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ついに完全分離。重さ1兆トン、南極最大級の棚氷が分離する

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(著) (編集)

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 昨年末、南極の棚氷の崩壊が近づいているという話をしたかと思うが、(関連記事)その予測通り、南極のラーセンC棚氷にあった、記録の中でも最大級の氷山がついに分離した。

 A68と命名される予定の氷山は重さ1兆トン、5,800平方キロメートルで、ロンドンの4倍にも匹敵する巨大さ。記録されているものとしては10指に入る大きさである。

Massive iceberg breaks away from Antarctica

巨大氷山の分離がどのような影響を及ぼすのか

 英スウォンジー大学の発表によると、分離は7月10日から12日の間に発生したという。同大学を中心とする研究チームは欧州宇宙機関の観測衛星センチネル-1を用いて、長さ170キロに渡る氷の裂け目の変化を観測し続けた。

 今回の分離は専門家にとってはさらに興味を深い状況を作り出す。氷河学者はラーセンC氷棚の残りの部分が以前と比べて不安定になるのかどうか興味津々だ。また生物学者にとっては、氷山の喪失によって形成された新しい生息域にどのように生物が定着するのか観察するまたとないチャンスである。

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海の流れがせき止められる危険性

 南極において氷山の分離は常に発生しているが、これほどまでに大きい氷山の場合、航海する船に危険を及ぶすおそれもあるため今後も観測する必要がある。ただし海に浮かび、溶けたとしてもそれだけで海面レベルを上昇させることはない。

 それよりも真の危険は内陸の氷河からやってくる。海に浮かんだ氷棚は海岸からせり出して、陸上からゆっくりと流れる氷河によって大きくなる。これが巨大なブレーキのように機能し、氷河の海への流れがせき止められる。

 専門家によると、もしラーソンC氷棚によってせき止められた氷河が分離して南極海に落下した場合、世界の海面レベルを約10センチ上昇させる可能性があるという。

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2006~2017年のラーセンC氷棚の亀裂の様子

温暖化との関連性

 現在理解されている範囲では、亀裂の広まりは温暖化とは直接的な関係がないようだ。ブリティッシュ・アンタークティック・サーベイ(BAS)のデビッド・ボーガン教授によれば、温暖化によって氷棚が溶けていることは疑いの余地のないことであるが、それによって南極全体が崩壊してしまうような兆しは今のところ確認されていない。

 ただし、20世紀後半から数十年観測が続けられてきた南極半島において、氷棚の崩壊と氷の喪失は増加しているという。

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 ラーセンC氷棚以外にも氷が海へ溶けて消えている場所はあるが、それらは大気の温暖化の影響よりも、海洋の変化による影響の方が大きい。

 例えば、BASの基地が設置されているブラント氷棚の亀裂はまったく別の類のもので温暖化との関連は認められていない。

 2008年からラーセンC氷棚を調査してきた米コロラド州立大学のダン・マクグラス氏は、南極半島は20世紀後半を通じて地球上で最も早く気温が上昇した地域の1つであると説明する。

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分離前に作られた予測3Dモデル。厚さ190メートル、1,155立方メートルの氷である

 ラーセンAやBの崩壊など、それによる環境の変化は甚大なものであった。だが、やはりラーセンCの亀裂については温暖化と直接関連するものとはみなされていない。それでも温まった海水が氷棚の下部を侵食するという、温暖化に起因する仕組みは存在する。

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新たなる生態系形成の可能性

 分離は海や海底の生息域に関する新しい研究機会をもたらす。2016年の南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(Commission for the Conservation of Antarctic Marine Living Resources/CCAMLR)では、氷床の後退や崩壊によって海に新しく露出した領域が誕生した場合、そこを科学的研究のための特別区域(Special Area for Scientifc Research)として自動的に保全する旨の国際協定が締結された。

 この区域に指定されると漁業活動は規制され、ここに生物が定着し、新しい群落を形成する様子を観察する絶好のチャンスが科学者に与えられることになる。

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 一方、WWFのロッド・ダウニー氏は、こうした現象は極地の脆弱さを証明してもいると述べる。極地は海洋や大気を動かす作用がある。

 南極西部はここ数十年で最も温暖化が早く進行している地域であり、アデリーペンギンやコウテイペンギンといった人気種にとっては歓迎できる事態ではない。世界が団結して温暖化対策に早急に取り組むべき理由を明確に示しているのだという。

 今回の大型の氷山のほか、それより小さな氷山がいくつか分離するとも予測されている。7月6日のデータによれば、蓄積されたストレスの解放によって、亀裂は数ヶ所に分岐したようである。欧州宇宙機関の人工衛星からは、氷の縁5キロの範囲に複数の亀裂の先端を確認することができる。こうした亀裂が数ヶ月以内に複数のより小さな氷山を作り出すと見込まれる。

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その後の展開は専門家の間でも意見がわかれる

 今回のプロジェクトの首席研究員であるスウォンジー大学のアドリアン・ラックマン教授は、ラーセンC氷棚での分離イベントの影響や巨大氷山の行方については今後も引き続き観測すると話す。

 記録史上最大級の氷山であり、その将来的な動向を予測することは難しい。1つの塊のまま残るかもしれないが、分裂する可能性の方が高そうだという。

 また氷棚にしても、再びゆっくりと成長する可能性も、さらに分離が起きる可能性もあり、専門家の間でも意見の一致はみられない。

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 実は氷棚の下にある浅い海底には、ボウデン・アイスライズ(Bawden Ice Rise)と呼ばれる岩盤が突き出した場所があり、これが浮遊する棚のアンカーポイントとして機能してきた。そして結局、亀裂は突き出した部分から離れる寸前で止まった。

