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人馴れしたチンパンジーを野生に戻すため、無人島の森に6年住み続け、仲間の元に帰した女性の物語(アフリカ)

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(著) (編集)

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image credit:Daily Mirror
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 1970年~80年代にかけて、アフリカのガンビアにある無人島で、チンパンジーと6年以上暮らした女性がいる。

 その女性は、人馴れしすぎてしまったチンパンジーを野生にするため、森で共に生活し、少しずつ野生での暮らし方を覚えさせていったのだ。

 6年もの月日がかかってしまったが、ようやく仲間のチンパンジーたちのもとへ戻すことに成功したという。

 これは、チンパンジーのルーシーと深い絆を築き、長きにわたりルーシーに人生を捧げた女性、ジャニス・カーターさんの物語である。

Woman lives in jungle for 6 years to teach chimp raised as human how to be wild

人間の家庭に養子にされたチンパンジー、ルーシー

 ジャニス・カーターさんが、後に自身の人生を大きく変えるチンパンジーのルーシーに初めて出会ったのは1976年、25歳の時だった。

 ルーシーは2歳だった1964年に、当時西アフリカのガンビアに住んでいたアメリカの心理療法士モーリス・テマーリン博士と妻のジェーンによって、実験に使用する目的で養子縁組された。

 人間の娘として育てられたルーシーは、120のサインを使って手話を覚え、人間のベッドで眠り、客にお茶を出すことも学んだ。

 しかし成熟期になると、人に噛みついたり攻撃的な態度を取ったりと制御不能になり、実験を続けるには危険すぎると判断したテマーリン博士は、ルーシーを手放し野生へ戻すことに決めた。

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image credit:Daily Mirror

自然保護区へ移送するも適応できず

 ジャニスさんが、テマーリン博士にルーシーの世話を頼まれたのはそんな時だ。大学の霊長類研究グループに属していた大学院生のジャニスさんは、檻に入れられたルーシーと手話で会話し、交流を図った。

 1977年、テマーリン夫妻は自国アメリカへと帰国したが、ジャニスさんはそのまま現地に留まり、ルーシーを支え、見守ることにした。

 この決断は、ジャニスさんにとって容易ではなかった。交際していた男性やキャリアを諦める結果となったからだ。

 ルーシーを置いて帰れば、人間慣れしたルーシーは野生に戻る術も持たず、生きていくことはできない…

 ジャニスさんはルーシーを支えるため、最初はアブコ自然保護区へとルーシーを移したが、ルーシーは新たな環境に適応することができなかった。

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image credit:Daily Mirror

ルーシーと共に無人島に移住したジャニスさん

 1979年5月にジャニスさんはルーシーとガンビアにある無人の離島に移り住んだ。ヒョウやカバなどから身を守るため、ジャニスさんとルーシーは、島で暮らしている他8匹のチンパンジーたちと一緒に馬小屋で眠った。

 島には電気も水道もなく、新聞は半年に1回届けられるのみだった。人間社会からほとんど断絶することを余儀なくされたジャニスさんは、激しい孤独に陥った。それでも、ルーシーを森へ帰してやりたいという一心で、6年以上島で暮らした。

 ルーシーは、最初ジャニスさんがする行為を舐めたりしながら試行錯誤を繰り返し、食べ物を自力で得るスキルを身に着けていった。

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 また、他のチンパンジーたちとの交流も、ジャニスさんはルーシーに教えた。そんな中で、ジャニスさんはチンパンジーの性格や文化的傾向が人間のそれと非常によく似ていることを知ったという。

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image credit: youtube

 やがて、新たな環境に慣れ始めたルーシーは、ダッシュというチンパンジーと絆を育むようになり、ジャニスさんは「別れの時」を悟った。

別れを余儀なくされた時、自分がどれほどルーシーを愛していたか気付かされました。

私とルーシーは、互いに助け合いながら一緒に暮らしました。別れ際のハグは、これまでのとは違い、とても強烈に感じました。ルーシーは私が島で孤独を感じていた時も、すぐに察していたほど敏感でした。

ルーシーとは、良き親友のような関係を築いてきました。私のことを思ってくれているのは十分感じることができましたが、この時ルーシーは私をもう必要としないことを知っていたと思います。ハグの後、振り返って私を見つめ、そして仲間のいる森へと去って行きました。

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image credit:Daily Mirror

ジャニスさんは今どうしているのか

 ルーシーと別れてから1年後、ジャニスさんは再び島に戻りルーシーと再会し、その後ガンビアに留まった。

 ルーシーは1987年、25歳でこの世を去った。

 現在70歳になるジャニスさんは、ガンビアの首都バンジュールに住みながらチンパンジーの保護プロジェクトに携わり、ほとんどの時間をチンパンジーのリハビリセンターを兼ねた保護区で過ごしているという。

