地球上には、ひっそりと隠れたまま、未だ知られていない動物が多く潜んでいるという。
アメリカ、ラドフォード大学とオハイオ州立大学のチームが、『PNAS』(2022年3月28日付)に掲載した研究では、AIで4,310種の哺乳類の遺伝子配列を分析し、それを場所、環境、生活史に関する情報と組み合わせた。
その結果、控えめに見積もっても、まだ特定されていない哺乳類の種が世界中に数百種いるという。
ほとんどの未知種は、分類の中に埋もれた「隠れ種」
今回、隠れた哺乳類の多様性について、いくつか大発見があった。まずは、地球上にはまだ記載されていない「隠れ種」が数百種もいるだろうということだ。「ほとんどの場合、隠れ種は分類学者が別個の種と認識していない生き物たちです」と、オハイオ州立大学のブライアン・カーステンス氏は語る。
分類学者は、発見された生物をその特徴に基づいて種に分類している。だが、本来別々の種として分類されるべき動物が、同じ種と勘違いされることだってあるだろう。
つまり、未発見の隠れ種たちは、「タクソン(分類群)」の奥深くに紛れている可能性が高い。
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隠れ種は小型の哺乳類が多い
次に、哺乳類の隠れ類は、大型種よりも、コウモリやネズミなどのげっ歯類といった小型種ほどたくさんいるだろうこと。体が大きな種の方が身体的特徴の違いを見分けやすいことを考えれば、納得しやすいだろう。「基本的に、体が小さく、比較的生息範囲が広い哺乳類ほど、隠れ種がいる可能性は高くなります」と、カーステンス氏は説明。その格好の例として、複数の隠れ種が含まれていると睨まれている「トビイロホオヒゲコウモリ(Myotis lucifugus)」を挙げる。
また、熱帯雨林のように、気温が降水量が大きく変化する地域の方が、隠れ種が見つかる可能性が高い。これは現在の分類学理論の見解とも一致する。
種のほとんどは知られていない?
これまで正式に記載されてきた地球上の種は100万種ほど。これは実際に存在する全種の1〜10%ほどでしかないと考えられている。つまり、ほとんどの種は私たちに(少なくとも分類学上は)知られていないのだ。
哺乳類はそれなりに研究されているので、隠れ種は数百種ほどと予測される。だが、節足動物や両生類には隠れ種がどれほどいるのか想像もつかない。
「哺乳類のようなよく研究されたグループであってすらも、種の多様性はまだまだ全容が解明されていないという説を裏付けています」と、カーステンス氏。
地球上の種のほとんどがまだ知られていないこの状況を「リンネの不足」(スウェーデンの分類学の父と呼ばれる、カール・フォン・リンネにちなむ)という。
生物多様性の喪失が問題視されているが、そもそも種がどれほど多様なのかがわかっていない。だから失われた多様性がどれほどのものなのか、正確にはわからないのだ。
「私たちは地球上の種の全容がわからないというのに、生物を絶滅から守らねばならないという難題を抱えています」と、カーステンス氏は付け加える。
世界には種がどれほど存在するのか? その答えはわからないが、今回の発見はこれについて示唆に富んでいる。それと同時に、隠れ種を探し、多様性の喪失を防ぐための資金援助の呼びかけでもある。
「生物多様性保全のあらゆる分野で、もっと投資が必要であることを浮き彫りにしています」と、カーステンス氏は言う。
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AIが隠れ種の存在を予測
素晴らしい研究だが、印象的なのは今回の結果がAIの予測によるという点だ。研究グループは、既存のデータベースから哺乳類4,310種、合計9万のDNA配列データを入手。これをAIに機械学習させ、隠れ種の存在を予測できる特徴を特定した。それはたとえば次のようなものだ。
・ボディマス(体格)哺乳類に数百の隠れ種がいるという予測の一方、AIモデルからはもう1つ面白いことがわかっている。それは隠れ種が紛れている可能性が高い系統は、すでに調査が進んでいるということだ。
・地理的範囲
・気候
つまり今後数年のうちに、そうした隠れ種がどんどんと明らかにされるだろうと期待できるのだ。
Photo by Geoff Brooks on Unsplash
知識の空白を埋めるには、各分野の協力が大切
