メインコンテンツにスキップ

異常気象が数か月でトカゲを急速に進化させた

記事の本文にスキップ

53件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay
Advertisement

 アメリカ南部に分布するあざやかな緑が特徴的なグリーンアノール(別名:アメリカカメレオン)は摂氏10度より寒いのは苦手だ。

 このことはメキシコ湾岸や南東部州の亜熱帯地域では特に問題ではなかった。しかし2013-2014年の冬の異常気象に直面したグリーンアノールは、あまりの寒さに自然淘汰が起こり、進化によって寒さに強くなったという。

 『Science』誌上でシェーン・キャンベル=ステイトン(Shane Campbell-Staton)博士らが発表した。

グリーンアノールの耐寒性を調査

 個々の異常気象による自然選択の影響を調べた研究は比較的少ない。そのアイデアは2013年のグリーンアノールの耐寒性に関する論文で偶然着想された。

 数百万年前、このトカゲの祖先は現在のキューバからアメリカに移住してきたが、今日その子孫たちは合衆国南部の比較的寒い地域と似たような気温の場所でも暮らしている。ここからキャンベル=ステイトン博士は「グリーンアノールが北上して、寒い冬でも生存できた生理学的・遺伝学的プロセスは何か?」と疑問を抱いた。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:File:Anolis carolinensis aggression.jpg – Wikipedia

 そんな中、彼はボストングローブに掲載されていたアラバマ州のグリーンアノールの写真(リンク先の22番)を目にした。そのトカゲは雪の中に横たわり死にかけていた。

 すぐさまあるイベントへの反応としての自然選択というアイデアがひらめいた。そこで、すでに収集済みだった昨年夏来のグリーンアノールのデータを、厳冬を生き残ったトカゲのサンプルと比較してみることにした。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Anolis carolinensis V – Carolina anole – Wikipedia

 今回の研究では南北約1,300キロの範囲にあるテキサス州4ヶ所(ブラウンズビル、ビクトリア、オースティン、アーリントン)とオクラホマ州1ヶ所(ホッジェン)における冬の前後のデータを比較している。

 いずれの都市でも過去15年で最も低い最低気温が記録されていた。この場所でデータを集めることにしたのは、そこに生息するグリーンアノールが密接に関連しながらも、耐寒性の点で有意な差異が見られたからだった。

 すなわち生息域が北に行くほど、寒さに対する抵抗力も強い傾向があったからである。グリーンアノールの耐寒性を計測するにあたっては、標本を容器に入れ、1分ごとに1度ずつ温度を下げた。標本は仰向けに入れられ、鉗子で突いては腹ばいに戻るように促した。そうできなくなった温度を「そのトカゲが凍死する状況から退避できない温度」、すなわち最低生存可能温度の近似として用いた。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:File:Anolelick.JPG – Wikipedia

アメリカのグリーンアノールは寒い場所でも生きられるよう進化した

 その冬、テキサス州南端のブラウンズビルのトカゲはほとんどの日を最低生存可能温度を下回る中で暮らした。

 2014年4月および7月にグリーンアノールの標本を再度収集してみると、生き残ったトカゲは他の5都市でも最大の耐寒性向上を見せ、その冬以前よりも1.5度低い温度に耐えられるようになっていた。そこから420キロ北にあるビクトリアのグリーンアノールは1度寒さに強くなっていた。それ以外の都市では特に耐寒性の向上は観察されなかった。

 これはすでにある程度の耐寒性を身につけていたことが原因だと考えられる。つまりブラウンズビルとビクトリアの生き残りは、耐寒性の点で他の都市のトカゲに収束したということだ。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:File:Carolina Anole in Territorial Fight – Wikipedia

 こうした変化は表現型(外部から観察可能な行動)のみならず、遺伝子レベルでも裏付けられる。生き残ったトカゲの遺伝子発現とゲノム配列は冬の後に発散し、北部グループとの類似が増え、体内のゲノム内では分化が増えていた。