 保護区がある島内には、ルーシーの子孫を含む140匹の野生のチンパンジーが生息しているそうだ。

 人生の大半を、ルーシーや他のチンパンジーの世話に捧げたジャニスさん。そんな彼女とルーシーのドキュメンタリー映画が今年製作された。

 そのインタビューで、ジャニスさんはこのように語っている。

あの時、チンパンジーと人間ではなく、ジャニスとルーシーという生き物がいました。私たちだけが、そこに存在していました。

Lucy The Human Chimp | Official Trailer | HBO Max

written by Scarlet / edited by parumo

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この記事へのコメント 19件

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  1. 博士夫妻がすごい無責任だと思う
    ジャニスさんという責任感が強くて心優しい女性がいなければルーシーは死んでいたと思う、、、

    • +29
  2. ジャニスさんの決断と努力は掛け値なしに賞賛ものだけど、
    単純にチンパンジーの観察記録としてもものすごい価値がありそうやなこれ
    下手に感動的な話にするより現在の知見も交えた研究レポート寄りのドキュメンタリーも作って欲しい

    • +21
  3. この方、そのまま天職として続けていらっしゃるのね。頭が下がります。ルーシー嬢は、彼女に巡り会えて幸運でした。彼女の認識の中に感謝という言葉に当てはまるものがあるかどうかは分からないけれど、たぶん幸せに近い何かを感じてくれたのでは無いでしょうか?
    犬猫と違って生涯を共にすることは難しい動物との付き合い方を考えさせられる話でした。

    • +23
  4. よく攻撃されなかったな
    パン君ですらあれなのに
    ルーシーがメスだから?

    • +5
    1. >>4
      チンパンジーだって馬鹿じゃないでしょう。
      最初は威嚇なりされたかもしれないけど、自分を助けてくれる人だと認識したのではないかな

      • +1
      1. >>5
        「動物をナメてる」って二つの意味があるよな
        一つは「こんな優しい子が人を襲う筈がない」という油断
        もう一つは「知性もないしどうせ心は人だけのものだ」みたいな驕りな

        • +15
    2. ※4
      チンパンジーは喧嘩が強いオスよりも、手に入った餌をみんなと分け合うオスの方がメスにモテてるそうだよ(オスがそのメスと面識がない場合でも、オスの行動を見ていたメスはそう判断する)

      • +8
  5. 今度はチンパンジーと長期生活しすぎた女性を
    人間界に戻すためにチンパンジーが付き添って
    あげるプロジェクトがはじまるのか。

    • -10
  6. そんな事をするなら飼ったほうが良いだろ
    だいたい美談にしてるけど、この手の大概はヒッピー連中の自己満足だからな。
    今の動物愛護、自然保護ってのは、70年代のガキなヒッピー共の妄想が発端だろ。

    • -26
  7. 飼われてたチンパンジーといえばブルーノ思い出すわ

    • +7
    1. >>11
      超絶ヤバいチンパンやな
      捕まってないのがまたすごい

      • +5
    2. >>11
      アフリカで人食い殺した個体だっけか。
      ここ最近でもアメリカだかで友人の飼ってたチンパンジーに顔面食われた女性がいたよな。

      • 評価
  8. 人生って不思議だな……。
    チンパンジーにこれほどの情熱と時間を費やして何の益があるんだって思う気持ちも少しあるんだけど、人間だって短い一生なんだし、心から打ち込める時にこそ価値があるんだよね。
    最後のジャニスさんのコメントを見ると、少なくとも俺より人生に意味を見出し力いっぱい生きた証がそこにあるなって、うらやましくなる。

    • +13
    1. ※12
      うん、我々には理解できないけど、彼女の価値観の中では価値のある充実した人生を送っているのだろうと何となく分かる
      人間としての6年間を捧げてまで達成したいことなんて俺は無いわ、今後見つかるとも思えない

      • +8
  9. 博士夫婦に腹たった
    ジャニスさんが素晴らしくて涙腺に来たわ、抱き合ってる写真やばい

    • +7
  10. 野生に帰ることはチンパンジーにとって幸せだったのだろうか
    動物園にいるよりは幸せだとは思うが、一緒に住むことが幸せになるというのは無いのだろうか
    好奇心旺盛で人間の不思議な行動が楽しいというサルがいるんじゃないかとパン君を見ていて思った
    この人のやったことを否定したいわけじゃないんだけど、知能があって好奇心があるなら人間と暮らした方が楽しめるんじゃないかと

    • 評価
    1. >>16
      人とチンパンジーの共存はかなり難しいみたいだよ
      パン君を含め、人間と暮らしていたチンパンジーが人を襲う事件は過去に何度も起きているし、中には襲われたことで顔や指を失ってしまったり、残虐な殺され方をしてしまった人までいる。
      そうなればそのチンパンジーの行き着く先は、殺処分か隔離保護かってところだろうけど果たしてそれが幸せなのだろうか

      • 評価
  11. 言葉にならないな。書いてあったけど、ジャニスさんは本当に」ルーシーを愛していたんだなあ。

    • +1
  12. この話知ってる
    ルーシーが生後1日の時に生母を薬で眠らせてその隙にベビーバスケットに詰めて連れ去ったって言うでしょ
    誘拐じゃん
    そこまでしておいて手に負えなくなったから自然に放置って…
    人間の女の子を自然に置き去りにするようなもの

    博士はルーシーが遺体で発見されてすぐに急死してるけど、ルーシーを筆頭とした霊長類の祟りだって本気で思うわ

    • +2

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