宇宙人が量子で地球にメッセージ
 この広い宇宙の中に存在するであろう地球外文明。我々は未知との遭遇を夢見て、宇宙人に向けたメッセージを送信する計画が提案されている。

 ではあちら側からのメッセージが地球に送信されている可能性はあるのか?

 英国の物理学者グループによると、この宇宙のどこかに存在する地球外文明が、「量子通信」で地球にメッセージを送っていたとしたら、それが届くことは現実にあると考えられるそうだ。

 英エディンバラ大学の研究グループが数理モデルで計算したところ、量子粒子は少なくとも何十万光年という距離をきちんと移動できることが判明した。

 つまり量子通信ならば、天の川銀河をこえる長い距離であっても無事に届くのだという。
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量子通信のメリットとデメリット

 ここ数年、「量子通信」の技術の研究が盛んだ。すでに一部実験的な運用も始まっている。

 量子通信は、原子や素粒子レベルの物理を扱う量子物理学をベースにした高度な通信技術である。

 量子の性質を利用すれば、従来の通信よりずっと高速にメッセージを送信することができる。また光子を用いたシステムは原理上ハッキング不可能なので、ずっと安全だ。

 だが弱点もある。「量子デコヒーレンス」という現象だ。

 惑星や恒星の重力場、彗星のチリ、太陽風、星間物質に含まれる粒子など、外部の環境が量子に干渉すると「重ね合わせ」という状態が破壊されてしまうのだ。こうなれば、そこにある情報がすべて失われてしまう。

 いくらハッキング不可能な通信であっても、情報が消えてしまっては意味がない。これでは超長距離通信の手段として量子通信は役に立たないということになってしまう。
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photo by iStock

星から星への量子通信は可能

 『Physical Review D』(2022年5月16日付)に掲載された研究では、量子通信は量子デコヒーレンスの影響で、本当に星から星へとメッセージを送信できないのかどうかが検証された。

 研究グループは、天文学的データと数理モデルをもとに、地球とその比較的近くにある太陽系外惑星(約100個が対象となった)との間をX線がどのように移動するのか算出。

 その結果、この程度の距離ならば量子通信に致命的な影響は出ないだろうことが判明した。

 これは宇宙が地上に比べておおむねクリーンであることが大きい。空間に占める物質の密度が地球よりもずっと低いのだ。

 研究論文では、「光子を利用した量子通信が、星々の距離であっても確立される可能性は十分ある。とりわけ電子質量以下のX線領域の光子ではそう言える」と説明されている。

 さらにX線だけでなく、マイクロ波や可視光の光子でも実現可能と考えれるという。
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高度な技術で支えられた量子通信だが、依然として光速に制限されるため、現星間距離でコミュニケーションを交わすには年単位の時間がかかる photo by iStock

地球外文明は星から星へと量子通信を送っている可能性

 研究グループによると、量子による高速かつ安全な通信なら、地球外知的生命体とコミュニケーションを交わすこともできるだろうという。

 だが現時点で、地球外文明の存在を示唆するような量子メッセージを発している天体は見つかっていないという。

 また、仮にそれが見つかったとしても、その内容を知るには強力な量子コンピューターで解読せねばならないだろう。

 さらにそれができたとしても、星と星との間でコミュニケーションを交わすにはなお長い時間がかかる。いかな量子通信といえども、光速という制約があるからだ。
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photo by Pixabay
 だが地球外文明の存在を示す「テクノシグネチャー」として利用できるかもしれない。

 研究グループはまた、地球外文明が「量子テレポーテーション」で通信をしている可能性を指摘する。これはある粒子の性質を遠く離れたもう1つの粒子に一瞬で送信する技術だ。

 量子テレポーテーションはシグナルの検出が容易なので、地球外文明はこれを好んで用いるかもしれない。それゆえにテクノシグネチャーを探す研究者は、量子信号にも注目すべきなのだという。

 「原理的には、天体からの量子シグナルも、地球外文明の情報シグナルすらも検出可能なはず」とのことだ。

References:Aliens could send quantum messages to Earth, calculations suggest | Science News / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 20:24
  • ID:LEnLi.Qt0 #

この元記事、量子暗号通信と量子通信がごっちゃになってません・・?
「度な技術で支えられた量子通信だが、依然として光速に制限されるため、現星間距離でコミュニケーションを交わすには年単位の時間がかかる」

2

2. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 20:26
  • ID:dOUuNaVI0 #

「へびつかい座ホットライン」てSF小説思い出した

3

3. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 20:42
  • ID:0RCx19uF0 #

悪意ある文明に届く可能性があるので、地球規模で勝手に送信しないようにしてほしい
国際的な条約が必要

4

4. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 20:46
  • ID:decCdlT20 #

量子というより、そもそも電磁波を使った通信自体がもう使われていないのでは?
例えばニュートリノなら途中にある物体に遮られたり拡散することもなくほぼ光速で直進するので、高度に発達した宇宙文明なら各種ニュートリノの送受信技術を確立して恒星間通信を行なっているかもしれない

5

5. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 21:20
  • ID:HGlI07FA0 #

量子テレポーテーションは量子もつれの状態であって、
例え遥か遠くに瞬時に量子もつれ状態を起こしても
その状態がどのような意味をもつかは情報をまたなくてはならない。
情報が光速を超えることはない。

