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有益な薬を攻撃しないように免疫システムを制御する「逆ワクチン」が開発される

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(著) (編集)

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 免疫系は体内に侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体やがん細胞などの異物に反応して撃退してくれるが、時に無害な物質や、有益な物質に対しても異物と勘違いして攻撃してしまうことがある。

 そこで開発されたのが、攻撃してほしくない物質に免疫系が手を出さなくなる、ある種の「逆ワクチン」だ。

 逆ワクチンは、免疫系が有益な薬の効果を消すことを防いでくれたり、アレルギーや自己免疫疾患の治療にも応用できるかもしれないそうだ。

免疫の過剰反応を制御する「逆ワクチン」

 免疫系は素晴らしい防御力を発揮するが、よく勘違いをする。薬や食品などに含まれる有益な物質まで攻撃することがあるのだ。

 これは薬の効果を低下させたり、アレルギーの原因になったりする。免疫系がうっかり体の細胞を攻撃するようになれば、自己免疫疾患を引き起こすことさえある。

 ワクチンはあらかじめ、毒性を弱めたり、なくしたりした病原菌を体内に入れることで、それに対する免疫系の反応を強化し、病気になりにくくする。

 今回『Scientific Reports』(21年9月8日付)で発表された「逆ワクチン」は、まさにその逆で、免疫系の反応を弱め、攻撃してほしくない対象を守ることができるという。

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photo by Pixabay

逆ワクチンが抗体を作るのを防ぐことを確認

 米ニューヨーク州立大学バッファロー校のグループが研究テーマにしたのは、免疫系の過剰反応によって治療効果が弱まりがちな「血友病A」と「ポンペ病」だ。

 血友病Aは、血栓がうまく形成されない病気だ。治療には「血液凝固剤」が使われるが、しばしば免疫系によって効果が弱められてしまう。

 一方、ポンペ病は、「GAA」という酵素が不足するせいで筋肉が弱くなる遺伝性疾患だ。「酵素補充療法」が有効だが、ほとんどの場合は免疫系によって酵素が破壊されてしまう。

 これまでの研究では、「リゾホスファチジルセリン(LysoPS)」という脂質が、免疫系の勘違いから薬を守ってくれるらしいことが判明していた。これを薬と一緒に投与すると、免疫系がその侵入を大目に見るようになるのだ。

 そこで研究グループは、細胞がこの脂質を取り込みやすいように、LysoPSをナノ粒子化したものを開発した。これが逆ワクチンである。

 効果を確かめるために、血友病Aのマウスに、治療薬とLysoPSナノ粒子を一緒に投与。するとマウスの75%で、血液凝固剤への抗体が作られなかった。

 同じようにポンペ病のマウスにも、酵素補充療法と同時にLysoPSナノ粒子を投与。こちらでも酵素に対する抗体が形成されにくくなることが確認された。

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photo by iStock

アレルギーや自己免疫疾患にも有望

 論文の筆頭著者Nhan Hanh Nguyen氏によると、薬の効果を低下させる抗体を消すよりも、そもそも抗体が作られないようにする方が、効果的な治療戦略と考えられるという。

 こうした治療法は、アレルギー、自己免疫疾患などの治療にも応用できるだろうとのことだ。

 犬猫アレルギーが治療できれば、救われる犬猫が増えるだろうし、人間のメンタルも向上するだろうから、これはちょっと期待したい。

References:New treatment uses reverse vaccination to teach immune system not to attack life-saving drugs – Graduate School of Education – University at Buffalo / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 18件

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  1. 花粉症、リウマチ あたりも効くかな
    まだ何年、場合によっては何十年も先の話だろうけど

    • +7
    1. >>4
      理屈からするとそうなるよね。アレルギーの原因が過剰な免疫作用で、年々殖えている理由も前々から気になるところ。それだけ有害物質が増えているという事なのか、体の耐性が弱まっているのか…。

      • +1
  2. 本当の異物に対しての効果が分からないけど、免疫抑制剤みたいに体がウイルスに弱くなったりしないのかな?

    • +6
  3. 免疫系が体内に侵入したもの全般を攻撃しなくなる物質を生成するウイルスが次に開発されるようになるパターンか。

    • +4
    1. >>7
      エイズウィルス、コロナウィルスがインターフェロンを阻害して弱める働きをします。そのうちというより今ありますね。

      • +7
      1. ※8
        やっぱ人間が思いつくことは自然がすでに試してるんだなぁって思った
        40億年の積み重ねは伊達じゃねぇ

        • +2
  4. 抵抗を前提に作られた薬が効きすぎて反って毒になるってことは起こらないのかな?
    食事でも今までは弾かれていた摂るべきではない成分を摂り込むようになってしまうとか

    不都合な抵抗のみ効果があるのなら素敵だと思う

    • +3
    1. ※10
      文章からすると
      きみ自身の中に抵抗勢力がいるように思われる。

      • -4
  5. 食物アレルギーや喘息に効くやつが出て欲しい。ゾレアがあるけど万人に効果がある感じじゃ無いからなあ

    • +2
  6. 免疫を抑制するのならば臓器移植に有効なのでは?
    いわゆるクローン臓器や人工臓器の開発もすすんでいるが
    現状の臓器移植で問題になるのは免疫でしょう
    この記事の薬が進化すれば移植待ちの人たちへの朗報になる可能性もある

    • +2
    1. >>14
      拒絶反応で反応する抗体の種類が特定できれば、その部分に特化した免疫(拒絶反応)抑制とかも出来そうですね。

      • +1
  7. 金属、犬猫、花粉、あとは小麦や米に水とか肉とか、、食事関係で食べれないと日々困るようなアレルギーなんかは簡単に治療できる未来になると良いねぇ。

    • +5
  8. それ、ワクチンやなくて特効薬やん(*’▽’*)

    逆ワクチン言うてるから警戒したけど。
    特効薬やん。凄いやん!!

    • -2
  9. 免疫抑制剤と何が違うのか良くわからない
    効果を限定的に出来るって事?

    • 評価
  10. 糖尿病のお薬にもそういうのあるよ
    インシュリンを出させる物質が体内で分解されるのを妨げる薬
    ちょっとややこしいけど

    • 評価

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