
slavemotion/iStock
SNSの普及により、ちょっとしたことが一瞬にして世界規模で広がっていく時代となった。悪いニュースばかりに目がいきがちだが、良いニュースも同じように拡散されているのだ。自分が何を取捨選択するかでSNSに参加する意義は大きく変わる。
これから紹介するのは、2年前に大きな反響を呼んだ1枚の写真である。それが再び様々なメディアで取り上げられ拡散されている。
1人の制服を着た兵士が、激しい雨が降る中、車の側に立ち、ある方向を見つめて敬礼している。その光景を撮影し、フェイスブックに投稿したのは、偶然通りかかった地元の女性だった。
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見知らぬ人の葬列の車にずぶぬれになりながら敬礼を捧げる兵士
2017年7月6日、米ケンタッキー州バイン・グローブ地域には激しい雨が降っていた。バイン・グローブの住人エリン・へスターさんは、高速道路を運転中、交差点に差しかかった時に、ある光景を目にした。
信号待ちのエリンさんの目の前に、止めたジープの側で1人の兵士がある方向をまっすぐに見つめ、ずぶ濡れになりながらもじっと敬礼し立ち続けていたのだ。
エリンさんは、その兵士が葬列中の車に敬意を示しているのだと知った。見知らぬ死者へ、静かに敬意を払い続ける兵士の姿に深く心を打たれたエリンさんは、その光景を写真に撮り、フェイスブックで初めて公開投稿した。
私はいつも、葬列中の車のために他の車が道を開けたり止まったりしない行為にはイライラさせられていました。でも、この紳士はそんな当たり前の行為を超えた態度で、死者への敬意を払っていたのです。
葬列は少なくとも1分は続いていましたが、彼は雨の中ジープから出て、ずっと立って敬礼していました。兵士だからそうしなければならないという理由からではなく、彼自身の意思でそうしているのだと感じました。
見知らぬ家族に、敬意をもって敬礼を捧げる兵士の姿に、私は感動を覚えて心が温かくなりました。
尊い兵士の姿がSNSで大反響
ケンタッキー州では、ドライバーが葬列中に遭遇した際には、車を停止させるか追い越しを控えなければならない。それは死者や遺族へリスペクトを払うという以外に、州が定めた道路交通法でもある。しかし、エリンさんの投稿でもわかるように、近年ではそれを守るドライバーが少なくなっていたのだろう。
そんな中でのエリンさんのこの投稿は大きな反響を呼び、シェア数はたちまち20万近くにもなったという。そしてユーザーらからは、このような声が寄せられた。
・彼の行為に遺族もきっと救われたはず。
・この男性は、本物のアメリカ兵士だね。
・親切とリスペクトをありがとう。あなたは“真のヒーロー”だ。この写真を見て、アメリカ人であることに誇りを感じさせられたよ。あなたの人生にも神のご加護がありますように。
・この国を誇りに思える1枚だね。
・私の父も、葬列に遭遇した時にはキャップを脱いで直立していたわ。
・世の中には、まだまだ他人をリスペクトする良い人が存在するってことを気付かせてくれて、ありがとう。あなたにも幸あれ。
・素晴らしい人だね。
・人間らしく振舞っている人を見ると、人間が好きになれる。
・感動する投稿をシェアしてくれたエリンさんにも感謝。
兵士の身元が判明
フェイスブックにエリンさんが投稿した時には、この兵士が誰であるのか不明だった。しかし米メディアで報じられると、その身元が明らかになった。この兵士は、テネシー陸軍国家警備隊に所属するシニア陸軍顧問のジャック・アスリー大佐だった。
その後、エリンさんアスリー大佐は初対面の運びとなり、アスリー大佐は次のように語った。
Photo of soldier who saluted funeral procession goes viral
私は物心ついた時から、両親に「他人には敬意を払うべきだ」と教えられて育ってきました。そしてまた、私が育ってきた故郷の環境も、私を正しくあるべき姿にしてくれたといえるでしょう。
あの日、あのような悪天候の中で身内を送り出さねばならない遺族の悲痛な心情を思い、自分が少しでも彼らにリスペクトを払うことで、きっと彼らも救われてくれるのではと思ったのです。
毎日、私たちは他人を思いやりリスペクトする機会を与えられています。もし、私たちが普段の生活の中でほんの少し歩調を緩めれば、見知らぬ人へ手を差し伸べることもできるのです。
やさしさも連鎖する
エリンさんの投稿により多くの賞賛の声を得たことについては、アスリー大佐は「私の行為が、ここまでの反響を呼び話題になったことはただ驚きで、恐縮しかありません。」と謙遜した。アスリー大佐の行為や言葉から、普段忘れかけていた大切な何かを再び思い出させてくれたと感じた人は多いだろう。
優しさも必ず連鎖する。どんな小さなことでもいい。今度は我々が「Random Act of Kindness(ランダム アクト オブ カインドネス)」をつむぐ番だ。日本語で言うところの恩送りだ。
・思いがけない人のやさしさに触れたとき、そのやさしさは伝播する。アメリカで広がる「ランダムアクト・オブ・カインドネス」 : カラパイア
References:facebook/US Soldier Photographed Standing at Attention in Pouring Rain Warrants Great Respect/ written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
霊柩車みたら親指をかくすんやで?
