メインコンテンツにスキップ

ペスト菌がヒトの免疫遺伝子を進化させていたことが集団墓地のDNA分析で明らかに(ドイツ研究)

記事の本文にスキップ

18件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
photo by iStock
Advertisement

 人類はいくつもの伝染病に見舞われてきたが、ペスト菌によって発病するペストは、古来より繰り返し世界的に大流行しておりその代表的なものだろう。

 病原菌やそれによる感染症は、人類に選択圧をくわえて特に免疫に関連した進化をうながす。新たな研究によると、ペスト菌が免疫関連遺伝子に影響をもたらしていたことが、ドイツの古い共同墓地のDNA分析により明らかになったそうだ。 

共同墓地のペスト患者遺体からDNAを採取して現代人と比較

 感染者の皮膚が内出血して紫黒色になるので黒死病とも呼ばれるペストは、人獣共通感染症かつ動物由来感染症であり、世界の歴史において古来、複数回の世界的大流行が記録されており、14世紀に起きた大流行では、当時の世界人口4億5000万人の22%にあたる1億人が死亡したと推計されている。

 ヨーロッパもまた5000年にもわたりペストに苦しめられてきた地域だ。もし感染症が人の進化的適応に関係しているのなら、過去の犠牲者からその痕跡を発見することはできないだろうか?

 そこでドイツ、マックス・プランク研究所の研究グループは、16世紀から17世紀にかけてペストが大流行したエルヴァンゲン市の共同墓地に埋葬されていた遺体の内耳骨からDNAを採取。それを現在の住人のDNAと比較してみた。

この画像を大きなサイズで見る
credit:public domain/wikimedia

免疫関連遺伝子が変化していたことを確認

 488の免疫関連遺伝子を調査したところ、ペスト菌によっていくつかの変異が生じたことを示す証拠が発見されたという。

 「フィコリン」ならびに「NLRP14」という免疫タンパク質の変異に関係する「アレル頻度」(ある集団の中で各々の対立遺伝子が発現する割合)が変化していたのだ。

 これはペスト菌にうながされた進化プロセスが、エルヴァンゲンの住人たちの免疫関連遺伝子を形成した可能性を示すはじめての証拠であるという。それはこの街にとどまらず、ヨーロッパ中でいく世代にもわたって起きたことである可能性もあるとのことだ。

この画像を大きなサイズで見る
ペスト菌イメージ図 photo by iStock

パンデミックを乗り越える生存者は必ず存在する

 この研究でもう1つ示されているのは、どれほど危険なパンデミックであっても、必ず生存者がいるということだ。

 大勢の人が犠牲になったとしても、中には抵抗力を持つ人間がいる。そのために全員が病気で命を落とすようなことはなく、一時期的に人口が減少したとしてもいずれもとに戻るだろうと、研究グループのパウル・ノーマン博士は説明する。

 いわゆる生物における選択と淘汰ってやつなのかもしれない。

 とはいえ何の手も打たなくてよいわけではない。その時代に応じた対策を行うことも「選択と淘汰」に含まれている。現代医学は淘汰が過剰に進むのを防ぐために必要不可欠なものだ。それも適応進化の一形態なのだろう。

 この研究は『Molecular Biology and Evolution』(5月18日付)に掲載された。

References:DNA Evidence From Mass Grave Suggests Bubonic Plague Had Long-Term Effect on Human Immunity Genes/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 18件

コメントを書く

  1. 遺伝子の平行移動ってやつだね
    ウイルス進化説ってのもあるしホント不思議

    • -16
    1. ※1
      いやこれは遺伝子が平行移動した話ではなく、単純にペストに耐えられない免疫を持つ人類が淘汰されて、耐えられる人類が自然淘汰で残ったって話よ。
      ウィルス進化説とは別の話。

      • +18
    2. ※1
      そういうのじゃなくて、記事を読む限り 淘汰圧の話で
      「昔の人はペストに耐性がある遺伝子変異持ちの割合は低かったけど、過去数百年にわたり疫病が席巻して 耐性の無い人から死に絶えた結果、現代に残った子孫は ペストへの耐性が高い遺伝子変異持ちが多くなった」って事じゃないの?

