12万年前のホモサピエンスの足跡を発見
12万年前のホモ・サピエンスの足跡を発見 image by:KLINT JANULIS
 アラビア半島で初期の人類の残した足跡が見つかった。ヒト属で現存する唯一の種、ホモ・サピエンスが残していったものだ。非常に感慨深い。

 交通の要衝であるこの地は、人類がアフリカを出て、どのように世界中に広まっていったかを理解する上で、重要な場所といえる。

 先史時代の人間の足跡だけでなく、ゾウやカバ、ラクダなどの動物の足跡も見つかっていて、当時の生態系の様子もうかがうことができる。
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12万年前のホモ・サピエンスの足跡を発見

 現生人類であるホモ・サピエンスの化石化した足跡は、サウジアラビアにあるネフド砂漠の湖沼堆積物の中から見つかり、マックスプランク化学生態学・人類史学研究所が調査を行った。

 見つかったのは人類7、ゾウ44、ラクダ107などトータル376の足跡。およそ12万年前のもので、アフリカ以外で見つかったもっとも古い人類の足跡だと思われる。

「これらの足跡が、ホモ・サピエンスが残したものだとするさまざまな理由をあげることができます。これは現生人類がアフリカの外につけた最古の足跡だといえます」研究チームのマシュー・スチュワートは言う。
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初期の人類の足跡とその数値標高モデル
image credit:Stewart et al., 2020
 もっと前の時代にさかのぼる人類の足跡はあるが、これらは、ネアンデルタール人のような別の人類のものだという。

「人類はおよそ12万年前にアフリカを出たことがわかっていますが、ネアンデルタール人はその数万年後にもっと気温の低い時代が来るまで、アラビア半島にはいませんでした。ですから、この足跡はホモ・サピエンスによってつけられたものといえるのです」
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古代の湖沼堆積物の表面につけられた大型哺乳類の足跡
image credit:Badr Zahrani

足跡が教えてくれる現生人類の移動

 アフリカから出ていったのは、うまく調和がとれていた大陸の故郷を捨てた異端的な一部の人間だけではなかったことを心に留めておくことが重要だ。

 実際は、こうした移住は無数のグループによって何度も繰り返し起こった複雑な出来事で、その目的もルートもそれぞれ違った。

 こうした初期の人類の移動の多くは、行き詰まったり、引き返したり、そのまま消滅したりすることもあった。ネアンデルタール人やほかの人類がアフリカを出たのは、ホモ・サピエンスよりかなり前だった。

 こうした移動の痕跡のほとんどは、残念なことに化石や地質学的証拠として残っていない。

 幸いなことに今回の足跡の発見は、時間の経過による風化・破壊を乗り越え、人類と地球の歴史における、この重要な時期の希少な片鱗を多少なりとももたらしてくれる。

「現在の研究は、地質時代の片鱗をもたらしてくれるという点で独特です。石器や化石といったほかの痕跡と違って、足跡の研究は非常に鮮明な情報を時系列でもたらしてくれます」スチュワートは言う。

 現在、アラビア半島が極端に乾燥した砂漠であることは周知の事実だが、大昔は緑豊かなみずみずしい草原だったのだ。

 そんな時代のひとつが、12万年前の最後の間氷期(氷期と氷期の間の温暖な時期)で、この地域は比較的湿潤な気候だった。
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iStock

当時の生態系は今と違っていた

 今回の発見をさらに掘り下げるには、このことを踏まえることが重要で、なぜ、ホモ・サピエンスや他の動物たちが、この時期のアラビア半島にいたのかを理解するカギになるという。

 まずは、ゾウやカバ、馬など動物の足跡がこの地域に残っていることが、当時は現在の生態系とはまるで異なっていた証拠だろう。

 人間を含めた動物の足跡が、かつて淡水湖だったあたりで多く見つかっているのは単なる偶然ではないようだ。

 おそらく、緑豊かだったこの土地が徐々に乾燥し、水の供給が減少しつつあることに気づいた旅人にとって、この湖は文字通り命のオアシスだったのではないだろうか。
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ゾウ(左)とラクダ(右)の足跡化石
image credit:Stewart et al., 2020
 アラビアの砂漠の多くは、今日の東アフリカのサバンナと同様、湖や川が常にある開けた草原に変わることが何度かあったという。

「湖の堆積物の様子や、人間と動物の足跡が密集していることから、当時の湖は干上がりつつあったと思われます。おそらく乾季のやってきたことに関係しているかもしれません。ですから、乾季が近づき、水が少なくなるにつれ、動物、そしておそらく人間も湖のまわりに集まってきていた可能性があるのです」スチュワートは言う。

この研究は『Science Advances』誌(2020/9/18)に掲載された。

References:sci-news / sciencenews/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年09月24日 22:23
  • ID:CYFkhFkN0 #

12万年前夏。人々は干上がった湖底におのが足跡を刻印しつつ歩いていた。
……ひどく暑い

2

2. 匿名処理班

  • 2020年09月24日 22:26
  • ID:5P9BbP.G0 #

これはかつての彼にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である

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3. 匿名処理班

  • 2020年09月24日 23:30
  • ID:XjVei4T.0 #

現代人の痕跡もいつか何万年か何億年か後かに何者かによって掘り出されるんだろうな。

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4. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 02:13
  • ID:LJJwkwhD0 #

すげぇ、、自分がまだ生まれる前だぁ

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5. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 08:29
  • ID:nM2bcGvo0 #

なるほどなあ、10~20万年前以前とは遺伝的に生物が断絶していたって話も頷ける。

6

6. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 08:32
  • ID:yHJwohfs0 #

地層が深いというだけで、年代が古いと断定しているんだけど、
地層なんて洪水一発で形成されるんだから、深さで年代を推定するのは、非科学的な話だよ。

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7. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 09:40
  • ID:pbCcOFE.0 #

人類は原初から「この先には何があるんだろう?」「行けるところまで行ってみよう」と思ってどこまでも遠くへ行きたがる生き物だったのかもしれない、と、人類の出アフリカは繰り返し起こっているという記述を見て思う

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8. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 10:16
  • ID:t1xmGSX10 #

何万年か何億年か後……
はよ魚の目治しとこ……

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9. 匿名処理班

  • 2020年09月25日 12:50
  • ID:yxN.Ap.V0 #

こういう調査にも予算がちゃんと出てるんだね

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