2. 匿名処理班
見ず知らずの他人をリスペクトするのは難しい。
写真も生き様も美しくて、胸を打たれる。
3. 匿名処理班
>ケンタッキー州では、ドライバーが葬列中に遭遇した際には、車を停止させるか追い越しを控えなければならない。
州独特の法かな
4. 匿名処理班
アメリカの文化を全く知らないけど泣ける
他人を敬う姿勢は国境を超えるんだ
5. ・・・
「国家警備隊!?」となったけど、Natial Guardのことだから州兵のことだね
6. 匿名処理班
ネットフフリックスでやってる、米軍の名誉勲章受章者の番組を見てると
米軍の強い理由が分かる。
とにかく戦死者や受勲者に対するリスペクトが日本と全然違う。
何十年も前の戦争で亡くなったが未だに地域の英雄として
新たに作られる道や建物の名前に使われてる。
名誉のためじゃなくても、国のために頑張ろうという気持ちになりやすいわけだ。
7. 匿名処理班
人間の鏡が この野郎
8. 匿名処理班
自分USAコールいいっすか?
9.
10. 匿名処理班
日本人の感覚だとよくわからないが、どんな形であれ他人に敬意を示すことは少なくとも悪いことではない
11. 匿名処理班
敬礼を送り続けた相手は誰?
12. 匿名処理班
※11 見知らぬ人。まったくの他人。
13.
14. 匿名処理班
自分、霊柩車の運転手やってます。
東京なんて、出棺の車列に平気に割り込んでくるけどね。
車列が多い時に、右折するのに早めに右側車線を走ってる時なんか、物凄い勢いで左側から霊柩車の前に入り込む車もある。
確かに、故人を運んでる訳だから、丁重に運転するし、速度もゆっくりめで走るから
周りに迷惑かけるのもわかります。
でも、この前、素敵なトラック運転手さんいましたね。片側一車線の道で、霊柩車先頭で右折待ちしていました。霊柩車の後ろに、住職の車、葬家の自家用数台、バス1台。
対向車線の先頭を走ってた、トラックの運転手さんが右折してと譲ってくれました。
霊柩車だけを譲ってくれる方はよくいるんだけど、そうすると車列が途切れてしまいます。ありがたいんですけど。でも、そのトラック運転手さん、最後尾のバスの右折が完了するまで、ずっと道を譲ってくれたんです。
もう、霊柩車の運転手を10年近くやってるけど、そんな優しくて出棺の車列に敬意を払ってくれる方なんて、初めての事でした。
葬式に縁がない方は、出棺中の車列なんてわからない方が多いんだと思います。
だから、そのトラック運転手さんは、身内の誰かを亡くし、出棺の車列を経験したのだと思いました。なので、この兵士の話を読んだ時、すぐにトラック運転手さんを思い出したのです。
長文、申し訳ありませんでした。
15. 匿名処理班
国民全てを慈しむ軍人がいる
それだけでもアメリカは素晴らしい国だ
16. 匿名処理班
子供の頃は霊球車が通ると怖くて仕方なかったもんだが、
いつからか淋しい、と感じるようになったな
/)´・ω・`)紳士に敬礼だ
17. 匿名処理班
コル・ジャック・アスリーさんではなく、ジャック・アスリー大佐だね
18.
