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水が豊かな日本にいるとつい忘れがちになるが、人が生きるために欠かせない綺麗な水は国家間紛争の火種になるほど貴重な資源だ。それを維持管理するためには常日頃から厳しいチェックが必要になる。ポーランド王国時代は首都でもあった歴史ある都市ポズナン。ここでは水の管理にとてもユニークなシステムが採用されている。8匹のムール貝が水質に問題ないかを常時チェックしてくれているのだ。
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ムール貝を使った水質管理システム
ポーランド西部に位置するポズナン市の人々は、デンビエツ水処理場で処理された水を使って生活している。処理場には水道管を通じて町中から水が集まり、その水質はセンサーによってチェックされる。だがこのプロセスにはもう1つ、少々変わっているが信頼性の高い装置が組み込まれている。それは8匹のムール貝を使った「生体インジケーター」だ。
ポズナン市の主な水源はバルタ川だ。ポーランド王国時代から地域の人々の暮らしを支えてきた豊かな河川だが、皮肉にもそれゆえにその流れはポーランドでも最大の人口密集地域や工業地帯を通過している。
このために、クロムなどの重金属をはじめ、水質汚染のリスクを無視することができなくなってしまっている。そこで活躍するのがムール貝たちだ。
Clams guard Poland's drinking water
ムール貝は水質に敏感に反応。汚染を感知すると貝殻を閉じる
ムール貝が生体インジケーターとして導入されたのは、それが水質に対して敏感に反応してくれるからだ。ムール貝はたっぷりと酸素を含んだ綺麗な水がなければ生きることができず、汚染に対してはそれほど強くない。水質が適切ならばエサを食べるために貝殻を開くが、汚染を感知すればさっと貝殻を閉じて代謝を低下させる。
そこで貝殻にバネを接着し、それが閉じたときに検出器が作動するような仕掛けをほどこす。検出器から警報が出されると、コンピューターが通常のセンサーからの情報を調べて、何か問題がないかどうか確認する。
このシステムのムール貝は全部で8匹いる。閉じたのが1匹だけなら、ただ疲れて休憩しているだけかもしれない。だが8匹中4匹が同時に閉じれば、汚染の疑いは濃厚だ。水処理場は直ちに停止する。

かつての厄介者が英雄に
かつてムール貝は水道をつまらせる厄介者と見られてきたが、今やその信頼性の高さはアダム・ミツキェヴィチ大学の研究者のお墨付きだ。1994年にデンビエツ水処理場で貝の水質モニタリングシステムが採用されて以来、厄介者だったはずのムール貝が住民の水を守ってきた。
昨年などは、そのユニークさが注目され、『Fat Kathy』という14分のドキュメンタリー映像作品まで撮影された。
Hot Docs 2020 Trailers: FAT KATHY
References:In Poznan, Poland, eight clams get to decide if people in the city get water or not/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
なかなか酷い絵面だけど、天敵もいなくて安全に餌が食べられると思えば悪くないのか?
2. 匿名処理班
今日もムール貝8個分の出汁が旨い!
3. 匿名処理班
最終的にセンサーを確認するなら、常時もしくは定期的にコンピューターがセンサーをチェックするのではいかんのか?
4. 匿名処理班
こういうの好き
炭鉱のカナリアみたいだ
5. 匿名処理班
日本の浄水場でも、金魚の水槽に水を流して
異常行動が無いか監視してたりするよね。
金魚の他にも、各地で
ヒメダカ、コイ、フナ、ウグイ、ニジマス、ヌマエビ、
ミジンコ、イガイなど、いろんなパターンがあるそうで。
6. 匿名処理班
Youは何しに日本へ?でポズナニ大学が何度か出てきたかな?
