
同社が考案した「オルトメトリクス」という学術論文の影響度を評価する指標は、単なる引用回数などだけでなく、論文の社会的影響度を測る閲覧数やマスコミやSNSによる言及といったことも考慮している。
以下では2018年に最も影響力があったとされるオルトメトリクス・ランキング100からトップ10の研究論文を見ていこう。
10. 地球のバイオマス分布

5月、地球上で生きるバイオマス(特定の時点においてある空間に存在する生物の量を、物質の量として表現したもの)のこれまでで最も包括的な研究が『PNAS』で発表された。
それによると、人間は地球上の生命の0.01パーセントしか占めていないことが判明。にもかかわらず、全体に対して分不相応なまでに大きな影響を与えていたわけである。
9. 地球温暖化によるサンゴのアサンブラージュ化

4月に『Nature』に掲載されたこの研究は、地球温暖化がグレート・バリア・リーフにもたらした本当の被害範囲について明らかにした。
このサンゴ礁生態系に起きた最近の白化は、サンゴ構造まで劇的に変化させているという驚くべき結果で、サンゴが急速に死に絶えつつあることを示した最初の記録として警鐘を鳴らしている。
8. 代替医療、従来型がん治療の拒絶、治療可能ながん患者の生存

『JAMA Oncology』の190万人の患者を対象としたコホート研究では、鍼や漢方といった代替医療を利用するがん患者は、一般的な治療を拒否する可能性が高いことを明らかにした。
だが残念ながら、そうした患者の死亡リスクは、代替医療に頼らなかった患者に比べて、2倍に高まることも示されている。
7. 太平洋ゴミベルトに急速にプラスチックが蓄積されている証拠

3月に『Scientific Reports』に掲載された研究によると、太平洋に流れ着いたゴミの多い海域はフランスの3倍の大きさに広がり、総じて1.8兆個ものゴミが溜まっているそうだ。
6. 食事による炭水化物の摂取と死亡率:コホート研究とメタ分析

8月の『The Lancet Public Health』の研究では、ずっと炭水化物を食べ続けた場合の影響が本当のところどうなのか調査。分析対象とされたのは、成人15,500人の食事データである。
炭水化物抜きダイエットが有名だが、結論はそれほど意外でもないだろう――色々な食材を適度に食べて、植物由来の自然食品を多く取り入れましょうということだ。
5. アメリカ人の運動とメンタルヘルスとの関係に関する横断的調査

2011〜2015年に米国の120万人を対象に実施した調査では、運動と心の健康との関係を調査し、特に驚きはないが、しかし重要な発見をした。
『The Lancet Psychiatry』に掲載されたそれによれば、運動をしている瞬間は常に幸せ感が高まるという。米政府が国民に運動をするよう事実上懇願してきたことを鑑みれば、それも当然のことだろう。少し速めに散歩をしてみるだけでもいいのだ。
4. 人新世における地球システムの軌跡

昨年のトップ10には気候に関する研究がランクインしなかったが、今年はこのもっとも差し迫った問題に注目が集まったようだ。
8月の『PNAS』に掲載されたシナリオによれば、人為的な温暖化によって地球システムに不可逆的な影響が現れるという陰鬱な話がついに現実になり始めたようだ。後悔先に立たず……である。
3. 1995〜2016年度版、195ヶ国のアルコール摂取と負担
:2016年度疾病の世界的負担の研究のための系統的解析

地球の混迷具合とその対策がない現状を考えると、大勢の人が酒を煽り、それによって命を落としていたとしても不思議はない。
『The Lancet』に8月に掲載された世界的な研究によれば、15〜49歳における体調不良の主要な原因はアルコールで、これは世界中で言えることだそうだ。この遣る瀬ない気持ちを落ち着けるには酒が必要だ……。
2. ネットにおける本当のニュースとフェイクニュースの拡散

SNSはどちらかというと誤情報ばかりが流れているかもしれない、という疑念がついに確認された。
『Science』の研究によると、中でも最悪なのは、これが悪名高きボットのせいではないということだ。人類に対する信頼をほんの少しでも保つために、そうであって欲しかったのだが。
1. 台風マリア後のプエルトリコの死亡率

