「常に身の危険を感じた」ユタ州ソルトレイク郡の郡長がホームレスに変装してその暮らしを体験（アメリカ）

　米ユタ州ソルトレイク郡の郡長は、新たに保護施設を設置する場所を決定するにあたってホームレスに変装して調査を進めることにした。

　彼はそのときの経験を薬物乱用と暴力のおかげで「常に身の危険を感じていた」と語っている。

ジーパンにパーカーでホームレスに扮し、その生活を体験

　ユタ州で最も人口が多い郡を治めるベン・マクアダムズ郡長は大抵の場合はスーツ姿だ。しかし3月24日、彼はそのルールを破り、ジーパンとパーカー姿で冒険に出た……ホームレスの生活を体験するためだ。

　同僚1人を連れて、身分証や所持金を一切持たずに2泊3日で地域のホームレスたちにまぎれ込み、保護施設や通りでの生活を実体験するという試みだ。

　マクアダムズ郡長によると、狙いは郡で3つ目の保護施設の設立場所を決断しなければならなくなる前に、現在のホームレス向け制度の理解を深めることだった。

　この調査が実施されたのは数ヶ月前のことであるが、貧しい人たちに向けたパフォーマンスととられることを嫌い最近まで公表されなかった。

麻薬と暴力

　マクアダムズ郡長らは最初の夜をソルトレイクシティ、リオグランデの通りで過ごしてみた。ホームレスの中に保護施設に行こうとしない人たちがいる理由を知るためだ。

　「4.5度を下回る寒さでした」と話すマクアダムズ郡長は、目が覚めると雨が降っていたと回想する。「保護施設には暖かいベッドがあるのに、なぜ行かないのかと思いますよね」

　その答えは2日目の晩に分かったように思えた。彼らが身を寄せたロードホームという保護施設は、麻薬と暴力が蔓延していたのである。

　この試みに同行した匿名の職員は、ルームメイトが薬を腕に注射している場面を目撃したと証言するが、マクアダムズ郡長はこれについてコメントを控えている。

　「私のごく短い初めての体験を強調するつもりはありません。そこには毎日それと同じか、もっとひどいことを目にしている人たちがいるからです」（マクアダムズ郡長）

　しかし麻薬の煙の臭いが一晩中漂っているなど、薬物が使用されていた証拠自体は認めている。

　またすぐそばで男2人が口論を始め、片方の男はベッドを引きずられ、コンクリートの床に頭を打ち付けるという場面にも遭遇した。

　盗難の心配があったことから、靴を脱げる状況ではなかったとも話す。ある人から盗まれないようバッグを枕がわりに使用するように助言されたという。夜間はトイレで暴行を受ける恐れがあるため、使用を控えるようにも言われた。

　「常に身の危険を感じていました。かなりめちゃくちゃな環境でした」（マクアダムズ郡長）

　リオグランデの街中ではそこかしこで麻薬の取引が行われていた。9歳の自閉症の子供がいるホームレスの一家にも出会った。

　マクアダムズ郡長は3日目の終わりに「現状維持は選択肢としてありえない」と悟ったという。

新しい保護施設の設立が決定

　その後、新しい保護施設の設立が決定され、現在2019年のオープンを目指して準備が進められている。また3ヶ所で新施設をオープンさせる予定で、これが完了すれば1,062床あるロードホームを閉鎖することも決定された。

　地元紙ソルトレイク・トリビューンが報じたユタ州の報告書によれば、2014〜2016年に州あるいは連邦が助成する保護施設の利用者は5パーセント上昇したという。しかし、連邦政府の報告書によれば、同時期9パーセント減少しており、内容の食い違いが見られる。

via:elitereaders / collective-evolution など/ translated by hiroching / edited by parumo
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