
新たな研究によると、月はこのプラズマ圏にも潮汐力(ちょうせきりょく:海水面の水位が毎日ほぼ 2回ずつ昇降し、周期的に満潮と干潮を繰り返す現象)を及ぼして、海の干満のような揺らぎ生み出していることが判明したそうだ。
この研究は『Nature Physics』(2023年1月26日付)に掲載された。
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る地球の磁気圏の内側にある海のような「プラズマ圏」
この研究は、人工衛星が40年にわたり集めたデータを用いて、地球の「プラズマ圏」の形の変化を追跡したものだ。プラズマ圏とは、地球の磁気圏の底にあるプラズマが密集した領域のことだ。

同じ磁気圏内でも、プラズマ圏内ではプラズマの密度が高い。そのせいでこの領域は、磁気圏の底に沈んだような感じになっている。
この沈み込んだ高密度のプラズマ圏と磁気圏のほかの部分との境界を「プラズマポーズ」という。このプラズマ圏を「プラズマの海」と見立ててば、プラズマポーズはその「海面」のようなものだ。
月の引力は海だけではなくプラズマ圏にも影響
そして月の引力は、お馴染みの海水でできた海だけでなく、プラズマの海をも歪ませ、その海面を潮の満ち引きのようにゆらゆらと上下させている。月が潮汐力で、地球の海・地殻・地磁気などに影響することは知られている。しかし、プラズマ圏にまでそのような影響があることは、今回の研究によって初めて明らかになった。
今回の研究で、エトヴェシュ・ロラーンド大学のバラシュ・ハイリグ氏は、複数の人工衛星が1977年から2015年にかけてプラズマ圏を5万回以上横断して集めたデータを分析している。
人工衛星のセンサーはプラズマの濃度のわずかな変化ですら検出できるので、プラズマポーズの位置を詳細にマップ化することができた。
さらに太陽活動周期に基づき、太陽活動が地球の磁気圏に与える影響を割り出し、それをプラズマポーズの揺らぎから差し引く。
するとプラズマポーズの揺らぎは、月によって起きる海の満ち引きとよく似ていることがわかったのだ。そのため、その原因として一番有力なのも月だと考えられる。
今のところ、月がプラズマ潮汐を引き起こす詳しい仕組みはよくわかっていない。だがハイリグ氏は、月の引力が地球の電磁場を揺らがせることで起きているのではないかと推測している。

放射線帯「ヴァン・アレン帯」にも影響か?
この新たに判明した地球と月の相互作用は、磁気圏のほかの領域を理解するヒントにもなるようだ。そうした領域の一例としては、太陽風に乗って届く高エネルギー粒子が地球の磁場にとらわれてできる「ヴァン・アレン帯」がある。
ここでは放射線を浴びることになるため、宇宙のインフラや宇宙で活動する人間にとっては危険なところだ。
ハイリグ氏は、今回観測されたプラズマ潮汐が、ヴァン・アレン帯の粒子分布に影響していると考えている。
そのためプラズマ潮汐をよく理解できれば、そうした領域での活動をもっと容易にすることもできるかもしれない。
また地球以外の惑星においても、衛星の引力がプラズマ圏に影響している可能性があるとのことだ。
References:Lunar modulations | Nature Physics / The moon has a hidden tide that pulls on Earth's magnetosphere, new study reveals | Space / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
医療従事者は生命にも関わってることを実感してます。
2. 匿名処理班
ヴァンアレン帯の記事をバレンタインデーに出す、
中の人の小粋な洒落なんだろうけど、俺は気が付いたぞ
3. 匿名処理班
>>2
バレンタインデー自体忘れてたわ。
なんかあんまり騒がなくなっちゃたね。
4. 匿名処理班
そういえば潮汐力って義務教育では習わなかった気がする。満潮、干潮の仕組みも
一応ゆとり世代ではないのだけれど、それでも親世代と比べると教科書薄くなってたのかな
5. 匿名処理班
こういうのが地球が水の惑星として存在したり生命の進化に関わってくるから面白い