
ということは、空気中の環境DNAを調べれば、その周辺に生息する動物を特定することができるはずだ。
そう考えたデンマークとイギリスの研究グループは、動物園に行き、数十種の環境DNAを掃除機のようなもので吸い込み、分析する手法を考案した。
その結果、何の動物のDNAかを特定することができたという。
この手法を使えば、絶滅が危惧される動物や、地域の生態系に悪影響を与える侵略的な外来種の分布を把握するうえで、強力なツールになると期待されている。
広告
そこにどんな動物が生息しているかを把握することの重要さ
ある地域の生態系を守るには、そこにどのような動植物が存在するのかきちんと把握することが大切だ。しかし実際にそれをやるのは、やたらと骨が折れる。人間がどんなに会いたいと願っても、簡単に動物が姿を見せてくれるとは限らないからだ。
だから隠しカメラを仕掛けたり、フンのような動物が残した痕跡を頼りにその存在を確認する。それはとても時間がかかる作業だ。

Photo by Dušan veverkolog on Unsplash
空気中に漂う動物のDNAを採取
そこでコペンハーゲン大学とロンドン大学クイーン・メアリー校の研究グループは、それぞれ独自にその解決策を模索した。それは空気中に漂う「環境DNA」を吸い取って集める、「DNAバキューム」と呼ばれる方法だ。自分の生活を振り返ってみよう。数時間ごとにトイレに行くだろうし、髪をブラシでとかせば、髪の毛が抜け、フケが落ちる。
このように動物は生きながら、排泄物・毛・皮膚・羽といったDNAを含んだ体の断片を周囲に撒き散らしている。
これら「環境DNA」は土・水・空気など、ありとあらゆるところに残っている。だから、これを集めて分析すれば、周辺にいる動物を特定することができる。

photo by Pixabay
数十種の動物の特定に成功
コペンハーゲン大学の研究グループは、フィルターやファンを使ってコペンハーゲン動物園の空気を吸い込み、そこに環境DNAがないか調べてみることにした。「その結果には驚かされました」と、クリスティン・ボーマン准教授は語る。哺乳類・鳥・カエル・トカゲ・魚など、49種の動物を特定することができたのだ。
熱帯雨林のブースでは、ナマケモノやボア、小さな池で飼育されているグッピーといった動物の痕跡が見つかった。
屋外ブースでも、ダチョウ、ホロホロチョウ、キリン、シマウマ、インパラ、オカピ、サイなど、その周辺で飼育されている多くの動物を確認することができた。

image credit:Christian Bendix
動物園で飼育されている動物以外のDNAも混ざりこんでいた
集められた環境DNAのほとんどは、動物園で飼育されている種のものだった。しかし中にはイヌやネコ、ネズミのような園内で飼育されていない動物や、飼育動物に餌として与えられている魚のDNAも見つかったという。
「空気はあらゆるものに触れるので、そこが難しいところです。つまりサンプルが汚染されるリスクが高いのです」と、研究グループのクリスティーナ・リンガード博士は説明する。
そのため、それが動物園で飼育されている動物のDNAなのかどうかきちんと区別するために、検査はきわめて厳密な手法で行う必要があるという。
他方、ロンドン大学クイーン・メアリー校のグループも、ハマートン動物公園で同様の調査を行っている。
こちらでは、園内の70ヶ所で空気を吸い込んだところ、25種の動物DNAを採取することに成功。
そのうち17種は園内で飼育されている動物で、残りは周辺で生息する野生動物のものだった。中には絶滅危惧種であるハリネズミの一種のDNAもあったという。

photo by Pixabay
生物多様性を保全する為の強力なツールに
こうした環境に残されたDNAの分析は、特に水の中の生物を探るためによく使われる方法だ。だが今回の研究は、空気中に漂う環境DNAもまた、陸上の動物を把握するうえで有力な手がかりになるだろうことを示している。
世界的な生物多様性の喪失は、動物種をモニタリングする新たな方法が必要であることを意味します。と、エリザベス・クレア助教(ロンドン大学クイーン・メアリー校)は話す。
空気中の環境DNAは、乾燥した陸上で生物多様性をマッピングし、私たちが動物の分布をモニタリングする力に革命を起こす可能性があります
これを利用すれば、侵略的な外来種を監視したり、洞窟のような近づくことが難しい場所に生息する動物の存在を明らかにすることもできる。
それは地球上に生息する豊かな生物を守るうえで、欠かせない知識や情報をもたらしてくれる。
この2本の研究は『Current Biology』(2022年1月6日付、同1月6日付)に掲載された。
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
色んな物に応用出来そう。ワクワクするね
2. 匿名処理班
49種とは少なすぎ
3. 匿名処理班
機械で「気配」を感じ取るのか・・・凄いな。
4. 匿名処理班
もしかしたらユカタンビワハゴロモのワニみたいな頭部はワニのDNAを空気接種したからなのかも
5. 匿名処理班
ということは我々は常に猫や犬を吸って生きていることになるのでは???この世始まったな
6. 匿名処理班
おならにもDNAは含まれる?
だとしたらおならをしたのが誰かばれてしまう時代が来てしまうのか
7. 匿名処理班
これって微細なタンパク質の破片が飛んでるってことでいいの?
まさかDNAが単独でふよふよしている訳ではないよね?
8. 匿名処理班
新種の動物探しが捗りそう
9. 匿名処理班
「臭い」は物質だしね。
10. 匿名処理班
新型コロナで去年から大気中の細片をPCR検査して調べる研究始まってる。
ついでに専用の捕集装置も売り出されてる。
研究終わって実用化したのか、先行して売ってるのかわからないけど。
11. 匿名処理班
UMAが存在しないとバレてしまうね。
12. 匿名処理班
何年か前にネス湖の湖水を採取して、未知のDNAが見つかるか調査してたはず。カラパイアの記事じゃなかったかな? ウナギだかのDNAが見つかって、ネッシーの正体は巨大ウナギではないかと言われてた。
13. 匿名処理班
この空気中のDNA解析ってひょっとして野生生物が鼻でやってる事なのでは
14. 匿名処理班
ゴキブリ
15. 匿名処理班
これ湖とかでやってるのと発想は同じだよね
16. 匿名処理班
辞書付きの探知機が一般発売されたらお外の散歩が楽しくなりそうだなー
17. 匿名処理班
小学生のころ、山や林では動物のフンが乾燥して粉々になって空中に浮遊した小さいフンが沢山含まれてるから山や林で空気が綺麗っていうのは嘘だってみんなに教える先生がいました。
まぁ一抹の真実は含まれているけど、考えて楽しくはないよね。
18. 匿名処理班
ビッグフットが居るとされてる所で空気調べれば居るか居ないか分かるって事か
モンゴリアンデスワームの居る所でやって欲しいぞ
19. 匿名処理班
ニホンオオカミみたいな、絶滅したとされているけど見たって人が絶えない種の再発見に一役買いそうだね。
20. 匿名処理班
人間が多く集まるところも
当然DNAが舞ってるんだよね………
21.
22. 匿名処理班
俺らは意図せずいろんなDNAを摂取してるわけか 仙人が霞を食うってこういうことかな
23. 匿名処理班
※5
1年以上前に亡くなったうちの猫の毛がまだ家の中から見つかるから まだ猫を吸ってることになるのかな。
※6
いくら洗っても肛門には乾燥した便が付いているのでオナラでそれが吹き出すことは確実です。