
実は犬もわかるのだ。普段聞きなれていない言語は「外国語」として認識することができるのだという。犬は、初めて聞いた外国の言葉であっても、それが「言葉」として認識できるのだ。
犬の中でも特に賢いことで知られるボーダーコリーに協力してもらった実験では、彼らの脳が国によって異なる言葉の違いを認識していることが明らかになっている。
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メキシコからハンガリー引っ越しした犬
ハンガリーの首都ブダペストにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学者ラウラ・V・クアジャ博士は、数年前に愛犬のボーダーコリー「クンクン」を連れて、メキシコからハンガリーに引っ越してきた。彼女の母国語はスペイン語だ。もちろん犬に話しかける時もスペイン語なので、クンクンにとってハンガリー語は耳慣れぬ言葉に違いなかった。
その時クアジャ博士は、ふと思った。
「クンクンは言語の違いに気づいているのかな?」と。
人間の場合、言葉を話す前の幼児でさえ、国による言葉の違いを認識できる。では犬はどうなのだろうか?

photo by Pixabay
2ヶ国語で『星の王子さま』を聴かせる実験
この疑問に答えるため、クアジャ博士らはクンクンをはじめとする18頭の犬たちに協力してもらうことにした。MRIの中でじっとするよう犬を訓練し、「スペイン語」か「ハンガリー語」どちらかの『星の王子さま』を聴かせて、そのときの脳の活動を観察したのだ。

image credit:Eniko Kubinyi
これにくわえて、「言語」と「非言語」の区別がつくのか調べるために、2種の言語を混ぜ合わせたまったく不自然なスクランブル音声も流した。はたして聞き慣れた言葉と聞き慣れない言葉、あるいは言語と非言語で、脳の活動に何か変化はあるのだろうか?
The story of Kun-kun’s journey that helped discover how dog brains distinguish languages
犬は言語と非言語、言語の種類のどちらも認識できる
その結果、言語と非言語の違いを認識できるだけでなく、スペイン語とハンガリー語の違いも認識できることが明らかになった。クアジャ博士の説明によると、犬は「階層的処理」と呼ばれる2段階プロセスで言語を処理していると考えられるという。
まず脳の「一次聴覚皮質」で、聞こえてきた音が言語なのかそうでないのか認識する。それから「二次聴覚皮質」で、その言語が普段から聞き慣れたものかそうでないか認識する。
なぜ犬は言語の違いがわかるのか?
だが、国による言葉の違いを区別する犬の能力は、人間のそれとは少々違うものかもしれない。人間の脳の場合、話し言葉に自然にチューニングされるようにできている。「犬の脳の場合、単純に音の自然さを感知しているだけかもしれません」と、研究グループのラウル・エルナンデス=ぺレス氏は説明する。
今回の実験では、面白いことに、年齢が高い犬の方が言語の区別が得意という結果が得られている。どうやら犬は、生活の中で「言語の規則性」を学習しているようなのだ。
「言語は聴覚的な規則性によって特徴づけられています。今回の研究では、犬は人間と暮らす中で、普段耳にする言語の規則性をキャッチしているらしいことが示唆されています」とエルナンデス=ぺレス氏は言う。

image credit:Eniko Kubinyi
犬以外の動物も言語の違いを認識できるか?
この研究結果は、言語の規則性を学ぶ能力は人間だけのものではないことを明らかにしている。だが、それが人間と1万1000年以上共に暮らしてきた犬ならではの能力なのか、それとも他の動物にも備わっている能力なのかは、まだわからない。この謎は、今後の研究課題であるとのことだ。
ちなみに見知らぬ土地に引っ越してきたクンクンだが、今ではドナウ川で泳ぐのが大好きだったり、初めて雪を見ることができたりと、ハンガリーの暮らしをエンジョイしているそうだ。
この研究は『NeuroImage』(2021年12月12日付)に掲載された。
References:Dog brains can distinguish between languages | EurekAlert! / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
ポチたまのまさおくんも
日本の観光地で台湾のツアー客の団体さんに囲まれた時
不思議そうにしてたらしいよ
2. 匿名処理班
猫も自分の名前を認識できたりするから犬ならなおさらだろうな
3. 匿名処理班
人間と同じ反応やね。
自国語だと耳で聞いた言語を音から意味のある言葉として脳内で自然と変換してるけど外国語だと言語だと分かってても変換が起きないから文字通り聞き流してしまって脳での反応が異なる。
4. 匿名処理班
海外に遠征したサラブレッドも、外国語で声をかけられるとイライラ落ち着かなくなった、って経験談を読んだことある(すぐ慣れたらしいが)
5. 匿名処理班
いぬ「わんわんわんわん」(気持ち)ワンワンしかわからんわ。
6. 匿名処理班
米国生まれ・育ちのうちの35kgは、日本にいる今でも英語で映画を毎日聞かされている。あちらで最初のトレーニングを受けたから、コマンドは英語。ただし発音は日本人のそれ。(笑)
さて、彼女の言語認識はどうなってるのだろう?
7. 匿名処理班
これがほんとのバウリンガル
8. 匿名処理班
>>6
ダブルリミテッドって言う弊害もあるから気を付けた方がいいよ?
9. 匿名処理班
外国語で話しかけられた時にそれが言語かどうかまで判別してるってのはすごいな
自分なら例えばスペイン語とハンガリー語のまぜこぜの意味を成してない言語で話しかけられても
外国語で話しかけられてるーとしか思わないだろうなぁ・・・
10. 匿名処理班
俺は犬の世界に言葉の違いがあるのか気になる。
日本で生まれ育った犬は、ロシアで生まれ育った犬と
犬の鳴き声やジェスチャーによる違いってないのかな?
11. 匿名処理班
多頭飼いで自分と他の犬の名前の区別がついてない子も少なくないと思うけど
そういう子も言語の違いはわかるんだろうか
12. 匿名処理班
まずMRI内でじっと出来るのが凄い。自分はパニックになりそうで苦手
13. 匿名処理班
イルカには海域によって方言があるらしくて一部相手に伝わらないことがあるらしいね。
14. 匿名処理班
>>8
犬だよ
そこまで言語に依存してないだろう
15. 匿名処理班
外国生まれの犬だか猫だかに母国語で話しかけると
「おまえ喋れたんか!」みたいな反応をするのだそうで
16. 匿名処理班
アメリカ兵がドイツの戦線で野良犬を拾ったけど、いうこと聞かないやつだったらしい。
でもある日一緒にいたポーランド系アメリカ人が、ポーランド語で悪態をついたらそれに反応したから、ポーランド語で命令したらいうこと聞いたんだって。