
ちなみに65歳以下では、ペットの有無で認知機能に違いはなかったという。この研究は、『Aging and Health』誌に掲載された。
高齢者に発症する認知症
「認知症」は、認知機能の低下によって行動が逆行してしまう、おもに高齢者が発症する、不可逆的な神経学的症候群だ。現在、アメリカ国民のおよそ580万人が認知症だとだと言われている。近年、高齢者の認知症は減少傾向にあるが、現在の団塊の世代がさらに高齢化すれば、その総数は増加すると予想されている。
認知症のリスクは高齢になるほど増え、患者数は85〜89歳の人が22%、90歳以上の人は33%。それに比べて70〜74歳の人はわずか3%だ。女性のほうが男性よりもわずかに多い。

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高齢者が認知症になりやすい要因
教育や学習が、認知症を発症を予防することは知られている。その他、運動不足、うつ、社会的孤立、心血管疾患、高血圧、慢性ストレスなどの要因を減らすことも認知症予防対策となる。
認知症例のおよそ3分の1が、これらの要因に関連する生活習慣など、修正可能な原因によって起こっているそうだ。

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ペットを飼うことと高齢者の認知機能の関連性を調査
ペットを飼うことは、感情的な支えやストレスの緩和によって起こる、さまざまな健康や疾患という結果に影響を及ぼすことがわかっている生活習慣のひとつの側面だ。多くの高齢者がペットを飼っているが、そういう人たちの潜在的な認知的効果についてはほとんど知られていない。ミシガン大学の神経学准教授で研究著者のティファニー・J・ブラリー氏は言う。
つまり、ペットを飼うことによって、認知機能の衰えを必ず防ぐことができるとははっきり断定できないということです
そこでブラリー氏は、米国人口の高齢化が健康、社会、経済に及ぼす影響を調査するため、50歳以上の米国成人を対象とした大規模調査データ「、健康と引退に関する研究」を分析した。
ミシガン大学が行ったこの研究は、2010年から2年ごとに2万人の被験者グループを調査した。
飼っている動物に関する質問は、2012年の研究にも含まれていて、この論文では、2012〜2016年の間の調査データを分析した。
調査には、「現在、ペット飼っていますか?」、「どれくらいの期間、ペットを飼っていますか?」という質問が含まれている。
この研究では、さまざまな客観テストで認知機能を評価した。
研究者は、これらテスト結果は、総合的な認知評価スコアを作成するだけでなく、被験者を正常な認知力をもつ人、認知障害気味の人、認知症の人に分類するために使用したと説明した。
2010年の研究では、正常な認知力のある人たちのデータのみが分析された。
2012年の結果は、被験者の47%がペットを飼っていると報告されている。その時点で、飼っている期間は、1〜5年が19%、5年以上が28%だった。

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65歳以上で5年以上ペットを飼っている高齢者は認知機能が安定
その結果、65歳以上の高齢者で、5年以上の長期間ペットを飼っている人は、飼っている期間が短い人や、まったく飼っていない人に比べて、認知能力が優れていることがわかったという。研究著者である、フロリダ大学ジェニファー・W・アップルバウム氏はこう語る。
「長期間ペットを飼っている人には、認知機能低下を食い止めるなんらかの保護効果があるのかもしれませんが、これがなぜ、どのようにしてそうなるのかを理解するためには、さらに研究が必要です」
ペットを飼うことと、認知能力との関連は、言語記憶においてもっとも強力に表れた。「継続的にペットを飼っている人は、とっさあるいは後からでも言葉を思い出す能力が高い」と研究者は書いている。
ただし65歳以下の若い被験者を考慮した場合は、これらのグループ間で認知スコアの違いは見られなかった。

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認知機能以外にも糖尿病や高血圧の発症率が低いことも判明
さらに、ペットを5年以上飼っている人は、ペットを飼っている期間が短い、またはまったく飼っていない参加者に比べて、運動量が多く、BMIが低く、糖尿病や高血圧の発症率が低いという指標が示された。長くペットを飼うことは、高齢者の認知力格差を縮める可能性があるようです。今回わかったことが、厳密な統計管理の点でも同じ結果であることに驚きました。とアップルバウム氏は指摘する。
社会人口統計要因の統計モデルを調整して、既知の健康格差(例えば、人種、社会経済的地位など)の影響を、少なくとも部分的に説明できるようになりました
多くの場合、社会的不平等の健康への影響はとても大きいため、ペットを飼っていることによる健康へのプラスの影響が、健康格差を考慮した統計モデルでは消えてしまうことが多いのだ。

