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NASAのこれまでの探査機でもっとも生命探査に特化したパーサヴィアランスが、まもなく火星に到着しようとしている。予定通り2月18日に着陸したらすぐさま干上がった川底に穴を掘り、「火星には生命がいるのか?(いたのか?)」に答えるべく調査を開始する。
すぐに結論が出ることはないだろう。だがその成り行きは、一部の研究者にとっては絶対に目を離すことができないものだ。
というのも彼らの仮説によると、地球の生命は火星に起源があるというのだ。しかもその説には科学的根拠があるという。
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生命の最終共通祖先「LUCA」
ここ数十年、これまでに知られてきた全生物が連なる巨大な系統樹が着々と作成されてきた。化石から推測すると、ヒトと類人猿の共通祖先は1300万年前に存在した。6500万年もさかのぼれば、ヒトはクジラやコウモリともつながる。
また遺伝子の分析からは、「LUCA」と呼ばれる地球に存在するあらゆる生命の最終共通祖先が、およそ40億年前に海底の熱水噴出孔で生きていたらしいことが分かっている。
しかし系統樹の根元へ向かうほどに、生命の起源を探る手がかりは乏しくなる。LUCAの競争相手が化石になっていたとしても、そうした最初期の痕跡を残す岩石は、プレートの動きによって壊れてしまっているだろう。
はっきりと分かっているのは、地球がおよそ45億年前に形成され、それから5億年が経過した頃にはLUCAがいたということだ。それがどのように進化し、その祖先がどこからきたのかといったことについては諸説あり、統一された見解はない。
What Was The Last Common Ancestor of all Life on Earth?
初期の火星は地球よりも生命に優しかった
米ジョージア工科大学の惑星学者クリストファー・カー氏らの考えでは、LUCAの祖先は小惑星に乗って火星からやってきた微生物だという。カー氏が『arXiv』(2月4日投稿)で発表した論文では、そう考えるべき科学的理由が述べられている。
それよると、基本的にこの宇宙のどこでも有機分子が降り注いでいるのだという。しかしどのような化学反応によってそうした有機分子が細胞に不可欠な構成単位に変化するのか、一切分かっていない。
有望なものの1つは、浅い水たまりのような環境だ。そこでは紫外線、蒸発と降雨、火山や小惑星衝突の熱などによって、うまい具合に材料が調理される可能性がある。
しかし初期の地球は水にどっぷりと浸かっていた。35億年前の地球は、ほんの数パーセントを除けば、深い水におおわれていたと推定されているのだ。
一方、初期の火星もまた水が豊富だったが、水にひたる程度で、生命が誕生するにはずっと都合が良かっただろうと考えられるという。

image credit:NASA / JPL-Caltech / MSSS / JHU-APL
火星の環境はLUCAの誕生に最適だった
もう1つの手がかりは、アミノ酸(細胞がタンパク質を作るために使う部品)のレパートリーだ。我々も含め、LUCAの子孫はみな同じおよそ20個のアミノ酸からタンパク質を作っている。ただし新しいタンパク質の多くは、そうしたレパートリーの半分もあればおそらくは十分だと考えられている。
このことについて、ある研究によれば、不可欠なアミノ酸が少ないほど、生物は酸化に対応しやすい可能性があるという。
しかし地球が誕生してから最初の20億年は酸素がなかった。となると、LUCAのアミノ酸が酸化に対処しやすい構成だったのはどうしたわけだろうか?
そこで系統樹の根元は火星にまで続いていると考えるとつじつまが合ってくる。火星では、地球より早い段階で酸化する環境が作られていたからだ。
もし本当に火星でLUCAの祖先が誕生していたとしたら、それは両惑星間を行き交ういくつもの小惑星に乗って地球にやってくることができる。

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この仮説に反論の声も
もちろん、カー氏の仮説には反論もある。ジョージア工科大学の生化学者ニコラス・ハッド氏は第三者の立場から、初期の地球に大陸はなかっただろうが、生命を宿すには十分なハワイのような島ならあったと主張する。また余分なアミノ酸がある理由は、酸化とは関係ないのではとも述べている。
火星には地球よりも生命が誕生しやすい環境があったという説はさまざまな研究者から主張されているが、ハッド氏はそこに有無を言わせぬ説得力があるとまでは考えていないとのことだ。
パーサヴィアランスが調査する予定である「ジェゼロ・クレーター」は、かつて周辺から泥水が流れ込んでいた場所だ。そこにある堆積物を分析することで、火星が酸化し始めた時期についてより詳しいことが明らかになるはずだ。
References:arxiv / popsci/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
火星年代記のテレビドラマ、リメイクしてくれないかなー
2. 匿名処理班
そう囁くのよタコのゴースト
3. ナパチャット
火星由来の隕石って言っても火星から地球まで直線で向かってくるわけじゃ無いし、早くても数万年単位だと思う
火星で原始生物が出来たとしても隕石に乗って…というのはどうだろう?現実的じゃないよね
4. 匿名処理班
この説確かめたいから予算ちょーだい!
