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人生最悪の記憶を本のページをめくるように消し去る薬剤の開発に取り組んでいる研究者たち(カナダ)

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(著) (編集)

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Image by Mandy Fontana from Pixabay
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 映画『エターナル・サンシャイン』(2004年)では、ジム・キャリー演じる主人公が恋人と別れた悲しみを癒すために、元カノの記憶を消し去る手術を受けるというストーリーが展開された。

 今、科学者は飲むだけでこれと同じことができる薬を開発している。いらない記憶を消してしまう——そんな映画の中の作り話でしかなかったことが現実になりつつあるのだ。

 破局の記憶を消し去ってしまおうという実験を行ったのはカナダ、マギル大学のアラン・ブルネット博士の研究グループだ。

Scientists are testing drugs to edit bad memories

高血圧の薬に記憶形成に関係する作用があることを確認

 この研究は、思い出された記憶は柔軟で影響されやすいという理論に基づいたもの。ブルネット博士の考えでは、ある出来事を思い出してから2~5時間ほどの間なら、その記憶が再び固定される前に修正することができる。

 「プロプラノロール」は高血圧や不整脈の治療に使用される薬だが、強い感情的な記憶の形成と関係がある脳のベータアドレナリン作動性受容体に作用することでも知られている。

 受容体に結合するタンパク質が遮断されると、記憶の形成に必要なシナプスの変化が抑えられ、その影響で記憶は思い出す前と同じようには保存されなくなる。つまり細かい部分が失われてしまうのだ。

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本のページをめくったような気分になる

 ブルネット博士は、その忘却作用を実際に試してみるために、パートナーの裏切りにあって破局を迎え、その記憶を忘れたいと願う60人の人たちを対象に実験を行った。

 実験ではまず、参加者にその破局の一部始終を紙に書いてからプロプラノロールを飲んでもらった。そして、薬が効いている間に、書いた内容を読み返して、苦しい記憶を思い出してもらう。

 これを4~6回ほど繰り返し、参加者に今の気分を質問してみると、ある参加者が「ページをめくったような気分」と話すほど大きな忘却効果が確認されたのだ。

 その参加者は「あの人のこととか前の関係とか、もうちっとも気になりません」と述べており、短時間のうちに元パートナーへの未練を断ち切ることに成功したようだった。

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記憶の完全な消去ではない

 なおブルネット博士によると、記憶を完全に消し去ってしまうような研究は行っていないとのことだ。それでは倫理的な問題が生じる恐れがあるためだ。彼が意図しているのは、あくまで「記憶を抑える」ことだ。

 PTSDで苦しむ患者を救うためなど、確かに記憶の消去を正当化できるようなケースもある。そうは言っても、嫌な記憶なら何でもかんでも忘れてしまえばいいわけではないだろう。

 たとえば飲み過ぎて大失敗してしまったような場合、本人は忘れてしまいたいかもしれないが、長い目で見るなら、その経験と向き合って、そこからきちんと学ぶことが大切なはずだ。

 だがブルネット博士はこう問いかける——「もし記憶を抑えるか、完全に消すか、どちらか選べと言われたら?」と。あなたならどちらを選ぶだろうか?

References:Scientists are testing drugs to edit bad memories/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. 「最も嫌な記憶」を1つ消しても、次に嫌な記憶が「最も嫌な記憶」になるだけ。
    自殺したいくらいに嫌な記憶ならともかく、大抵は抑えるのが良いと思う。

    • +7
    1. >>1
      A「人生楽しいよ!いい思い出ばかり!」

      B「一番悲しかった思い出は?」

      A「??」

      C「聞いてやるなよ、あいつ記憶がないんだ」

      • +1
  2. 忘れたいと思うほど嫌なことって、あまりに強烈で思い出しては反芻してしまう
    →記憶の強化
    こんな薬出たらうれしいような危ないような

    しかしインデラルの類似薬常用してるけど(β遮断薬)
    記憶がどうこうとかはないなぁ

    • +5
  3. 「もう二度と危険運転はしない・・・取り返しのつかないことをしてしまった(大泣)」
    から
    「ヒャッハー ! ! 今夜もぶっ飛ばすぜェェェェッッ ! ! 」
    にならなきゃいいが、と思うのだが。

    • +9
  4. 消しちゃったらまたやらかしちゃうじゃん♪

    • -7
    1. >>4
      自分がやらかさなくても、否応なく降りかかる悲劇もあるじゃん。

      • +17
  5. 間違って全ての記憶が消えてしまうことはないのか?

    • +2
  6. 渡辺浩二の 2999ゲームキッズという小説で
    部屋の中におかしな扉があるんだけどそれを開けたら恐ろしすぎるものがあったので忘れることにしたところ、お客が来るたびに「そこの扉は何だい?」って言いだすんだけど住人は忘れたからなんの事かわからない・・・
    みたいな話があって面白かった

    自分が忘れてもその痕跡があると複雑だよね

    • +3
  7. 嫌な記憶を忘れたり思い出しにくくするよりも、活かして成長の糧に出来ればそれが一番良いんだろうけど・・・。

    • +1
    1. >>9
      たしかに傷を乗り越える為にその出来事に意味づけをするのは有効だけど、あまりに大きい傷だとあの経験のお陰で…なんて考えるのは難しいと思うなぁ。
      犯罪の被害者とか一生フラッシュバック背負って生きる人達には希望の薬かも。

      • +12
  8. 自分で忘れるんじゃなくて、寧ろ他人に記憶されてしまっている
    自分に関する黒歴史を消してほしいんですが・・

    • +13
  9. 余りにも辛い記憶は消し去りたい
    でもそのおかげで学んだ事も多い
    だから私はこの薬は要らないわ

    • +2
  10. うちの冷蔵庫に入ってるぜ「ストロングZERO」って書いてある、こいつさえあれば嫌な記憶なんか跡形もなく吹き飛ぶぜ!(たまに、会社いくのも忘れちまうけどね)