 キャンベル=ステイトン博士によると、冬の間の選択圧にさらされた遺伝子はいずれも神経系機能に関するものらしく、神経伝達物質の伝達と途絶に関連する遺伝子を含むゲノムの一部で最も大きな分化が起きていたという。

 キャンベル=ステイトン博士の直感は鋭敏かつ予見的だった。仮に異常気象がグリーンアノールの温度に対する弾力性を向上させたのなら、それはほぼ間違いなく代償をも伴うものだ。

 厳冬を生き残れなかった個体は、熱波や干ばつに強い遺伝的変異を持っていた可能性があるからだ。

 しかし、その血統は死に絶えてしまったかもしれない。今後、異常気象はさらに増え、かつ過酷なものになると予測される。それは比較的数が多いグリーンアノールよりも脆弱な種を危険にさらすことだろう。気候の変動が生物多様性に与える影響の理解はまだ始まったばかりだ。

via:harvardmagazine / iflscienceなど/ written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 53件

コメントを書く

  1. いつの日か「放射能に強い人類」なんて言うもんも出てくるかもね。

    • +11
      1. ※5
        外にいる多くのゴキブリは適用能力高いけど、屋内にいるゴキブリは
        人にくっつくことで安泰する昆虫。害虫のあいつらに適用する力は
        とっくに失われるので無駄だぞ

        • 評価
      2. ※5
        ゴキブリは強力な殺虫剤でも耐えますからね(大汗)。

        • +1
      3. ※5
        核戦争後の地上の覇者はナメクジだぞ

        • 評価
    1. ※2
      人間の場合は自然選択じゃなくてゲノム編集で実現しそうだね。
      ※32
      突然変異=進化と言っても対して語弊はない。
      「ましてゲノムレベルで変わってるんだし」ってのも意味がわからない。
      一度それぞれの言葉の意味を調べ直したらどうかな。

      ※36
      残念ながら隙間の神・・・

      • 評価
      1. ※38
        いや実際神がどうのこうのというわけじゃなく遺伝子共通の方向性みたいなものがあるのかもしれないってこと
        個人的にそうだと思ってるわけでもないけどそういう可能性もあるかもなー程度ね

        • 評価
        1. ※39
          「隙間の神」って言葉は、科学が自然現象を説明できる領域が増え、宗教的な説明が徐々に退却を余儀なくされている事柄に対して使われる。

          • +1
      2. ※38
        >>突然変異=進化と言っても対して語弊はない
        語弊はあるだろ

        • 評価
  2. 今後も生き残れなきゃ絶滅の第一段階ともとれる

    • +1
  3. 進化じゃなくてバラエティーが減って一部が冗長したってことか
    あーあ、また一部の貴重な遺伝情報がなくなっちゃったよ
    ここまで来るのにせっかく何億年もかけたのにね

    • +8
  4. メッキ(シマアジの幼魚)の死滅回遊とかもずっと続けてればいつか適応しちゃう群れとか出てくるのかな?
    で、新たな分布域を作る

    グルーンアノールって小笠原諸島に住み着いちゃったったって奴だっけ?

    • +6
    1. ※10
      そうだよ小笠原にいるよ
      昔飼ってた

      • +3
  5. これは進化ではなく、もともと耐寒性に強い個体が生き残っていて、その集団の平均的な生存下限温度を測定したってだけ

    いわゆる、蛾の工業暗化、と同じミスをしている

    • -9
      1. ※18
        ※26
        特定の形質や性質が固定され、しかもそれが下の世代に受け継がれていかないと進化とは言わないよ。これは期間が短すぎて、単に個体の淘汰によって耐寒性のあるものが生き残っているだけという可能性がある。

        • 評価
        1. ※45
          その可能性もあるけど「生き残ったトカゲの遺伝子発現とゲノム配列は冬の後に発散し、北部グループとの類似が増え、体内のゲノム内では分化が増えていた」とあるから進化の一部ともとれるんでない?
          産卵間隔は10~20日らしいから半年もあれば少なくとも世代は更新されてそうだし

