
犬はロボットの命令にも従う Social Robotics Lab/Yale University
たとえば家電のような動く物体とロボットの違いの1つは、人間がロボットを「エージェント」とみなしていることだろう。特に人型のロボットを目にしたとき、私たちは多少なりとも自律した行動や、さまざまな抽象的概念レベルでの動機付けがあるだろうと予期する。つまり、ロボットには家電とは違って「行為の主体性」があるということだ。
行為主体性は、人間の身近で使われるロボットをより洗練されたものにしてくれる。だが、人間のそばには、たとえばペットなど、人間以外の存在もいる。ロボットが私たちの生活の中に普及するということは、彼らもまたロボットと暮らすようになるということだ。
これに関連して、イェール大学(アメリカ)の研究チームが、ACMとIEEEが主催するHRI 2020 Conferenceで面白い実験結果を発表している。それはイヌが人型ロボットをどのように見ているのか調べたものだ。
広告
犬はaiboを犬として認識するか?
この実験の背景には、犬がさまざまな姿形をした物体から出される指示に従うかどうかを確かめた、ある先行研究がある。その研究では、犬はスピーカーや映像から発せられる指示にはそれほど従わなかったし、いかにも機械然とした外観のロボットが指差す物体に注意を向けることもなかった。
興味深いことに、犬は犬型ロボットのaibo(アイボ)ですら餌の競争相手とみなさず、相手が本物の犬であるかのように接したりはしなかったという。
彼らのaiboへの態度は、「変わった犬だなぁ」というよりは、掃除機を初めて見たときのように「なんだこの変なモノは」といった風であったそうだ。

image by:aibo
人型ロボットNaoの命令を聞く犬は6割以上
仮に犬が犬型ロボットは本物の犬ではないと認識していたのだとして、では人間とコミュニケーションするよう作られ、そのために人間の特徴が備わっているロボットに対してどのように反応するのだろうか?これが今回のチン・メイイン氏らの疑問だった。
実験で使われたのは「Nao」という人型ロボットとただのスピーカーだ。Naoかスピーカーのどちらかから、犬(34匹が参加)に対して同じ音声を流し、そのときの反応を観察する。
最初は犬に慣れてもらうために、飼い主にNaoかスピーカーに話しかけてもらったり、犬にエサをあげてもらったりした。その上で、Naoかスピーカーから犬の名前や「お座り」という音声を流してみる。
すると犬はスピーカーよりもロボットに対してよく反応し、お座りの指示にも従った。スピーカーにお座りと言われたとき従ったのは2割未満だったが、ロボットの場合は6割以上に達したという。
Dogs Obey Commands Given by Social Robots
ロボットとスピーカーはどこが違うのか?
この研究の目的は、ただ”犬ソーシャルロボットに反応するのかどうか明らかにすること”だったので、一体どの要素が犬の反応を誘っていたのかは分からない。だがチン氏は、ロボットとスピーカーの違いをいくつか指摘している。
たとえば、「ロボットが行為主体として認識されていた一方、スピーカーはそうではなかった可能性」「ロボットには物理的な体があったが、スピーカーの場合、見える形で設置されていないこともあった」「ロボットが視覚的合図と音声的合図の両方を出していたかもしれない一方、スピーカーは音声的合図だけだった」などだ。
ロボットの外見が人間に似ている度合い、顔の有無、ニオイの有無、その他の人間に関連する特徴の有無などによって犬の反応が違ってくるとも考えられるだろう。
犬は人間からの社会的合図にとても敏感なので、外見が人間に似ているかどうかで反応に違いが生じる可能性はあります。と、チン氏は説明する。
ですが、非人型であっても行為主体(犬のような行動やその他の社会的行動など)として振る舞っているのなら、それに対して犬が社会的態度を示す可能性はあります
外見的な特徴のほかにも、動きの有無でも違いがあるかもしれないとのことだ。
ただじっと立ってるだけのロボットでは行為主体のようには見えないかもしれません。そうしたロボットに対して、イヌが社会的な態度を見せない可能性はあります今回、イヌがロボットに対して反応するということは分かった。次のステップは、一体犬が何に対して反応しているのかを解明することだ。
こうしたことの理解は、より高度なaiboだけでなく、より人間が親しみやすい人型ロボットの開発にもつながることだろう。
References:Dogs Obey Commands Given by Social Robots - IEEE Spectrum/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
我が家の愛犬はオヤツを持っているオットの命令に反応し、持っていないオットには反応しない。
2. 匿名処理班
これは興味深い実験ですね。
完全な人形ロボットでは無いけれど、手足があって二本足で立っているのがポイントなのかな?
