
ニュージーランドとオーストラリア南部で繁殖するコガタペンギンは、5月から6月にかけて海岸に上陸する。その間、犬などの肉食動物に捕食されたり、交通事故に遭って死んでしまうこともあるが、ここ1ヶ月半の間に大量に発見された死体に襲われた形跡はなかった。
専門家によるとその死因は餓死である可能性が高いという。エサとなる食べ物がほとんどなかったのだ。
気候変動で餌が不足し、コガタペンギンが大量餓死
6月上旬の1週間だけでも、ナインティ・マイル・ビーチでは183羽、ケーブル・ベイでは100羽以上の死体が発見されている。それらは海岸で死んでいて腐敗が進んでいた。専門家は、死因は餓死だろうと推測する。気候変動(温暖化)で海水温が上がった結果、エサとなる魚が温度の低い深いところに移動してしまったことが背景にあるという。
2021年はニュージーランドにとって記録的に暑い年だった。ニュージーランド周辺の海は最大3度も上昇し、否応なく地表の気温まで上昇させた。
コガタペンギンの中には、低体温症で死んだらしいものもいたという。これはエサ不足のせいで、体温を維持するために必要な脂肪を蓄えられなかったことが原因だ。Hi @docgovtnz, 3 dead blue penguins on 90 mile beach today, about 12km north of #Ahipara. All within a 100m stretch of each other. Run over by cars? Or victims of a certain fishing method? #NewZealand #Aotearoa #Wildlife #Penguins@nzherald @NZStuff @Breakfaston1 pic.twitter.com/isuo4OV1Yk
— Jeff Rice (@EvolvingCaveman) May 2, 2022
ニュージーランド自然保護局の主任科学顧問グレーム・テイラー氏は、「どの死体も超低体重だったことが判明した」とガーディアン紙に語っている。
コガタペンギンは世界で最も小さなペンギンの種で、フェアリーペンギンとも呼ばれる。食性は動物食で魚類やイカ等を主食とする。
体長は約40cmほど、体重は800〜1000gほどだが、死体のほとんどが、その半分ほどの重さしかなかったという。
「脂肪はまったくなく、ほとんど筋肉もなかった。ここまで痩せてしまうと、もはや潜ることもできないだろう」とテイラー氏は語る。

世界最小のコガタペンギン(フェアリーペンギン)photo by iStock
コガタペンギンの種全体が減少する恐れ
実際に死んだペンギンは、記録された死体よりずっと多い可能性もある。というのも通行人に発見されて、そのまま埋葬されるケースも多いだろうからだ。5月以降に発見された死体は500羽近くあるが、実際には1000羽に達する恐れもあるとテイラー氏は考えている。
現時点で繁殖できる大人のコガタペンギンは、50万羽以上いると推定されている。
しかしこのまま気温が上がり続ければ、さらに大量死が起こり、北島の暖かい地域では生息数が減少してしまうかもしれない。
テイラー氏は、ラジオ・ニュージーランドに次のように語っている。
過去には、しばらく良好な年が続いた後で、ペンギンが大量に死ぬ悪い年があることもあった。それでもまた翌年には回復したものだ。それはヒナだけにとどまらず、大人のペンギンにも関係する。大人のペンギンの大量死は、繁殖できる個体数が減るために、さらに回復を難しいものにする。
だが今目の当たりにしているように、いい年と悪い年のバランスが崩れてしまえば、ペンギンは回復できなくなるかもしれない
メルボルン近郊のフィリップ島で行われるコガタペンギンのパレード
海鳥たちを襲う絶滅の危機
今、危機に瀕しているのはコガタペンギンだけではない。ニュージーランド北島ではここ10年の間に、さまざまな海鳥の個体数が減少している。中にはコロニーが丸ごと消えてしまったケースもある。ミズナギドリやハシボソミズナギドリ、ハイイロミズナギドリはコロニー全体が失われたそうだ。以前から少しずつ減少していたが、2010年頃から急減し始めたという。
コロニー全体の消失が目に見えるようになったのは、それからのことであるそうだ。
追記:(2022/06/18)本文を一部訂正して再送します。
References:Search for clues as bodies of hundreds of little blue penguins wash ashore in New Zealand | New Zealand | The Guardian / Hundreds of dead penguins wash up on Far North beaches | RNZ / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
>コタガペンギンは世界で最も小さなペンギンの種で
ここだけ コ タ カ になってますよ
2. 匿名処理班
トンガの噴火も影響あるんだろうなあ
3. 匿名処理班
ただただ辛いな…
4. 匿名処理班
助けてあげられないのか。辛い。
5. 匿名処理班
ペンギン
「小さいと不利なら昔の背丈に戻ろっかな…」
6. 匿名処理班
>>2
そもそも気候なんて人間が0.1度上げる間に地球さんが10度単位で上げ下げしてるからなあ
安定した気候でないと数を減らすんだとしたら自然界の淘汰のうちだろう
7. 匿名処理班
クジラが増えたからでしょ。
8. 匿名処理班
鯨だけ保護したせいでしょう
本当の意味で自然保護してないから
9. 匿名処理班
原因はクジラの激増やろうなぁ
10. 匿名処理班
願わくばトップの画像にモザイクを…
11. 匿名処理班
人類による魚介類の乱獲も影響してるかもな
12. 匿名処理班
生態系の保護をしないとね
13. 匿名処理班
>>5
そうなるよね
餌が潤沢でこそ勝てるコガタ化だから、次世代はこの夏の飢餓を生きのびられた大きめのコガタペンギンたちの血を引いて少し大きくなるのかもしれない
14. 匿名処理班
原因が海水温なら、局所的なものでは済まないかもな
気付いた時には人間の番かも
15. 匿名処理班
こんなとこにも鯨食害論者おるんか
16.
