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英国最古の人間のDNA解読。人喰い人種と狩猟採集民の2つの異なるグループの存在が明らかに

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 イギリスには、最後の氷河期の終わりに、少なくとも2つの遺伝的に異なるグループの人類が住んでいたことが、英国最古の人骨のDNAによって明らかになった。

 最古の人骨は2つあり、片方はイングランド南西部サマセットにある「ゴフ洞窟(Gough’s Cave)」で、もう片方は北ウェールズの「ケンドリック洞窟(Kendrick’s Cave)」で発見された。

 どちらも1万年から2万年前の旧石器時代の終わりごろに生きた人物で、ゴフ洞窟で発見された女性は「儀式的な食人」を行っていたらしき形跡が見つかっている。

 このような興味深い事実のほかにも、2つの人骨からは、最後の氷河期の終わりにヨーロッパや世界へと広まった「初期人類の移動」について今に伝える、いくつもの発見がなされている。

イギリスに移り住んだ人類の謎

 1~2万年前の当時、他のヒトの仲間は死に絶え、現生人類が世界各地に広まりつつあった。

 現在のイギリスに関しては、4万4000年前にすでに現生人類がたどりついていたという証拠がある。

 しかし、そうした記録には大きな空白があり、イギリスの人類は「最終氷期」に一度追い出され、数万年後にまた戻ってきたらしいことが示唆されている。

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photo by iStock

イギリスには2つの異なる集団が移住していた

 こうした謎めいた当時の状況を解明するために、ロンドン自然史博物館、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、フランシス・クリック研究所のグループは、洞窟で発見されたイギリス最古の人骨のゲノムを解析し、さらに放射性炭素年代測定を試みた。

 その結果、ゴフ洞窟の骨は、約1万4900年前に生きた女性のものであることが判明したという。彼女の祖先は、その1000年ほど前に北西ヨーロッパに移住してきた最初の人たちであるそうだ。

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ゴフ洞窟の頭蓋骨。DNA分析で、約14,900年前に生きていた女性のものであることが判明 / image credit:Derek Adams/Natural History Museum

 興味深いことに、ケンドリック洞窟の骨は、この女性とはまったくの無関係で、約1万3500年前に生きた狩猟採集民の男性だった。彼の祖先は近東出身で、約1万4000年前にイギリスにやってきたようだ。

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ケンドリックの洞窟から出土した男性の顎の骨 / image credit:R. Stevens

 つまりイギリスには最終氷期が終わるほぼ同時期、2つの異なった集団が移住してきたということになる。

 研究グループのマテヤ・ハジュディニャック博士は、「わずか1000年ほどしか離れていない時代に、2つの系統が見つかったことは、旧石器時代のヨーロッパの人口が、大きく変化する集団だったという新事実を伝えています」と、プレスリリースで述べている。

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旧石器時代の人類の予想図 / image credit:Heinrich Harder (1858-1935) / public domain/wikimedia

遺伝的だけでなく文化的にも大きく異なる2つの集団

 女性と男性がそれぞれ所属していた2つの系統は、遺伝子だけでなく、文化的にも大きく異なっていたようだ。

 たとえば、ケンドリック洞窟は遺体の埋葬地として利用されていたようで、馬の顎骨を装飾した小さな工芸品が見つかっている。

 一方、より古いゴフ洞窟の人たちは、人間の頭蓋骨でドクロ杯を作るなど、儀式的な食人を行っていたらしき形跡が認められる。

 両グループは食生活もずいぶん違っていた。

 骨の化学分析の結果によれば、ケンドリック洞窟の男性は、大型の海洋哺乳類など、海や川の食材をよく食べていた。だがゴフ洞窟の女性にそのような形跡はなく、シカ・ウシ・ウマなど、主に陸上の草食動物を食べていたようだ。

初期人類の移住を解明する手がかり

 ちなみに、ゴフ洞窟では、「チェダーマン」として知られる、今回のものより新しい約1万年前の人骨が見つかっている。

 これについて面白いことが判明している。

 チェダーマンは、同じ洞窟で見つかった女性とわずか15%しかゲノムを共有しておらず、残りの85%はケンドリック洞窟の狩猟採集民に由来していたのだ。

 こうした新事実は、ヨーロッパや世界へと広がった初期人類の移動について解明する手がかりになるそうだ。

 この研究は、『Nature Ecology and Evolution』(2022年10月24日付)に掲載された。

References:UK’s oldest human DNA obtained, revealing two distinct Palaeolithic populations | UCL News – UCL – University College London / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 12件

コメントを書く

  1. 案外昔のヨーロッパ圏の原住民たちが野蛮だったのって両者の血統をなんらかの形で引き継いでるからだったりして

    • -7
  2. ヨーロッパには猿が居ないくらいにはあれだからね

    • +2
  3. 自分が人食いの遺伝子を持ってたらやだなぁ。
    映画 「クラウド・アトラス」やん!

    • +2
    1. ※5
      先祖に一人の人食いを含まない現生人類なんて多分いないから安心して

      • +8
    2. ※5
      日本にも文化的に食人の風習はありましたよ。近現代の例は九州に多いので南方系の人々が持ち込んだ文化と考えられていますが、北方系文化が支配的な中国にも多くの記録があるので、あるいは普遍的なものだったかもしれません。現代にも骨噛みという形で残っています。

      もっとも祖先がそれを行った経験が遺伝子に残っているとするなら、現代に生きる我々の多くも人食いの遺伝子を持っていると考えるのが妥当です。習俗と言うよりも、それを行うしか生存の途がなかった状況は誰にでも容易に考えられますからね。

      • +7
      1. ※11
        骨噛みは瀬戸内の奇習みたいですね。
        あの辺は特に渡来人が住んでいた事が遺伝的にも判明しているので
        日本に持ち込まれた大陸の文化の一つなんでしょうね

        • +1
  4. 生活習慣の違う種族が出会ったら争い必須って気がする
    古代~中世と戦争が日常的だった理由の一つに太古からの慣習が有ったりしたら面白いな

    • +6
  5. イギリスも試される大地だったんだなぁ・・・気候的に寒すぎだよね昔も今も(;^ω^)

    • 評価
  6. 記事中の「旧石器時代の人類の予想図 」を描いた人は自身の性的趣向と願望を表現してるんだろうな。

    全らで槍持って狩猟とか何の隠喩だよ!

    • -2
  7. イギリスは氷河期に氷伝いでアメリカ大陸から移り住んだ人間もいたとどこかで見た

    • 評価
  8. アルマジロデカすぎて笑う。
    その槍で勝てる気がしない。

    • +3

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