ダニに咬まれると肉アレルギーを発症するおそれ。ヒアリに抑制力があることが判明するも諸刃の剣（米研究）

　これまで一度もそんなことはなかったのに、大好きな赤身肉のステーキを食べた日、夜中に目覚めたら、体が痒くて、赤く腫れている。お腹も痛いし、息も苦しい。なんてことが突然起きることがある。そんな時は、ある虫の存在を疑った方がいいかもしれない。

　ダニの仲間に咬まれると、その唾液に含まれる成分のせいで「赤身肉アレルギー」発症することがあるそうだ。

　大好物なのに食べると体に異変をきたすとか、この世の地獄だ。

肉好きならマダニやツツガムシに要注意

　ダニの唾液に含まれる「α-gal」（正式にはガラクトース-アルファ-1,3-ガラクトース）と呼ばれるこの分子は、ヒト・類人猿・サルを除く、ほとんどの哺乳類の細胞に含まれる糖質だ。

　たとえば、キララマダニ属のある仲間（Amblyomma americanum）は、人に咬んだときα-galを血液の中に流し込み、ゆっくりとだが、激しいアレルギー反応を引き起こす。

　赤身肉にもα-galが含まれているので、咬まれた人がお肉を食べてしまうと、再び免疫系が暴れ出す。これが赤身肉アレルギー（α-galアレルギー）だ。

　日本にはツツガムシが120種以上生息しており、赤身肉アレルギーが発症したという報告もあるので他人事ではない。

　ここ20年、赤身肉アレルギーは6大陸17か国で報告されており、現在も増加傾向にある。特にキララマダニが数多く生息するアメリカ南部では顕著であるそうだ。

毒をもって毒を制す、ダニを退治してくれるヒアリ

　だが『Journal of Allergy and Clinical Immunology』（6月6日付）に掲載された研究によると、また別の害虫がキララマダニに対する抑止力になってくれるのだそうだ。

　――その害虫とはヒアリだ。

　バージニア大学（アメリカ）の研究グループによる調査では、キララマダニが生息する地域であっても、ヒアリが定着していると、赤身肉アレルギーの事例が9割も少ないことが明らかとなっている。

　「ほぼ間違いなく、ヒアリは子供を宿したダニのメスを殺し、卵や子供を食べています。母親が子供を産めなければ、その種は困った事態になりますよね」と、トーマス・プラッツ＝ミルズ氏。

ダニか、ヒアリか、それが問題だ

　とは言っても、ヒアリはヒアリで侵略的外来種であり、刺されると、アルカロイド系の毒によって激しい痛みを覚え、水疱状腫れあがる。

　ヒアリに刺されて人が死ぬことは稀だが、アナフィラキシーショックが起きた場合は死亡することもある。

　たとえばアメリカ南部のアラバマ州モービルには、1930年代に南米からの貨物船に乗ってやってきた。ここにはエサとなる昆虫が豊富にいたため、ヒアリは異国の地で生き延び、今日ではもはや完全な駆除は不可能なほどに広まってしまった。

　日本でも数年前にその侵入がニュースとなり、2019年には国立環境研究所によって東京港青海ふ頭で定着した可能性が高いと発表されている。

　同じアレルギーならダニとヒアリによるもの、どちらを選ぶ？究極の選択だ。ヒアリの方がやばそうな気もするけど、肉を食べられない人生は考えられないという人ならダニに刺される方が嫌だろう。

　というか、そもそもどちらにも刺されないように用心するにこしたことはない。とは言え神出鬼没なタイプなので、絶対避けられるという保証もないのが厄介だ。

References:Ticks that cause red meat allergies are spreading, and invasive fire ants may be our best hope | Popular Science/ written by hiroching / edited by parumo
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