な気がする…
冷戦終結以降、宇宙開発は尻すぼみ気味だからなぁ…
5. 匿名処理班
火星起源説なら70年以上前からある。
体内時計や腰痛ほか、インド神話の古代戦争、火星は戦星ほかがその痕跡だという。
説は前からあるのだから根拠となる証拠や事実を積み重ねて欲しい。
6. 匿名処理班
つじつまが合う、不可能ではない、
それだけでは根拠と呼ぶには弱い気がするけどね。
あとは火星でかつて生命が存在した痕跡が発見されたら大事件だけど。
7. 匿名処理班
そうだとして今の火星には移住せず残った人間の生活の痕跡や他の生物もいるはず
地球に来れる高度な文明があるなら集落とかもかなりの規模の物だろう
見えてないだけかもしれないけど
8. 匿名処理班
じゃあもう明日火星に見に行ってみよう
9. 匿名処理班
地球じゃあんたらのことをモアイと呼んでいる
10. 匿名処理班
宇 宙 人 「 宇宙はすべて見て回ったが、どの惑星に行っても、ゾウとか
スズメとか、キンギョとか、そしてニンゲンみたいなヤツとか、
おんなじのばっかりでワロタ! wwwwww 」
11. 匿名処理班
狭い地球でゴタゴタしている内は
技術の平和利用より軍事転用を優先されてしまうなぁ
まっ、自分達が主導権とかを握りたくて争っているのだろうけど
是非もないよネ
12. 匿名処理班
地球にも西ノ島みたいなのが無数にあったんちゃうの
13. 匿名処理班
バルバラ異界だわ〜素敵
14. 匿名処理班
まぁどっちが先に冷えて途中までは丁度良い環境だったか言われたら火星なんだけどさ。
別にこれに関しては地球主体で考えても悪くないというか、後の影響は少ない気がするんだけど、わざわざ火星に求めてそれでどうするって言うんだ。
先ずは今判っている範囲で系統立てる必要が先だと思うのだが。
15. 匿名処理班
>両惑星間を行き交ういくつもの小惑星に乗って地球にやってくることができる。
セ氏150℃近くまで変性しないタンパク質もあるそうなので、地球の大気圏突入時の熱にも耐えた可能性あるかもしれませんね。
でも、火星人がタンパク質を地球向けに発射した痕跡を今から探すのは大変そう。
16. 匿名処理班
これ、はっきりさせたいなら
火星で生命が発見できたらでしょうね
まあ地下を調査してからになるだろうけど
もし生命体がいないならそれもそれで
妙な事になるだろうね
水だけが生命を生み出す要因では
無い事になるから
17. 匿名処理班
たこさん「それをバラすには現在の地球人は愚かすぎる」
18. 匿名処理班
遥かな未来
「人類の発祥の地は火星だって言う説があるよね、かつては巨大な海が存在し、生物の生存に適した大気もあったって話だよ、最近ではその証拠も多数観測されてるみたいだしね」
「いや、あの赤茶けた放射能だらけの星に生物が居たなんて信じられないね、私はやっぱり、人類発祥の地は太陽系第4惑星地球だと思うよ」
なんて会話が、テラフォーミングに成功し地球が滅亡した後も生き残った火星で交わされたりしてるのかもしれませんね。
19. 匿名処理班
キャプテンフューチャーが80年位前にやってるな。
もっとも白鳥座からの移民が火星に渡って、その後に地球だったと思うが。
20. 匿名処理班
>>2
攻殻、アップルシードの世界では、アップルシードの頃に火星で遺跡発見のニュースが出ていたな。
そんで更に未来に、金星でゲート発見してアルファケンタウリと親善だったかなあ。
21. 匿名処理班
地球vs火星の戦争があったんだけど同士討ちで
当時の生き物がほぼ絶滅したんだと思うよ。
22. 匿名処理班
>>18
火星のテラフォーミングはほぼ不可能というのが現在の学説の主流だよ。
地下深く潜って僅かな地熱エネルギーを得て、極地の氷から水を取る事は可能だけど、問題は呼吸に必要な酸素や温暖化に必要な二酸化炭素を大気に留めておく事が出来ない事。
地球の100分の1しかない希薄な大気と、3分の1しかない重力の為に、人類が地上で生きる上で必要な空気が宇宙空間に逃げてしまう。
そのせいで宇宙から降り注ぐ有害な紫外線や放射線から地表を守る事も出来ない。
23.
