
しかし『PNAS』(21年12月28日付)に掲載された研究は、硫酸でできた雲の中ならば、生命が存在していてもおかしくないと伝えている。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)や英カーディフ大学の研究グループによると、生命が「アンモニア」を作り出したと考えるのなら、硫酸の雲にまつわる数々の謎が解けるのだという。
金星の化学反応を考察した研究は、アンモニアは「生命が金星で独自の環境を作っている可能性」を示唆していると主張する。
金星の雲の謎
金星は、硫酸の雲がただよい、硫酸の雨がふる(ただし地面に達する前に蒸発する)ことで知られている。じつはこの雲、化学者にとっては不可解な、謎に満ちた存在だ。そこには「酸素」や「非球状の粒子」が存在することに加え、「水蒸気」や「二酸化硫黄」の量も意外なほどに多い。
このような奇妙な雲が形成された理由としては、地表から塵が舞い上がり、それが雲に作用した可能性が考えられる。
しかし、そのためには、大量の塵が雲に流れ込む必要があり、物理的には考えにくい。

生命活動がアンモニアを作り出した?
今回サラ・シーガー教授らが目をつけたのは、もう1つの可能性だ。金星探査機「ベネラ8号」や「パイオニア・ビーナス」による1970年代の調査では、暫定的ではあるが、金星で「アンモニア」が検出された。
もしも十分なアンモニアがあれば、金星の雲に一連の化学反応を引き起こすと考えられる。
アンモニアが硫酸に溶けて、その酸を中和する。すると本来は丸い球状の雫だったものが、塩のような非球状のどろっとした液になる。また、これによって二酸化硫黄に分解される。
こうして、雲の謎がほぼ解決されるのだが、問題が1つある。それはアンモニアが金星に存在する理由がわからないことだ。
アンモニアには水素が結び付いている。だが金星に水素はほとんどない。だから金星にアンモニアもあるはずがない。
すると、ある別の可能性が自然に導き出される。アンモニアが生命活動に由来するという可能性だ。

image credit:Joanna Pętkowska (Warsaw University of Technology, Warszawa, Poland)
金星の雲の中に生命体がいる可能性
地獄のように過酷な金星に生命が存在するとすれば、それがアンモニアを作り出し、先ほど説明したような化学反応が起きる。この化学反応は、雲の酸を中和するので、生命が生存しやすい環境も作り出すだろう。
現実に地球では、人間の胃の中でアンモニアを生産し、胃酸を中和しながら生きる細菌が存在すると、研究グループは指摘する。
「私たちが知る生命は、金星の水滴の中では生きられないでしょう。ただ重要なことは、おそらく何らかの生命がいて、生存しやすいよう環境を変えているということです」と、シーガー教授は声明で語っている。
じつはシーガー教授らは、昨年金星で「ホスフィン(リン化水素)」の検出に成功し、界隈を大いに賑わせた。
ホスフィンもまた生物学的なプロセスによって作り出される気体で、金星に生命がいる痕跡(バイオシグネチャー)と考えられるのだ。
これについては反論も多くあるようだが、少なくとも金星が研究者から注目されるきっかけにはなった。
「金星には、不可解な大気の異常があります」とシーガー教授。「それは生命の可能性を残す余地でもあります。」