          • +3
  6. 昆虫は進化を捨ててひたすら増殖で生き延びる方法論を得た。いくらかの個体が生き残ればまた増殖出来るという発想
    それよりも複雑な生命体は環境適応で生き延びるということなんだろ
    それは爬虫類も同じででなければ地球上で何度もあった氷河期を越えてこられなかった

    • -6
  7. 世代交代の期間が長い動物ほど進化に時間がかかる。
    おそらく人類は自然淘汰による進化より先に
    バイオテクノロジーで自ら進化する力を得る。

    • +2
  8. うーん・・・・期間が短すぎて「進化」という言葉を使うのには抵抗がある。世代を経て固定された遺伝子とはまだいえないのではないんだろうか。もともと耐寒性が高かった個体(そういう遺伝子をもつ個体)が、高緯度には多く生き残っているという程度のことではないんだろうか。

    • +1
  9. たった一年で種の進化などあるはずもないとおもうが。

    • -1
  10. 爬虫類・鳥類「おい人類、あんまり自然を破壊するとまた巨大化するぞ」

    • +4
  11. カラパイアさんは温暖化についてはどう言った見解なんでしょう?

    • 評価
  12. 結局は寒くなったから耐寒性が強い個体が生き残ったってだけで、熱帯気候みたいな状況になればそれに対応できる個体が生き残るだけなんじゃね?

    仮に熱波とか干ばつに強い個体が厳冬で死滅したとしても遺伝子レベルでは残ってるんだし、環境への適応ってのはこれの繰り返しでしょ

    • -5
    1. ※21
      進化には不可逆性があって、一度失ってしまった特性は二度と戻らないんだよ。
      例えば鳥はかつて歯を捨てて嘴になってからは二度と歯は生えていない。
      歯が生えてるように見える種も嘴の形が変化してるだけで、歯の持つ強靭さや生え替わるなどの利点は失われたまま。
      進化のメカニズムは「やってみたけどダメだったから今のナシで」は認めてくれない。
      そのかわり、選択の時間だけはたっぷり与えてくれる。

      • +4
  13. ヒアリも日本に適応しないうちに追い出そう

    • +2
    1. ※22 姿が見えた時はもう適応してるって話だよ。

      • +2
  14. 生息範囲を意欲的に拡大させていく生物種ならではの変化だと思う。

    自ら生息範囲を広げるには環境変化をどんどん乗り越えていく必要があるから、様々な環境に対応するだけの遺伝子の多様性が必要で、その下地があるからこそ急激な気象変動でも生き残る個体が出てくる。こうした急な淘汰が起きれば多くのライバルは死滅や激減を起こすから、生存増殖に有利にもなる。

    これから更に北上する個体も出てくるだろうね。その時には外観まで変わってくるだろうから、それを進化と言っても誰もが納得するものになると思う。

    • +3
  15. 沖縄でグリーンアノールが増えてる一方で
    宮崎に進出したオキナワキノボリトカゲも増えてる

    • +2
  16. こいつポケモンみたいな色で超かわいいな

    • 評価
  17. 集団遺伝学的には、集団の中である遺伝子の割合が変化することを小進化と定義しますよ。よってこの場合は、集団の中での耐寒性の遺伝子を持つ個体が割合が変化している(増えている)ので定義上進化であってます。耐寒性の遺伝子を持っていない個体が死滅したのなら始祖効果(瓶首効果)で、この形質は今後この集団で増える可能性が高いですし。
    ほんとは集団中の遺伝子の割合の変化を証拠として出して欲しいところですけどね。

    • +6
  18. 進化とか退化を勘違いしてる日本人多いよな。
    まあ「進」化「退」化という名称にしてしまったせいで勘違いする人間が増えてしまったのかもしれないが

