
フランス国王ルイ16世は、在位中にフランス革命が起き、1793年に斬首された。それを見ていたパリの群衆は、死んだ王の血に自分のハンカチを浸すために、殺到したという。
時は流れて21世紀、あるイタリアの家族が、この言い伝えが本当なのかどうかを確かめるために、その血痕をDNA鑑定にかけた。
この家族が1世紀以上も所有していた、中身をくりぬいたひょうたんには、こう書いてあったという。
「1月21日、マクシミリアン・ブルダルーが、ルイ16世が斬首された後、その血に自分のハンカチを浸した」
フランス革命の英雄たちの肖像が刻まれたひょうたんの中に、血染めのハンカチが納められていたというのだ。これは本当なのだろうか?
ハンカチの血痕はルイ16世のものなのか?
2009年、この家族は、古代DNA分析で世界的に有名な古生物学者のカルロス・ラルエサ=フォックスに依頼し、このハンカチの血痕がルイ16世のものなのかを調べた。
この作業は、簡単なように見えて実はそうではない。
王族のものとされるDNAを比較するために、ブルボン家の血液サンプルを見つけ出すのは容易なことではなく、結果的に、学術的に激しい論争が巻き起こることになった。
ルイ16世の息子のミイラ化した心臓から、サンプルを採取することは不可能だった。父親から息子に受け継がれる、Y染色体を抽出することができなかったからだ。
そこで、ラルエサ=フォックスは、アンリ4世のものとされる頭部のミイラからのサンプルを使った。
1610年にアンリ4世が亡くなったとき、遺体は防腐処理されて埋葬されたが、革命のときにその墓が荒らされて、頭部が行方不明になってしまった。
1900年代になってから、この頭部がオークションに出品され、再び世の中にその姿を現したという経緯があったのだ。

徹底したDNA解析が行われる
相当怪しげなこれらふたつの遺物(血痕のついたハンカチとアンリ4世のものとされる頭部)は、徹底したDNA解析にかけられることになった。『Forensic Science International』誌に発表された記事によれば、このふたつには確かになんらかの姻戚関係があると専門家たちが結論づけている。
法医学者のフィリッペ・シャルリエは、これ以上、疑う余地はないとまで言っている。だが、それ以上の目新しい事実はとくにない。
だが、2013年の報告では、アンリ4世の存命の子孫3人の血液の分析も行い、頭部も血液も当人のものではないという結果が出た。
ある遺伝学者は、血液は100%オリジナルではなく、DNA分析から、頭部もアンリ4世のものではないと、主張している。

ハンカチの血痕はルイ16世のものではないと結論
だが、これで終わりではなかった。研究者たちはさらに血染めのハンカチから、全ゲノム配列を解読し、"おそらく"ニセモノだと結論づけた。当時、ルイ16世はドイツやポーランドの先祖のように、非常に背が高く、青い瞳の王として描かれていたが、実際の血液サンプルは、低身長で茶色の瞳のフランスやイタリア系の血を引く人間のものであることを示していたのだ。
しかも、例のひょうたんの中には、少なくとも3人の別人のDNAサンプルが含まれていたという。
結局、ひょうたんと血染めのハンカチは、18世紀の詐欺師がでっちあげたものだった可能性が高いようだ。
あるいは、DNAが一致しないのは、王族の不義が原因の未知の人物のせいかもしれない。
References:A Hollowed-Out Gourd Contains the Blood of Louis XVI. Or Does it? / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
まさか未来になってウソがばれるとは詐欺師も想定外だったな
日本の河童にしろ人ってネタを作るのが得意だ
2. 匿名処理班
西遊記の金角銀角が持ってたアレ的な奴ですか?
3. 匿名処理班
偽物だったのは残念だが瓢箪のデザインは一寸良いね
4. 匿名処理班
マリーちゃんのぽっちゃりした旦那さんはいいやつだったらしい。こんなあつかいされるなんて・・・
5.
6. 匿名処理班
人魚のミイラも
レントゲン撮影や法医学で
猿と魚の死骸を繋ぎ合わせたインチキもんだと
判明したし
7. 匿名処理班
西洋にも瓢箪があるのか…(なんとなく日本とか中国のイメージだった)
8. 匿名処理班
※4
マリーちゃんの亭主より末の息子の方が可哀そうやで
9. 匿名処理班
実は山田ルイ53世の血だったりして
10. 匿名処理班
>>4
処刑直前に監禁されて運動不足だったから太っただけで本当は細身で長身のハンサムだったみたいね
彼の人物像は散々印象操作されたけど、本当は国民思いの君主でむしろ国内の改革に積極的だった(でも先代までの負債が大きすぎてどうにもできず、処刑に至った)
フランス革命自体も最初のうちは実は貴族同士の権力抗争で、その後は血みどろの内戦に突入していった
何気にフランス革命って庶民向けプロパガンダ合戦の場だったんじゃなかろうか、その結果実情から乖離した風聞が横行する様になり、今も残ってたりする
(「パンがなければお菓子を食べればいい」もその一つ、実は言い出しっぺはマリーじゃない)
11.
12.
13. 匿名処理班
ハンカチに人の血を浸けてるのがなー
豚の血でもそれとわからないのに
昔、時代劇(大岡越前?)で刀の血痕を検める場面で「先日、夜襲ってきた犬を切った」みたいに誤魔化そうとしたら
『切っ先は犬の血が付いていますが、根元は人の血です、蘭学によりわかりました』とカマをかけて
「まさか、そこまで医学が進んでいるとは…」って自白を誘うのがあったな
(もちろん、当時はそんな技術はないからね、現代の創作だけど)
まあ、鑑定されることもないのに人血を使ったのは、ある意味凄いという話
14. 匿名処理班
パンが無ければマカロン食べればいいじゃない? マリー
15. 匿名処理班
※8
高校時代の歴史の先生は、ルイ17世がどうなったか質問した生徒に、良い生涯ではなかったことだけ教えて「調べようと思った人は、覚悟して調べてください」みたいなことを言ってた。その時は斬首された王様の子供だし不幸な一生だよなあ、と思って調べなかったんだけど、数年前にWikipediaで読んでトラウマになった。あれは授業で話せないわ。
16. 匿名処理班
存命の子孫のほうが実は偽物って可能性はどうなんだろう
17. 匿名処理班
※15
いい先生だ
18. 匿名処理班
※15
ルイ17世調べてきた…朝から泣きそう。
パルモちゃん記事にしてー
※7
シャーロック・ホームズのパイプも瓢箪。
19. 匿名処理班
ベルばらでは17世の真実は描けなかったものね
少女が読むには限界を超える
20. 匿名処理班
ちなみにアンリ4世の遺体がなぜ頭部だけでオークションに出品されていたかと言うと、フランス革命時に墓を掘り起こされた上に遺体の首を刎ねられた上に持ち去られたから。やっぱあの革命異常だよ…