    • 評価
  11. 若者「よっしゃー ! 今年もクリスタルレイクにキャンプに行くぜーっ ! ! 」

    ジェイソン「あいつら、懲りないなぁ・・・」

    • +1
  12. 記憶も体験も消してしまうのは、自分を消してしまう事と同じだ。
    記憶喪失にでもなれば違う自分になるだろうが、消えた自分の過去に触れるようになるだろう。
    今を構成している過去を消そうとしても、それは徒労に終わるだろう。

    • -3
  13. もしできたら最高だね。
    幼少期に両親から虐待を受けた記憶と、元夫とその親からの虐待の記憶を消したいわ。
    死んだほうがましだったな~って思いながら、
    死ぬこともできず、かといって生きてる実感も持てずに生きなくていいようになりそう。

    • +9
  14. まるでジョジョの岸部露伴とヘブンズドアーそのままじゃないか

    • +1
  15. 使ったらドーピングになりそうな薬物だね

    • -3
  16. この薬飲んでるけど記憶が消えるっていうより、記憶+感情の、(感情の部分)が消えるっていう感じ。そのつらい記憶を思い出したときに、一緒にそのときの感情も思い出すんだけど、そのときの感情が消える。

    • +4
  17. 40年近く前の読み切り漫画作品を思い出しました。
    内容は、うろ覚えですが以下のような・・・

    —近未来、失恋を経験した者は必ず当局に申告し、「失恋の記憶を消去する装置」により記憶を吸い出すことで、その経験を忘れることを義務付けられている。

    主人公(男性)も交際相手から別れを告げられ、仕方なくその装置のある施設に向かう。

    多くの申告者が順序よく装置に送られ、まさに主人公の番になろうというその時、彼女との幸せな記憶までも失うことを怖れ、その施設から逃亡してしまう。

    しかし当局の追っ手に取り囲まれ、その場で強制的に記憶を吸い出される・・・

    一方「失恋の記憶」には物質的な実体が存在し、吸い出された記憶は廃棄物としてタンクに貯められていたが、そのタンクは満杯になりつつあり、主人公の記憶が追加されたことで容量がオーバーして爆発。

    上空に撒き散らされた記憶は雲を作り、やがて雨になって落ちてくる。

    その雨を、多くの人々が、懐かしく切ない気持ちで眺めている—

    タイトルは『失恋逃亡犯』だったような?ググっても出てきません。
    掲載誌も作者名も思い出せませんが、とても印象に残っています。

    • +1
  18.  最悪の記憶も、人生の一部分ですからね。
     思い出す度に暗い気持ちにはなりますが、そこから学んだ事も色々と有る訳で、削し去ろうなんて及びもしませんよ。
     唯、そのような治療法で助かる方々には、福音なのかも知れませんし、肯定的に思います。

    • -3
  19. シナプスを阻害するなら中高年が服用したら認知症一直線では?

    • 評価
  20. PTSDで広場恐怖症になった自分は、6年間も家から出られなかった。
    毎日のように「なにも怖くなくなる薬があればいいのに」と思っていたし。
    「そんな薬は違法薬物しかないだろな」と思ってもいた。
    そんな自分には「一時的だが飲めば記憶は思い出せるがその時の感情はついてこなくなる」なんて薬を出されたらきっと飛びついただろう。

    • +9
  21. 性犯罪とか虐待とかあまりにひどいもの、トラウマになっているものは本人が望んだら忘れられた方がいいと思う

    • +11
  22. 自分解離性健忘症だけど
    嫌な記憶は確かに忘れてるけど、それ以外の記憶もわりと消えるんだよね
    これがきっかけでこういった健忘症の症状(離人症とかも)が副作用として出るんじゃないかと思うと、
    安易にはすすめめられないかな…
    もっとも、それを飲み込んだ上で忘れたい記憶があるのはわかる

    • +1
  23. 黒歴史を選んで消せるならいいなーと思うけど
    自分の場合は記憶の大半を消去しないといけないことになりそうな予感

    恥の多い生涯を送ってきました

    • +1
  24. 重すぎるトラウマのフラッシュバックでまともに眠れない生活に耐えられず
    医師の診断にもとづき安楽死が認められた女性がニュースになってたね
    人生どころかマトモに日常生活を送ることもできないまま
    何年も苦しみ抜いた結果の決断だったそうだ

    この薬の実用化で、救われる命も確実にあるのは間違いない

    • +3
  25. 一番古い記憶は1歳の頃に母親におぶられている時の記憶で、その時起きた事を母親に確認して事実だという事も分かってる。子供の頃の記憶は殆ど覚えてるが、逆に最近は年に1度(もしくは1度以下)しか会ってない様な人(母校の教師や近所の住人)の記憶が一切無いから困る。余分な記憶を消して覚える容量が増やせるなら使いたい。

    • 評価
  26. 早くこれ作ってー!
    むしろ人格も記憶も変えれるやつほしい。

    • +1
  27. でも記憶していないと次に似た状況になったとき回避できないよね…。

    • +1
  28. 薬物依存の治療にも活用できないだろうか。
    田代まさしが「薬が目の前にあったらアウト」と言っていて実際にまた逮捕されてしまったので、薬物を摂取した時の強い感情(感覚)の記憶を抑えることができれば、依存の再発を防げて本人も家族も安心できるのでは…。

    • +1
  29. 何度も兵士を戦場に送り込める そういう最悪な使い方を考える人間が出てくる

    • 評価

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