つまり量子通信は光速を超えることはない。

そもそも光速を超える通信は過去との通信も可能となる。
相対性理論だけではなく因果律も崩壊する。

結論:相対性理論が間違っていない限り、現状光速を超える通信は不可能。

6

6. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 21:28
  • ID:hdRZ3T4n0 #

佐野量子のファンクラブ会報みたい>量子通信

7

7. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 21:52
  • ID:mXf2MBFx0 #

神もUFOも、地球外知的生命体はいつだって、その時代の人々が想定しうる最大の技を用いる者として奉られる
それでも、それが、孤独に対抗するための、人類の最大限の努力なんだろう

8

8. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 21:54
  • ID:3iHzhhVd0 #

まず量子もつれの状態にある量子を宇宙人が地球に持ってこないと通信できない気がしまっス

9

9. 匿名処理班

  • 2022年07月10日 22:29
  • ID:wpydM8cE0 #

宇宙の原理を全て解き明かした日、人類はなんでも出来るようになるんじゃなく、何にもできないことを悟る日になりそう
こんな感じでキャッキャッ意見出してる時が一番楽しいのかも

10

10. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 01:29
  • ID:o3sg4XYj0 #

量子ビットとか(ヾノ・∀・`)ムリムリ

11

11. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 11:31
  • ID:nyO2bvNB0 #

漁師通信「とったどー! 今日も大漁だぜ。」

12

12. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 16:07
  • ID:QTB5kyo40 #

地球外文明が侵略意図を持つかは非常に気になる点だが、
そもそも量子通信って通信先がどの方角、距離にあるか解るのかな?
解るのなら危険だが、わからないなら使い方を間違えなければワンチャンいけるかもな

13

13. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 17:06
  • ID:QTB5kyo40 #

文章が分かりづらいが、前半は光子をやり取りする通信、最後は量子もつれを利用した光速度を超える通信を話題にしてるね。
最後の量子もつれについても通信したい相手にどうにかしてもつれの片方を渡す必要があるから、そこは光速度という越えられない壁を乗り越える必要がある。
理想的には善意の地球外文明が、量子もつれ状態の光子なり微粒子を全方位にとばし続ける無人の量子通信ハブをもつ浮遊惑星を建造してたりすると嬉しいんだけどな。

※4
量子もつれを応用した情報伝達はニュートリノでも突破できない光速度にも、途中にある遮蔽物にも邪魔されません。
これが量子通信が話題になる理由です。

14

14. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 17:23
  • ID:lJ5FKMgR0 #

難しく書けばいいってもんじゃない

人間の目線にとらわれすぎてる

本当は宇宙人はものすごく目がよくて
手旗信号で星間通信しているかもしれないのに

15

15. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 18:14
  • ID:vhFgl2iK0 #

ピピピ、ピ、ピ、、、
受けとりマした^。^
無益な戦争する人類は
該当するに値しない⤵

16

16. 匿名処理班

  • 2022年07月11日 22:18
  • ID:5spYYids0 #

1つの超新星爆発の残骸から発生した複数の星系間には、すでに量子もつれの状態があったりして。
もうどこかで観察されていたりして...

17

17. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 00:12
  • ID:xCNGSUk90 #

>>11
猟師通信「そのお山の獣は撃っちゃなんねえだ。山神様の祟りがあるだで‥‥‥」

18

18. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 01:18
  • ID:XqQb0BGT0 #

そもそも生物という概念自体が地球という稀な環境だから生まれたって説が濃厚なのに未だに地球外生命体がいると信じてるやつが多いんだな
そもそも地球以外に生物がいたとして人型になる必然性はないし大気もないから声でコミュニケーションを取らなきゃならない環境でもない
要するに地球基準でしか物事を考えてないんだよ

19

19. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 09:23
  • ID:rEI3fmr80 #

「量子もつれ通信」なら光速度の制限を受けません。10億光年離れていても同じ量子状態が双方に伝わります。SFの亜空間通信ってのがコレです。高度な文明なら何光年離れた場所にも量子もつれ状態を3Dプリンタのように出力することが出来るでしょう。つまり、真に進んだ文明であれば、宇宙戦艦とか宇宙移民船団といった物理的移動手段は不要です。

20

20. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 10:26
  • ID:xCNGSUk90 #

>>18
我々地球人は、宇宙では孤独な存在なんだな‥‥

だから戦争だの侵略だのやめて仲良くしなきゃ
( i _ i )

21

21. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 11:23
  • ID:Q0WPopj10 #

量子通信ならテレポーテーションが
可能なわけだからタイムラグがゼロになる

結構衝撃的な話になるぞ
現実にあったらの話だけど

22

22. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 12:33
  • ID:d.hpd2tU0 #

積年の謎がとけた。
おいらの脳で受信しているのは電波じゃなかったんだ。

23

23. 匿名処理班

  • 2022年07月12日 18:46
  • ID:d.qVAfVe0 #

人類の技術力と想像力に毎回合わせてくれる宇宙人さん

24

24. 匿名処理班

  • 2022年09月19日 06:59
  • ID:XPnRFmKn0 #

いつも思うけど「地球外生命体」がどうして宇宙「人」のイメージなんだろう?
宇宙のスケール感は人類の尺度では図りきれないだろうし、すごい小さい世界、すごい大きい世界は元より、水が無くてもそれこそ未知の生命体がいるかも知れないし。もし生命体が存在したとしても、未知の進化の過程を辿っているだろうし、ましてや宇宙人の様にヒトの形をしてるかも?って言うのは…私は無理があるんじゃないかと思う。

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