この画像を大きなサイズで見る歴史の隙間からこぼれ落ちて埋もれ、歳月の流れの中でいつしか忘れ去られてしまった奇妙な出来事を掘り起こすと、好奇心が満たされていく。
歴史はそんな話であふれていて、いつもわたしたちを驚かせてくれる。過去からそんな不思議な話をひとつ引っ張り出し、光を当ててみよう。
今回は18世紀、ドイツの医学教授が体験した、解剖用に引き取った死刑囚の遺体がクローゼットの中で生き返るという、世にも奇妙な物語を見ていこう。
医学教授が体験した世にも奇妙な物語
18世紀、ドイツ、ハレ大学にフリードリッヒ・クリスチャン・ユンケルという医学教授がいた。
父親は、著名な医師で化学者だったヨハン・ユンケル。ヨハンは、やはりハレ大学の教授で、歴史あるフランケッシュ財団の理事だったこともある。
この財団は、貧しく恵まれない人、孤児などのための学校で、こうした人たちへの医療行為も行っていた。さらにヨハンは、ハレの町を臨床医療訓練における国際的影響力をもつ中心地へと押し上げ、医療への取り組みや教育方法で最先端の地となるのを助けた。
息子であるフリードリッヒは、その重責を担うことになったわけだが、彼もまた、優秀な教授、医師として名をあげた。そんな彼が、解剖用の遺体絡みの世にも奇妙な体験をした。
この画像を大きなサイズで見る独自のルートで罪人の遺体を業者から受け取っていた教授
当時、医科大学は研究や解剖用の遺体がなかなか手に入らず困っていた。そのため、今日ではありえない手段でそれに対処していた。
この頃は、墓泥棒が、埋められたばかりの新鮮な死体を掘り起こして、医療機関に売りさばく行為が横行していた時代だ。
自ら遺体を掘り起こして需要を満たす教授もいたほどだが、フリードリッヒはこうした行為は不快で容認できないとして、盗まれた遺体は使わなかった。
その代わり、独自のルートを利用して、処刑された罪人の遺体を密かに手に入れていた。どのように罪人の遺体を手に入れるのか、そうした詳しい内情は訊かずに、ただ業者から遺体を受け取っていた。
この画像を大きなサイズで見る遺体の1体が生き返った?
ある夜、フリードリッヒはいつものように死体の宅配を受け取った。その日は2体あった。鍵を持っていなかったため、大学の解剖室へその遺体を持ち込むことができず、とりあえず、自宅の家のクローゼットに押し込んでおいて、朝になったら、移動させようと考えた。
真夜中頃、フリードリッヒは不審な音が聞こえてくるのに気づいた。それはゴトゴトいう音や、なにかを引っ掻くような音で、フリードリッヒは明かりをもって、家じゅうを調べてまわった。
すると、音の出どころは間に合わせの死体安置場所になっている例のクローゼットの中であることがわかった。
最初、遺体と一緒に猫でも閉じ込めてしまったのかと思って、クローゼットのドアを開けて中を調べてみた。すると、遺体袋のひとつが開いていて中の遺体が消えていたのだ。
もうひとつの遺体はそのままそこにあった。忍び込んだ泥棒に盗まれたのかと思い、家のドアや窓のカギをチェックしたが、どこもちゃんと施錠されていて、誰かが侵入した形跡はなかった。
困惑したまま、フリードリッヒがまたクローゼットに戻ると、隅にうずくまっていた影のようなものが吐息をもらす音が聞こえ、ぎょっとした。
明かりを掲げてよく見てみると、それは行方不明になっていた遺体だった。
この画像を大きなサイズで見る絞首台に吊るされ処刑された男は生きていた
その男は、実際は死んでいなかったのだ。やっとのことで聞き出した話によると、男が最後に覚えているのは、絞首台で吊るされたことだったという。
次に、目覚めたとき、袋に入れられていて、あたりは真っ暗だったらしい。男はフリードリッヒに「頼むから送り返さないでくれ、今度こそ、本当に絞首刑になっちまう、このままかくまって逃し
てくれ」と懇願した。
死体男の顔は蒼白で、キャンドルの明かりに照らし出されたその姿は、この世のものとは思えないほど怖ろしく、フリードリッヒは怖気づいて後ずさりし、その場を逃げ出した。
教授は一歩、また一歩と後ずさりした。目を見開いて、そのおぞましいものを凝視したまま、ドアへと向かった。
死んだはずの男は、よろよろと立ち上がり、教授の後を追いかけてくる。見るも恐ろしい裸の姿、まさにゾンビのようなゆっくりした動き、気も狂わんばかりの深い沈黙、すべてが教授を圧倒し、思わず持っていたキャンドルを落としてしまい、あたりが真っ暗になった。
たまらずに逃げ出し、自分の寝室へ逃げ込もうとしたが、動く死体はまだついてくる。そして、そいつが哀れな泣き声をあげながら教授の脚にしがみついてきた。
