
晩年は様々な病気に苦しみながら、 1827年3月26日、56歳で亡くなった。その死因は諸説あり、アルコールの過剰摂取や鉛中毒などによる肝硬変だったのではないかと言われていた。
今回、マックス・プランク進化人類学研究所やケンブリッジ大学などの研究チームは、ベートーヴェンの遺髪に含まれるDNAを調査し、正確な死因の分析を行った。
『Current Biology』(2023年3月22日付)で発表されたその結果によると、彼がB型肝炎ウイルスに感染していたことが判明したそうだ。
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残された毛髪からベートーベンの死因を探る
今回の研究では、古いDNAを解析する最新の技術で、ベートーベン本人の遺髪の遺伝子が調べられている。交響曲第5番「運命」や交響曲第9番「合唱」など数々の名曲を残したベートーベン(1770年 - 1827年3月26日)は、日本では「楽聖」とも呼ばれるほど音楽史において極めて有名で重要な作曲家の一人だ。
また、27歳の頃から耳が聞こえなくなっていく難聴に悩まされ、ほとんどの聴覚を失ってしまった。
それだけでなく、慢性的な腹痛や下痢に苦しみ、アルコール依存症が疑われるほどお酒が好きだったなど、健康に悩まされたことでも知られている。
死後に行われた解剖では、肝臓・腎臓・脾臓などの内臓の状態がひどく悪かったことが明らかにされている。

ベートーベンの死因はB型肝炎だった可能性
今回の調査では、そうした難聴や胃腸障害を引き起こした決定的な原因は見つかっていない。だが肝臓病の原因になる遺伝的なリスクが数多く見つかっている。しかもベートーベンは死ぬ少なくとも数ヶ月前、B型肝炎ウイルスに感染していたようだ。
マックス・プランク進化人類学研究所のヨハネス・クラウゼ氏は、「これが死につながった可能性が高い」とプレスリリースで説明する。
彼がウイルスに感染した理由は不明だが、B型肝炎ウイルスは、母子感染、感染者との性交、あるいは感染者の血液に直接触れることなどでうつる。
特に血液感染の場合、注射器の使い回しといった不衛生な医療器具などからもうつることがある。
その一方で、従来言われていたようなベートーベンの鉛中毒説が疑わしい可能性が浮上している。
かつてベートーベンの髪の毛から大量の鉛が検出されたと発表されたことがあった。
今回、その研究で分析された髪の毛を調べてみたところ、本人のものではなく、女性の髪の毛であることが判明したのである。

ベートーベンの毛髪からわかった様々な秘密
ベートベンの遺髪は、彼の一族に関する面白い秘密も明らかにしている。じつは現代にもベートーベンの一族とされる人たちが存在する。
今回の研究ではそうした人たちの遺伝子も調べられたが、そこから父方の誰かが不倫をしていたらしきことが発覚したのだ。
というのも現代の親族5名の中に、ベートーベンと同じY染色体を持つ人物がいなかったからだ。このことは、ベートーベンの父方の誰かが妻以外と子供を作っただろうことを示しているという。
またベートーベンはドイツ出身とされているが、実際に彼の遺伝子は、現代のドイツのノルトライン・ヴェストファーレン州の人たちとよく似ていることが判明している。