2017年9月、大型台風がプエルトリコを襲った。インフラの被害は火を見るよりも明らかだが、政府が情報をきちんと把握していないために、犠牲者の正確な数は分からなかった。
犠牲者の推計について『New England Journal of Medicine』に掲載された研究では、調査票による別のアプローチを採用。その結果は、正確に言えば公式発表を”修正"するものではない。
当初発表されていた犠牲者数は64人であったが、この調査によれば2975人と公式な犠牲者数を大幅に上っていたことが明らかになったのだ。
References:Altmetric – Top 100 articles – 2018/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
3番、飲むな飲むなw
2. 匿名処理班
6番は結論はぐらかさないでどうだったのかはっきり教えてほしいな
自分の身近な人というせまい範囲内だけど太ってて糖尿予備軍・糖尿病、もしくはそれを含めた様々な要因でなくなった人もいるけどだいたい昼飯は菓子パンとカップ麺とおにぎりとか、一緒に食事するとご飯は基本大盛りとか、ごはんおかわりしまくりとか、おめー炭水化物取りすぎだろーって人が多い
3.
4.
5. 匿名処理班
気のせいか、どれも扇動を目的とした恣意的な論文に聞こえる。
いや、悪いとは言ってないよ?
ただ、自分の思っていた影響のある科学論文と違ってただけで。
6. 匿名処理班
※1
こんなニュースを目にしてしまったからにゃ飲まなきゃやってられねー
って心境ではなかろーかw
7. 匿名処理班
代替医療はマジで標準治療でも保険外治療でも治験でも打つ手がなくなったときの最後の手段にしてほしい。ただでさえ闘病で疲れてる患者や家族へしつこく薦めるのももう止めてほしい。
まだ標準治療で助かる人が代替医療の悪質なのに引っかかって、お金ばっかりかかって助からない話、聞くだけでツラい。
がん家系で助かった家族も助からなかった家族も両方いる身だから、ちっとも他人事じゃないんだ。
だからこうして論文で出してくれると、次々持ち込まれる代替医療の誘いを断りやすくて助かるよ。
8. 匿名処理班
後出しジャンケン的な論文ばっかだなー
これで科学と言えんのか?
9. 匿名処理班
※5 信じたくない、事実であってほしくない、と言う気持ちがあるからでは?
10. 匿名処理班
温暖化は一握りの資産家が本気出さなきゃ先ず回避不可能
一般大衆には空調全開で精々家族を守るくらいしか出来る事なんて無いよ
11. 匿名処理班
※7
素朴な疑問で「次々持ち込まれる代替医療の誘い」というのは誰が、どういう方法で持ち込むのでしょうか?一般の病院で代替療法に切り替えることを勧められる事はまず無いと思うし、自然療法を提供する側が一般のがん患者を探し出して営業を仕掛けることも難しいし。
やっぱり患者の親戚や知り合いとかが勧めて来るものなのでしょうか?
だとしたら確かに辛い。
12. 匿名処理班
※11 我が家が実際に遭遇したケースのみですが。
近所の人がどこから聞いたのか、マルチっぽい(上の人とやらも同行してきた)健康食品の売り込みに来ました。
友人と呼ぶには微妙な距離の私の知人、ネットのどこぞで有名だとかいう自称万能発酵食品(自作)を持ってきた(その人は善意のつもり)。
疎遠な遠縁の親戚が電話してきて、レメディを試したらいいんじゃないかと(これも善意のつもり)。その人からは一家族からがん患者が複数出たんだからお祓いと改名しろとも。
患者本人が病院で知り合った別疾患の患者さんから、怪しいやたら高額な自称整体院のすすめ。調べたらがんにもその疾患にもいいらしいから、一緒に行かないか?と。
思い出すと胃が痛い……。
13. 匿名処理班
※9
いや、なんかもっとこう、科学界の常識を塗り替える驚愕のみたいなのかと意気込んで読み始めたものだから・・。
14. 匿名処理班
※5
>>気のせいか、どれも扇動を目的とした恣意的な論文に聞こえる。
>>いや、悪いとは言ってないよ?
そういうケチつけてるわけじゃないよと言いながらケチつける態度は不誠実だし、実に科学的じゃない
科学論文にものを申すなら正々堂々と科学的にやらないと
15. 匿名処理班
※14
ああ、言葉が足らなかったかな。
まず聞くが、仮に本当に恣意的で扇動を目的とした論文であったとしても、それを発表するのはその学者の自由であり、その意味で悪い事をしているとは言えないだろう?
扇動自体は悪事ではないし、扇動される側の自由意志も尊重せねばならないからだ。
分かってもらえたか?
ある点で、回避すべき正当性など持ち合わせていない人間も居る事を。
また科学的にと言うが、貴方は上記研究群の論拠となるであろう統計的なデータが恣意的に集められ故意の選別を受けていないとどうやって判断したのだ?
16. 匿名処理班
※14
民間企業の調査だし、SNSとマスコミにウエイトを置いたと書いてくれてる!
これは誠意があるといえる
個人の日記と同じく、その企業視点としての事実なんだよ
国家や国際機構がこれをやったら許されないよ、もちろんね