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ただし因果関係は明確になっていない
この研究は、高齢者でペットを飼っている人に関する知見に役立つが、因果関係が明確になっていないことを考慮に入れなくてはならない。とくに、精神的に安定していて、認知状態が良好な人ほど、よくペットの世話をすることができるため、ペットを飼う余裕があるという事実もある。
その為、観察結果に違いが生じることがあり、必ずしもペットを飼えば、認知機能の低下を防げるとは限らないのだ。
「私たちの研究の長期的な関連性は、確かに説得力がありますが、このやり方では、真の因果関係をはっきりと示すことはできませんでした」ブラリー氏は言う。
「人間と動物の絆の強さや認知的軌跡への影響などの情報や、こうした関係をとりもつことができる
生物学的メカニズムを含んだ、将来的な追加の研究がまだまだ必要です」
References:Owning a pet is linked to having better cognitive health in advanced age, study finds / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
世話をする側におったらボケにくいって当たり前の話やと思うが
世話される側になると出来ん事がどんどん増えてくから自分の世話は出来る限り人任せにせんようにしとかんとあかんで
2. 匿名処理班
人生の最後の方にも小学校並の義務教育とかあったほうが孤独や認知の予防にならないかな?
地元に残った人は同級生と会えるし
3. 匿名処理班
ペットの種類でも差異あると思うわ
猫と犬じゃ接し方絶対違うし
4. 匿名処理班
本文にも書いてあるけどタイトル詐欺
動物を飼うと心身が健康になるのではなくて
心身が健康だから動物を飼うことができる
5. 匿名処理班
世話をしなければならない
気を付けないといけない
色々脳を使わざる得ないからかな?
6. 匿名処理班
高齢者こそペットを飼うべきだな
7. 匿名処理班
けれども、一人暮らしの高齢者の場合は、生き物を飼うのはたいへん難しいのです。
譲渡会に申し込んでも、まず間違いなく断られるしね...
8. 匿名処理班
情を与え合う相手がいてその相手に自分の世話が必要なら、そりゃ生きがいも責任感も出てくるさ
介護レベルの重い責任だと辛さもあるからまた別だろうけど
9. 匿名処理班
アイボみたいなロボペットだとどうなのかな
10. 匿名処理班
この結果を当たり前だと偉そうに言ってる奴って、今後積極的に養老院なんかで動物の世話をさせたりする方向にこの研究が活かされるとか想像つかんのかね。
11. 匿名処理班
※6
本当に、いろんな意味でペットの重要度が他の世代と違うと感じる。
頭の刺激でもあるし癒しでもあるし生きがいでもあるし。
それなのに同居していたりいざという時に引き取ってくれる若い家族がいない限り、高齢者はなかなか犬猫を引き取らせてもらえない現実。
自分も自分より若い身内はいないし、将来を考えると悲しくなる。
12. 匿名処理班
>>9
効果あるなら親に買いたい
13. 匿名処理班
>>7
お金があるならLOVOT、aiboあたりを導入するしかないですね。
特にLOVOTはパロみたいに臨床目指してるのか(?)老人ホームでの実証実験で「効いた」と報告してます。
14. 匿名処理班
>>12
aiboはわからんけどLOVOTは効いたらしい(デンマーク調べ)
15.
16. 匿名処理班
※7
こういう時こそ、話題になったペットのサブスクみたいのをやったらいいのにと思う。
困った時のサポートや飼い主に何かあった時に返す事ができるなら
高齢者でも安心して飼えるんじゃないかと思った。
とは言え、世話ができないとどうしようもないのである程度の条件は必要になってしまうだろうけど…
17.
18. 匿名処理班
犬飼うと健康的だとは思うわ
ちょっと前まで犬が居たけど毎日数回必ず散歩に行くし、散歩でご近所さんや犬友さんと会って話したり、景色の変化なんか見たりしてた
犬が死んでからは近所を毎日歩くなんてことは一切ないし(田舎なので外出は全て車移動)ご近所さんや犬友さんに会うこともなくなったし、毎日車で同じ道しか通らないから近所の変化(新たに家や店が建つとか取り壊されたとか)は一切わからない
日々のお世話で頭使うのもあるけど、軽い運動や人とのコミュニケーションとかもけっこう得られると思う
19. 匿名処理班
庭先にいる雑種犬一匹だけでも犬好きと知り合えたりきんじよの子連れ親子が立ち寄ったり圧倒的にコミュニケーション機会が増えるし、オヤツあげて懐かれそれも生きがいになるみたい
20. 匿名処理班
追記_馬といっしょにかわいば、りな、再起
21. 匿名処理班
>>1
社会通念上当たり前である事と、研究結果として発表される事の意味の違いくらい分かるでしょ