photo by iStock
数年以内にその謎が明らかに
今、MITでは金星の生命を発見するべく、2023年より金星に探査機を送りこむ「ビーナス・ライフ・ファインダー・ミッション(Venus Life Finder Missions)」を進めている。ミッションの主任研究員は、他ならぬシーガー教授だ。もしかしたら今後数年のうちに、初の地球外生命が発見されることもあるかもしれない。
References:Could acid-neutralizing life-forms make habitable pockets in Venus’ clouds? | MIT News | Massachusetts Institute of Technology / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
金星の大気は過去数億年くらい変化してないという事らしいので、もしそれが本当だとしたら金星の生態系によって一種のホメオスタシス状態が維持されていると考えられる
数億年以上もあれば、地球の魚が陸に上がったように金星生物も空中から地上に降り立っているかも知れないし妄想が広がるね
2. 匿名処理班
金星には不規則な動きをする謎の黒い雲があって、それが生命の群体か、あるいは巨大な個体である可能性が以前から指摘されているんだよね。
あと数年か。生きる理由が増えたなあ。
3. 匿名処理班
1970年代にアンモニアが検出されたことに信ぴょう性がないような・・・
探査機によってアンモニアが検出された!→んーでも他の観測結果と矛盾しているねって感じで結論づけられているようで、金星にアンモニアがある、あるいはあるかも、としているデータが見当たらなかった
現にNASA、JAXAでは金星のアンモニアについて一言も触れられていないし、ウィキペディアですら日英とも一切書いてない
なのでこの話も「もしアンモニアが本当にあれば」という仮定のが強いような気がする
でも探査ミッションが進行しているということは何らかの見込みがあるということなんだろうか
4. 匿名処理班
「老ヴォールの惑星」やん。
5. 匿名処理班
※2
それきっとペンギンの群れ
6. 匿名処理班
※3
ESAのビーナス・エクスプレスもアンモニアとホスフィンは発見してないね。
7. 匿名処理班
探査機が金星の地獄のような素顔を伝えるまではサイズは地球とほぼ同じで大気もあるということで、地球より太陽に近いぶん気温はやや高いくらいの気候の惑星で当然生命も居るだろうと思われてたよね
古いSFでは金星人は火星人と並ぶ宇宙人の双璧だった
8. 匿名処理班
>>だが金星に水素はほとんどない。
う〜ん…
予想外に水素が太陽風で供給されてる可能性があるんじゃない?
月の表面で太陽風によって運ばれた水素が水分子として存在している可能性があるってニュースが最近あったし、金星にも同じことが起きてるかもしれない(金星はアンモニアとなるけどね)
9. 匿名処理班
ん〜生命体がいたとしても、微生物やアメーバーみたいなのと友好関係結べないし…
どーでもいいわ
10. 匿名処理班
金星、謹製の生命でおます
11. 匿名処理班
地球の土壌や海に莫大な古細菌が存在するのもここ数十年でやっと理解が進んだ。極限環境に耐えるああいう形の生命体なら存在するかもしれない
12. 匿名処理班
👽「さぁ〜〜 安いよ!安いよ! 金星で採れたお茄子、ビー茄子だよ〜」
13. 匿名処理班
ワイが子どものころは考えもしなかったけど、最近はもう、微生物程度ならいてもおかしくないかも、って思っちゃう。
14. 匿名処理班
硫酸VSアンモニア
どっちが勝っても人類に未来は無い!
15. 匿名処理班
硫酸だかなんだか知らねーけど酸素あるってこと
16. 匿名処理班
※9
地球以外に生命の存在する惑星が確認されれば科学史上でもトップクラスの大ニュースだよ
しかもそれが同じ太陽系の別々の場所に生態系があるとなれば、惑星だけで数兆はあるであろう銀河系と言う視点で見た場合、生命はまさにありふれたものである可能性がぐんと高まる
さらに生命がありふれているなら、知的生命体の存在の可能性も同じように高くなるわけで
17. 匿名処理班
>>12
はーーしょーもな!
18. 匿名処理班
うちの物置にも生き物が生息してる可能性が・・・
19. 匿名処理班
※16
概ね賛成だけど、1つ指摘すると地球に近いと地球の生命が隕石など何らかの拍子に移った可能性にも注意する必要がある(もちろんその逆に向こうから地球に来た可能性も)。
発見されたのが微生物で地球と同じようなDNA型生命だったらますますその可能性が高まる。
特に20世紀に金星に突入した探査機はクリーンルームとかあまり微生物対策をしてなかっただろうから、探査機に付着して一緒に送り込まれた微生物が金星環境に適応して繁殖している可能性も排除できない(これは火星への探査機についても言える)。金星の上層大気の環境が地球生命の生存から見て適合しそうと言うのなら尚更かつての探査機と共に送り込まれた微生物がいたらそれの生存にも好都合ということになる。
20. 匿名処理班
>>1
降りたてるわけないでしょ。
探査機がすぐぶっ壊れるようなところに。
金星上層の環境が、極限環境生物の生息域になってるんじゃないかという研究でしょ。
21. 匿名処理班
※17
嬉しい(^_-)-☆最高のお言葉
22. 匿名処理班
他のあらゆる可能性をすべて排除していって、どうしても仮説を否定できないときに初めてそれを受け入れるというのが通常の科学の姿勢なのに、
この地球外生命ハンターたちだけは、少しでも可能性があればとにかく大騒ぎするのがほんと好きになれない。
パトロンから金引っ張るためには仕方ないかもしれないけど
23. 匿名処理班
※19
金星探査機の歴史なんて遡ってもたかだか50年程前でしかないのに、そのたった50年程度で金星の大気成分そのものに影響を与えるほど繁殖する可能性の方が少ないだろ。
そもそも偶然に地球産微生物が付着していたとしても、それが金星大気にすぐ適応出来るわけでもないし、適応出来るまで進化をしたとしてもどれだけの時間が掛かることやら。
それならばまだ土着の金星生物が過去数億年に渡って生息し続けていると考える方が自然だよ。
24. 匿名処理班
黒い雲はガス状の生命体という可能性もでてきたか・・・?
とりあえず数年後の続報を待ちたいところだ
25. 匿名処理班
※23
いや、地球のあらゆる環境に進出して環境が整えば倍々で指数関数的に繁殖していける微生物の逞しさを舐めちゃいけない。
それにこの人の研究によると金星の大気上層の環境は生命の生存と繁殖にとって都合が良いそうだから、そうであるなら半世紀の月日は十分すぎる。
それに隕石が原因だとしたらもっと遥か前のことだから。
26. 匿名処理班
>>25
何十億年も莫大な量の生存競争を繰り広げてきた地球の生命なら、無菌の新天地なら滅茶苦茶な勢いで増えるでしょうね。なんなら金星大気に藻類をバラ撒いたら、テラフォーミングが開始される可能性もある。
27. 匿名処理班
こまけぇこたあいいんだよ
夢ひろがりんぐでいいじゃん
28. 匿名処理班
※25
「生命の生存と繁殖にとって都合が良い」と「地球生命の生存と繁殖にとって都合が良い」はイコールじゃないからな
そもそも大気中を漂いながら大繁殖するためには、マイクログラム以下の水滴の中でまず生存の策を講じないといけないし、地上へ落下するリスクを抑えるために自重を軽くしないといけない(という事はコロニーが形成できない)
現に地球生物だって、大気中を漂いながら大繁殖する微生物は発見されていない(たまたま高空に舞い上げられた微生物が成層圏で検出される例はある)し、金星大気に影響を及ぼすほどの微生物が地球にいるならとっくの昔に地球で発見されていないとおかしい
29.
30. 匿名処理班
>>2
きっとマックロクロスケの大群
31. 匿名処理班
星自体がこういう形で存在する生命体ではあるんだろうな
そこからどういう風な進化を辿れば地球の様な惑星になるのか
この発見がそれに結びつくのかな?
宇宙は面白いなって思う
人工物や人工光のない無人島で夜に空を見上げたら、宇宙の中に立ってるみたいな気になれそう