火星の隕石から明らかとなった生命体の存在
 赤い惑星「火星」には、かつて生命が存在した可能性があると考えられている。しかし、具体的にいつからいつまで生命が存在できたのか、正確に推測するのは難しい。

 だが地球に落下した火星の隕石は、それを知るヒントを与えてくれている。

 オーストラリアの研究者によって、「ブラックビューティ」と呼ばれる火星由来の黒い隕石から、44億5000万年前の火星に巨大な隕石が衝突したことを示す痕跡が発見された。

 これに基づくならば、火星に生命が存在できる条件が整ったのは、37億〜39億年前であることが推測できるそうだ。

火星で生命誕生の条件が整ったのはいつか?

 火星では過去に生命が存在した”可能性を示唆する証拠”がいくつも見つかっている。仮に本当にそこに生命がいたのだとして、それは一体いつ頃誕生したのだろうか?

 意外にも、それは火星に降り注いだ隕石と関係がある。

 初期の火星には、小惑星や彗星がまるで爆撃のように降り注いでいた。これはこの赤い惑星に、生命が誕生する上で不可欠な「水」や「有機化合物」をもたらした可能性がある。

 その一方で、かつて巨大な隕石が地球上から恐竜を一掃したように、その衝突は生命にとっては破壊的なものだ。

 だから火星において生命誕生の条件が整った時期を推測するには、隕石の爆撃が収まった時期が重要になる。

 火星で隕石の爆撃が終息したのは、44億8000万年前頃だと考えられている。

 これ以降の火星で大きな隕石が衝突したことを示す証拠は発見されていない。そして、これに基づいて42億年前には生命が生存可能な条件が整っただろうと考えられてきた。
1
Photo by Marek Piwnicki on Unsplash

新たな隕石衝突の証拠を発見

 ところが『Science Advances』(2022年2月2日付)に掲載された研究では、それ以降にも巨大な隕石が衝突した証拠が発見されたと報告されている。

 その証拠は、2011年にサハラ砂漠で見つかった「ブラックビューティ(Black Beauty)」というこぶし大の隕石から発見された。

 重さ320グラムほどのこの隕石は、正式名称を「Northwest Africa 7034(NWA 7034)」といい、火星由来であることが明らかになっている。

 特徴的なのは、そのニックネームの由来にもなっている黒い外観だ。大部分が玄武岩で、その中に「ジルコン」などの岩石片や鉱物が含まれている。

 カーティン大学(オーストラリア)の博士論文提出資格者モーガン・コックス氏らは、そのブラックビューティから採取されたジルコン粒子を分析した。

 その結果、かつて地球上の恐竜を絶滅させたような、凄まじい隕石の衝突を示すダメージの痕跡が発見されたのだという。

 それが起きたのは44億5000万年前、これまで火星の隕石爆撃が終息したとされてきた時期よりも後のことだ。
1_e
火星由来の隕石、ブラックビューティー(Northwest Africa 7034)image credit:NASA

火星に生命生存の条件が整ったのは37億〜39億年前

 もしも火星の隕石爆撃が従来の説よりもっと後まで続いていたのだとすれば、火星に生命が存在できる条件が整ったのも、従来の説より最近ということになる。

 これについて論文の共著者アーロン・カヴォシー氏(カーティン大学)は、その時期は37億〜39億年前のことではないかと推測している。

 奇しくも、この時期は火星の地表に液体の水が存在したとされる時期とも一致している。ブラックビューティーは、他の火星からの隕石の10倍の水の分子が含まれていることも明らかとなっている。

 水は地球の生命にとって不可欠な素材だ。ゆえに37億〜39億年前の火星で生命誕生の条件が整ったという新説をより説得力のあるものにしている。
2
Photo by Victor on Unsplash

新たな探査機の活躍で、火星の秘密が明らかに

 火星の隕石の小さな欠片は、火星の生命が誕生できた時期について、貴重なヒントをもたらしてくれる。今後は、さらに多くの手がかりが得られるかもしれない。

 今、火星ではNASAの探査機「パーサヴィアランス」が精力的に調査を進めている。これから火星の生命についてどんな秘密が明らかになるだろうか?

References:Impact and habitability scenarios for early Mars revisited based on a 4.45-Ga shocked zircon in regolith breccia / written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
かつて火星に生命は存在したのか?火星の土壌から地球のキノコ「トリュフ」の成分が検出される。(米・独研究)

火星で発見された炭素は、生命の活動により生成された可能性

火星の火山が活動している可能性。生命体が存在に期待

いるとすれば地下だ。火星の地下に生命体が大量に存在する可能性が示唆される(アメリカ地球物理学連合)

地球の生命体の起源は火星にある説。そう考えるべき科学的根拠(米研究)

Advertisements

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2022年02月06日 20:16
  • ID:E5X7uWXt0 #

おにぎりに見えました

2

2. 匿名処理班

  • 2022年02月06日 20:58
  • ID:WgVNfwsX0 #

そういえば最近、火星の岩石表面に未知の紫色をしたコーティング物質が発見されたというニュースがあったけど、それはカラパイアの方では記事にしないのかな?
紫色の被膜というと地球ではシアノバクテリアとか地衣類を連想するものだけれど、もし火星でシアノバクテリアや地衣類などの生物が見つかったら世紀の大発見になるだろうな

3

3. 匿名処理班

  • 2022年02月07日 09:31
  • ID:G.SrnMGB0 #

これで火星人がいた痕跡が出ればなあ…

4

4. 匿名処理班

  • 2022年02月07日 12:23
  • ID:PF4HsWIz0 #

よくさ、
火星の隕石から判明したと
あるけどさ
要は昔火星に隕石が衝突した結果
その勢いを凄すぎて四散して
地球に流れ着いたんだよね

じゃあさそんな大規模な衝突が
あった時点で火星の生命死んでね?

さーこれから微生物進化始めるで!!
ワイは文明作ったろ!!
ウチでっかい生き物になるもん!!
ドカーン!!


「ぎゃ」
て感じ

お名前
Sponsored Links
記事検索
月別アーカイブ
Sponsored Links
Sponsored Links