教授は「放せ、放せ」と繰り返し、男の手から逃れようとした。男は「ああ、どうか、お慈悲を! あんたが誰かを呼んだら、俺は連れ戻されて、また処刑されてしまう。どうか頼むから、俺の命を助けてくれ」
教授、生き返った男を逃がしてやる
死んだはずの男は、自分は脱走兵だから、容赦される余地はないと語った。今度はフリードリッヒは、男が幽霊などではなく、危害を加える気もなく、また絞首刑になることをただ怖れているだけだということがわかった。
哀れに思って、助けてやることにしたが、さて、どうしたものか。べつの裁判権のある管轄区に逃がすためには、誰にも見られずに夜の間に町から脱出させなくてはならないが、城門を守る門番の監視を突破しなくてはならない。
フリードリッヒは、自分の服とコートを男に着せ、大学の同僚として門を通過させる作戦を考え実行に移した。
門番には、町はずれに危篤状態の人がいるので、同僚と急いでかけつけなくてはならないと話して、まんまと門を通過することができた。
門を出るとすぐに、男はこの恩は一生忘れないと感謝して、夜の闇の中に消えていった。これが、生きかえった死体とフリードリッヒ・ユンケル教授の奇妙な話の結末だ。
この画像を大きなサイズで見る教授と生き返った男の奇跡の再会
それから12年後、フリードリッヒはアムステルダムへ旅をした。世界の奇妙な出来事を集めた、1825年の『Professional Anecdotes』の194~195ページには、次のように書かれている。
12年後、フリードリッヒはたまたまアムテルダムへ旅することになり、そこで、身なりのいいひとりの男に声をかけられた。町一番の羽振りのいい商人だという。
その男は、丁寧な口調で、もしや、あなたはハレのフリードリッヒ教授では?と言うので、そうだと答えると、男はぜひ夕食をご一緒にと熱心に誘った。
フリードリッヒは承諾し、その商人の豪勢な家に向かった。家には、美しい妻とふたりの健康そうな子どもたちがいたが、見ず知らずの者への家族総出の歓待ぶりに、フリードリッヒは驚きを隠せなかった。
夕食後、商人は自分の執務室にフリードリッヒをいざなって言った。「わたしのことを思い出しませんか?」「いや、まったく」
「しかし、わたしはあなたのことをよく覚えていますよ。そのお顔を決して忘れたことなどありません。あなたはわたしの命の恩人なのです。そう、あなたの家のクローゼットで、生き返った者です。あなたはわたしにとてもよくしてくださった。あなたとお別れしてから、わたしはオランダへ逃れ、会計の才を生かして職を得て、さる常連客の利益を増やして、彼の信用とその娘の愛まで得ることができました」
「その後、その顧客のビジネスをわたしが引き継ぎ、義理の息子になることもできました。本来なら、わたしはあのとき死んでいて、こうした幸せを味わうことはできなかったはず。この家も、財産も、わたし自身も、すべてあなたのおかげなのです。これからは、自由にご利用ください」
なんとも奇妙な話だ。どこまでが真実でどこまでが作り話かわからない。もちろん都市伝説である可能性もあるし、真実の可能性だってある。
だがとてもよくできた話だ。これこそ、たいていは歴史の裏で忘れ去られてしまう奇妙な小話そのものだ。
ひとつ確かなことは、クローゼットの中で死んだはずの人間がいきなり話しかけてきたら、なにはともあれ、助けてやったほうがいいかもしれない。
References:The Bizarre Case of the Professor and the Reanimated Corpse | Mysterious Universe/ written by konohazuku / edited by parumo














皇帝液か?
>>1
さ
なるほどクローゼットの中で死んだはずの人間が話しかけてきたら、助けてやったほうがいいかもしれないんだね…って入ってるかーい!クローゼットに死体入ってるかーい!
そっかぁ ちょっと押し入れの中の死体を確認してみるね
※3
お巡りさんこの人です。
まさに事実は小説より奇なり
恩返しはともかく、雑に殺された死刑囚が仮死状態で息を吹き返すあたりまではあってもおかしくなさそう
教授の味わった恐怖は計り知れない
ただそれでも助けてしまう辺り人助けを厭わない性格だったのだと
脱走兵の人も教授を襲う手段もあったはず
経緯はともかくどこか似てるし共感する事があったのかも
ちょっと待って !
鶴の恩返しみたいだな
>>8
吊られた方だけどね HAHAHA!