7. 匿名処理班
>>3
いかんからムール貝導入してんでしょ
8. 匿名処理班
※3
機械は生体ほど感度たかくないし、時間もかかるんよ。
サンプルとって結果が出るまで1日かかるとか、結果が出ても検出限界以下で見逃しちゃうとか。
安定した信頼できる方法として機械のバックアップを置きつつの、若干ムラっけはあるけども、機械より高感度で即応性の高いセンサーとしてムール貝が用意されてると。
9. 匿名処理班
※1
私は貝になりたい
10. 匿名処理班
うちの浄水設備のバイオアッセイ(ここで言う生態インジケーターね)はメダカちゃんだよ、24時間常時監視カメラで工業用水をモニターし続けてます、一回モニター水槽のメダカちゃんが全滅しちゃったことがありましてね、そん時はもうおお騒ぎ!で、思わずドリフのあの音楽が脳内再生されまくりでしたよ。
11. 匿名処理班
ムール貝の世代交代のたびにバネを付け替えるのか
シュールだ…
12. 匿名処理班
※3
それじゃ遅いんだろう。
貝が汚染の徴候を示せば、直ちに給水を停止する。
機械の検出内容を分析して原因を調べるのは、その後。
リンク先の元記事にも
「貝ほど感度が良いコンピュータは存在していない」
と言及している。
有毒ガスが懸念される現場に、ガス検出器は持参していても
鳥も連れて行ったりするのと似たような感じでは。
生物がわずかな環境変化の不快感に対して反応するのは
機械の検出精度より繊細、かつ安価で、
監視する人間にとっても直感的に判りやすい動きだし、
コンピュータの検出項目には想定されていなかった
未知の汚染物質にも包括的な反応が期待できるんだろう。
あと、万一の事があれば被害甚大な作業のセーフガードは
異なる仕組みの複数の安全装置を組み込むのが望ましい。
13. 匿名処理班
※1
一応、3ヶ月限定でお役目についた後は
再び採取されるおそれがない水域へ解放し、
また新しい貝を捕ってきて交代するらしい。
14. 匿名処理班
イガイだね。。。
15. 匿名処理班
>>5
初めて知りました!
貝や金魚たちに助けられているんだなぁ。
16. 匿名処理班
他のサイトではアサリって解説されてたけど、動画を見る限りやっぱりムール貝だよね
17. 匿名処理班
ム貝な水の為にご苦労様です。
18. 匿名処理班
東京都水道局では金魚がって上にもう書かれていた笑
育った金魚どうなるんだろうなぁ。ムール貝と違って成長速度凄いと思うんだけど。
19. 匿名処理班
>>3
ムール貝の方が仕組みがシンプルで、導入費も維持費も安く済みそう。
20. 匿名処理班
ムール貝のワイン蒸し食べたいなあ。醤油をちょこっとだけ垂らして食べるのが好き。
21. 匿名処理班
農業用水などが流れ込まないより自然に近い安定した水質の場所に棲まい、どれもがより大きい個体であり8体ともに違いが少なくそろっていることが条件…これは卓越したイガイ採取の匠に支えられる設備ですね
22. 匿名処理班
いやムール貝じゃないよ、そもそもイガイ科ですらない。
たぶんイシガイ科のドブガイに近縁な淡水性二枚貝。
23. 匿名処理班
ムラサキイガイって汚染された港湾でも元気いっぱい杭にびっしりしがみついて繁殖している印象。
24. 匿名処理班
魚を使う場合だと、
呼吸器障害で水面に逃げる
有害物質で排水側に逃げる
農薬混入で暴れまわる、と
行動から汚染の原因が即座にわかるんだね
25. 匿名処理班
ムール貝が淡水暮らしだって初めて知ったわ
26. 匿名処理班
※13
「スタッフがおいしくいただきました」かと思った
27.
28. 匿名処理班
淡水だからムール貝ではないと思います
Musselという貝を指す言葉はもっと種の対象が広いっぽいね
29. 匿名処理班
面白いな
30. 匿名処理班
貝もお勤めしているというのに
31. 匿名処理班
SYMBIO Biomonitoring Systemで見つかる資料には
Mussels applied in the SYMBIO system (Unio tumidus – a local species) meet all the criteria for indicator organisms
とありますね
32. 匿名処理班
アクアリウムでもシジミを使って水を浄化するテクとかあるしな
33. 匿名処理班
※5
知らんかった。日本でもやってるんですか!
34. 匿名処理班
※23 そんなにトライポ派じゃないとと思うんだけど、
アレは見るたびゾっとするー。
でもパエリアに乗っかってるのはスコ。
35. 匿名処理班
※33
やってるよ
牡蠣は水質を浄化するので汚水を流している海で飼育している
36. 匿名処理班
>>4
またはロンドン塔のカラス
37. 匿名処理班
>>11
シュール貝
38. 匿名処理班
※13
弱ってるとセンサーとして役に立たなくなるからっていう現実的な理由もありそう
39. 匿名処理班
>>35
それとこの記事とでは目的も利用法も全然ちがうぞ