
ただの洞窟だとされていた場所に、紀元前13世紀にさかのぼる古い墓と副葬品が見つかったのだ。
およそ3300年近く前の遺物ということになる。この頃は、エジプト第19王朝の時代で、イスラエルは伝説的なファラオ、ラムセス2世の支配下にあったとされている。
広告
非常に希少な発見であるラムセス2世時代の洞窟墓
今回見つかった「ラムセス2世」時代の墓は、当時の首都テーベ(現在のルクソールの一部)から約950キロ、地中海からナイル川を南下しておよそ800キロのところにある。この墓の発見は、まさに偶然の産物だった。国立公園開発計画のために土を掘っていたところ、掘削機を操作していた作業員が、うっかり洞窟の天井を突き破ってしまったのだ。
そのおかげで、長い眠りについていた墓が姿を現した。

3300年の遺物を続々と発見
洞窟の発見も驚きだったが、本当の興奮はここからだった。さらに掘り進めてみると、そこには、想像以上に古い時代の遺物がたくさん納められていた。イスラエル考古学庁(以下IAA)の専門家が現場に駆けつけ、これら遺物は何千年も前の副葬品であることが判明した。
「これは、一生に一度の大発見です!」IAAの青銅器時代の専門家エリ・ヤナイ博士は、この極めて稀有な発見について語っている。
「洞窟の中には、青銅器時代後期以降、3300年も誰の目にも触れなかった、ラムセス2世時代のさまざまな器類が散らばっていたのです」

ラムセス2世統治時代の遺物であることが判明
多様な形状の陶器類のデザインから、ここが紀元前13世紀のものであることが推定できた。現在はイスラエルであるこの土地は当時、ラムセス2世が統治していた領土カナンの一部だった。ラムセス2世は、紀元前1279年から1213年まで、エジプトでもっとも権勢を誇った新王朝時代のファラオだ。
異論はあるが、ラムセス2世は聖書の「出エジプト記」に登場するイスラエルの民を残虐に抑圧したファラオだと信じられている。
さらに「出エジプト記」に書かれている出来事(ファラオがエジプトでイスラエル人を奴隷にした、イスラエル人の新生児を皆殺しにした)は、実際に起こったことではなく、神話や伝説に基づいたフィクションが大部分だと、現代の学者の多くが考えていることも注目すべきだろう。

AAの考古学者 / image credit:Israel Antiquities Authority
様々な場所から集められた副葬品
人工的に掘られたこの洞窟墓は、正方形になっていて、中央に柱があって今回崩れた天井を支えるようになっていた。内部の岩の床には、きれいなままの陶器や青銅の遺物がいくつも、儀式に使うかのように並べられていた。この墓の主が所有していた品々が集められ、並べられたものであることは明らかだ。
これら副葬品の容器の形状や大きさはさまざまで、浅いものや深いものまでさまざまなタイプの鉢、調理用の鍋、保存用の壺、小さな水差し、足のついた杯などがあった。
赤く着色された鉢や、動物の骨の入った容器も出てきた。オイルランプや、青銅の矢じりや槍の穂先も見つかっている。
注目すべきは、この墓から出てきた陶器は、キプロスやレバノンのテュロス、シドンの港、ガザ、ヤャファ、シリア北部など、さまざまな場所から輸入されたものであることだ。
この洞窟は、地中海沿岸にあるため、かつての商人たちが各地から海を経由して輸入した品物を取引していた交易の中心であったとしても不思議なことではない。
当然、この墓は、特定の者のために作られたもので、その人物は高い地位にある重要な立場の人間だったのだろう。
この墓は、長いこと見つからなかったため、泥棒に盗掘されることはなかった。保存状態のいい遺骨が、洞窟の長方形に仕切られた一画に横たわっていた。
遺骨を詳しく分析して、この人物が誰なのか、どのようにして生きて、死んだのかが明らかになるのは、まだ時間がかかるだろう。