      • +12
  2. 矢追純一系の番組で2012年以降にスーパーチャイルドが生まれてそれによって新しい世界が生まれるとか言ってたけど
    コロナの年齢別死亡率的に9歳以下は死亡率がすごく低いとかあるのかな?
    だれか知らない?

    • -4
  3. エボラも自力で復活した人いたもんね
    1万人に1人とかぐらいなんだろうけど

    • +5
    1. ※5
      エボラも、型によって致死率が違って
      よく「致死率90%!」と
      センセーショナルに言われるのはザイール型で、
      スーダン型だと50%くらいとか、差がある。

      • +1
  4. ペスト耐性の高い遺伝子が多いのには問題もあって、血中の鉄分が過剰になって頭痛や酷くなると認知症にもなるらしい
    現代だと適度な献血で抜かないと、と本で読んだ

    • +3
    1. >>7
      昔の欧州で瀉血が流行したのはそういう理由が…?

      • +2
    2. ※7 
      ※15
      ほえ~ 面白いなあ
      自分は結構献血マニアで定期的に400ccの血抜きをして
      この前51回目を済ませたところなのだ
      多回献血者は回数こなせる成分献血の人が多いみたいだけど、自分は400ccにこだわってる
      (年に2度しか抜けないんだけど)
      知らず知らずのボケ予防になってるのかな?

      • 評価
  5. 「エルヴァンゲンの住人たち」が「エヴァンゲリオンの住人たち」に空目して二度見した

    • +9
  6. 殺虫剤にも耐えて生き残る G が淘汰の結果、スーパー G になるように、たくさんの種類の抗生物質による淘汰に耐えた多剤耐性菌(身近な例だとメチシリン耐性ブドウ球菌とか)が出現するんですね。淘汰による選択を潜り抜けるのは人間だけではないんですね。

    • +10
  7. 日本含む東アジア人が新型コロナに強いのは何千年も前に東アジア人が新型コロナに似たウィルスに感染して弱かった遺伝子が淘汰されたからだって何かで読んだ
    滅びることにも意味があるんだね

    • +1
    1. >>12
      全てに納得した
      コロナは新種のウイルスと言われてるけど、実は何千年も前から存在していたってことか

      ていうか、それでも中国がヤバいのは変わらんけどね
      いったい何をやらかせば太古のウイルスが復活するのか経緯が知りたい

      • 評価
      1. ※14
        コウモリだとかを食ってるからそこから感染した可能性が高いって言われてる。
        第一感染者はそういう食材扱ってる市場には行ってないと主張してるけど、行ってないと言ってるだけでコウモリは食べてないとは言ってないわけだし。
        まあ当然中国は否定するから真相は闇の中だよ。

        • +1
      2. ※14
        >>太古のウイルスが復活する
        コロナウィルス自体はかなりありふれたウィルスで、バリエーションもいっぱいあって、ちょくちょく流行している。
        2000年代に流行したSARSも分類的にはコロナウィルス。
        そのバリエーションの中でも、今流行っているのは治療法やワクチンが存在しない未知のタイプなんで「新型」って言われている。
        新型がどっからきたかは不明。

        • 評価
      3. >>14
        東アジア人が新型コロナに強いは初耳。
        日本は、衛生面世界トップレベルだから、まだ日本地域にるなら分かるが。

        てか、コロナに至っては新種ってより既存のウイルスが突然変異もしくは変異させられた方が納得いかない?

        • 評価
  8. バナナが良い例だ
    現在世界中で食べられているキャベンディッシュという品種も
    かつて流行したバナナの伝染病に耐性があったから主流になった
    昔のバナナと今のバナナは実は味も見た目も結構違う品種って驚きだが
    しかしそのキャベンディッシュもまた新たな伝染病に苦しめられていて
    いつかは食べられなくなる日が来るかもといわれている
    今は徹底した伝染病からの隔離と
    耐性のある新たな品種の研究が進められている最中

    • +4

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

料理・健康・暮らし

料理・健康・暮らしについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。