
一番近いのはゴーストタウンと化したクルーセロの町だ。こんな乾燥した何もないところに、なぜか拡声器に似た金属製の巨大なメガホンのようなものが置かれているという。いったい誰が、何のために置いたというのだろう?
砂漠の丘に置かれた巨大メガホン
金属でできたなんとも場違いなこのメガホンは、モハーベ砂漠国立保護区のはずれにある丘の岩の上にしっかりとはめこまれているが、年月のせいかすっかり錆びている。いったいなんのためのものなのか誰にもわからない。謎めいた標識だと言う者もいれば、アート作品だと言う者もいる。2020年11月に世界を騒がせた「ユタ州のモノリス」のような謎だとされている。
何マイルにも渡って、周囲にはなにもないし、誰もいない。長さが2.4メートルもあるこんなに重たいものを、どうやってこんな高いところまで引っ張り上げて設置したのかもわからない。
真ん中にふたつの角のような形をした金属がボルトで固定されているが、人ひとりで使うにはあまりに大きすぎる。こんな奇怪なものを文明から隔絶された崖の上にわざわざ取りつけたのは、大勢の人間なのか、それともエイリアンめいた何かなのか?
これが、どれくらいの間ここにあるのかも、誰も知らない。

30年前くらいに設置された?
「だいたい30年くらい前に置かれたものだと思います」と言うのは、CampsitePhotosというサイトを運営しているエリック・エドワーズ氏だ。自身のブログにもこのメガホンのことを書いていて、実際に現地も訪ねている。「ふたつに分割することができるようですが、それぞれはかなり重い。数人で引きずっていけば運ぶのは可能でしょうが、それでも、この丘を担ぎ上げるのには時間がかかるし、かなり難しいでしょう」

いったいこれはなんなのか?様々な仮説が飛び交う
「これは最大の謎です」とエドワーズ。「1940年代や1950年代ごろに使われていたサイレンに似ていますが、違うようです。でも、この地域は、鉄道で化学薬品を輸送するために使われていたので、事故があったりした場合、サイレンが使われたことは考えられます」これがなんなのか、どこで作られたものなのかのを示すマークなどはなにもないという。最近、誰かが、開口部に動物の革をかぶせて、ドラムのようにして使ってみたが、それは本来の目的ではないようだとのこと。
ロケットの一部だとか、パイプラインの砂時計型をしたベンチュリ管(口径に変化をつけることで、圧力差を利用して流速計、気化器などに利用する)ではないかとか、さまざまな憶測が飛び交っている。
内部に十字型の金属片が取りつけられているため、銃の照準器、あるいはなんらかの照準器ではないかと言う者もいる。
また、数百マイルにもわたって広がっているカリフォルニアの洞窟の場所を示す道具だとか、十字は巨大な金鉱のありかを示す場所を示すXマークだと言う者さえいる。
その形から、メガホンと言われるのももっともだが、おそらく大方の予想どおり、大昔の警報システム、空襲警報用のサイレンのようなものだったのかもしれない。だが、どうやらそうではなさそうだ。

「冷戦初期のサイレンのほとんどは、開口部が長方形でした。第二次大戦時代の空襲サイレンももっと円筒形で、これとは形が違います。それに、民間人のためにサイレンを設置するなら、このような人のいない砂漠ではなく、もっと人口の密集した地域のはずでしょう」
では、ロービー氏の推測は? なんらかの測定装置のようなものではないかという。
「ここは、エドワーズ空軍基地が近いことが大きなヒントです。エドワーズ空軍基地では、多くの音の障壁実験を行っていました。史上初、音速を超えたチャック・イェーガーの有名なフライトもここで行われました。あのメガホンのようなものは、飛行や衝撃・音波などに関係する測定器の類のものだと私は思います」
さらにロービー氏は、ネバダ核実験場(現在はネバダ国家安全保障施設)もここからそれほど遠くないことを指摘する。ここではかつて、1963年まで地上で、それ以降は地下で核兵器の実験が行われていた。
「このメガホンがある場所は実験場から241キロも離れていますが、それでも、長距離衝撃波やその他の地殻変動などを検出するのに使われた可能性はありえることです。あくまでも憶測の域で、疑わしいですが」