 米メリーランド大学のクリス・シューマン氏は、氷棚の残り90パーセントの部分は、今後も2つの固定ポイントで保持され続けるだろうと説明する。

 1つは先述した北側のボウデン・アイスライズで、もう1つは南側のギップス・アイスライズ(Gipps Ice Rise)だ。したがって、近い将来ラーセンC氷棚自体が崩壊してしまうような分離イベントは発生しないだろうとのことだ。

via:dailymail / viceなど/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 42件

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  1. 棚氷の下を巡回していく極地をまたぐ海流が、緯度に比べて温暖な気候を欧州にもたらしていたけど、これが崩れることによりヨーロッパは寒冷化がどんどん進んでいくんだよね(初めてこれを聞いたのは毛利衛さん解説によるNHKの番組)

    • +6
    1. ※4
      水に浮いてる氷が溶けても海面は何も変化せんよ

      • +5
  2. アラブがウォーミングアップをはじめました

    「水不足?氷山もってくればいいじゃない」

    • +3
    1. ※6
      ゴルゴ13「アイスバーグ・カット」だな。
      以下wiki引用
      ——————————
      まず、氷山を底部まで貫通するパイプを通して、そこにコンプレッサーを連結してエアを送り込む。
      すると、パイプの出入り口から泡が生じ、その反動で氷山が動き出す。
      その速度は4・5ノット程度で、エジプトまで着くのに2・3ヶ月はかかる。
      だが、泡は氷を溶かしにくいという特性があり、地中海と北極海の海水の温度差がそれほど大きくないため、水面上の部分の氷に気をつければ殆ど溶けない。
      更に、氷は大きいほど溶けにくくなる性質もある。

      • 評価
    2. ※6
      過去のカラパイア記事であったね
      すごアラブ。水不足解消の為、南極から氷山を引っ張ってくるという壮大な計画が来年スタート(アラブ首長国連邦)

      • +1
    1. ※9
      かき氷にしたら実際何杯食えるレベルなんだろうな

      • 評価
  3. 「すごアラブ。水不足解消の為、南極から氷山を引っ張ってくるという壮大な計画が来年スタート(アラブ首長国連邦)」
    という関連記事を見つけてしまった。

    • +3
  4. 南極では降雪が増えている事実があるんだから、こういう話ではそれに触れるべきなんだよね。降雪の増加は氷河の流れにも影響を与えるし、当然棚氷にも影響する。

    なのに温暖化と直接は関係無いとなると途端に無関心とも取れるような思考の放棄をする。アンフェアと言わざるを得ない。

    • +4
    1. ※16
      南極の降雪が増えてるって?不勉強なので知らなかった。調べても見つけられない。ポインタ plz

      • 評価
  5. メガトン怪獣スカイドン500万匹分!

    • 評価
    1. ※18
      ロンドンの4倍なんだから比較にならんでしょ。

      • 評価
  6. アラブに南極の氷を運んで水を調達すると宣言した人がいたような
    これ使えばいいんじゃね?大きすぎるだろうから分割してさ

    • +1
  7. これを素材にして氷山空母ハボクックを建造しよう。

    • +1
    1. ※21
      ※22
      氷山空母ハバククはただの海水じゃなくて、パルプなどを混ぜ込んで凍らせた「パイクリート」という素材で作る。天然の普通の氷山だと魚雷や爆撃で思いも寄らないところが割れたりするから危ないんだよ。

      • 評価
  8. 3Dモデルの比率がすごいので脳内変換が大変だったw
    やたら薄いんだろうなと言う事は解った

    • 評価
  9. 一兆トンクラスで十指に入る大きさて…こんなんが他に九個もあんのかよ…

    • +1
    1. ※25
      重要なのはそんな事ではなく、温暖化と関係なく9個も分離しているという事実じゃないかな。

      • +4
  10. よく、南極の氷が解けるとアルベドが下がって温暖化が加速するというけど、
    この氷を赤道付近まで曳航したら、赤道付近のアルベドは上がり、
    赤道付近の単位面積当たりの太陽光エネルギーは極地方の数倍以上高いので、
    副作用はいろいろあるにしても、温暖化にブレーキを掛けられるんじゃないだろうか?
    シロウト考えだけどw

    • +1
  11. 今南半球は冬だよね、此の氷山は長持ちしそうなんだけど、海流に乗って何処へ流れて行くのかね?さんご礁なんか一撃って気がするんだが、

    • 評価
    1. ※27
      基本的に周極流で南極海に留まる
      有名な氷山には名前が付いている

      • 評価
  12. うちの冷蔵庫には三兆冷やしてあるよ

    • 評価
  13. フィリンピンあたりまで流れていって海を冷して
    日本にくる台風がだんだん時期的に早まって雨も酷くなってるから

    • +1
  14. 面積だけで言えば三重県(約5,774km2)と同等レベルの氷山か…
    というか、このレベルの氷山が他に9個あると?
    地球のスケールは半端ないな

    • 評価
    1. ※34
      南極自体が日本の36倍の広さがあって、氷の厚さの平均が2450mだよ(一番厚い場所だと4500mある)

      • 評価
  15. サイズがでかすぎて全く実感が持てない・・・

    • 評価
  16. そこまよくみれば氷河の末端の部分が分離しただけじゃないか

    • 評価
  17. これ割れる前から気がついてたんでしょ?何か連結させる方法はなかったのかな?
    漂流した方が手間も費用もかかると思うんだけど

    • 評価
  18. 内側の氷が成長して外側の氷が押し出されてるだけ
    脱皮みたいなもんや
    南極の氷自体は増えとるからな

    • 評価
  19. >氷河学者はラーセンC氷棚の残りの部分が以前と比べて不安定になるのかどうか興味津々だ。
    こいつらが一番ひどいwww

    • 評価

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