
mastrminda/pixabay
ここ数年、スウェーデンの家具メーカー「IKEA(イケア)」は、地球以外の空間をいかに快適に提供できるかをテーマにした、「宇宙家具」開発に取り組んでいる。IKEAのデザイナー数名は2年前、アメリカのユタ州にある火星を模した、火星砂漠研究ステーション(Mars Desert Research Station 以下MDRS)で短期合宿生活をし、そこでの経験を新商品のアイディアにつなげようとした。
当時IKEAチームは、限られた狭い空間で快適に暮らせる家具の開発に取り組んでいたのだが、現在は、宇宙に移住した場合にも適応できる「宇宙家具」をも視野に入れている。
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「宇宙家具」開発に着手したIKEA
狭い空間でも人々が快適に暮らせるように、スペースを利用するアイデア製品を生み出し続けているIKEA。そのデザインは、シンプルだからこそ日常の生活に馴染みやすいものだ。IKEAのデザイナーたちは、2017年から火星ステーションに合宿するなどして研究プロジェクトに参加し、地球以外の惑星でIKEA製品を活用できる「宇宙家具」開発に取り組んできた。
同社のインテリア・デザイナーのクリスティーナ・レベンボーンさんは、ユタ州の砂漠の中にあるMDRSで今回3日間過ごした。#IKEA prioritises space for overhaul of living pod in Mars Desert Research Station https://t.co/OpNIfYW8fp via @dezeen #MDRS #Utah #TheMarsSociety
— The Mars Society (@TheMarsSociety) December 4, 2019
このステーション内では、現実の火星での生活と作業に近い体験が味わえるように設計されており、シミュレーションを行う研究プロジェクトの目的は、実際に宇宙飛行士が体験する準備を事前に整えるためのものだ。

image credit:Wikimedia Commons
2024年までにNASAは、人類が月に無期限で居住できるよう準備しようと考えていることもあり、狭い空間でどのように快適に暮らすかということは、今や地球外でも現実味ある切実な問題となりつつあるのだ。この短期合宿のおかげで、レベンボーンさんはインスパイアされた経験を、IKEAの製品としてデザインすることに成功した。しかし、研究プロジェクトに参加させてもらった代わりに、ステーションの空間を変えるチャレンジにも名乗り出た。
個人的スペースやプライベート空間がないMDRS
MDRSは、2001年に火星協会(Mars Society)と呼ばれるNPOの宇宙支援団体によって設計された。以降、様々な国の研究チームがここを訪れ、普段の研究の延長線上のテーマについてここで実験を行っているという。
施設には、居住区である円筒状のハブのほか、植物を育てる温室や小さな科学実験室などがある。2階建てではあるが、火星輸送用ロケットで実際に運べる大きさと形になっているため、かなり狭い空間を研究者6人ほどが共有して生活している。A close-up view of #MDRS in Utah. #TheMarsSociety pic.twitter.com/qoDJAJgsBt
— MDRS Updates (@MDRSupdates) July 10, 2017
当初、この空間デザインは正直おざなりで、プライバシーの考慮がないただの狭い共有スペースがあるのみだった。そこでIKEAデザイナーチームは、この空間で研究者たちが快適に実験を行えるためにと、狭い場所でもプライバシーと個人的スペースが確保されていると感じられるような整理整頓の技術と、インテリアのレイアウトを考え出した。
囲まれた狭い共有スペースを快適な空間に
棚のユニットとキャスター付きのモジュール式家具を配置すると、フレキシブルでまとまりやすい居住空間ができた。
image credit:Inverse
また、暖色系の照明や屋外用の機器を室内で使い、居住空間を更にシンプルで住みやすく仕上げた。

image credit:Inverse
私たちは、この小さなスペースに柔軟で多機能な方法で配置できる製品を取り入れました。狭い空間だからこそ、その詳細をいかに製品に生かすかということが大きな勝負どころとなるため、IKEAデザイナーチームにとっても、MDRSのようなユニークな空間をデザインするというチャレンジは、その能力やスキルを試す機会を与えられているも同じなのだ。
MDRSにはプライベートスペースはほとんどありません。研究者チームがワークスペースを共有しなければならない小さな空間では、立っているか座っているかを問わず、全員のニーズに合わせて調整できること、快適でまとまりあるデザインを持つことが重要です。(レベンボーンさん)
より良い製品の改善を目指す私たちデザイナーは、非常に狭いスペースでIKEA製品をどのように効率的に使用してもらうかということを常に考えています。火星や月など地球以外の星でも、暮らしの快適空間を目指すIKEAの「宇宙家具」開発。同社の継続的なこのアプローチは、今後も宇宙滞在の研究者らへの大きな貢献となることだろう。
物資の不足や再目的化された持続可能な生活についての知識もあります。火星のこの種の不足に備えることは、私たちが当たり前と思っている地球上の全ての良いものに焦点を当てることにも繋がるのではないでしょうか。
References:Inverseなど / written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
IKEAって日本じゃなかったんだ
池屋みたいな感じの社名なのかと思った
どうりで組み立て説明書が意味不明なわけだ
2. 匿名処理班
宇宙専門とは行かなくても
極限状態を想定した機能性追求は無駄にはならないね
シェルターや極地用とか、ある意味ニッチすぎてすき間産業と言える
3. ナパチャット
重力や放射線や大気の環境や水やら
最重要課題を言わない宇宙旅行
4. 匿名処理班
宇宙で使うのなら機能性も重視しつつ地球にはあまりない感じのデザインにしてもらいたいな
いよいよ宇宙進出が近づいてきている感じでワクワクするね!
5. 匿名処理班
IKEAじゃないけど、宇宙ぽいSFに出てくるような円形の饅頭型で中空洞の白テーブル買ったけど糞使いにくくて実家に押し付けた。
デザインと機能性は両立しないな。
6. 匿名処理班
IKEAだったらきっと作ってくれるよ
宇宙部屋のソファーに置く宇宙ザメとか宇宙カメとか
7. 匿名処理班
O塚家具「閃いた!」
8. 匿名処理班
やっぱり異星の住居はドーム型になってしまうのが宿命なのか
9. 匿名処理班
スチールラックやん
10. じょん・すみす
そういえば、米国での話。
宇宙ステーション内を家庭的にするには?
との問いに、
食事用テーブルと個室を用意する事。
との答えが得られたのだとか。
11. 匿名処理班
コンパクトな収納をめざすなら、日本の方が上手じゃないかな。
狭い空間の使い方に慣れてるし。
12. 匿名処理班
日本でも1950年代に南極の昭和基地を建設する時に、ミサワホームが日本初のプレハブ工法を採用して協力していた。後にプレハブ工法は国内の建設手法の代表格になったわけで、同じように民間にスピンオフできる宇宙基地建設技術を日本でも培っていくのは重要だろう。