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世界初、自由に動いているタコの脳波を記録することに成功。未知の脳波を発見

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(著) (編集)

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 タコは無脊椎動物でありながらも驚異的知性を持つことが、これまでの研究で明らかとなっている。その謎を探るべく、様々な研究が行われている。

 賢いだけに測定装置を取り付けるのすら難しいタコだが、このほど、そんな彼らが自由に過ごしているときの脳波を、世界で初めて記録することに成功したそうだ。

 そうした脳波からは、哺乳類に似たものもあれば、専門家ですら見たことのない未知のものも見つかっている。

 『Current Biology』(2023年2月23日付)に掲載されたこの研究は、タコの脳がその行動を操るやり方を知るヒントであるとともに、生物の知能や認知の共通点を解明する手がかりにもなるだろうとのことだ。

測定が難しい、動いているタコの脳波の記録に挑戦

 私たち哺乳類の脳の働きや機能を知りたいのなら、タコはぴったりの比較対象だ。

 高い知性で知られるタコだが、その認知機能は脊椎動物とはまるで違う発達を遂げている。両者を比べてみれば、きっと面白いことがわかるに違いない。

 だがタコの脳波の測定は想像以上に難しい。

 何しろその体はぐにゃぐにゃと柔らかいし、測定機器を固定するための頭蓋骨もない。しかも8本の腕は全身に届くし、なにより賢いので、嫌なものは簡単に取り外してしまうに違いない。

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軟体動物であるタコは高い知能がありながらも、私たちとはまるで違う進化を遂げてきた。それゆえに生物の知能や認知の共通項を探るヒントになるかもしれない / image credit:Michael Kuba

 そこで沖縄科学技術大学院大学をはじめとする研究チームは、飛行中の鳥の脳波を測定するために開発された小型のデータロガー(信号記録をデジタル処理して記憶する観測装置)を使ってみることにした。

 観察対象に選ばれたのは体が大きな「ワモンダコ」で、防水加工をほどこしたデータロガーを腕が届かない「外套膜」の内側に取り付ける。

 さらに電極をタコ脳の「垂直葉(vertical lobe)」と「中上前頭葉(median superior frontal lobe)」と呼ばれる部位に埋め込む。ここは視覚による学習や記憶に重要とされる領域だ。

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モフラージュで珊瑚に身を隠すワモンダコ / image credit:Keishu Asada

哺乳類に似た波形のものもあれば、未知の脳波の波形も

 こうして移植手術をほどこしたタコを水槽に入れて、カメラで12時間ほど観察する。その間タコは自由に水槽内を動き回り、睡眠や食事をしたりしていた。

 観察後、タコからデータロガーを取り外して、データをチェックしてみると、その脳波がはっきり記録されていた。

 その中には、サイズや波形が哺乳類のようなものもあれば、これまでに知られていない非常に長く続くゆっくりとした振動もあったそうだ。

Scientists record first-ever brain waves from freely moving octopuses

 現時点で、そうした脳波はカメラが捉えた行動に結び付けられてはいない。

 だから、未知の脳波がタコのどの行動に関係しているか定かではない。今回の研究では、タコに何かを学習させたわけではないので仕方のないことだ。

 もちろん研究チームはそれに大いに興味を持っている。

 「ここは学習と記憶に関連する領域です。それを調べるには、タコに繰り返し記憶課題をこなしてもらう必要があります。すぐにでもやってみたいですね」と、筆頭著者である沖縄科学技術大学院大学タマル・ガトニック博士は語っている。

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知能に共通する秘密とは?

 もちろん、自由に動くタコの脳波を測定する今回の方法は、ほかのタコにも使える。

 こうした研究を通じて、高度なタコの学習能力や社会性、さらには私たちには想像もつかない体や腕を制御するやり方など、さわざまな疑問を解明できるだろうとのこと。

 それどころか、タコと私たち自身の脳波を比較することで、生物の知能や認知に広く共通することも解明できるようになるかもしれない。

 この研究プロジェクトを主導した現在フェデリコ2世ナポリ大学のマイケル・クバ教授は、「タコはとても賢いのですが、その脳が働く仕組みはほとんどわかっていません」と語る。

 今回考案されたやり方は、タコに作業をさせながら、その脳を覗き込むことができる「エキサイティングでパワフル」な研究方法であるとのことだ。

References:Recording electrical activity from the brain of behaving octopus: Current Biology / Scientists record first-ever brain waves from freely moving octopuses / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1. タコだけに脳波もぐにゃぐにゃしてるんやろうなw

    • +2
  2. 反捕タコ団体が出てきて、非タコ道的行為を辞めるように活動しだすぞー!

    • -1
  3. 解析結果から作り出されたタコ版人工知能が暴走することをこの時誰も知る由がなかった…

    • 評価
  4. 賢くて、美味しい

    …なんか単純に人間換算で何歳くらいとか割り出せるものじゃなさそうだね

    • +2
  5. 昔のタコの祖先は100年ぐらい生きたらしい
    今もそうなら海底に高度な知的文明作ってたかもね

    • 評価
  6. 犠牲(?)になる生き物たちには申し訳ないがこの風潮はあんまり邁進させるべきではないと思う。
    人類も生き物である以上、生きるには他の命を奪わざるをえない上、現代西洋的な倫理観と併せて、ドツボにハマる可能性もある。
    このまま行けば将来的にイスラーム教のハラールみたいに食料に制限がかかることも考えられる。
    あるいは大局的にその方が正しいのかもしれないけど…

    • -1
  7. > 未知の脳波
    火星人「チッ リモートコントロールがバレちまった」

    • 評価

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