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今どこにいる?人間の感覚を再現できるAIロボットアームが誕生

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(著) (編集)

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 ちょっと目を閉じて、自分がどんな姿勢でいるか想像してみよう。わざわざ目で見なくても、手や足がどこにあって、どう曲がっているか、あなたには簡単にイメージできるはずだ。

 これは「位置覚」と呼ばれる感覚で、これのおかげで私たちは意識しなくても、安全に包丁を使ったり、椅子に座ったりできる。

 米コロンビア大学で開発されたロボットアームは、AI(人工知能)で自らの体の使い方を学び、人間の位置覚を身につけた。

 おかげでモーターが故障したり、障害物があったりしても、ボディの動きを調整して、プログラムされていない状況に見事対応してしまう。

自分の形状や姿勢を学習し、最適な行動を予測

 『Science Robotics』(2022年7月13日付)で発表されたロボットアームは、5台のカメラの前で適当に関節を動かして、自分の形状や姿勢を観察し、やがてボディが空間をどのように占めるのか学習する。

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5台のカメラの前で自分の動作を学習するロボット(2倍速)/Chen et al., Sci. Rob (2022)

 こうして構築された身体モデルの基づき、AIは作業を行うための最適な行動計画を予測する。

 例えば以下の動画では、アームが上から吊るされた赤いボールに触れる場面が紹介されているが、これはアームが今までやったことのない初めての作業なのだ。

 なお、画面に表示される影のような部分は、AIが予測している自己のボディイメージだ。

A Self-Reliant Robot

想定外の状況に臨機応変に対応できる

 これだけだと特に驚きもないかもしれない。だがパーツが故障しているなど、想定外の状況に遭遇しても対応できるとしたらどうだろう?

 例えば、今回の実験では、配線を切断してあえてモーターの1つを故障させるなど、プログラムされていない状況での動作が確かめられている。

 こうしたとき、ロボットアームはボディの動作がイメージ通りでないことを認識し、正常なモーターで誤差を修正する。だから予期せぬ障害物があっても回避したりなんてこともできる。

 ロボットアームは、自分で新しい作業を学習し、必要に応じて調整する。ゆえにプログラム通りにしか動かない従来のロボットとは一線を画す存在なのだ。

身体意識のあるロボット

 もし人間が観察や実験を通じて身体についての意識が芽生えるのなら、カメラによる観察でボディの形状を学習するロボットにもまた身体意識があると言えるのかもしれない。

 コロンビア大学のホッド・リプソン氏は、「ロボット工学において意識を語るのはほぼタブー」と断っているが、経歴を見る限りこれは彼がもっとも関心を寄せるテーマであるようだ。

 リプソン氏は、ロボットアームには人間や動物のような意味での意識はないと説明する。だが現場で学習し、さまざまな状況に適応する力は、それを利用する人間にとってとても便利なものだ。

 この研究で博士号を取得したボーユエン・チェン氏は、「ロボットに何もかもを学習させるには、そのプログラム用の人間の専門家が必要になるし、それ相応のコストがかかる。ならば機械に学習してもらえばいい」と語る。

ボールに触る作業に取り組むロボットアーム。ロボットにとっては初の作業。普通にボールに触るだけでなく、障害物があってもそれを避けて触る/Chen et al., Sci. Rob (2022)

 高度な学習・適応能力は、ロボットの開発にかかる時間と労力の節約にもつながる。ならばさらに複雑で汎用性の高いロボットの開発もできるだろうと、研究グループは語る。

 もちろん、ボディの動作を状況に応じて調節する機能は、とても実用的だ。ケーブルの断線やモーターの故障が日常茶飯事である産業界では、とりわけ便利なはずだ。

 なおロボットアームは、1日の学習と数万のデータポイントに基づいて、自身の形状に関する作業モデルを構築する。これは5台のカメラの視覚的フィードバックに基づくもので、ロボットがイメージしている形状を視覚的に表示することもできる。

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ロボットの自己イメージ。大雑把だが、十分機能する/Chen et al., Sci. Rob (2022)

 リプソン氏は、「ロボットが自分をどう見ているかを表している。自分にとっては、それを見られるのは素晴らしい瞬間」「完全に正確なわけではないが、ロボットが動作するには十分」と話す。

さらに複雑なロボットへの応用

 ロボットアームは、数年前から開発が続けられているものの最新バージョンだ。

 以前のバージョンは自己学習できるが、あらかじめボディのどの部分に注意すべきなのかプログラムしておく必要があった。

 だが今回のものは、ゼロから自己の身体モデルを構築する。その結果、障害物を避けながらボールにタッチすることにも成功。これは以前のロボットではできなかったことであるそうだ。

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Chen et al., Sci. Rob (2022)

 次の目標は、この技術をもっと複雑なロボットに応用することだそう。ただし、知的生命のような意識(に近いもの)がロボットに宿るのは、まだまだ遠い先のことと、リプソン氏は話す。

 今回の技術は、もっと多くの関節や手足を持つロボットにも応用できる。部屋の中を動き回れるようなロボットにだっておそらく搭載できるはずだ。

 もっと研究が必要とはいえ、かなり複雑なロボットであっても、効率的にプログラムできるようになるかもしれない。

 ロボットの学習機能は、コンピューターメモリの節約にもつながる。それは掛け算の九九を全部暗記するのではなく、計算のやり方を学ぶようなもの。

 つまり学習型ロボットはこの世に存在するあらゆる対策をプログラムされずとも、自分で考えて問題の解決策を導き出すのである。

 リプソン氏は将来的に、複数のロボットが仲間の形状や機能を理解して、チームワークを発揮するようなロボットも開発したいとのことだ。

References:This experimental robot replicates a distinctly human sense — embodiment / written by hiroching / edited by / parumo

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この記事へのコメント 4件

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  1. 余計な機能はバグの元

    費用も増える

    故障したらシンプルにアラーム鳴らすのでok

    • -4
  2. ロボットが自分の身体を認知するのは、将来家庭用人型ロボが普及するのに必須だと思うんだ。じゃなきゃしょっちゅう周りの様子が変わる部屋の中で効率的に動けなさそう。

    • +2
  3. 研究者はこのロボットの身体感覚の延長線上に意識があると考えてるのかな?
    興味深い洞察だがそこに行きつくまでには幾つもの技術的な壁がありそう。

    • 評価

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