本当っぽいって思ってしまった。
遺体をとりあえずクローゼットに押し込んどくメンタルの持ち主でも、生き返った人の方は怖がるんだなって。あと「死体男」て。電車男みたいなノリでワロタ。
民話か何かの様な話だ
と思ったが死刑囚を逃すなんて話は子供向けには無理か
けど生き返った人が医者に襲い掛からなくて良かった
※11
死刑囚ったって、罪状は脱走兵だからなぁ…。
デスクワークの経理屋なら、
そりゃ軍隊生活には音を上げるだろうて。
むしろ、昔話って、貧民出身の盗賊や詐欺師が
上手いことやって成り上がるような話も少なからず有るし
(アラビアン・ナイトって それ系の多い気がする)、
「善悪って必ずしも白黒ハッキリしたもんじゃない」
みたいな体感的教訓は、子供の頃にこそ必要な気がする。
逆に、自分が信じる「正義」のみが唯一絶対と思って育つと、
独善的な独裁者ほど始末に負えないものはなくなるし。
(ネットで悪者認定の叩きを繰り広げる「○○警察」とかさ…。)
罪人が一般人に温情をかけられて、その後成り上がるくだりがレミゼラブルみたいだな。
※12
罪人が現代から見ると同情の余地があるところも共通してるね
現代で遺体がクローゼットに入ってる場合
大概クローゼットの持ち主とその遺体が遺体になった元凶はイコールな気がする
あの時助けていただいた、死体だった男です…
アンデルセンの「旅の道連れ」って話を思い出した。ちょっとだけこれと似ている。子供心にすごく好きなお話だったわ。
真偽なんてどうでもいいな。
全部読んじゃったし、読み物として面白かったからそれでいい。
なんだろう・・・「岸辺露伴は動かない」ぽさのあるストーリー
※18
露伴でも4部でもないけど、
グレートフル・デッド(感謝する死者)
のバンド名の元ネタと考え方が近い気がする。
無縁仏などを手厚く埋葬してあげたら、恩返しで豊かになった
みたいな民間伝承。(ちなみに、grateful(ありがたく思う)を
greatful(偉大な)と誤解釈するのは、ありがちな取り違え。
ジョジョ作者は、ミスなのか 敢えての掛詞か知らんけど。)
※15で挙がってるアンデルセンの創作なんかも、
モロに「感謝する死者」の類型だと思う。
スティーブンソンの短編で似た話があった。解剖用の死体が足りなくて、調達してきた死体が……という。そっちは怪談だったけど、解剖が盛んでも世界的にサンプルが足りない時代があったんだろうなあ。
登場人物が生き返った死刑囚以外が
フリードリッヒだけだと思ったが
フリードリッヒと教授の2人いるように書かれてて
混乱する記事だわ
最近(といっても2013年だが)イランで絞首刑になった男が息を吹き返した話があるね。
生き返ったと言うべきか
死んでなかったと言うべきか
昔は解剖のために墓を荒らしたり、死んだ罪人を買い取ったりしてみんなで研究するというのは珍しくなかったらしい
こんなお話も、実はあったかもしれないね
O・ヘンリーの短編小説にありそうな感じのストーリー。
でも、創作ならもうひとひねり欲しいところかもw
ほんまかいな…
クローゼットに死体て、同居の家族はいなかったのかしら?
まさに、Every family has a skeleton in the cupboard.
1825年の書物に「ゾンビのように」なんて記述があったのかとびっくりした
件のユンケル教授が1730生/1770没。
時期的に7年戦争(1754-1763)の脱走兵かな。
後日談はちょっと怪しいが、絞首刑後に蘇生するってのは結構あるみたいね。
素直にいい話だと思った。うん。
レ・ファニュとかポーの短編にありそう。
しかし死体?にビックリして逃げて追い回される下り、気の毒だが笑ってしもた。
再会時の話がちょっと出来すぎな気もするけど
ご遺体が息吹き返すってのはまれにあるらしいからそこまでは事実として有りそう
まあMr.ドリアンの例もあるしな
実話だとは思わないが、考えさせられた
日本でも絞首刑になった男が息を吹き返した事例があるから昔なら割とあったかもしれない。
なお、日本で復活した死刑囚は死刑が執行されたという判断がされ、そのままお咎めは無かったとこと。
※39
それ、まだ江戸時代の考え方から いくらも経ってない
明治初期の事例(石鐵県死刑囚蘇生事件)だね。
戦後まもなく(たぶん。体重を尺貫法で表していた)の事例だと、
『死刑執行人の苦悩』という本の老刑務官からの述懐によれば、
縛り方が悪く顎~頬~後頭部あたりのラインに引っかかって
なかなか絶命せず長時間もがき苦しんでいた死刑囚を
体重90kg超の屈強な柔道有段者の刑務官が
〆技でトドメをさした、といったような内容がある。
まぁ、非公式なルポライターの聞き取りなので
どこまで本当かは分からないが。
ただ、現代日本の死刑制度の目的は
「苦痛を与えること」ではなく
「更生の見込みが無いと判断された凶悪犯に、なるべく苦痛の少ない方法で速やかに社会から居なくなってもらうこと」なので、
万が一 蘇生することがあっても、死という結果に達していなければ、ふつうに再執行されるだけだと思う。