17. 匿名処理班
お腹空いて辛かっただろうな…
18. 匿名処理班
鯨が増えて小魚が減ったせいじゃないの
19. 匿名処理班
※15
実際に数年前からオーストラリア沿岸にサメが来る頻度が増えてるんですわ(比例してサメ被害も増加して政府が頭抱える位には)
海洋学者もクジラの頭数が増えたため餌となる小型の魚が減ったことが最も影響していると考えられるって声明出してるしね
頭が良いから、可愛いから、可哀想だからという安直な理由で生態系に干渉すれば一時的とはいえ簡単に生息分布が変わるし生物の進化も阻害される(一時的って言ったのはそれでも長期的にはその状況に適応した進化をしていくから)
20. 匿名処理班
クジラのせい〜ってデータあったっけ?
21.
22. 匿名処理班
自分もクジラが増えた説に1票 何処で読んだか忘れたがクジラが増えすぎると
回遊してるペンギンが餌の関係で交流できずに亜種化するって
まぁ日本の捕鯨数がそこまで多かったか疑問だが
23. 匿名処理班
人間が増え続けるのとは逆に様々な動植物たちが次々に絶滅していく
24. 匿名処理班
イワシ可哀想って人は愛護団体には居ないのね
25. 匿名処理班
∧∧
(つω;)辛すぎる
26. 匿名処理班
辛い
ただ辛い
27. 匿名処理班
クジラが増えたからとか言ってる奴ら、まともに思考ができない
去年の海水温上昇によってエサとなる魚が温度の低い深いところに移動してしまったことが原因だと記事中に書いてあるというのに...
28. 匿名処理班
魚は海水温の変化で遊泳域を変えるのにペンギンはそこら辺を感じる能力がないのか・・・
29. 匿名処理班
人もいつかは…
30. 匿名処理班
クジラですね。
鯨が増えたせいでこの周辺の小魚が食い荒らされて
ペンギンは淘汰されたんでしょう。
ついでに鯨が増えたせいでアニサキスも大繁殖してますね。
31. 匿名処理班
クジラが増えたのが原因なら、1ヶ月で急に死亡が増えるのではなく、クジラの増加に従い以前から死亡が増えてなきゃおかしいと思うんだけど。
32. 匿名処理班
※20
不都合だからデータはとらない。
33. 匿名処理班
南無阿弥陀仏 可哀想過ぎる
34. 匿名処理班
気候変動が要因って専門家が言ってるのに、鯨がどうとか言ってるやつら本当にどうかしてるぞ。
35. 匿名処理班
※32
よくある陰謀論の理屈じゃねーか
捕鯨を支持するためのこじつけに見えるぞ
36. 匿名処理班
「鯨食害論」とかいう提言した水産庁すら取り下げた穴だらけな理論を
いまだに信じてる人間がいることに恐怖を感じる
37. 匿名処理班
※19
その説を証明する文献は今のところ一つも存在しないらしいが
それが仮に本当だとしても所謂「鯨食害論」とは真逆の話だな
サメが増えた鯨を襲いに沿岸部まで来てるって仮説だから
水産資源の増減は関係ないどころかむしろ増えてるって話じゃねえか
人間にとって有益かどうかはともかくな
38.
39. 匿名処理班
またこれも自然の摂理である
40. 匿名処理班
※39
そうなんだけど
小さな生き物が痩せて死んでいる画像を見ると胸が痛い
41.