19. VIP屑野郎
どうしようもねえぐらいアメリカ軍人だな(誉め言葉)
20. 匿名処理班
最初読んだ時は気持ちは分かるけど高速道路上に停車して車外に出て敬礼とか迷惑過ぎるだろと思ったけど、停止しなければならない法律なのね。
今後は州知事なり大統領なりになってアメリカ人の模範となって欲しい人物だね。
21. 匿名処理班
良い記事だな
22. 匿名処理班
※14
そのなんて、と言われる東京ですら大阪、京都、福岡のそれぞれの友人にしてみれば車の運転はみんな凄い優しいらしいって言う
23. 匿名処理班
調べてはじめて知ったのですが、アメリカでは「お葬式の車(車列)が優先される」のが敬意でマナーで慣例で常識で文化ぽいですね。アメリカで運転してびっくりした体験談がネットでみつかる。
「葬儀車両の優先権」については州によりけりで法で決められているっぽい(在ナッシュビル日本国総領事館のサイトなども日本と異なる道路交通法の規定として注意をうながしているみたい)のですが、法の外の部分になる「できれば路肩に停車して車から出て祈りたいよね」的な部分は、世代なり生活のスピードの変化なり運転の流れの安全を優先する中で行為にあらわすことは押しやられぎみ(に見える)なのかもですね。
軍人の記録サイトによればイラクやコソボなどを体験している大佐ですがたまたまオンの時だったから敬礼で、これがオフの日の悪天候であるならばやっぱり停車して降りて祈りのポーズだったのでしょうと思うのですね。当時51歳ですからエリンさんから見るとヘタすりゃ親の世代ですが古い世代に身に付いた事だからってわけでもなさそう。そうしてきたしこれからもそう。
Pull Over for a Funeral Procession
Tennessee Code 55-8-183 – Funeral processions
24. 匿名処理班
「滅びの美学」が珍しく見える文化圏だからかな。
「死者を尊ぶ」という概念は全人類共通のものではない。
フランダースの犬のラストシーンを悲しむ国もあれば
「負け犬が何も成し遂げずブザマにのたれ死んだ」と
腹を抱えて笑うギャグシーンとして受け取る国もある。
25. 匿名処理班
>毎日、私たちは他人を思いやりリスペクトする機会を与えられています。
この言葉に鳥肌立った。
身口意の業全開な俺がちょっと改めようと思える言葉。
26.
27. 匿名処理班
>>1
うちはもう二親ともおらんで今更隠しても遅いんや(´;ω;`)
28. 匿名処理班
流石は大佐だ
部下からの人望も厚いことだろう
きっと理想の上司みたいな人なんだろうな
29.
30. 匿名処理班
※14
近所にセレモニーホールっていうのかな、葬儀会場にも使われるホールがあるんだけど
そこの前の歩道に参列者が並んでたりすると自転車がけたたましくベル鳴らしながら蹴散らして行くよ…。
元々歩道なんだし、車道に降りるなり、ちょっと降りて自転車を押して歩くくらいのことはしてもいいと思うんだよね。
なんでそのくらいの配慮もできないんだろう。
見る度に悲しい気持ちになる…。
31. 匿名処理班
プレシディオの男たち
32.
33. 匿名処理班
やるな大佐
34. 匿名処理班
※10
日本人として十分理解できると思うが。
他人を敬う礼節の心があれば。
35. 匿名処理班
※6
アメリカの大学でクラス取った時、同じクラスにアフガン帰りの元米兵がいた。
見た目は普通の若者だったけど、他の若者たちより物静かで大人びていた。
自分より若いこんな子が、本物の戦場を知ってるんだと愕然とした。
日本では戦争は年寄りが語る物だけど、アメリカでは現在進行形。
こんな若者が戦場に行っていると思ったら、アメリカ人が軍人に敬意を払うのも当然だなあと思った。
日本で米軍機が墜落とかすると、まずメディアは責めるけど、亡くなった米兵たちも、制服脱げば日本の若者と変わらない普通の若者で家族もいるってことに、アメリカ来てようやく気づいた。
36. 匿名処理班
もちろん霊柩車の道を妨げないし、縁のある故人に線香もあげる
でも小学校の頃に読んだ怪談本の
「死者を憐れんだり同情したりすると取り憑かれる」
って一節が頭にこびりついててつい死から目を背けてしまう…
37. 匿名処理班
素敵な話しですね。
日本では霊柩車が通ると親指を隠さなきゃ!
