現代の私たちを、これまでになく恐竜に近づけてくれるすごい発見があった。
古生物学者たちが、非常に保存状態のいい恐竜の化石を発見したのだ。限りなく長い年月がたってるにもかかわらず、顔の皮膚が損なわれることなくきれいに残っていた。
この恐竜は「ボレアロペルタ(Borealopelta)」で白亜紀前期を生きたノドサウルス科の曲竜類である。
顔の皮膚が残った状態で発見された恐竜の化石
ラテン語で「Borealopelta markmitchelli」と呼ばれるボレアロペルタは、ノドサウルス科の曲竜類で、 2017 年に太陽の光の中に戻ってきた。その化石は、カナダのアルバータ州北東部のサンカーエナジー社が所有するフォートマクマレー北部のオイルサンド炭鉱から発見された。
非常に素晴らしい保存状態で、この恐竜には、背中のキザギザの背板、手足のほとんど、鎧のような皮膚、内容物が残った胃が、厳しい化石化のプロセスを経てもなお、ほぼ完璧に残っていた。
なによりの目玉は、ほとんど損なわれていない顔の皮膚だ。
ロイヤル・ティレル博物館の恐竜学芸員、ドナルド・ヘンダーソン博士によれば、これほど保存状態の良いものを発見できる確率は10億分の1だという。
稀に見る保存状態の良さのボレアロペルタの化石 / image credit:Royal Tyrrell Museum of Palaeontology
ボレアロペルタは、1億4500万年前から1億500万年前の白亜紀初期に生息しており、白亜紀初期の生態を理解する重要な鍵であり、この種がその環境の中でどのように生きていたかを理解することができる。
発見以来、科学者たちは、その解剖的特徴、消化管の内容物、鎧のような皮膚を研究して、この生き物についてまったく新しい洞察を得ている。
1億500万年前のボレアロペルタの化石 / image credit:Royal Tyrrell Museum of Palaeontology
好条件が重なった奇跡の化石
この化石は、かつては古代の海だった場所で発見された。四つ足生物は陸上生物だったはずなので、まったくの驚きだった。ヘンダーソン博士は、あまりに予想外のこの発見について説明した。
「この個体は死んでから、水深50メートルよりも深い海の底に沈んでいたことがわかります。というのは、グラウコナイト(海緑石)という、特殊な緑色をした燐酸塩鉱物で保存されていたからです」
「これは、50メートルを超える水温の低い場所でしか、こういうことは起こらないのです」
ボレアロペルタの復元予想図 / image credit:Julius Csotonyi / Royal Tyrrell Museum of Palaeontology
この恐竜は、うまいこと条件が重なって、非常に激しい"膨張と浮遊"に耐えたのだろう。死後に死骸にガスが蓄積して浮力が保たれ、洪水が発生して、川から海へと流された可能性がもっとも高い。
ガスが全部抜けてしまうと、今度は死骸は海底に沈む。鎧のような皮膚のおかげで海の掃除屋に食いつくされるのを免れ、ほとんど原形を留めたまま残ったのではないか。
「生物活動が非常に低い海底の条件が、ほぼ完璧な保存につながったのでしょう」ヘンダーソン博士は言う。
組織標本の上級技術者マーク・ミッチェル氏は、石にはりついていた化石を分離するのに、1日7時間、5年半以上にわたって作業を続けた。この作業に、膨大な時間を要したことが明らかになったのだ。
化石の分離作業には膨大な時間がかかった / image credit:Royal Tyrrell Museum of Palaeontology
特徴的な背中の骨板は性的アピールのためのものだった
「この標本がいかにすばらしいものであるか、脅威的な保存状態の生き物だったかがよくわかります」ミッチェル氏は言う。最大の収穫のひとつは、この恐竜の特徴的な背中の骨板がなんのためにあるのかがわかったことだ。
こうした骨板は実際には、天敵を追い払うために使ったのではなく、異性に見せびらかして誘惑するための性的アピールの道具だったという。
さらに研究が必要だが、この発見により、古代世界の秘密の解明にさらに一歩近づいたことは明らかだろう。
References:Scientists found a dinosaur with skin on its face still intact / Researchers look a dinosaur in its remarkably preserved face | Ars Technica / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2023/03/09)考古学者を古生物学者と変更して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
アルマジロのよう
2. 匿名処理班
古生物学者の想像図とほぼ同じだったのですごいと思う
3.
4. 匿名処理班
よかった
少なくともこの恐竜はふさふさの羽毛が生えた間抜けな外見にされずに済んだ
5. 匿名処理班
これで水玉模様だったりしたら今までの説全部ひっくり返って面白そう
6. 匿名処理班
今更な記事だな
7. 匿名処理班
世界最古の「なめし皮」ですね
8. 匿名処理班
ヨロイ竜はやっぱ皮膚が硬いから
残りやすかったというのもあるんかな。
半分外骨格みたいなもんだもんね。
9. 匿名処理班
羽
なし!!
🤗
10. 匿名処理班
karapaia.com/archives/52239131.html
せんせー、五年前にも記事にされてますので、そのときのもあわせて読めるようにした方がわかりやすいのでは
11. 匿名処理班
何年もかけて丁寧に剥がしたのも偉い
12. 匿名処理班
やはり爬虫類は格好良いな
13. 匿名処理班
化石というより石にされた竜のようで胸熱
14.
