くないって分かってるそうだよ
少なくとも三葉虫の外殻は噛み砕けない
今のところ三葉虫についた噛み跡は
三葉虫同士によって付けられたんじゃないか
って話になってるみたい
11. アユラ
>>2
他の♂と荒らそった際の古傷?
12. 匿名処理班
>>2 >>3
脱皮の際になんらかの異常があった結果かもしれないとか、遺伝的な奇形ではないかと言われ始めているらしい
それ以前にその噛み跡を作ったとされた復元された口器自体が、実際にはアノマロカリス・カナデンシスではなく近縁種のものだったらしい
>>8
言うてアノマロカリス・カナデンシスは、エビ化石+なまこ化石+クラゲ化石が実は一体でしたって言う基本形がはっきりしてからは、そこまで大きく変化はしてないけどね
一応学術論文として発表されているものとしては、額に甲皮があって目は頭の上部ではなく横に付いている形になってたりするけど
13. 匿名処理班
脱皮直後の三葉虫が偶然齧られてたまたまそれが化石になったって聞いたけど
現生の鮫やシャチなんかは獰猛で顎も強い捕食者だけどわざわざ亀を主食にはしてないでしょ?アノマロカリスも消化吸収しやすい獲物が他に色々居るのにわざわざ三葉虫をメインターゲットにゃしないってだけの話
ついでに一つフルディア類の中のアノマロカリス科のカナデンシスであって似た姿の仲間が色々見つかってるけど全てがアノマロカリスってわけじゃないのよ
14. 匿名処理班
茹でて食ったら美味いのかな?
酢醤油付けて
15. 匿名処理班
アノマロカリス食べてみたい
プリプリで美味しそう
タイムトラベルしたら食べたい物リストの一つ
16. 👺
それは、ゲスの勘ブリア
17. 匿名処理班
本来は底生で、あの付属肢は砂に埋もれてるゴカイなどを掘り返すためのものじゃないかと思ってる。
18. 匿名処理班
脱皮直後の個体を齧ったなら可能性はあるけど、以前からアノマノカリスの口は固い物は無理とは言われてたし。
無理に固い奴を狙わなくても柔らかい生物もたくさんいただろうし問題はなかったのかな。
19. 匿名処理班
そもそも外骨格が固かったらもっとたくさんの化石が完全な形で出土するし、固いものも食べれるってことは生き残れる確率も高くなるはず
以前からアノマロカリスって出土してたけど、出土してたのはほぼすべて触腕?みたいなアレしか出土してなくてエビだと間違われていたからだからね
20. 👺
>>2
貴方が〜噛んだ〜♪
21. 匿名処理班
アノマロカリス「見掛け倒し言うなあ‼︎」
22. 匿名処理班
アノマロカリス自体存在していたかも怪しく成る
23. 匿名処理班
確かにあの大きさと運動能力でバリバリ三葉虫食ってたのなら、
三葉虫ただの動きの鈍い餌でしかないから毒でもない限りすぐ絶滅したやろうしな。
24. Undertale愛好家
マジか~意外だわ
25. 匿名処理班
>>6
タコは口は堅い嘴状になっているし、触腕についてはむしろ柔らかいからこそ把持するときに対象の形状に合わせられるし強い力で掴んでも触腕を壊すような力が逃げる。
アノマロカリスの前部付属肢はタコの触腕ほど柔軟でないのと、特に下方に突き出した棘が固いものを掴む際にネックになる。
26. 匿名処理班
溶解液を発射して獲物を溶かして食うんだろ
27. 匿名処理班
♪アノマノカリスにじわじわかじられる〜
「兄者〜」
28. 匿名処理班
>>13
フルディアは類ではなくアノマロカリスと同じ分類レベルである科
フルディア科やアノマロカリス科を内包している上位分類はラディオドンタ類
29. 匿名処理班
じつはああ見えて三葉虫やわらかかった説
月餅みたいな食感でアノマロカリスも安心
30. 匿名処理班
>>28
こりゃ失敬
31. 匿名処理班
近縁種?のカギムシの口も
硬い甲羅を噛み砕けそうも無いしな