太平洋の深海で未知なる生物が5000種以上発見される
 ハワイからメキシコにわたって伸びる太平洋の「クラリオン・クリッパートン海域(Clarion–Clipperton Zone:CCZ)には、手付かずの自然と豊富な鉱物資源が大量に眠っている。

 そうした鉱物資源は人類にとって有用なものである一方、下手に開発を進めれば豊かな生態系を破壊してしまいかねない諸刃の剣でもある。

  それを把握するために行われた調査によると、そこには5,578種の深海生物が生息していることが分かった。そのうちの88%〜92%(約5000種)はまだ知られていない、全く新しい種であるという。

 『Current Biology』(2023年5月25日付)に掲載された研究によると、この海域は、他の地球のどの地域にも見られない独自の生態系を持っている可能性があるという。
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有用鉱物が手付かずのまま大量に眠るクラリオン・クリッパートン海域

 東太平洋のハワイからメキシコ西部のバハ・カリフォルニア半島にわたって東西に長く伸びる、クラリオン断裂帯とクリッパートン断裂帯に挟まれた広大な「クラリオン・クリッパートン海域(Clarion–Clipperton Zone:CCZ)は、世界でもっとも手つかずの自然が残る海の1つだ。

 インドの2倍もの面積(約600万平方キロメートル)があるこの海域には、豊富な鉱物資源が眠っていることでも知られている。

 水深約4000メートルの深海底は柔らかい泥でおおわれており、銅・ニッケル・マンガンといった無数の鉱物がゴロゴロと転がっているのだ。

 そうした鉱物は資源不足を解消する貴重なものと期待される一方、実際にそれを開発してしまえば、これまで人間の影響を受けてこなかった生態系を壊滅させかねない危険がある。

 それゆえにこの海の資源開発はきちんと調査を進めた上で、慎重に行わねばならない。
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クラリオン・クリッパートン海域(Clarion–Clipperton Zone:CCZ)の位置 / image credit:public domain/wikimedia

クラリオン・クリッパートン海域に豊富な新種を発見

 クラリオン・クリッパートン海域には、いったいどのような生き物が生息しているのか?

 ロンドン自然史博物館の研究チームはこれを知るために、リモート操作艇のような先端技術や箱を海に沈める古典的な方法まで、さまざまな手法で調査を行った。

 その結果、10万以上の生物と遭遇。そのうち5578種が見たこともない種あることが明らかになったのだ。それどころか、ここに生息する生物種の88%〜92%が新種だろうと推定されている。

 そんな命豊かなクラリオン・クリッパートン海域で一番よく見られたのが、節足動物、海の蠕虫、棘皮動物(ウニやヒトデなど)などだ。

 また海綿動物もよく見られ、お風呂のスポンジや花瓶のようなものまで、美しいものばかりだったとのこと。

 調査に携わったミュリエル・ラボーン氏のお気に入りは、小さなシャンデリアを思わせる「ガラス海綿類」であるそうだ。
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ロンドン自然史博物館コレクションの深海標本/ image credit:Trustees of the Natural History Museum London

深海鉱物採掘が生態系にもたらす影響

 研究チームは、クラリオン・クリッパートン海域の生物多様性をもっと理解するために、さまざまな研究者による学際的な共同研究を行うことが大切だと述べている。

 また、新たに発見された生物について、それらが周囲の環境とどう関わっているのか明らかにすることも重要であるとのこと。

 例えば、特定の種がなぜ特定の地域に集まってくるのかなど、この海の生物地理学をもっと調べる必要があるそうだ。
クラリオン・クリッパートン海域には多くの素晴らしい種が生息しています。近い将来、採掘がはじまる可能性を考えると、まだよく知られていない生息地について知ることは二重の意味で重要です(ラボーン氏)
References:Deep sea surveys detect over five thousand ne | EurekAlert! / How many metazoan species live in the world’s largest mineral exploration region?: Current Biology / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1.

  • 2023年05月30日 20:40
  • ID:9oANAGJE0 #
2

2. 匿名処理班

  • 2023年05月30日 20:50
  • ID:.M7qaAs70 #

そのうちエビラみたいのが見つかりそうw

3

3. 匿名処理班

  • 2023年05月30日 21:47
  • ID:Or2pMrME0 #

ガラス海綿類ってことはカイロウドウケツみたいな奴か
あれ凄い綺麗だよね

4

4. 匿名処理班

  • 2023年05月31日 07:48
  • ID:o19eCjgh0 #

海ってほとんどが解明されてないところが多いんでしょ?
ものすごい水圧と光の差さない環境がかなり阻んでいるらしいけど、この記事にある様に未知の存在がまだまだいそうでロマンがあるよね。

5

5. 匿名処理班

  • 2023年05月31日 10:47
  • ID:gtwPrFr30 #

トップのAI生成画像が完全にクトゥルーじゃないですかw どんな条件を入力したんだろう

6

6. 匿名処理班

  • 2023年05月31日 14:31
  • ID:JOfozIHY0 #

そのうちガタノゾーアみたい奴とか闇の三巨人の石像みたいなのがみつかりそうだな

7

7. 匿名処理班

  • 2023年05月31日 15:34
  • ID:mu6EyyLG0 #

>>5

ぶっちゃけZOOって打っただけでも架空の化け物作り上げますよ。AIの画像生成って。

8

8. 匿名処理班

  • 2023年05月31日 16:45
  • ID:nKVKzBii0 #

>>4
単純な面積で考えても高く見積もって5パーセントしかわかってないらしいね。
海水の容積、つまり深さも考慮すればむしろ全くわかってないほど。
仰るとおり膨大な水圧と暗闇に阻まれていて、下手すれば火星探査より難易度高い。

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