15. 匿名処理班
現代の技術で皮膚の色が何色だったか判ったりしないかな
16. 匿名処理班
恐竜のミイラって何故か呼ばれる有名なやつや
17. 匿名処理班
かっけぇ(・∀・) ジェラシックパークのセットでありそう
18. 匿名処理班
> 性的アピールの道具
…ということがどうして明らかになったのでしょう…❓
19. 匿名処理班
像やクジラの骨格から鼻が長いとか頭が大きいとか再現できなさそうだったので、恐竜も少し心配していたが想像図通りで安心した。
20. 匿名処理班
>>11
岩石から化石を削り出す仕事を本で読んだことあるけど、技術と根気がものすごいと思った
恐竜発見!とか言って表舞台で露出する大学教授よりも、私はこういう技術者を尊敬してしまう
これを削り出した人、高額年俸貰ってるといいな
21. 匿名処理班
>>2
鎧竜系は普通の化石でも体表の装甲板が残ってる場合が多いから
外見を想像しやすいのもあるんだろうね。
ゾウみたいに骨と外見との乖離が大きい動物だと
骨だけで正確な復元をするのは難しいだろうけど。
22. 匿名処理班
>>15
稀に色素が残る化石もあるらしい。
シノサウロプテリクスの尾は
栗色〜赤褐色の縞模様だったと推測されてるとか。
ただ色素は失われやすいから今の技術だと
復元の精度はあまり高くはない模様。
でも昔の「完全な想像」からはかなり進んだと言えるはず。
23. アユラ
せめて、歯の造りが分かれば食性も分かるのに。
※多分、草食っぽいから草食なのかもしれない。
24. 匿名処理班
皮膚が完璧に残っていたことで、背中の骨板が性的アピールに使われたとわかった?
オスだったのかな?
そこんとこもっと詳しく知りたいなぁ。
25. 匿名処理班
>>23
ボレアロペルタは良好な保存状態のおかげで、胃石と一緒に内容物まで化石化してた。
殆どがシダでソテツが少し。木炭もいくらかあったことから、森林火災後の土地で食事していただろうと言われてる。
26. 匿名処理班
期待を裏切らず恐竜そのものの佇まい
これでうさたんやモモンガたんみたいな可愛い外見だと
古生物学者が「あー、見なかったことにしよう」とか言って隠しちゃうかもしんない
27. 匿名処理班
竜
28. 匿名処理班
>>26
現代に於ける学術的な化石の発掘は、その発掘場所の策定の時点から既に記録は始まっている
地中のどの位置にどのように埋まっていたかというのも重要な情報であって記録される
大体、外見が分かるような化石が発見されたら、それがどのようなものであれ今回の件のように全力で歓迎して、研究に血道を上げるのが古生物学者
古生物学者も人間である以上、その時代の知見に引き摺られた思い込みによる過ちや失敗を犯しはする
収集した化石を時間的に研究出来ず、後代の学者が化石棚に収納されたものから新種が発見されたり、過去の研究の過ちがはっきりすることもある
研究の為に貴重な標本を毀損してしまうばあいもある
けれど、それでも、古生物学者は、手に入る化石等を元に懸命に研究をしている
研究に奔命している古生物学者を、思い込みで軽々に毀貶するのはいかがなものか
29. 匿名処理班
皮膚があると一気に生き物って実感が増して不思議な気持ちになるな
人間が生まれるずっと以前からこの星で暮らしてて、それでも一度も会うことなく滅びていった種族と1億年の時を経てついに対面したって考えるとすごい
30. 匿名処理班
>>4
羽毛生えてると何故間抜けに見えるんだ?
31. 匿名処理班
>>18
それが判りました!って根拠が書いてないから説得力皆無だよね。
トゲの大きいのと小さいのと並べてメスがどちらを選ぶかの試験でもしないことには分からないのでは。
32. 匿名処理班
>>17
ジュラシックをジェラシックって言ったり書いたりする人がホントに多いんだけど、なんでなんだろ
33. 匿名処理班
羽毛…ナシ!
34. 匿名処理班
リオレウスじゃん!かっけえええええええええええええ
35. 匿名処理班
>>32
日本人はその方が発音しやすいから
36. 匿名処理班
>>4
研究結果や事実よりも自分の固定観念こそが絶対だと思い込むこういう人間が歴史だのを捻じ曲げるんだなあ
37. 匿名処理班
>>36
羽毛恐竜が存在する、のと、全ての恐竜が羽毛を持つ、は=で括られない
現在の所、鳥盤類の下位グループである角脚類に羽毛恐竜が発見されてはいる
が、今回のものはそれと同じレベルの下位グループである装盾類(亜目)に属しており、そこに属するグループからは羽毛の痕跡は発見されていない
研究結果や事実を正確に調べずに自分こそが正しいという態度も、発見や歴史をねじ曲げる第一歩
尤而效之、罪又甚焉
38. 匿名処理班
>>28
まじめか!
39. 匿名処理班
>>38
まじめか、じゃなくて中生代には小型ほ乳類を中心に生息していたので、恐竜よりもそちらに重点おいて研究されてる方もいる。もふもふのかわいいのがいてもおかしくない。
なによりモモンガによく似たボラティコテリウム(ヴォラティコテリウム)が発見されていているが、>>26のようなことは起こらなかった
40. 匿名処理班
>>38
他人を貶めることへの反論を「まじめか」と揶揄することは、他人を貶めることをジョークとして言い逃れさせるための卑怯な擁護
ついでに言うと、真面目な反論への返しにソレを使うのは、再反論は出来ないけれど相手が間違ってるという印象を植え付けたいための卑劣な手段
その言葉は漫才のボケツッコミでもないかぎり、不快感を催させるだけの自己満足に過ぎない