モハーベ・メガホンを見に行く
十分な広さのある頑丈な車を持っているなら、このメガホンがある場所まで実際に赴いて、尾根歩きをすれば、その目で実物を見ることができる。「現場にたどり着くには、4WDが必要です。モハーベ川を渡り、砂漠やぬかるんだ泥道などひたすら悪路を突っ走らなくてはなりません」エドワーズは言う。
「高速15号線から、アフトンキャニオンへの出口をおりて、キャンプ場目指して東へ走ります。そこから、さらに峡谷の間を21〜24キロ東へ、鉄道の線路に沿って進みます。クルーセロロードを右(南)へ折れると、数マイルで目指す小さな丘のてっぺんを探すことができます」
北緯35.0056度、西経116.1963度という、メガホンの正確な座標を知っておくと便利だ。
メガホンを直に見るつもりもなく、その手段もなくても、この奇妙な物体が人間の想像力を大いに刺激するのは明らかだろう。
The Mojave Megaphone, Afton Canyon and Spooky Cave
「人の生活から隔絶した砂漠というものは、それでなくても謎めいています」エドワーズは言う。
「人の手の入らない原始的な場所に、驚くような光景や美しくも奇妙な地形を目にすることはよくあるでしょう。こうした場所に、不思議なオブジェを置きたがる人たちは、その場所に謎と不思議のスパイスを加えたいからなのだと思います。彼らの意図は、特定の分野への興味ではなく、むしろ人々の反応を見るのを楽しむことだと思います」
References:Who's Behind the Mysterious Mojave Desert Megaphone? | HowStuffWorks/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
タナシン製のTN-1980だと思う
2. 匿名処理班
メガホンと言うよりは狙撃ライフルのスコープに見える
3. 匿名処理班
記事に直接関係ないが、こーいう、だだっ広い砂漠に佇むゴーストタウンってすごい好き。
4. 匿名処理班
爆発の衝撃力測定する奴ってこんな形してたような気がする
俺が見た奴はもっと小さいけどね
何かしらの爆発実験とかこれの近くで戦闘機飛ばしてソニックブームの測定したとか
5. 匿名処理班
軍が測定用に置いた説に納得しかけたけれど動画見たら溶接跡が割と雑で
軍が測定用に使うものならもうちょっと綺麗に仕上げるんじゃないか?と思った
6.
7. 匿名処理班
観測機器の部品じゃないかなぁ
場所から言って設置に相当な労力と時間、費用がかかっている事が想像できる、となると撤去にも相応な労力と時間と費用が必要になる事がわかる
撤去費用は、機密部品や高価な部品のみ撤去して、残りは放置した結果がコレでは?
8.
9. 匿名処理班
そいつの正体を知ろうとして俺は消された
10. 匿名処理班
地球上に人間が一人もいなくなったら,鎮魂歌を流す星新一のショートショートに出てくるやつではないかいの。
11. 匿名処理班
クリスチャン・ボルタンスキーの作品に出てきそう。
12. 匿名処理班
やべ、なくしたと思ってたがそこにおいて来てたのか…
13. 匿名処理班
ああ、こんなところに置き忘れてたか
14. 匿名処理班
>>9
生き返った?
15. 匿名処理班
置いた人がそもそもこうやって話題にされる事を
楽しむために置いていったとしたら
ある種のエンターテイメント作品と言えるのかな?
16. 匿名処理班
音の測定器じゃないの??
ジェット戦闘機とかの🛩️
敵にはどのように聞こえるか
見つからないように消音の実験のね 推測だけど
設置は普通の四駆が走れるなら出来るし
電気の鉄塔や、集合アンテナなんて山のてっぺんですよ
それに比べたら簡単だと思う
17. 匿名処理班
UFOハウスの記事でも思ったけどアメリカの砂漠って日本人のイメージする砂漠とはちょっと違うよね。
荒野のイメージの方が近い。
18. 匿名処理班
BeamNG でふっとんで岩に衝突
した ロケットエンジン
19. 匿名処理班
遭難したとき「たーすーけーてーーーっ!!!」って叫ぶ用
20. 匿名処理班
モハビ砂漠は魔境だな
21. 匿名処理班
仮に計測機器だとして・・・こんな不安定な場所に置くのが解せない
日本なら地震でコロッと落ちてそう
22. 匿名処理班
たかだか100年も立ってないようなものでさえ用途や役割や存在を忘れてしまえば
それが再び見つかった時にはアーティファクトのような未知の物扱いになってしまう。
世界的に言える事だけど、当時の技術では作れないだの言い出して無理やり謎にしてるような歴史的建造物も割と多いよね。単純に当時の技術が調べきれて無いから不可能とか調査不足なんだけどね。歴史研究化のアピールで無理やりにでも謎にしてる気がする。
23. じょん・すみす
アメリカさんの場合、大金かけて作った物でも
回収するのに手間がかかると考えた場合、普通に
投棄していくからな。
24. 匿名処理班
※9
成仏しろ
25. 匿名処理班
>>20
まさかのFalloutネタ
カオスモードにしたらガチ魔境になるよね
26. 匿名処理班
ロケットブースターの部品ではないでしょうかね
真ん中のフランジ部分にはリブもたっていて剛性を考えられた部品っぽいですし
(音響系ならそこまで剛性は必要無さそう)
空軍基地近くならジェット黎明期に使われたロケットブースターが使用後ドロップされていてもおかしくないでしょうし
昨今でも軍用輸送機をトンデモない短距離で離着陸させたりするのに使われることもあるのがロケットブースターです
27. 匿名処理班
過剰に物々しい割に精度が雑な印象があるので、測定器というよりは、エドワーズ氏の「アート作品」という見方に1票。
28. 匿名処理班
>>17
Desertの元々の意味は見捨てられた場所だからね。
日本で唯一の砂漠の伊豆大島の裏砂漠も細かい砂じゃないし黒いよ。
29. 匿名処理班
スターウォーズの撮影クルーの忘れ物じゃないの?
30. 匿名処理班
Mojave Megaphoneの動画など見るとふたつの岩にそれぞれ穿孔して鉄パイプ突き立てたとこに、メガホンを二か所で刺し通した上でメガホン内の鉄棒と岩の鉄パイプを溶接し固定したって感じですかね。すげえガッチリと設置してますけど方向とかの精度は考えていないふうでもあるような。
ロウ付けでしょうかあちらもこちらも溶接モリモリでかっこいいのですが、昔丸の内から仕訳で消えたJAXAiに展示されていたロケットエンジンのスカートがやっぱり溶接モリモリだったのを思い出しました。
ボルトやナットの刻印VICTOR 6/4だとかその特殊っぽい形状でなにか情報ないもんですかね。実用性も感じますが記念モニュメントのような風情も強いですね。
31. 匿名処理班
あれだよ、砂漠の中心で何かを叫ぶスピーカーズ・コーナー。
米国人に「コロラド川がなかったら、米国はけっこう砂漠地帯だ」と教わった時はおどろいた。
32. 匿名処理班
本当は左右に部品がつながっていて、長いパイプの一部のだったような、そういう部品じゃないかな
他は撤去したけどここだけ強固に接合されてて面倒だったから放棄したのでは