    • +2
  19. 幾つかのコメントを見て
    進化の定義を確認しちゃったよw
    種レベルの変化を進化と言ってる方がちらほら‥www

    • -7
  20. このコメント欄で否定しても論文の研究者には届かないよね。
    種レベルの変化は進化じゃない?種レベルで進化は起こるんじゃないかと・・・
    変化の積み重ねの中において生存してきたもののその普遍的な変遷こそがその種の進化でしょ?
    それが短期間に起きてトカゲさんの生息域を変えてると言う話だと思ってるんですけどね。

    • +3
    1. ※31
      失礼 書き方がいけなかったね
      種レベルの変化”のみ”を進化~」と訂正させてください

      • 評価
  21. なんだろ
    ポケモンみたいに突然変異しか進化と認めないひとがいるみたいだね
    自然淘汰による選択からなる適応も立派な進化でしょ、ましてゲノムレベルで変わってるんだし

    • +1
  22. トカゲは段々と羽根が出てくるんじゃない?

    • 評価
  23. 昔、ある物を持つときに手首の骨の上にほんのちょっと乗せて持っていたら
    ある時から手首の軟骨?みたいのが出っ張って引っかかりやすくなった
    その仕事辞めたらそれがなくなった

    簡単な進化を見た気がしたよ

    • 評価
  24. 写真が可愛すぎて文章の内容が頭に入らなかった

    • 評価
  25. 進化論はまだ仮説に過ぎない
    確かにそういう例も多いが進化論ではいまいち説得力のない例もある
    進化に関してはいわゆる神の力的なものがまだあるのかもしれない

    • -7
    1. ※36
      そもそも「神」という存在が観念的、抽象的なもの。「神の力」に至っては仮説の仮説で、文学や哲学ならともかく、科学に持ち込むべきものではないよ。

      説明がつかないからといって、安易に「神」やら「超越者」を持ち出す人は、科学の場では口を閉ざしていてほしい。

      • +1
      1. ※46
        いやごめん、書き方に問題があったのかな
        「所謂神の力的なもの」という表現は「神とは無関係だけどまるでそのように見えるもの」という意味で使った
        神だの超越者ではなく例えば元素の性質やら自然界の4つの力なんかを根本原理にするマクロ的システムのようなものとかね
        今現在説明できない例があればそれを例外としてその理論を貫くよりまだ不完全で将来新たな発見によって覆るかもしれないという可能性を考えてしまう

        • -1
  26. 例えば1つの生物の中で欠損機能ができればそれを補おうとする力が働く場合がある
    1つの生態系の中で欠損ができればそれを埋めようとするベクトルが出来る場合がある
    そう考えれば地球自体をガイアとしてみれば環境変化の自然淘汰以外のベクトルで種や群の変化が起こっても不思議ではないと思う

    • 評価
  27. 一般的にはそうかもしれないけど先祖返りって突然変異も起こるんだし不完全でない?
    品種改良で環境に適したものにすることだってできるんだし

    • 評価
  28. ウィキにある程度のことはわかるよ
    書き方から「科学でまだ十分な説明ができない現象を神の御業であると仮定する傾向を直接的に批判するものである」という意味で言ってると思った

    • 評価
  29. 32を受けてそう言ってんだろ
    突然変異と自然淘汰による選択をまるで別のもののように言ってるから、後者もまず突然変異があったのちに選択されているって点で共通してるって言いたいんじゃね?
    確かにイコールってのは厳密にはおかしいけども

    • 評価
  30. 北上する?そしたらまた在来種に影響する?個人的にはヤモリが好きで、春夏は心の頼りにしている。見かけなくなったら、ヘコむな~。。。

    • 評価
  31. こいつらが突然変異して九州に上陸する可能性が高まったということか。保健所などはこいつの輸入許可をもらって飼育繁殖実験をすればいいのに。そうすればこいつが見つかったときに対策がとれるんじゃないじゃな?

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

昆虫・爬虫類・寄生虫

昆虫・爬虫類・寄生虫についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。