24. 匿名処理班
ッション・トゥ・マーズみたいだな
25. 匿名処理班
※22
一体どこの国での主流の学説なのか、聞いた事がないけどね。
そもそも火星で二酸化炭素が大気圏外に逃げてしまったという説も定説ではなくて、古代に生成された二酸化炭素は今も土壌中に豊富に含まれているという説もある。
それにNASAのクリス・マッケイを中心とした研究チームは、惑星温暖化に必要な大気圧は300ミリバール程度(エヴェレストの頂上付近)でも十分だという研究結果を発表している。従って火星の地質を多少いじるだけで十分テラフォーミングが可能となるという。
26. 匿名処理班
SF映画『Mission to Mars』(2000)で見たよw
27. 匿名処理班
最初の生命は海底噴出孔かもっと地下深くって説もあったが、紫外線が必要だったとするとそうとも言えないのかな。そもそも非生命と生命の中間があるなら現在に存在してもよさそうではあるが。
28. 匿名処理班
ダーメダメよ♫
って脳内で流れる
29. 匿名処理班
※25
多少ってのがどれくらいなんだかソースありましたら教えて下さいませませ。地球の僅か0.040%程度の二酸化炭素の、更にそのブレ程度の変動ですら人類は右往左往しているっていうのに、どうやったら惑星一個の環境を「多少いじるだけ」で操作できるんでしょうねぇ。不思議不思議。
30. 匿名処理班
嘘も方便。火星調査じゃ予算が下りないからでしょう。
火星調査じゃ予算が下りなくても地球の生命の起源が火星にあるから火星を調査したいと言えば予算が下りる。
嘘をついて観客から金を巻き上げるSF作家と同じ。
31. 匿名処理班
※29
ごもっとも 大気の濃度も問題だけど水素の量も問題 地球ですら毎日大量の水素が宇宙空間に逃げ出していっているのに 地球もいずれ火星のようになると言われている。まあ地球の水素はとても沢山あるのでかなり時間がかかりますが
あと、太陽風や宇宙放射線を弾くくらいの強力な磁場があるのも太陽系の岩石惑星では地球だけ、プレートテクトニクスを人工的に発生させるような技術は まだない
32. 匿名処理班
惑星間を飛び交う隕石とかいうけど、3種類のケースが想定される。
1、噴火で発射された火星地表の岩
2、隕石との衝突で飛ばされた火星地表の岩
3、命または命一歩手前の物質が存在するレベルに惑星の地表に近い、大気圏を掠めながらその惑星の引力から抜け出せる隕石
温度、酸性などの環境が激しく変化する中で、撹拌された原始のスープはその構成を無限に変え、ついに最小で最初のサークルが自然発生したという説を「ただの猿がタイプライターで偶然シェイクスピアを書き上げた」と例えるなら、
この説は確率的には「突然変異によって偶然高い知性を持って生まれた猿が、奇跡的に自分の中で人類と同じレベルの文化文明を空想で作り上げた、自作のタイプライターでシェイクスピアを書き上げて後世に残した」程度の物じゃない?火星の重力が低くハードルがちょっと低いから、タイプライターはたまたまそこにあったでいいか。
33. 匿名処理班
※29
地球温暖化のプロセスと火星のテラフォーミングのそれとを同一に語るのはおかしいのでは?
確かに惑星磁場の有無とかで工程が左右される面はあるのだろうけどね。
複雑な生態系が存在していて複数の国々が好き勝手に二酸化炭素排出している地球と、生物が居なくてシンプルな大気構造の火星とを比べれば明らかに火星の方がやりやすいとは言われている。
とはいえNASAのクリス・マッケイも、火星のテラフォーミングは一朝一夕にはいかず数千年は掛かると言っているようだが。
34. 匿名処理班
この話題に関係なく全体的なコメントの傾向に見られるんだけど、何でもかんでも「不可能」って決めつける姿勢も如何なものかと思うんだよね。
これに限らず最近の日本人はどんどんネガティブマインドに陥っているように思える。
それを現実的といえば聞こえがいいんだけど、チャレンジしようという気概が無くなりつつあるのは国際競争力維持の上でもかなりマズイ傾向だよ。
こんなんじゃマジで日本は没落し続けるし、それだけじゃなく自分で自分の首を絞める事になるだろうね。
35. 匿名処理班
※20
士郎正宗氏が大学時代に出した同人誌「ブラックマジック」(後に単行本として出版。)が、火星に一大科学文明を築いたが、最終的に環境の変化で生存に適さなくなった火星を捨てて外宇宙に移民した古代火星人類の話になっている。
その中の一編に、火星人類が白亜紀の地球に人工太陽を使ったテラフォーミングによる生物進化の実験を行なっていたが、地球で独自に進化を遂げる生物に危機感を抱いた施政者が人工太陽を破壊して実験を妨害、地球は氷河期に見舞われて…というのがある。
36. 匿名処理班
※34
違うんだよな。
火星のテラフォーミングがまるで地球の環境を守るよりもお手軽みたいな言い方が良くないと言ってるんだよ。
今ある環境を大事にしないで、はるかに難しい事をさも救世主の名案みたいに持ち上げて大金つぎ込むのは違うだろうって言う事さ。