3. 牛野小雪
人間が犬やロボットの命令に従った、と勘違いした。
4.
5. 匿名処理班
遠藤浩輝氏のSF漫画「EDEN」で、人型ロボットと犬の関係に言及する場面がある。
作中では、人型ロボットに犬が懐いたり従うことは普通無いという前提で話が進むが、
実際には6割以上が指示に従う、と。
しかもNaoレベルの外観で。
なんか、イトヨは同族を色で識別するのか形に反応するのか、みたいな話を思い出した。
・・・「不気味の谷間」みたいな現象も有りうるのかな?
6. 匿名処理班
ロボット遠隔で犬連れ去りとか出てきそうだな
7. 匿名処理班
子供が人型ロボットを意志がある物だと認識して話しかるのと一緒じゃ?差別しない天使
8. 匿名処理班
「側に本物の人間もいない&従っても無報酬」状態でやってみてくれないかな
その場合恐らくソーシャルロボットに従わないのでは。犬はあくまで人間の意図を感じ取ってロボットに従ってると思う。つまり「ロボットはご主人の代役」だと認識している可能性は?
9. 匿名処理班
二足歩行がデカい気がする
ひょっとして犬って手が使える有利性をかなり重要視してたりする?
10. 匿名処理班
見た目がもろ人間だったら普通に従うでしょ
機械的な見た目なら最初は従っても何も報酬なかったり、人がいなければ従わなくなると思う
11. 匿名処理班
アイボは無視?
ならばスポットならどうだろう?前に見た映像では警戒心かも知れないが大きなリアクションは取っていたから、大きさも重要だと思う。ただニオイが違うから犬とみなすかは微妙だけど。
12. 匿名処理班
犬は自分と同じ仲間だから流石に愛慕を犬とは間違えない。
でも人間の場合は「こんな人もいるのかなぁ?」と半信半疑ながら従う。
それが6割という数字に表れている、とかだったりしてww
なんかでも人型の宇宙人とかの命令にも従いそうwww
13. 匿名処理班
どの犬も命令に従う前にロボットの隣に居る人をチラッと見てるのが気になる。
人がいないロボットだけの空間でやったら違う結果が出そう。
14. 匿名処理班
>>13
「操作してる」のを見抜いていたかもね
15. 匿名処理班
へー面白い
見ず知らずの人間(お客さんとか)の指示に従ってくれるプロい犬もいるからそれと同じかなと思った
ていうか大型犬多めやね?関係ないかもしれんけど
16. 匿名処理班
人間っぽい なにかと 音があれば お前らだって同じことするんだよw
17. 匿名処理班
名前を呼ぶ実験ではロボットの手が動いてるから、犬はその動きに集中する。これが従う事を促してると思う。犬は音のサインより、手のサインの方を良く理解するとしつけの専門家も言うし。
「スワレ」の実験で、なぜ同じ犬のロボット版とスピーカー版がないのか深くギモンに思う。動画に操作性を感じてしまい、実験に対する信頼度が下がる。
18. 匿名処理班
うちの犬、駐車場の料金を払う黄色い機械の中には人が入っていると思っているよ。
高速道路では人が受け取っているし、マックのドライブスルーと同じと思っているのかも。
病院の駐車場の機械に
「いつもご苦労様です!おばあちゃんがお世話になってます!また来ますね」
って挨拶していよ。
人型ロボットを見たらどんな反応するのかな?
19. 匿名処理班
おやつの為なら何でもする!!それがワンコ!!
え?違うって?凄い面白い実験だけど比較の仕方がしっくり来ないね。
20. 匿名処理班
※9
手が使える有利性を認識というより、
・二足直立の姿が、普段から主人としている
人間のビジュアルに近い ⇒ 指示に従っとこう
・二足直立だと、四ツ足動物に比べて大柄に見える
(人間もそう)⇒ 強者だと認識し従う
あたりが効いてそうに思うが、どうなんだろう?
21. 匿名処理班
ロボットの言うことを聞いている、というより
コマンドに忠実な姿を主人に見せているのでは
22. 匿名処理班
サルを躾けて同じことさせたらどうなるかな
23. 匿名処理班
犬がどの要素を命令の主体として認識するか?その条件の境界線は?
多くの鳥はカカシを人間と認識して避けるけどカラスには効かないみたいな感じ?
24. 匿名処理班
>>3
さすがにそれはないだろ