photo by iStock
今回の研究では、ベートーベンの遺髪から、彼が遺伝的に肝臓のリスクを抱えており、B型肝炎ウイルスに感染していたことも明らかになった。こうした要因に加えて、過剰とも言えるアルコール摂取を続けた結果、重い肝臓病になって死んだと考えると辻褄があうと研究チームは結論づけている。彼の父親もまたアルコールが好きだった。
ベートーベンの遺伝子をさらに研究すれば、B型肝炎ウイルスに感染した時期などをもっと詳しく解明できるかもしれないとのことだ。
References:Beethoven's death: Whole-genome sequencing from hair reveals Hepatitis B / Scientists sequence Beethoven's genome for clues into his painful past / Ludwig von Beethoven’s genome sheds light on | EurekAlert! / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
”このことは、ベートーベンの父方の誰かが妻以外と子供を作っただろうことを示しているという。”
→Y染色体が受け継がれてないなら、子供を作ったのは「妻以外と」でなく「夫以外と」では?
2. 匿名処理班
偉人とはいえ個人の死因を数百年たって知ってどうする、という思いと、それでも人間は知れることは何でも知りたいんだろうなと言う思いを同時に感じる出来事。
3. 匿名処理班
>彼がB型肝炎ウイルスに感染していたことが判明したそうだ。
意味が分からない
B型肝炎ウイルスに関するDNA情報の解読は可能だろう
だが、感染していたと断定することは、B型肝炎ウイルスに関するDNAが感染前と感染後で変わると言っているのと同じだから、あり得ねえ
4. 匿名処理班
父方親族男性の妻が
よその男の子供を産んだから
ベートーヴェンとは違う
Y染色体を持っているのでは
5. 匿名処理班
ベートーベンは1802年に医者に自分の死後に病気を特定し共有してもらうよう記述して弟に渡したハイリゲンシュタットの遺書ってのを残してる。
6. 匿名処理班
>>3
毛髪からB型肝炎ウイルスのDNAが検出されたってことでしょ。
B型肝炎の検査には爪や毛髪を用いる方法もあるから。
7. 匿名処理班
>>3
いや、毛髪や爪からB型肝炎ウイルス(HBV)自体のDNAを検出したってことじゃない?
日本でも東邦大学とかで研究しているみたいよ?
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K08451/
8. 匿名処理班
次はモーツァルトの死因を知りたい
9. 匿名処理班
こんな研究に公金が使われていたとした
、由々しき問題だわ
この研究の社会的必要性ってなに???
10. 匿名処理班
次はモーツァルトが亡くなった原因を知りたいな
11. 匿名処理班
>>3
意味がわからない
誰か彼の疑問を解読してくれ
12. 匿名処理班
ベートーベンの子孫にHBVに弱い因子があった
だから彼は肝Bで死んだのだろう
なお子孫に庶子の因子が混ざってる(例えば弟は腹違いとか)
当時の感染原因は性行為が多いと個人的に予想してる
13. 匿名処理班
あらまー。
では彼の母親は誰か分からないってこと?
それに医学的な意味でのベートーベンの子孫は居ないのか。
14. 匿名処理班
>>9
日本でもあの武将の死因が〜とか定期的にあるやろ?
歴史に名を残すと死因やら何やらといつまでも人々の耳目を集めるんや
生きてるのに忘れ去られてる奴には理解できない次元やで
15. 匿名処理班
>>10
モーツァルトの墓の場所は
不明なんじゃなかったっけ❓
16. 匿名処理班
>>3
ID:qUjrv39u0
他記事でも分かんない分かんないなんでなんでのコメントばかりだな
生きてる理由が分かんないのか?
17. 匿名処理班
>>9
歴史的な偉人について研究するというのは
遺跡の発掘なんかと似たようなものだと思う。
文化的な意義が大きい。
18. 匿名処理班
>>1
ほんそれ。
あと、「ベートーベンの父方」(実際は母方)て書き方もおかしくないか。それだとベートーベンより前の世代って意味になっちゃうから、ベートーベンの時には既に違う染色体になってることになるわけで。ベートーベンと現代の子孫との染色体の不一致の理由にはならなくなる
19. 匿名処理班
>>9
研究ってのはね、直接すぐに何かの役に立ちそうなことをやるだけじゃ、範囲が狭まって知の蓄積が非常に偏り、先細る一方なんですよ。
基礎研究を含め、別段何かの役に立ちそうなわけでもないことを追究していくのが学問のあるべき姿。
20. 匿名処理班
遺伝学の研究をするにあたって、学者がある家系を7代調べると
途中で絶対どこかに父親が違うことになってしまうそうだ
ベートーベン家も例外に非ず、ってことだわな
21. 匿名処理班
聴力をなくしたのは娼婦を買い、梅毒に冒されてたと聞いてたけれど、、、
22. 匿名処理班
酒好きで不特定相手の性行為が好きな、才能以外はだらしないおっさんだったんかな
エリーゼも関わらなくて良かったとホッとしてるでしょう