
その形はちょっとおしゃれにみえるかもしれないが、実はこれ、非常時に怪我人を運ぶために作られた担架(ストレッチャー)だという。
およそ80年ほど前、第二次世界大戦の頃に大量に使用されていた担架が、再利用として街のフェンスとして使用されているのだ。
広告
第二次世界大戦中に作られた担架
この担架が作られたのは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツの大規模空襲が脅威だった頃で、けが人を運ぶ空襲防御官のために用意したもの。現在ストレッチャーレイリング(担架になる柵、または手すり)と呼ばれているこれらの担架はスチール製で、当時は60万台以上も作られた。
当時の鉄鋼会社が作った担架の試作品

image credit:Museum of St John
材質がスチールなのは、ロンドン市民が特に恐れていた毒ガス攻撃に備え、万が一の時も汚染除去しやすいという点からだ。実際にこれらの担架は戦時中に使われ、負傷者の搬送に利用された。
緊急救命ボートにて(1939)

image credit:Transpontine /Ruth Durrant
担架にけが人を乗せる空襲防御官(1941)

image credit:Leodis Archive
戦後に余った担架がフェンスに
だが、戦争が終了すると大量の担架が町にあふれかえってしまった。一方、住宅地ではそれぞれの建物を囲んでいた普通のフェンスが、戦中の資材調達や費用捻出に回されてほとんど無くなっていた。
そこで当時ロンドンの郡議会が、余った担架を住宅のフェンスに置き換えることを決めたのだ。

image credit:stretcherrailings

image credit:stretcherrailings

image credit:stretcherrailings
歴史的な担架の保護活動を行う団体も
現在は、これらの担架の保護につとめるストレッチャーレイリング協会が、町に残るフェンス風担架の写真や位置を示す便利なマップも公開している。ストレッチャーレイリング協会より、ロンドンの担架マップ
しかし現存する担架の状態はたいてい悪く、一部の地方自治体が劣化した担架の除去を行っており、協会は残った担架の長期保存方法も検討しているそうだ。
協会のインスタグラムより
フェンスとして点在する80年前の担架。事情を知らなければ素通りする風景に歴史ありといったところだろうか。てかこの話、ロンドンじゃ有名なのかな?
イギリスの王立地理学会公式誌でもシェアされ話題になってるようだ
そういや前にドイツで39年ぶりに見つかったベルリンの壁は風景になじみすぎて当局も気づかなかったっけ。A life-long Londoner could walk past hundreds of these fences, and never know they were looking at Second World War stretchers https://t.co/xhtlP5xmzV pic.twitter.com/GfRh61CIxa
— Geographical (@GeographicalMag) 2018年11月9日
・失われたベルリンの壁が発見される:カラパイア
今残ってる担架は腐食が進んでるのもあるみたいだけど、まさに隠れ遺物って感じ。ちょっとロンドン行って実物探しとかみたいな〜
References:neatorama / stretcherrailings / stretcherrailings / twitter / instagramなど /written by D/ edited by parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
この担架で助けられた方の多いだろう
歴史の証人として長く残してもらいたいね
2. 匿名処理班
空襲で大勢の死者出るのを想定して、木製の棺桶は足りなくなるだろうと、紙製の棺桶なんてのもあったらしいですね。
3. 匿名処理班
無駄の無いデザインで素晴らしいと思う
4. 匿名処理班
今もなお、第二次大戦の時の痕跡がいたるところに残ってるのは色々な意味で感慨深いものがありますよねえ
5. 匿名処理班
こういうアイディアはいざという時の為に参考にすべきだ
6. 匿名処理班
余程いい鉄を使ってたんだな。
すげえな。
7. 匿名処理班
真のリサイクルだね。
8. 匿名処理班
日本では、東京都羽村市で災害時に担架として使えるガードパイプが設置されています。
もともと担架として使われたものをガードレールにするのとは順序が逆ですが、どちらも良い発想だと思います。
大戦中担架として人の命を運び、今また人を見守るためのフェンスとして活躍するんですね。
9. 匿名処理班
この写真一覧を見て意外だったのは80年経ってるのにペンキや錆止め塗料等でしっかりケアされ、編み目も綺麗なストレッチャーが比較的多いってこと
長年ケアしてきた人達に敬意を表したい
10. 匿名処理班
軍靴の音が聞こえるお
11. 匿名処理班
いざ再び戦争になったら外して再利用できる
12. 匿名処理班
日本の例だと、JR線の古いホームに有る屋根の支柱に
線路の鉄材がそのまま使われていた…みたいなものか?
でも、日本の例はどうも貧乏臭い感じだと思っていたが、
これは、デザイン的に見ても違和感が少ないと思う
土台のレンガとも感じが合っていて、良い味が出ている
13. 匿名処理班
>>2
戦闘機が腹の下に吊る増加燃料タンクも紙製のがあった。
牛乳パックの応用らしい。
この辺コーティングなどの化学分野が強かったんだろうと思う。
なぜ紙製タンクを作ったか、コストと、アルミ製だとドイツ側が拾って回収再利用してしまうからw
14. 匿名処理班
※12
小湊といすみの終点である上総中野にもレールを使ったのが現存してますぜ
それどころか小湊側のレールなんて1926年製が現役・・・
15. 匿名処理班
どこぞの自衛する組織じゃ、米軍供与の機関銃が国産より調子よくバリバリの現役だったりするけどな。
16. 匿名処理班
タイトル・・・鉄製
文面・・・スチール製
一体どっちが本当なんだ?
17. 匿名処理班
※15
国産は「単発式機関銃」と呼ばれてるともw
18. 匿名処理班
モノを大切にするというか偏愛する国民性が表れているような、蒸気機関車の保護活動もそうだけど。
19. 匿名処理班
これは見事なリサイクルの一事例ではないだろうか
すばらしい
20. 匿名処理班
※17
38式歩兵銃の方がまだ良かったりしてね?