って思う人が多いかもしれないですね、、
考えさせられました…
38. 匿名処理班
※25
その「機会」もchanceじゃなくてopportunityて言ってるよね(英語苦手なんで違ったらすまん)。他者を思いやる気持ちとかって普段からの心がけが大事だってことなんだろうな。自分も漫然と不平不満ばかり垂れてないで心を引き締めたいと思ったよ。
39. 匿名処理班
かっこいいなぁ
そういう大人になりたかった
40. 匿名処理班
沢山のリアルな命のやり取りを経験しているであろう人ならではだったりもするのかな。
自分も霊柩車ではないけど、緊急でお世話になってからは救急車に対しての印象が変わった。
昔はただ怖いとか不気味…だったけど、あぁ呼んだ人(乗ってる人)が無事だといいなぁと。
救命士やってる知人もいるから、そちらへの労いの気持ちもある。
普段この辺りのものにあまり縁が無いのは良い事として、身近な経験の有り無しに関わらず敬えたらいいね。
もちろん、世の中に存在する多くのことに。
41. 匿名処理班
でも戦場に行けばヒャッハーするんでしょ?
42. 匿名処理班
※14
勘違いしている
車体が高いから事故したら大変だと考える人が霊柩車を避けてるだけ
ベンツよりはるかに高く2000万以上の霊柩車に戦いを挑むなんてことは
まともな人間ならしない
43. 匿名処理班
>>1
近頃の子供の間では、
救急車を見ると両手の親指を隠すのだがそれは、
「頑張れ!」「間に合え!」と念を送るためなのだ、
という話を読んだ事がある
44. 匿名処理班
※35
そりゃ事故で亡くなったりするのは気の毒だけど、だからといって他所の国で事故っていいわけじゃないからなあ。
ソレとコレとは別のハナシでしょ。
45. 匿名処理班
※6
ドラマから仕込んだ知識で申し訳ないけど、アメリカのドラマ観てると
殉死した公僕の葬儀は荘厳でかつ格式高く、敬う気持ちの強さをひしひしと感じる。
棺桶にそれを覆う大きな国旗を掛けて運び、埋葬の時にはその国旗を畳んで遺族に渡すんだ。
「愛国心」がなんの拘りもなく、しがらみもなく使える国は正直羨ましい。
46. ぼっち番長
※36
とりつかれた方が寂しくなくてええやん?
47. 匿名処理班
※10
日本人の感覚?
いや、君個人の感覚だと思うよ
48. 匿名処理班
※14
勉強になった。おかげで、次からは正しく振る舞えると思う。
49.
50. 匿名処理班
私は物心ついた時から、両親に「他人には敬意を払うべきだ」と教えられて育ってきました。
まるでジョジョに出てくるエピソードだ
こういったエピソードをたくさん知ることで心の豊かな人間になれる
逆に若い頃両親や友人にたくさん裏切られた人間は心の狭い人間になるものだ
お互いのために他人には敬意を払って生きていこう
51. 匿名処理班
※44
それが嫌なら軍事的に自立しろって話になるよ。
アメリカ人の多くは、そう思ってる。
52. 匿名処理班
※6
これは戦死者への敬意ではなくて、見知らぬ人の尊厳への敬意だよ。
水差すようで悪いけど、写真の彼はたまたま軍人だっただけで、軍人ではなかったとしても葬列に敬意をはらっていたんじゃないかな。だからこそ尊敬できる。
もうひとつ、米軍が戦死者に篤く報いることができるのは、国を失うほどの大敗を喫していないことが要因として大きいと思う。負け戦もやってるけど、軍のメンツはなんだかんだ保れてるってことよ。日本だってかつては篤かったんやで、大戦の半ば頃まではな。
スレチになるからよう言わんけど。
53. 匿名処理班
現世の事しか考えない人間は傲慢になるよ。死とか霊的な事を自分の世界観の中に入れるようになると、人間が思慮深くなり人生が深くなるね。
54. 匿名処理班
アメリカ人ってリスペクトをすごく大事にしてるイメージ
故人だけじゃなくて、目上や年上、何かを成し遂げた人や特別な何かを持ってる人とかにリスペクトを示すことを躊躇わない
日本語の尊敬とはまたちょっと意味合いが違う感じがする
55. 匿名処理班
>>45
公務員だけではないよ
軍用犬、警察犬も同様にするよ
56.
57. 匿名処理班
アメリカ人は全てにおいてピンとキリの振れ幅が大きいなあ。
こういう誠実な人がいるかと思いきや土人レベルも多い。
優れた研究者がたくさんいる反面、未就学児童も多い。
貧富の差は言うまでもない。
不思議な国。
58. 匿名処理班
かっこよすぎ。
尊敬する。
59. 匿名処理班
>>24
だから何?
生き死に冷静に語るなよ。