3300年前のタイムカプセル
考古学的な観点からすると、この洞窟の発見は、3300年前のタイムカプセルを開けるようなものだ。「墓が封印され、後世に盗掘されなかった事実は、現代の科学的手法を使って、副葬品や容器に残る、肉眼ではわからない有機物の残滓などから情報を得ることができるかもしれないということです」ヤナイ博士は言う。
「この洞窟が、青銅器時代後期の埋葬習慣の全貌を明らかにしてくれる可能性があります」
考古学者たちが現在直面している一番の課題のひとつは、防犯だ。骨董品略奪のプロは、有望な新しい考古学遺跡が発見されたとわかると、すぐに行動を起こせるよう手ぐすねを引いている。
実際、最初に見つかった遺物のいくつかが、すでに行方不明になってしまっているという。現在、洞窟は封鎖され、略奪を阻止するために警備されている。
「数日以内に、このユニークな遺跡を調査、保護するための具体的な計画を考案します。ここは、考古学界やイスラエルのこの地の古代史に、大いに期待できる情報を与えてくれることでしょう」現場の警備を担当する、IAAのエリ・エスコシドと、イスラエル自然公園局のラヤ・シャーキーは共同声明で述べている。
パルマヒム・ビーチ国立公園でこの洞窟墓が見つかったため、同じ地域でまたべつの墓が見つかる可能性は十分にある。
専門家がその可能性を確信すれば、さらに発掘が始まるかもしれない。
References:3,300-year-old cave 'frozen in time' from reign of Ramesses II uncovered in Israel | Live Science / Ramesses II Era Tomb Found in Distant Israeli Beach Cave Is Astounding! | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2022/10/04)誤字を訂正して再送します。
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
3300年が300年と記載されています。
2. 匿名処理班
すぐ上の記事のタイトルにつられて、
「ラムセス2世」を
「スライム2世」に空目した
3. 匿名処理班
ラムセス2世の墓は盗掘にやられ現在何もないが
もし残ってたら博物館も10軒は作れるほどに
遺品で埋め尽くしてたはずだ
そういう意味で歴史に隠れ犯罪行為行った盗掘団は
許せんし、今回も出てくるとは人類の恥だ
こいつらはアヌビスと地獄の鬼灯に死後お任せしよう
4. 匿名処理班
出エジプトできてなかったのか……
5. 匿名処理班
※3
今回も…って言うけど、お前文章ちゃんと読んでないのか?これは墓の発見で、盗掘品じゃないぞ。
6. 匿名処理班
>>掘削機を操作していた作業員が、うっかり洞窟の天井を突き破ってしまった
たまたまそこに宗像教授が居合わせるパターン
7. 匿名処理班
※4
ミスルが現在のエジプトかどうかはわからないので…
8. 匿名処理班
ラムセス基準だと1200年代
聖書基準だと1500年代
諸説ありとしか言えんらしいぞ
9. 匿名処理班
日本だったら大騒ぎになって出てくるもの全部国宝になるレベルの歴史的発見
聖書が出来るより1300年も前の遺物とかもうすごすぎる
10. 匿名処理班
ラムセスと聞くと
イパネマとかポワトリンとか言葉だけ浮かぶ
11. 匿名処理班
>>5
実際、最初に見つかった遺物のいくつかが、すでに行方不明になってしまっているという。
実際に盗掘団出てきてるじゃん
自分こそちゃんと文章読もうね
12. 匿名処理班
ラムセス2世の時代か
こういうのが発見されると
死海文書のようなとんでもない物が
出て来る事があるから
たまらない魅力はあるよなあ
きっとまで未発見の遺跡とかあるんでしょうね
13. 匿名処理班
>遺骨を詳しく分析して、この人物が誰なのか、どのようにして生きて、
>死んだのかが明らかになるのは、まだ時間がかかるだろう
今生きてる俺等が3300年前ってどんなだった?
って知る手がかりではあるんだけども
死んだ後に骨の髄まで暴かれるのは
なんだかなあって気持ちにもなる
そんな小市民な俺は死んだらさっさと大地に還りたい
14. 匿名処理班
残っている物の状態は欠講良さそうだね。
これから調べてどんな物があるのか発表されるのが楽しみだわ
15. 匿名処理班
※3
しゃーない
厳しい土地で生きるために窃盗も生業の一部とする部族もあり
それが脈々と3000年以上続いていたりもする
16. 匿名処理班
バグダッド電池がこんなに沢山あるなんて
17. 匿名処理班
パルマヒム・ビーチ国立公園はテルアビブから30キロくらい南下したところにある軍の基地と風力発電の風車くらいしか見当たらないところみたいだ。
18. 匿名処理班
※12
沈降とかしているとさらになんですけど、縄文海進や平安海進とは反対に今よりも海退していた時期もあるでしょうから、そのころの遺跡とかが海水面下にあるんじゃないかと想像すると一万年前の洞窟での人の生活跡とかでたらすげぇとか妄想が止まりませんwww
19. 匿名処理班
国立公園開発計画は中止ですね