カーステンス氏はすでに、ラドフォード大学のタラ・ペレティエ氏と共同で、サンショウウオの隠れ種を探し出すプロジェクトに取り組んでいる。一方、オハイオ州立大学のダニエル・パーソンズ氏は、水辺に生息するトガリネズミの新種を研究する。
彼は今回のような研究をもっと大規模に行いたいと考えているが、そのためにはもっとデータが必要になるだろうという。
「四足動物や脊椎動物など、すべてを含んだもっと大きなモデルを構築したいと思っています」
世界の生物種の99%は隠れ種である可能性もある。その解明は困難な道のりだが、希望もある。
各分野が協力して取り組み、十分な資金的な支援があれば、系統樹全体のリンネの不足に対処できるだろうと、研究グループは結論づけている。
References:Analysis of biodiversity data suggests that mammal species are hidden in predictable places | PNAS / New research reveals hundreds of “hidden” animal species may be lurking in plain sight / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
タクソン(分類群)をたくあんと読み違えてしまい
最近たくあん食ってねえなと妙なことを思い出した
2. 匿名処理班
まだまだ新発見して名前を付けるチャンスがあるってことか
3. 匿名処理班
絶滅した種は環境に適応できなかった種なので価値はない
絶滅した種の代わりに進化した種が必ずあるのだから、絶滅した種の保存は必要ない
4. 匿名処理班
週百種類居る可能性が高いつったところで机上の空論でしかない。
見つかっていないってことはとうに絶滅してるか既知の物と区別がつかない程度の遺伝子でしか差異がわからないような物なんだろう?
だからなんだって程度の話でしょう。
5. 匿名処理班
探しだろうとする行為そのものが生態系の破壊や種の根絶に繋がらなきゃいいけど
6. 匿名処理班
※5
そうだよね、探しだろう。
7. 匿名処理班
隠れ霊長類もいたりして
8. 匿名処理班
応用すればUMAがどんな生物、体型なのか予測できたりしないのかな
9. 匿名処理班
さすがに哺乳類の未発見種はだいぶ少ないんだな。
魚類…というか海(特に深海)はまだまだ新種がいそう。
10. 匿名処理班
過去に絶滅して、化石が見つかっていなければ、それは対象?
11. 匿名処理班
逆に、実は同じ種だった、というのもありそうだね。色々と調べたらシノニムでしたって事例。
12. 匿名処理班
>>7
ぎくっ!(亜人)
13. 匿名処理班
※3
淘汰だけを見ていて
何故種を保存するのかを見ていない
14.
15. 匿名処理班
隠れやまだ知られていない種というか進化してる途中や交配した種、新たに環境適応した種なのかもしれないね
16.
17. 匿名処理班
(ナイショ)「まぼろしー!」
18. 匿名処理班
UMAだUMAだ
19. 匿名処理班
※7
ボノボは1928年までチンパンジーだと思われてたように、目の前にいても別種とわからないことがあるからね。
遺伝子による分類でそこが精度高く判定できるようになり、更に未知の存在の予測までできるようになってきたということ。
そもそも種というものがどういうものか理解できていない人も多いし。生物学的種概念ぐらいは知っていないと。
20. 匿名処理班
未発見の種の発見、それが絶滅した種、あるいは絶滅しつつある種であっても
ゲノム情報さえあれば進化系統樹がより正確になる
新たな進化論の仮説が生まれたり証明される可能性もある
新種探しや絶滅寸前の種の保護は無駄ではないと思う
21. 匿名処理班
>>19
ボノボとチンパンジーは交雑種は産まれるのかな?
シマウマとロバはハイブリッド産まれた実例があるし、
22. 匿名処理班
※21
動物園でなら普通に生まれる。共通祖先から分岐したのがたったの200万年前だ。
系統的にはシマウマとロバの間よりも近い。
ただ、自然界では生息地が隔てられているため決して交雑しない。
昔はともかく今は種間交配はタブーだからもうそのような交配はやらないと思う。
動物種によっても異なるが、
おおまかには千万年前に分岐した時点で雑種が産まれなくなる傾向にあるようだ。
23. 匿名処理班
生殖できないのは新種の可能性もあるということか